【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 神の宴の主催者であるガネーシャが眷族と共に演説を行なっていた。

 ガネーシャコールが起きて盛況となっている中、ロキは周囲にいる

 神々の顔を伺いながら、捕食者について何か知っていそうな男神や

 女神を探していた。

 しかし、どの神々もめぼしいといった事はなく会場を歩き回るしか

 なかった。

 

 「おお、ロキじゃないか」

 「ん?よぉー、ディオニュソス。来とったのか」

 「ああ、せっかくだから情報収集もかねて足を運ばせてもらっているよ」

 「あらぁロキ。お久しぶり、元気にしていた?」

 「おおぅ...デ、デメテルもいたんか...」

  

 ディオニュソスに続き、デメテルも嫋やかに声をかけてきた。

 その豊かな胸が揺れる度にロキは怯んで、震えながら思えず下がって

 いった。

 

 「あ、な、なぁなぁディオニュソス。ちょっと聞きたい事があるんやけどええ?」

 「何だい?私の答えられる事なら話すよ」

 「ほな...うちの団員についての噂...あれで何か心当たりとかあらへん?」

 「あら、何か問題でも起きているの?」

   

 ロキが質問してきた内容に、デメテルは首を傾げる。

 商業系のファミリアはあまりギルドへ赴く事は少ないため、

 風の噂なども届かないからだろう。

 それを聞いてディオニュソスは自身の把握している範囲で説明を交え

 デメテルに教えた。

 

 「何でも、凶狼の二つ名を持つロキの子供が何者かに襲撃されて重傷を負ったんだとか。

  今、オラリオではその話で持ちきりみたいだよ」

 「まぁ...それは大変な事が起きていたのね...その子は大丈夫なの?」

 

 慈悲深くデメテルはベートの安否を気遣った。

 ロキは心配そうにしているのを見兼ねて、笑いながら答える。

 

 「大丈夫やで。あんくらいでくたばる奴ちゃうからな。

  それにベートが相手側を罵倒したんやし、自業自得としか言えへんわ」

 「そうなの...だから、その相手を知るためにここへ来たのね」

 「そゆこっちゃ。で、その相手なんやけど...」

 

 ロキはこれまでフィン達から教えてもらった相手の情報を元に、

 ディオニュソスに問いかけた。

 ディオニュソスは顎に手を添え、数分考えていたが首を横に振る。

 

 「いや、すまないがそういった魔道具を所持しているファミリアについては、何もわからない。

  ...もしかすると、イヴィルスの」

 「それはないな。せやったら止めようとしてたティオナごと問答無用で殺してたやろし。

  フィンも違うとはっきり言うとったわ」

 「そうか...しかし、自分の子供を傷付けられたという割りにはとても冷静だね?」

 「言うたや~ん、自業自得って。せやから、報復とかそういうのは間違ってもせえへんで」

 

 そうディオニュソスの顔を見ながら答えている中、ふと、ロキは背後に

 見える柱の貼り紙に目がいく。

 ディオニュソスもそれに気付き、3日後にモンスターフィリア祭が

 開催されると言った。

 目玉となるモンスターをテイムする見世物を邪魔しないよう、

 念を押すためにガネーシャは神の宴を開いたのだという。

 

 「ロキはフィリア祭には行かないの?」

 「ファミリア内のゴタゴタがまだ収まってないから行かれへんねん。

  はぁぁ~~~...ホントならアイズちゃんと行きたかったんやけどなぁ~」

 

 そう落ち込みながら重たくため息をつき、近くを通り掛かった

 ウェイターからグラスを手に取る。

 一口飲んでいると、目線の先に見知った女神2柱を見つけロキは

 無邪気な子供のように笑みを浮かべる。

 ディオニュソスとデメテルに別れを告げ、その場から去って行った。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「おーい!ファーイたーん!ドチビーー!!」

 「ロキ...何しにきたんだよ、君は」

 

 ヘファイストスと会話をしていたヘスティアは、ロキが近寄ってくると

 眉根を寄せながら両手を腰に当てる。

 二の腕に引っかかる青い紐が上に引っ張られ、小柄な体とは裏腹に

 豊満な胸が寄せられる。

 ロキは2人の元へ辿り着き、口を開くなりヘスティアを見下しながら答える。

 

 「何や理由があるから来たに決まってるやんか。ま、ドチビやのうてファイたんにやけどな~?」

 「...!...ッ」

 「...すごい顔になってるわよ。...それで、私に用って...あの噂について?」

 「おっ!話が早くて助かるわ~。さっきディオニュソスとデメテルにも話しは聞いたんやけど...」

 

 目を見開いて、青筋がハッキリ立つほど激怒寸前のヘスティアを余所に

 ヘファイストスは問いかけた。

 噂については知っているようで、真剣な眼差しをロキに向けている。

 ロキはディオニュソスと同じように捕食者について問いかけた。

 ヘスティアは捕食者の正体よりも、ベートが殺されかけたという事に

 驚き、対照的に冷静なヘファイストスは武器の解析をする。

 

 「...溶かされない武器は確かに創れない事はないけど...

  投げ飛ばして自由自在に操ってから手元に戻ってくる武器なんて正直、私でも

  創れないわね。そういうのは魔法の類いに近いから」

 「マジか!?ファイたんでも無理やとしたら...どこの誰が創った武器なんやろなぁ」

 

 ロキは予想外の答えに驚く。

 武器に関して右に出る者はゴブニュだけとされる、ヘファイストスの

 腕を持ってしても、創り出す事は出来ないと言われたのだから

 当然ではある。

 ここへ来て頼みの綱であったヘファイストスの答えを聞いて、ロキは

 打つ手なしと、ほぼ確定したようでガックリとした。

 そんなロキにヘスティアが問いかけてくる。 

 

 「けど、いくら馬鹿にされたからって君の子供を殺しそうにしたのは...

  許されないんじゃないのかい?」

 「それディオニュソスにも言われたんやけど、ベートの自業自得って事で収めるつもりや。

  こっちから手を出して返り討ちに遭うなんてアホみたいな事、ウチはせんで。

  ドチビなら間髪入れずにギャンギャン吠えて訴えそうやな~。

  まぁ、ファミリアが潰された挙句、強制送還されそうやけど」

 「な、何を~~~~~!?

 「やめなさいよ。もう...」

 

 2人が取っ組み合いが始め、ヘファイストスは頭を抱えてため息つく。

 周囲の神々はどちらが勝つか賭け始め、再び賑わい始める。

 

 ...ヒタヒタ

 

 ぞわっ...

 

 「...あん?」

 「こ、この感じは...?」

 

 その時、凍り付くほどの冷気が漂ったような悪寒が会場に居る全員の

 背中に走る。

 取っ組み合っていたヘスティアとロキ、ヘファイストスも気づいて

 動きが止まっていた。

 

 「...2人とも、落ち着いた方がいいわよ」

 

 そう告げたヘファイストスは固唾を飲んだ。

 ロキは掴んでいたヘスティアの頬を離し、ヘファイストスが視線を 

 向けている方を見る。

 

 「元気そうね。ヘスティア、ロキ。それにヘファイストスも」

 「...ネフテュス先輩」


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