【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 締め付けられているのは上腕部のみで前腕は動かせる。

 それを確認し、僕は腰に固定してあるカプセルを取ろうと、手探りで

 掴む。

 溶解液の入ったあの容器だ。

 クイーンは身動きが取れないと思っているようで、悠々と歩きながら

 僕に近付いてくる。

 その間にカプセルを取り外せたので、クイーンが目の前まで来るのを

 待った。

 やがてクイーンは目の前まで迫り、更に顔を近付ける

 僕は微動だにせず、カプセルの蓋を開封して奴が口を開くのを... 

 いや、笑うのを待った。

 

 フシュゥゥーーーッ...

 

 クイーンは口を閉じたまま唇を震わせて、怒りを露わにしているように

 見えた。

 我が子を殺した仇が情けなく捕まっている。

 賢いのなら舌舐めずりをして、嘲笑うくらいはするはずだ。

 笑え...笑ってみろ、この化け物...!

 

 ギャ シャ ァ ァ ァ ァ ア アッ...!

 

 口が開かれた瞬間、僕はカプセルを足元へ落とす。

 コツンッとインサイドキックでカプセルを蹴り、クイーンの口内へと

 放り込んだ。 

 カプセルはインナーマウスに咥えられるように挟まり、クイーンは

 それに驚いたのか顔を僕から離した。

 すると、突然顔を左右に激しく振るって暴れ始める。

 口内から白煙が噴き出ているのが見え、どうやら溶解液が溢れており、

 インナーマウスを融解していっているのだろう。

 上手くいった。戦利品を獲得出来なくなるのは残念だが、これで... 

 

 ミシミシミシィ... ベキッ...!

 バ キャ ァ アッ...!

 

 ...自らインナーマウスを噛み千切った... 

 適切な言葉ではないが、あれは自切だ。

 生物が生命活動において、主要ではない器官を切り離す事で外敵から

 身を守るための行為。

 まさか、最後に残っている武器を捨ててまで生に執着しているとは

 思ってもみなかった。

 僕は完全に予想外の行動に驚いていたが、すぐに次の手として全身に

 巻き付いている尻尾の余分となっている部分へ照準を合わせてから

 プラズマバレットを連射し、千切ろうと考えた。

 最初に狙った箇所を重点的に撃ち込んでいき、やがて外殻の破片が

 飛び散った所で僕は後方へ跳び上がる。

 だが、亀裂が甘かったのか引っ張られても引き千切れなかった。

  

 ギャ シャ ァ ァ ァ ァ ア アッ...!

 

 バ ギ ィ ィイイッ!

 

 クイーンは僕を引き寄せ、踏み付けてくる。

 何度も踏み付けられた事で尻尾の棘が皮膚に突き刺さる痛覚に襲われ、

 鎧が軋む音と同時に、僕自身の骨格も軋む音が聞こえてきた。

 

 パキィンッ...!

 

 更には肩から頭付近を踏み付けられた際、割れる音が耳元から 

 聞こえたと思えば、亀裂が入ったような視界となる。

 ヘルメットが重量に耐えられずゴーグル諸共、外装が破損して

 しまったようだ。

 これ以上は、マズイ...!

 僕はクイーンの足が上がった瞬間を狙い、体を捻らせ前方へ転がる。

 

 フォシュンッ! フォシュンッ!

 

 限界まで出力を上げプラズマバレットを頭部に集中砲火し、僅かでも

 怯ませようとした。

 5発撃ち込み顔を上げて怯んだ所で尻尾を掴んでいる手に狙いを

 定めた。

 だが、首が曲がる程の勢いで投げ飛ばされた僕は宙を舞って顔面から

 床に叩きつけられ、更に反対側へも投げ飛ばされる。

 今度は後頭部が床に打ち付けられた激しい衝撃で脳震盪に陥る。

 視界が霞んで歪み、今自分が倒れているのか投げ飛ばされているのか

 状況判断がつかなくなる中、異様に長く宙に浮く感覚となった。

 

 ガ シャ ア ァ ァ ァ ア ア ア ア ンッ!!

 

 全身を衝撃が襲うのと同時に浮く感覚が消える。

 一体何が起きたんだ...?

 両目から見える視界の明暗が異なっており、今自分がどこに居るのか

 上半身を起こそうにも感覚が全くなくなっている。

 首さえも左右に動かせず、それと耳鳴りがして煩い... 

 ...ちくしょう...これで終わるしかないのか...

 ...右手がないから、アイトラッキングデバイスで自爆装置を

 起動させよう。

 その前に皆を聖地から出るように...

 っ...し、っかり...しろ...意識を、保、て...

 

 ―...!...っ...!

 

 ...?...この声は...それに...この、温かい感触は...?

 

 ―...して!...ぇ!...し...かりして...!

 

 ...ティオナ...?

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 捕食者がクイーンに為す術なく、踏み付けられている光景に

 ティオナは口元を抑えて絶句していた。

 ベートや自分、食人花と魔石によって蘇り強化されたオリヴァスを

 圧倒してきたあの捕食者が打ちのめされているのが信じられなかった

 からだ。

  

 「...っ!(やっぱり助けに行かないと...!)」

 

 青白い光弾を発射し、抵抗する捕食者だったが幾度も投げ飛ばされて

 しまっているのを見て、そう決意したティオナは窓際から離れて助走を

 つける。

 背後の閉ざされた扉ではなく、窓を突き破って捕食者の元へ向かおうと

 しているようだ。

 不可解な事にネフテュスは止めようとはしなかった。

 ティオナは観戦室の端まで移動すると意を決して発足する。

 5、4、3Mと窓際まで迫った時だった。

 

 ガ シャ ア ァ ァ ァ ア ア ア ア ンッ!!

 

 「っ!?」

 

 突如として窓が割れた。いや、何かが突き破って割れたのだ。

 ティオナは咄嗟に立ち止まろうと足腰に力を入れ、窓を突き破ってきた

 それを受け止めつつ後方へ突き飛ばされる。

 背中から倒れ、床を擦った痛みを堪えつつも急いで上半身を起こした。

 

 『グ、ぁァ...』

 

 その正体は捕食者だった。

 尻尾が巻き付いている状態であり、僅かに呻き声を漏らしている。

 どうやら青白い光弾が命中し、裂傷部から尻尾が投げ飛ばした際の

 遠心力で引き千切れ、ネフテュスとティオナが居るこの観戦室へ

 飛ばされてしまったようだ。

 ティオナは重なるように乗っている捕食者を下ろし、床に寝かせると

 必死に呼び掛ける。

 

 「しっかりして!ねぇ!しっかりしてってば!」

 

 ティオナの呼び掛けに捕食者からの反応はない。

 破損したヘルメットの亀裂からは目元が覗いており、出血で赤く

 血塗れているのがわかった。

 やがてガクンと顔が横を向き、捕食者は動かなくなる。

 ヒーラーとしての知識が薄いティオナでも瀕死であり、このままでは

 死んでしまうと、そんな予感を抱いて焦るティオナはネフテュスに

 手当てをするための回復薬はないのか問いかけようとする。

 しかし、ネフテュスが近付いて来て亀裂に指を入れ、捕食者の目に

 自身の右手の指を当てる様子を見て戸惑った。

 

 「...」 

 「何、してるの...?」

 「...今、この子は彼女に会っているわ...」

 「え?...誰に?」

 

 ティオナの問いかけに、ネフテュスは目を瞑ってそのままの状態で

 答えた。

 

 「...彼女に...」




笑えよって言ってる台詞はまんまジョーズオマージュです。
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