【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「さっき1匹で数百匹は殺せるって言ったわよね?

  改造されて生み出されたあの個体なら...どれくらいだと思う?」

 「えっと...す、数千匹?」

 「外れ。数十万匹は軽く越えるわ。

  大型のモンスターもあの個体なら...ふふっ...」

 「...」

 

 桁違いな数にティオナは絶句する。

 先程の数による脅威さが、ゼノモーフ・アルビノ1体だけでの脅威に

 一瞬で覆されたからだ。

 捕食者の遺伝子がどうのこうのと説明されたものの、さっぱり意味を

 理解していないティオナだがゼノモーフ・アルビノは正しく特殊な

 怪物なのだと認知した。

 その怪物と戦っている捕食者に少なからず心配が募ってくる。

 

 「もし、もしもだよ?...ないとは絶対思うけど...

  負けそうになったら、助けるんだよね...?」

 「あら?さっきの説明で言わなかったかしら?

  仲間に助けられることは不名誉な事。だから、殺されかけている状況でも見るだけよ」

 

 ティオナは信じられないといった表情となる。

 助け合わないというのは頭に入っていたが、まさか殺されそうに

 なっている場合でもそうだとは思ってもみなかったからだ。

 更にネフテュスから衝撃的な発言を聞かされる。

 

 「それと、負けた場合は名誉の掟に定められている処置に則って自爆するわ」

 「じ、自爆って...!?」

 「自らの体が戦利品として奪われないためよ。

  優れた技術が他者の手に渡る事を阻止するためという理由もあるわ」

 「な...何なのそれ!?いくらなんでもおかしいよっ!

  自分の命まで、簡単に捨てるなんて...!?」

 

 息を荒くするティオナにネフテュスは微笑み掛けながら、宥めるように

 諭した。

 

 「それが彼ら、人間ではないヤウージャという種族の習性なのよ。

  あの子は...幼き子供の頃、そのヤウージャに惹かれた。

  全てを受け入れると誓いを立て、私の涙を飲んだわ」

 「涙を...?どうして?」

 「私の涙は、飲めば心を壊す程の毒なの。

  神であれば飲んでも大丈夫で、私にお願いをする事が出来るけど...

  もし私が毒に変えてしまったら最後、その神は死ぬ。

  強制送還ではなく、本当に死に堕ちて天界からも下界からも忘れ去られるの」

 

 そんな危険な毒を飲んだと言われているというのにも関わらず、

 しっかりと生きている捕食者にティオナは目を移す。

 神をも殺す毒を飲み、心を壊さなかった。 

 レベルの高さがどれ程のものかわからないが、つまりそれが彼の

 為し得た偉業であるのだと思った。

 

 「...すごいね。本当に、すごいよ...」

 「ええ。人間を捨てる覚悟と引き替えにヤウージャと同じ強さを手に入れようとしている、あの子は...

  神智を越えた存在よ」

 「え...人間を捨てるって...?」

 

 そう問いかけるティオナにネフテュスは首を傾げ、数秒間を空けてから

 あぁ、と声を漏らして苦笑いに似た微笑みを浮かべる。

 

 「もしかして...

  あの子も同じ様な方法で強くなっていると思っていたの?」

 「...どういう意味...?」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 白い虫はプローブマウスを口に収納し、腕を大振りに爪で引っ掻こうと

 してきた。

 間合いが空くと隙を突いて分泌液も吐き出してくる。

 十分にコンビスティックを振るえる通路なので攻撃を防ぎ、分泌液も

 回避が間に合わない際は、なるべく弾き返した。

 

 ジュウゥゥッ...!

 

 熱プラズマで高熱を発生させる機能により、分泌液は蒸発して付着を

 防いでいるが、容赦なく吐き出してくるので油断は許されない。

 それに加え、尻尾の攻撃も退化しているとはいえ鋭く強力な刺突であるため

 一撃でも浴びれば虫が優勢となる。

 

 ギ シャ ア ァ ァ ァ ァ ア ア ア アッ!

 

 白い虫は収納していたプローブマウスを伸ばしてくると、僕の腕に

 巻き付けてきた。

 それもリスト・ブレイドで切り裂けない右腕に。

 僕は収縮させたコンビスティックを突き刺そうとするも、白い虫は

 プローブマウスを引っ張り上げ、僕を壁に激突させる。

 

 ド ゴ ォ ォ オッ!

 ガ シャ ァ ア ンッ! ガラガラ...

 

 激突した際に砕けた壁の破片と一緒に僕は地面に倒れるが、頭部への

 衝撃はヘルメットによって緩和されていたのですぐに立ち上がれた。

 すると再び引っ張り上げようとしたので、それよりもプローブマウスに

 コンビスティックを突き刺す。

 

 ブシッ...!

 シャ ア ァ ァ ァ ァ ア...ッ!

 

 突き刺した箇所から分泌液と混じった体液が噴き出した。

 僕は強引にプローブマウスを剥がすと、コンビスティックから

 引き抜いて体液を浴びないよう後退する。

 白い虫は体液が噴き出す傷口に苦しんでいるようで、真横にあった穴へ

 潜り込んだ。

 

 カチッ 

 ピッ ピピッ ピッ ピピッ ピッ...

 

 僕はプラズマ・グレネードを2つ取り出し、通常の爆破タイプから

 強力な電流を放電するエレクトロパルスに切り替えて、白い虫が入って

 いった穴と背後の穴へ投げ入れる。

 穴と穴とを繋ぐ通路を電流が流れる事によって、白い虫を炙り出そうと

 考えたんだ。 

 直ぐさま跳び上がってその場から退避し、建造物に飛び乗った。

 

 ...バヂィイッッ! バヂィンッ! バヂバチィッ...!

 

 ギ シャ ァ ァ ァ ァ ア ア ア アッ!

 

 数Mも離れた右方向の穴から白い虫の奇声が上がった。

 僕はその方向へ向かっていき、白い虫を見つけるとプラズマバレットを

 発射した後に勢いよくコンビスティックを投擲する。

 一直線に飛んでいくプラズマバレットとコンビスティックに気付いた

 白い虫は身を翻し、どちらも回避した。

 プラズマバレットは地面に着弾し、コンビスティックはそのまま壁に

 突き刺さる...

 かと思われただろうが、そうはならない。

 

 ピッ ピッ ピッ

 

 ...ギュオッ...!

 

 コンビスティックはレーザーに照射されている獲物を自動追尾する事が

 出来るからだ。  

 原理はナァーザに与えたボルトガンの誘導システムと同様の電磁誘導で

 一度上昇し旋回しながら、再度飛んでいった。

 それに驚く白い虫は分泌液を吐き飛ばし、止めようとしているが当然

 高熱を発生させているので付着せず勢いも止まらない。

 それを理解すると同時に白い虫はすぐ真横にあった穴へ潜り込み、

 攻撃を回避するようだ。

 僕もそれを察し、コンビスティックを電磁誘導で手元に戻す。

 白い虫の位置を特定しようとするも、生体反応センターから奴の反応が

 消えている...

 どこへ行った...?まさか、反応しない距離まで離れたのか?

 それを認識しているという事は、奴は遺伝子操作でヤウージャの思考を

 持ち合わせている、利口な個体だと推測した。

 闇雲に接近した時、不意討ちを狙われる可能性もある。

 ...いや、それを逆手にとってやろう。 

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