【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「ティオナァアアアアアッ!!!」

 「うひゃぁああっ!?」

 

 早朝、ティオナはその叫びに飛び起きた。

 寝起きで混乱するが、すぐにティオネが叩き起こしたのだと察する。

 

 「もう~~~!何なのさティオネ!朝っぱらからそんな大声で」

 「緊急招集よ。例の捕食者について、わかったみたい」

 

 それを聴くや否やティオナは急いで部屋を飛び出した。

 ドアが壊れそうな勢いだが、そんな事を気にする余裕もないようだ。

 ティオネは慌ててその後を追いかける。

 食堂に着くと、既にロキ・ファミリアの全団員が集まっていた。

 よく見ると、ベートもベッドの上に寝かされたまま運び込まれている。

 怪我人を強引にここへ連れて来たという事は、余程何か重大な事が

 あるに違いないとティオナは思った。

 後から追いついたティオネに注意されつつ、空いている席を見つけて

 そこに座る。

 隣にはナルヴィとリザが座っていた。

 しばらくすると、フィン、リヴェリア、ガレスとロキの4人が前に

 立った。

 

 「皆、早朝から集まってもらってすまない。ゆっくり休みたかった者もいるだろう。

  だけど、重大な事を伝えなければならないという事で集まってもらった。

  それじゃあ、ロキに代わるよ」

 

 フィンが一歩下がり、ロキは前に出る。

 普段、瞳が見えない程に細くしている目が、開いており赤い瞳が

 団員達を見ていた。

 それに対し固唾を飲む者、息を呑む者が見受けられた。

 

 「皆、おはようさん。挨拶はこれだけにしとくわ。...もう本題に入るけどな。

  ベートが散々馬鹿にしとった捕食者なんやけど...まだ正体まではわからん。

  せやけど、その捕食者の主神がやばいっちゅう事がわかったわ」

 

 ロキは一息つき、名前を口にする。

 

 「ネフテュス先輩言う、最も古くから天界に存在してた女神様や。

  前まで居ったオシリス・ファミリアのオシリスの妹さんで2番目の嫁さんで、死んでもうた子の眠りと来世を守ってる...神の中でホンマにめっちゃ偉い方やねん。

  旦那は還ったからまた冥界を支配してると思うし、1番目の嫁さんの姉のイシスはんもデメテルに豊穣とはなんぞやを教えた先生っちゅう、もうとにかくすごいんや」

 

 畳み掛けるようにロキはネフテュスとその親族について説明する。

 天界について団員達は何1つ認知していないが、冥界や豊穣など人に

 とって非常に重要な意味を持つ概念に関わる神々なのだという事は

 理解出来ていた。

 そして、ロキは眉間に指を当て、重苦しそうな様子で続けた。

 

 「ウチも天界ではごっつお世話になったんや。ウチだけやない、他の神もな。

  まぁもう面倒見が良くて良くて...母ちゃんみたいな人やったわ」

 

 団員達は騒然とする。

 ロキが先輩と付け、母親とも捉えていた女神の眷族に、喧嘩を

 売ってしまったのだと理解したからだ。

 リヴェリアが叱咤すると団員達はすぐに静かに鳴り、ロキは続けた。

  

 「めっちゃ幸いな事に怒ってへんかったわ。

  しかも、まだ怒ってる子供にベートを殺すなって注意もしてくれるみたいや。

  まぁ...その子供次第みたいやけどな。

  言われんでもわかると思うけど、ベートは危機的を通り越して絶体絶命で次にまた会うたら、今度こそ生皮剥いで吊るされるみたいやで」

 「!...!?。!...っ!」

 

 そう言われたベートは何か叫んでいるようだったが、全身を包帯で

 未だに巻かれているため上手く話せないようだ。

 しかし、そもそもベートの体は既に治ってはいるのだ。何故、包帯で

 巻かれているのかというと、理由はこうだ。

 あの時の雪辱を果たそうと、ステイタスを向上させるために

 ダンジョンへ向かおうとしていた。

 こっそり自室から抜け出したところを団員に発見され、先回りしていた

 リヴェリアの拳骨で意識を刈り取られ、自室へ送り戻された。

 その際、また抜け出さないよう包帯で全身を巻いたままにする事と

 なったのだ。

 ロキは文句を言っているであろうベートに近づき、目線を合わせる。

 

 「ええか、ベート。...ウチは皆が大好きや、もちろんお前もな?

  せやからお前をこっから逃そうとも考えてたんやで」

 「...!?」

 「見す見す見殺しなんて事は絶対にしとうないから、ウチはそうしよう思うたんやけど...

  フィンとリヴェリアがウチと一緒に謝りに行くって提案をしてきてな?

  先輩もさっき言うた通り怒ってはなかったけど、謝りには行かなあかんねん。

  それで、どうなるかわからん...でも、試してみるしかないわな。

  上手くいけば、事を収められると思うし、お前もここに居させられるんや」

 「ロキ。もし...もしも失敗したら...?」

 

 そう言ったのはティオナだ。

 誰もがそれを聞きたかった事であり、全員を代弁して、ティオナが

 問いかけたのだった。

 

 「...ぶっちゃけ出たとこ勝負やから、わからん。けど、やるしかないんや。

  ...そういう訳で!皆、今日も気張っていこうやで!おぉーーーー!!」

 「「「「「お、おー...」」」」」

 

 片腕を高く掲げ、団員を鼓舞する。

 しかし、団員達は不安げな面持ちで答えるしかなかった。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ティオナ、そう言ってくれてありがたいんだけど...

  今回は僕らでいかないとダメなんだ。

  ロキ・ファミリアのトップとして、他の者を頼りにするのは情けないだろう?」

 「...そっか...じゃあ、お願いがあるんだけど、いい?」

 「何だ?」

 「私からも、皆を助けてくれてありがとうって...伝えてほしいの。

  あの時はお礼を言えなかったから」

 「そうか。わかった、必ず伝えておく」

 

 ティオナの要望を聞き入れ、3人は黄昏の館を発った。

 目指すは、様々なファミリアの活動を管理しているギルドだ。

 そこでまず始めに、ネフテュス・ファミリアのホームがどこにあるのか

 探す事から始めるそうだ。

 3人の後ろ姿が見えなくなるまで見送り、ティオナは踵を返しホームへ

 戻ろうとする。

 しかし、立ち止まると数秒何かを考えて振り返り、その場から

 駆けようとした。

 だが、ネックレスが喉にめり込みながら動きを止めさせられた。

 

 「ぐべっ!?」

 「ダメって言ったでしょ。団長の命令はちゃんと聞きなさい」

 「ティ、ティオネ...」

 「私だってすぐにでも追いかけたいわよ。でもね...

  団長達に迷惑をかけるのは良くないでしょ?」 

 「...うん」

 「じゃあ、今から私と付き合いなさい。

  ダンジョンに行って、体を動かせば気が紛れるわよ?」 

 「...そうだよね。わかった、行こっか!」  

  

 そう答えるティオナは明るく振舞っているように他者からは見える。

 しかし、姉の目は見逃さなかった。

 顔を背けた際に覗かせた、悲しそうな顔を...

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 中層、17階層の広間である嘆きの大壁から生まれたゴライアスが前に

 足を出した。

 その瞬間、地面から少し浮いた状態で赤く光る線が交差するように

 移動する。

 

 ジュッ ジュッ

 

 グオォオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 ド ダ ァ ア ア ア ア ンッ !! 

 

 赤く光る線はゴライアスの足首を通過すると、一瞬して切断した。

 両足を失ったゴライアスは前のめりになりながら転倒する。

 その巨体が倒れた事で、地面の石肌が砕け散り土煙も立ち込めた。

 

 グオオォオオオオオッ...!!

 

 ゴライアスは咆哮を上げながら両手を地面につき、立ち上がろうと

 している。

 すると、ゴライアスの口内が赤く照らされた。

 

 ピ ピ ピ... ピロロロロロッ!

 

 バシュウッ! グチィッ...!

 

 音に気付いたゴライアスだが飛翔してきた物体が口から入り込み、

 喉の奥に突き刺さる。

 ゴライアスは吐き出そうにも、突き刺さった物体は抜ける気配はなく

 徐々に熱を帯び始めた。

 そして口内、鼻腔、眼窩、外耳道の顔の穴から激しい光が零れ、喉の

 奥で大爆発が起きた。

 

 ドオオオオオオオオオオオンッ...!!

 

 ドチャア...! ドクドクドク...

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 喉の根元から上が根こそぎ粉々になった。

 首を失った巨体の首からは鮮血が滝のように流れて出てきている。

 新開発したヘビー・バーナーの威力を試してみたが...

 とても良い性能だ。

 

【挿絵表示】

 

 僕の背丈よりも大型の兵装となるが、標的へのロックオンを早く行え、

 ミサイルの発射速度、爆発による殺傷力も申し分ない。

 僕はその巨体に近づき、背中の上に乗るとバーナーで足元を撃った。

 

 フォシュンッ! フォシュンッ!

 

 バチュンッ! バチュンッ!

 

 砕けた細かい肉片が飛び散り、巨大な石を見つける。

 今回は空間が崩れるといった事態にはなっていないので、焦らず石を

 取り除く事が出来た。

 石を失った巨体は皮膚の一部を残して塵となって消える。

 この皮膚は必要ないため、ここに置いていく事にし僕は更に下へ

 潜っていった。

 

 「ん?...どうなってんだこりゃ?ゴライアスが居ねえぞ?」

 「おいボールス、これ見ろよ!ゴライアスの皮だ!それもかなりデッケぇぞ!?」

 「何ぃ?じゃあ、どっかの誰かが倒したってのか?

  ...けど、なら何で皮置いていったんだ?かなりの値段で売れるってのに」

 「そ、そんなの俺にだってわかんねぇけど...こんなデケェのを放っておくのは勿体ねぇし...」

 「そうだよな...んじゃ、これは...」

 「「「「たまたま拾ったって事にしよう」」」」




一部書き足しましたが、ヘビー・バーナー(本来の呼び方はヘピー・プラズマキャスター)を知らなかったので初見マジでデカくて、え゛?ってなりました。
でもってもう131話といってますが挿絵入れました。
下手なのはご了承いただきますようお願い申し上げます。

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