【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
成人の儀が開始した事により、生贄の間にも明かりが灯された。
男は明るくなった事に驚くも周囲を見渡してここがどこなのか
見渡す。
見ると、自身は台座の上に仰向けの状態で拘束されているとわかり、
他にも6つの台座の内、誰も寝かされていない1つを除いて仲間の
1人も寝かされている。
更には3つの台座にモンスターの姿もあった。
ミノタウロス、ヘルハウンド、マッハバット、レアモンスターである
ワーム・ウェールの幼体が居るとわかった。
ブ モ ォ ォ オ オ オ~~~ッ!
明かりによって目が覚めたのか、モンスター達は叫び始めると
暴れだす。
しかし、男と同じように拘束されているため身動きは取れなくなって
いる。
「このちっこい蛇は捕まえるのに苦労したんだよね...
瞬殺されたら嫌だけど、まぁ、期待はしておこうかな」
ドゴンッ! ドゴンッ!
ワーム・ウェールの幼体を撫でながらそう答えたのはダフネだった。
数時間前から男に話しかけていたのは彼女であったのだ。
男は何も伝えられないにも関係なく、ダフネに何かを言おうとしたが、
突然、出入口が岩の扉によって全て塞がれてしまった事に気付く。
ズ ズ ズ ズズ...
男が寝かされている台座の足元にある穴から、何かが突起するように
出現した。
地下空間から運搬されてきたエッグ・チェンバーだった。
照らされる表面は免疫で艶めかしく黒光りしている。
その卵が他の6つの台座の穴からも出現して、中からカサカサと
蠢く音が聞こえてきた。
クチャァ...
やがて、エッグ・チェンバーの先端部が粘液を引きながら4つに
分かれて開く。
開口部から覗く8本の脚をバラバラに動かし、フェイスハガーが
這い出てくる。
エッグと称されているが、正確には卵ではない。
卵を確実に宿主へ寄生させる為のフェイスハガーを生み出す
繭なのだ。
男の足元に降りると意思を持つかのように男の体を這って頭部へ
移動していく。
他の卵から這い出たそれも、それぞれ男の仲間とモンスター達の
体を這いながら頭部まで移動していった。
男が騒ぎ始めるとモンスター達も恐怖を感じ取ったのか、一際叫び声を
上げて逃れようとする。
その時、生贄が居ない1体のフェイスハガーがダフネに飛び掛かった。
ピギィィィッ...!
フェイスハガーはダフネの顔に張り付こうとするも、先に寄生管を
掴まれて、張り付くのを阻止されてしまった。
ダフネは暴れるフェイスハガーに向かって、こう言った。
「悪いけど、ウチはもう予約済みだから」
...グチャッ!
寄生管を掴んだまま尻尾の根元も掴むと左右に引っ張る。
ギチギチと関節部から鈍い音が鳴り、限界が訪れるとフェイスハガーの
胴体と尻尾が引き千切れた。
引き千切れた胴体と尻尾の根元から黄色い体液がボトボトと床に
垂れ落ちる。
ジュウウゥゥゥゥ...
すると、体液が落ちた箇所が白い煙を上げながら溶け始める。
ダフネはピクピクと痙攣するフェイスハガーを壁際に投げ捨てて、
空いている台座へ移動した。
その間に、フェイスハガーは男とその仲間、そしてモンスター達の
顔面に張り付き、8本の脚で抱え込むと、更に引き剥がされないよう、
長い尻尾を首に巻き付ける。
巻き付けた尻尾で首を絞めつける事により、男は藻掻き苦しみながら
気絶した。
先程まで叫んでいたモンスター達も昏倒し、静まり返っている。
動かなくなった寄生対象に、フェイスハガーは腹部にある長い寄生管を
伸ばして口内に挿入した。
男やモンスター達の喉が蠢き、体内に胎児が寄生される。
一方、ダフネは容器の厳重に閉めている蓋のロックを解除して開ける。
中には通常よりも白濁とした色合いのフェイスハガーが半透明な液体に
浸かっており、それをダフネは躊躇なく掴み取る。
液体から取り出すと、白濁のフェイスハガーは一瞬だけ痙攣を起こし、
徐々に8本の脚を広げていき寄生管を伸ばし始めた。
「...Usynwg mi pawewr ahs fod...」
謎の言語を呟いたダフネは、何と自ら寄生管を咥えながら顔に
フェイスハガーを張り付かせた。
8本の脚は同じ様にダフネの顔を抱え込み、尻尾は首に巻き付いて
絞め付けていく。
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しばらくして、男は目を覚ました。
顔の傍にはフェイスハガーの死体が転がっており、ピクリとも
動かなくなっている。
男は自身のみに何が起きたのかわからず、動揺していると頭上から
ダフネの姿が現れる。
...ドグン... ドグン...
一体何が起きたのか、問いかけようとするも不意に胸が苦しく感じた。
苦しいだけでなく、激しい痛みも伴い始める。
体の中で何かが蠢き、益々苦しみと痛みが強まっていくとビシャッと
顔に液体が掛かってくる。
見ると、蛍光を発する緑色の液体だった。
「コフッ...ん、んんっ...やっぱ、これは、慣れないなぁ...」
ダフネが口から吐き出した吐血だった。
男は人間ではないと思い込み、怯えていると自身の胸の内から何かが
突き破ろうとして、無理矢理胸が突き出される。
メキメキメキッ...! メキョッ ベキッ...!
ブシャッ! ブシィ...!
鮮血が噴き出し、男は悶絶して白目を剥きながら痙攣を起こす。
次の瞬間、男の胸を突き破り、チェストバスターが血塗れとなって
体外へ出てきた。
キシャァァァアアッ!!
男は死に、他の宿主となっていた仲間の1人やモンスター達も
チェストバスターに体のどこかを突き破られ絶命していた。
そんな中、ダフネだけは吐血しながら苦しんではいるが、意識は
ハッキリとしているように見える。
「っ、ガ、ァ、う、ぁ...!」
ブシャァッ!
キシャァァァアアッ!!
仰け反ったダフネの胸を突き破って、先程のフェイスハガーと同様の
色をした白いチェストバスターが出てきた。
チェストバスターが床に落ちると同時に、ダフネも膝から崩れ落ちて
倒れる。
奇声を上げながらチェストバスター達は壁にある、小さな穴を
潜れ抜けていった。
再び静寂が訪れた。...かに思われたが、誰かの呼吸が響き渡った。
「...ぅ...っく、ふぅ...」
呼吸を整えながら、ダフネは立ち上がった。生きていたのだ。
突き破られた傷は異音を立てながら塞がっていっている。
「...ウチも観戦室に行くとするか」
そう言いながら口内に残っていた緑色の血を吐き捨て、岩の扉によって
塞がれた出入口に近付くとガントレットを操作し、生贄の間を後に
するのだった。
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ヒュオッ! フュンッ...!
...間もなくすれば、虫の幼体が成長し始める頃だ。
僕は予習として振るっていたコンビスティックを収納し、腰の鎧に
引っ掛ける。
先程、現れた階段を下りていき、最下部まで辿り着くと目の前の
通路を進んでいく。
通路の左右には古代のヤウージャを象った石像があった。
壁に描かれている壁画には原住民が古代のヤウージャ達を崇める姿も
ある。
その壁際に片膝をついている石像が配置され、上段には座っている
姿勢で石像が均等に並んでいた。
上段の石像は、まるで僕の儀式を見ているように思えた。
ここから先、いつ虫が現れるかわからないため視界を切り替えようと
した途端、生体感知センサーが反応した。
ピロン ピロン ピロン ピロン...
この反応はモンスターではなく、虫の反応だ。
僕はリスト・ブレイドを伸ばし、バーナーも起動させて臨戦態勢に
入る。
息を潜め、反応が強まる方向を向いていると、背後からも近付いてきて
いるのに気付く。
ギ ビャ ァ ア ア アッ!!
ギ シャ ァ ア ア ア ア アッ!!
数歩後退したと同時に、壁の穴と頭上から2体同時に襲い掛かって
きた。
僕は咄嗟にバーナーを頭上から襲ってきた1体に向けて、もう1体は
近付いてきたのを逆手に取り、首を掴むと壁に向かって投げつける。
プラズマバレットが命中した個体は腹部が破裂して絶命し、強酸性の
体液をぶち撒けながら床を溶かしていた。
ギ シャ ァ ア ア ア ア アッ!!
壁に投げつけた個体は怯まず、僕に向かって吠えてくる。
こいつこそが価値ある獲物。
エイリアンと認識される、ゼノモーフだ。ヤウージャの間では虫と
呼んでいる。
僕はその虫に対し、吼え返した。
ウ゛オ゙オ゙ォ゙ォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ!!
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ついに始まったわね...」
観戦室の窓に映し出された映像には、捕食者とゼノモーフの
姿があった。
聖地の機能により、内部映像が直接映されているようだ。
ネフテュスはゼノモーフと対峙する捕食者を真剣な眼差しで見守って
おり、ティオナは見た事もない異形の生物の姿に固唾を飲んだ。
「あ、あれが...儀式で狩る獲物、なの...?」
「そうよ。名前はゼノモーフ...
この世界で言えば、エイリアンかしらね。まぁ、どちらでもいいわ」
「エイリアン...」
映像で見えるゼノモーフは長い尻尾を振るい、捕食者に飛び掛かって
いた。
捕食者は降りてくる地点から離れ、ゼノモーフが着地すると同時に
頭部を左手で殴りつける。
VSエイリアン・バトル(1体)
エイリアンでの生体感知センサーの音はモーショントラッカーの音と思ってください。