【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
『徹底して攻撃手段を削ぎ落す...正しく理に適ってる狩り方だな』
『油断さえしなければ、勝てるはずよ』
『...けど、そう簡単にはいかないと思うし、何か...
嫌な予感が』
する、と言おうとしたダフネの顎をルノアは抑え、中断させた。
顎部分が露出しているので口は容易に塞がれる。
最後まで言わせなかったルノアの行動にダフネは訝りながら、睨む様に
視線を横に向けた。
『それ以上言ったら、ホントになりそうだから言わないでよ』
『...はいはい』
顎を離されてから、ダフネは若干呆れつつそう返事をした。
想定した事が本当になるのは発言のせいではないと現実的に考えている
ダフネ対し、ルノアは何かが起きると直感的に感じて止めたようだ。
それにレックスも返答する。
『力学でもないからカオス理論と言えないけど...
因果律で何かしらの可能性が発生するのを考慮したんだから、間違っていないわ』
『...そういう事』
蟠りが解けたのかダフネは頷いて納得した。
すると、エイリアン・クイーンが仕掛ける動作を見せたので4人は
視線をそちらへ戻すのだった。
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ギ シ ャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア!!
尻尾を失ったクイーンは僕へと接近し、口からインナーマウスを
伸ばしてきた。
子であるゼノモーフは精々数十Cだが、巨体を持つクイーンの射程範囲は
数Mも伸びるので口を開いた瞬間にその場から退避しなければ危険だ。
しかし、残っている攻撃手段はそれしかないといのならこれが最後の
抵抗だと思われる。
僕は距離を取ってガントレットを操作し、バーナーに最高出力での
エネルギーを収束させていく。
ギュオン... ギュオン... ギュオン...
通常時ならチャージをコンマ単位で完了するが、フルチャージとなると
時間が掛かるためクイーンからの攻撃を回避し、発射時には最低でも
10Mの距離を空ける必要がある。
あの外殻を貫くプラズマシェルの速力を稼ぐためだ。
バシュンッ! バシュンッ! バシュンッ!
トドメを刺すのに気付かれる訳にはいかない。
僕はハンドプラズマキャノンを手にし、弾数を考慮しつつクイーンを
砲撃する。
弾数は8発。撃ち尽くすとチャージに数分間掛かってしまう。
なので、弾数を節約するためにシュリケンも投げ付けた。
ザシュッ! バシュッ!
ギ シ ャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア!!
砲撃の威力はプラズマバレットよりも強力なので、クイーンの動きが
後退した所でシュリケンが体の至る所を斬り付けた。
発射可能まで30秒。それまで弱らせ続ける...!
クイーンが接近しようとしてくると、僕は最後の1個となる
プロミキシティ・マインにプラズマを充填し、頭部目掛けて
投げ飛ばす。
ド ガ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ンッ!!
至近距離で起爆させ、クイーンから僕がどこに居るのか見えなく
させる。
残り23秒。ハンドプラズマキャノンの弾数も3発だけだ。
出し惜しみはしない...!
バシュンッ! バシュンッ! バシュンッ!
硝煙でクイーンの頭部の位置が阻害されているものの、感覚的に
狙いを定め、最後の3発を撃ち放つ。
弾切れとなり、ハンドプラズマキャノンはチャージのために機能を
強制停止状態にした。
クイーンに砲撃した3発は命中していたようで、その場から動かずに
怯んでいた。
残り10秒。
僕は10M以上の距離を空け、バーナーの砲口をクイーンの胸部に
3本のレーザーサイトを照射しロックオンする。
ピッ ピッ ピッ ピッ...
ギュ オ オ ォ ォ オ オ オッ...!
クイーンは僕を発見し、咆哮を上げると近付いて来ようとする。
...そのために余分に距離を空けたんだ。
残り5秒...3、2、1。
発射...!
――――――――――――――――――――――――――――――――
...ド ギュ オ ォ ォ オ オ オ オ ンッ!!
発射されたプラズマシェルは僅か3秒で目標に命中した。
その瞬間、眩い光がクイーンの姿を隠した。
衝撃波で吹き飛ばされないよう屈む姿勢で踏ん張り、数十秒後に
漸く収まった。
前方を見てみると、通過した軌道上ではバチバチと放電現象が起こって
おり、陽炎で歪んで見える。
僕は少し横へ移動し、クイーンがどうなったか見る。
...ギ シャ ア ァ ァ ァ...!
...仕留め損なっていたか。
左腕が欠損している所からして咄嗟に防ごうとしたのだろうが、
プラズマシェルの爆破によって胸部は大きな半球形に陥没している。
零れ落ちる体液と共に内蔵が垂れ下がり、斬り落とされた尻尾が
転がっている足元の床を溶かしていた。
プラズマシェルを発射するには数分間掛かる。
それなら、コンビスティックでトドメを...ん?
シャ ア ァ...ァ ァ...
ズ ゴ ォ ォン...!
...死んだ...?
その場に崩れ落ちたクイーンに訝りながら僕はガントレットを
操作し、生体感知センサーで本当に死んだのか確認する。
...臓器など筋肉繊維は動いていない。心拍数も0だ...
だが、僕は到底死んだとは考えていないのでコンビスティックを
投擲し、クイーンの頭部に突き刺す。
ドシュッ...!
深々と突き刺さっているが、それでも動かない。
手元に戻ってくるようコンビスティックを誘導し、掴み取ると次に
再起動したハンドプラズマキャノンを撃つ。念入りに3発だ。
ド ガ ァ ァ ァ ア ア ンッ!!
頭部に命中し頭部の一部が欠損し衝撃で体が揺れるも、やはり動く
気配はない。
...本当に死んだのか...?
これ以上確認する手立てはないので、僕は我が主神に通信を
入れようとした。
...ギ シ ャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア!!
『っ...!』
次の瞬間、クイーンが巨体を起こして驚異的な勢いで迫り来るのに
気付く。
咄嗟にハンドプラズマキャノンを構え、撃とうとする。
しかし、鋭い感覚が右腕に走った途端に撃つ事が出来なかった。
ズ パ ァ ァ ア ア ンッ!!
『グア゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!』
僕の右腕が切断されてしまったからだ。
肘より上の上腕部の中央から断面が見えており、大量の血が噴き出て
いる。
激痛に耐えつつ何が原因なのか、それを理解する前に答えは目の前に
あった。
揺れ動く鋭い刃を持つ鞭の様な物体。クイーンの尻尾。
そう...クイーンが右手で掴み、尻尾を振るってきたんだ。