【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
ズ ズ ズ ズ ズ...!
51階層、そこで全身を蠢かせながら地面を這うモンスターがその巨体を擡げた。
ヴィルガと酷似している容姿だが、頭部が人の顔でその下の上半身が人の女体となっている。
20Mは優に越えるであろう巨大なモンスターは巨体を擡げたまま、洞窟の天井を見上げた。
その巨大なモンスターの周囲には複数のモンスターが逃げ回っている。
すると、4枚生えている羽の内、両腕部となる羽を突き出し天井目掛けて飛び上がるように体を上へと伸ばす。
ド ゴ ォオン゙ッ!
ガリガリ...! ガリガリ...!
羽の先端にある突起を天井に突き刺し、扉をこじ開けるかのように穴を空けようとし始めた。
天井を形成していた岩肌が削れていき、巨大な岩が落石となって降り注ぐ。
逃げ回っていた複数のモンスターはその落石によって押し潰され、濛々と土煙が巻き上がった。
強引に体を天井へ押し込んでいき、そのまま上がっていけば上の階層である50階層に辿り着く事だろう。
既に地中を潜っていく振動が、地鳴りと共に地震動となって50階層の地面を揺さぶっていた。
...カカカカカカッ...
その様子を伺いながら、誰かが低い顫動音を鳴らしている
――――――――――――――――――――――――――――――――
あの蟲は戦利品には出来ないか、そう考えていた。
だが、血抜きが面倒で飾れはしないと、スカ―に言われた。
それなら撲滅する方法で狩る事にしよう。
ガントレットのタッチパネルを指で沿りながらヘルメットから視える
視覚装置を操作する。
ジジジ... ジジジ... ジジジ...
電磁波を視覚化する赤外線に切り替え、蟲の全身を隈無く観察する。
ヘルメットから視て、蟲の胸部で様々な色の光線を残しながら浮かび
上がっているのが確認出来た。
急所はあそこだ。
ヴァルキリーからヤウージャ・ボウを受け取り、ボウストップにある
ボタンを押すとガントレットに接続される。
ヘルメットから3本のレーザーサイトを照射し、蟲の胸部に狙いを
定めた。
本来ならバーナーで使うが、この弓で狩る時でも使える。
蟲の動きが激しくなり、徐々に上半身が天井へ入り込んでいくが、
ここで焦ってはならない。
事前にヘルメットの内部には、音が聞こえてこないよう防音機能で
周囲の音を遮断している。
恐らく防音を切れば、騒音がこのフロアに響き渡っていると思われる
ため、気が散らないよう、ヤウージャ・ボウを使う時はいつもそうして
いる。
照準が一瞬でも止れば、いつでも矢を放てるようストリングを限界まで
引いた。
バーナーに蓄積していたプラズマをハンドルからリムへと流し、鏃に
収束させる。
プラズマが収束していくと鏃が発光し始めた。いつでも放てる。
...今だ。
バシュッ ゥ ウ ウ...ッ!
誰かが放った青白く光る矢は空気を斬り裂きながら一直線に巨大な
モンスターへ飛んでいく。
50階層へ穴を掘り進む巨大なモンスターはそれに気付いていない。
そして、3点のレーザーポイントに照らされている胸部を矢が
突き刺さる。
体内までめり込んだ矢は魔石を砕きつつ、巨大なモンスターを
貫通した。
この矢は中身が筒状となっており、ノック部分の穴からプラズマを
動力とした推進力で威力が倍増され、速度も落ちる事なく獲物を
撃ち抜けるのだ。
洞窟の壁を這っていたデフォルメスパイダーの胴体ごと矢は貫いて、
そのまま壁に突き刺さる。
魔石を撃ち抜かれた巨大なモンスターは天井にぶら下がったまま
停止した。
ブクブク... ブクゥ
やがて見る見るうちに上半身が細くなり、下半身だけが膨らみ始める。
腐食液が下半身へと溜まっていっているからだった。
破裂すれば51階層には腐食液の雨が降り注がれるだろう。
ダダッ... ダッ ダッ ダッ ダダッ...
そうなる前に脱出しようと、上層へ戻る通路を登っていく複数の足音が
鳴り響いた。
足音が聞こえなくなり、膨らんでいた巨大なモンスターの下半身が
一気に膨れあがる。
ブツッ
ド パ ァァァ ァァァ アアア ンッ! !
下半身が爆ぜ、雨どころか津波のように51階層を大量の腐食液が
覆い尽くした。
逃げ遅れた様々なモンスターはその腐食液の津波に飲み込まれる。
腐食液は上層へ続く通路まで上り詰めてきたが、勢いが収まるに連れて
51階層へ逆流していく。
それを確認した透明な飛行物体は50階層に続く通路を飛翔していき、
降下していくと誰かの肩の装置に収納される。
あの腐食液が消えるまで時間がかかると判断し、地上へ戻る事にした。
不満はない。また来ればいいだけなのだから。
次はあの先にも向かおうと決心し、その場を後にした。