【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
メディコンプが開き、ライトに照らされている中身から円筒形の容器を
僕は手に取る。
割れ目から容器を捻らせつつ、2つに分離させると青黒く発光している
太い針が出現する。
ヘルスシャード。
体力回復のために蛋白質、含水炭素などを混入した液体が詰まった
メディキットだ。
ポーションのように体力を回復する事は出来るが...
ドスッ ドスッ...!
『グヴゥ゙ヴヴヴヴッ...!』
その太い針を左右の腹部に突き刺し、液体を体内に注入させなければ
ならないので激痛を伴う。
数秒で流し込み終えるが、刺さっていた箇所から引き抜くと血が
先端から糸を引いているのを見て、ウンザリする気持ちになりながら
容器をその辺に放り捨てた。
ガキンッ! ガキンッ!
次に背にしている壁にウォークラブを叩き付ける。
粉々に飛び散った破片をかき集め、メディコンプから収納されている
イグニッションデバイスを取り出し、点火装置部分を押す。
そうするとパラボラソーサーが展開して3点のチューブから火が
点火される。
グシャグシャ パキッ サラサラ...
砕いた破片を更に握り潰して砕き、火で熱する。
十分に熱した所で長細いカプセルの蓋を外し、中に詰まっている
青白い溶液を満遍なく振り掛ける。
これはあの溶解液とは別の医療用の液体だ。
シュボ オ ォ ォ オッ...!
溶液に含まれる可燃性の物質が熱で燃え上がり、同色の青白い炎が
破片に燃え移る。
しばらく燃え続けて炎が収まると青く発光する焼灼剤が完成された。
破片に含まれる珪素を強粘性の液状にした、所謂軟膏と言える。
ヘラを取り出し、その焼灼剤を掬うと深呼吸をして不規則な形状に
皮膚が剥がれている傷口に押し当てる。
ジュウゥゥゥウッ...
『グォ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!』
有棘層が焼ける臭いと同時に言い表せられない苦痛が襲ってきた。
以前のステープラーの処置よりも、比較にならない程の激痛を伴う
処置とはこれの事だ。
スカー達もこれだけは未だに耐えられないと言っていた。
先程のヘルスシャードも同様だが、麻酔など無痛にする薬を絶対に
使用してはならないという掟がある。
自身に刻まれる苦痛は誇れる証となり、その痛みを忘れようとするのは
恥と定められる。
治療での痛みも同じで、耐えられるようになればロスト・クラン入りを
認めてもらえる段階の1つでもある。...らしいが、事実かは知らない。
焼灼剤を傷口に塗り付け終え、痛みを紛らわせようと壁を何度も
殴りつけた。
...体力を回復したので疲労感はないが、少しだけ休もう。
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「...普通の人がやったら、気絶しちゃうの?」
「ショック死するわね。あの子達も1番苦手としてる処置だもの。
別の医療器具なら、以前に傷を負ったアマゾネスの女の子に使ったら気絶で済んでたわ」
捕食者でも苦手とするなら、常人では耐えられないという訳を
ティオナは理解した。
捕食者がどういった存在なのかを認知したので、誇りとして苦痛を
味わう行為も彼らなりの意味があるという事も。
立体映像に移っている捕食者は座ったまま、動かないでいた。
「次で最後の1体になるんだよね?
今までの6体よりもすっごく強いんだっけ...」
「ええ。特に、あの子には特別なゼノモーフを用意したわ。
どんな狩りとなるのか、とっても楽しみ...ふふっ...」
おもちゃで遊ぶ子供のような笑みを浮かべるネフテュスの瞳の色が、
橙色や黄色と暖色に変わっていく。
お気に入りと称していた通り、あの捕食者はネフテュスにとって
特別なんだと、ティオナは改めて思った。
「(そうだよね...だって、すごいもん...
レベル5のあたしやベートに勝ったのが)」
「あら、立ったわね。いよいよここへ来るみたいよ」
「!...うん...」
処置を施した腕を確認し、捕食者は通路を進み始めていた。
最後の1体との狩りへ向かうために。
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ギ シ ャ ァ ァ ァ ァ ァ ア...!
エイリアン・クイーンは怒りと悲しみを込め、叫んだ。
苦しみながら産卵したはずのエッグ・チェンバーから育った6体の
子供を無残に殺されたからだろう。
最後の1体を殺させる訳にはいかないと、必死になって手を動かし
暴れ始めた。
しかし、頑丈な手枷と鎖は壊れる気配もない。
エッグ・チェンバーを産もうにも強制的に産めなくさせられているのに
加え、生贄の間には寄生させる生物もいないため意味がないのだ。
やがて動かなくなり、項垂れるように前のめりになった。
ギシリ...
...シャァァァッ...!
その時、僅かな痛みを右手首から感じたエイリアン・クイーン。
見ると、手枷の内側が凹凸となっており角が立っている。
それに気付くや否や、エイリアン・クイーンは手首の関節部を
その角に擦り合わせ始めた。
ガリガリと外殻が邪魔して上手くいかない。
しかし、諦める素振りは見せずその行為を続けた。
そして...
ギャリッ...!
...ポタタ ポタ... ジュウウゥゥゥゥ...
ヘスルシャードの出典はプレステで2010年に発売されたAVP3です。
大体、刺してるのは肋骨の下、肺に近い所ですね。尚、普通なら死にます。
加えて、プレデター2の名シーン(?)である治療シーンのオマージュも入れました。
ランボー3での治療も見てる分にはすごいと思いましたね。