【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
ガィンッ! ガィンッ! ガィンッ!
マザー・シップ内にある鍛冶場。
そこがビッグママの担当している持ち場だ。
一般のスミス系ファミリアでは、ハンマーで得物となる金属を叩き、
熱しられた鉄を専用のトングで掴むなどするが、ここでは全く異なる
製造方となる。
フォージングプレスマシンで一瞬にして圧力をかけ硬質な素材を頑強に
する。
そして一度溶かし、モールドに流し込むと加工する。
ただし、小型の武器に関してはハンマーやトングを使用するそうだ。
その素材となる鉱石は母星でしか採取出来ない物質で、羽の様に軽量で
圧力を掛ければ掛けるほど、より硬質な素材を生み出す。
この星に現存するどの硬質な物質で作製された武器など容易に切断
出来る。
アダマンタイトも例外ではない。
以前に拾った武器を解析し、アダマンタイト製だと調べてみて
エルダーソードを試すために斬った事があるからだ。
バチィンッ! バチィンッ!
台に乗せられたパーツが溶接される度に火花を散らす。
衝撃で破損しないかチェックが完了し、ビッグママは僕に新造した
武器を渡してきた。
僕はそれを受け取り、お礼の意味を込め眉に拳を上げた。
カカカカカカ...
返事としてビッグママは鳴いた。
ビッグママの名前の由来は我が主神曰く、大柄で気丈夫な母親な
感じがするから、だそうだ。
皆に本来、名前は無かった。種族の名前すらも。
しかし、我が主神が降り立った事で名前を与えられた。
僕も一度は改名を考えたが...エルダー様に、最初から与えられた
名前を捨てるのは自らの意思をも捨てる事だと諭された事がある。
それに我が主神も僕の名前をお褒めくださったので、考え直した結果、
改名は止めた。
僕はそれを腰に引っさげる、早速試すためにダンジョンへ向かう事に
した。
既に太陽が真上に来ていると思うが...別のルートから向かえば
問題ないだろう。
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「アーディは既にフィリア祭の警備に向かったぞ。
恐らくだが、噴水広場の方に居るはずだ」
「そっか...わかった。じゃあ、探してみるよ」
モンスターフィリア祭の当日に、ティオナはアーディに会うべく
ガネーシャ・ファミリアへ赴いた。
その前日はガネーシャ・ファミリアが本日の概要についての会議や
準備に追われていたので話せなかったため当日となってしまったのだ。
しかし、今しがたアーディが居ないという事をシャクティから聞き
探す事となった。
「2日前に様子がおかしかったんだ。それで話を聞いたんだが...
妹が失礼な態度を取ってしまったようだな。
すまない、ティオナ・ヒリュテ」
シャクティは妹の不心得さにティオナへ謝罪した。
「...ううん。アーディの気持ちもわかるから...
この後、叱ったりはしないであげて?」
「そうか...わかった。だが、友人に対する気持ちがなってない事は姉として許せないな。
...アイツを助けるためにイヴィルスのシンパ達を殺めた、そのネフテュス・ファミリアに対してもあんな態度を取らせないようにしなければ」
「うん。それだけは絶対に言っておいてね?...アーディまで殺されそうになるなんて嫌だもん」
そう答えるティオナにシャクティは頷き、事前にファミリア内での
会議で任されている持ち場へと向かう。
ティオナもシャクティを見送ると、一先ずティオネ達が待つ待ち合わせ
場所へと向かった。
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「ニャア~~!シルのうっかりドジには呆れるニャ!」
「お土産買うためにお財布が要る事くらいわかるはずニャー!」
「アンタ達ね...シルだってわざとやった訳じゃないんだから」
豊饒の女主人にて、シルに対しアーニャとクロエはカウンターを雑巾で
拭きながらその怒りを、汚れにぶつけている。
ため息をつくルノアが宥めるも、アーニャとクロエは不満が
募るばかりだった。
いつその不満が爆発し誤って雑巾を投げた事が原因で、窓ガラスを
割りかねないとルノアは心配になる。
そんな時、店の出入口から見知ったエルフの女性が入って来た。
「あら、リュー?今日はフィリア祭の方で警備してるんじゃなかったの?」
「そうなのですが、私とした事が忘れ物をしてしまいまして...」
「それなら丁度よかったニャ!はい、これ!」
「これは、シルの財布ですね...忘れて行ってしまったんですか?」
「ご明察ニャ!という訳で、リュー頼んだのニャ」
リューは不本意だとは思いつつも、シルのために届けると決めて
忘れ物を手にすると豊饒の女主人を後にした。
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とある店内にアイズを連れ、ロキはフレイヤと話していた。
話している内容は当然ネフテュスについてだ。
7年前から、オラリオへ居たという事実を知っていたのかどうかを
確かめるためだ。
「ホンマに知らんかったんか?お前なら絶対知ってると思うとったのに...」
「知っていたなら...私もその場に居たはずよ?ネフテュス先輩に失礼だもの」
「そりゃそうやな。まぁ、先輩の子供も姿が見えへんしネフテュス先輩自身、この間初めて姿を見せたもんなぁ...」
...そもそも、ホンマに7年前に下りて来とったんか...?」
フレイヤが嘘をついていないとわかり、ロキはグラスに注いだワインを
嗜む。
一方でフレイヤは一口も飲まず、グラスをゆっくりと揺らして空気に
触れさせ香りを楽しむ。
「...それで、ネフテュス先輩の子供が関わらないと言ったのね?」
「ああっ、そうやねん。先輩とは話せるみたいやけど...子供は無理やな。
...言うとくがフレイヤ」
「私が先輩の子供に手を出すと思ってるのかしら?」
そう微笑むフレイヤは、不思議と穏やかに見えた。
ロキはグラスを置き、後頭部で腕を組んで枕にする。
「...訳ないやろな。お前もネフテュス先輩には頭上らへんやろうし」
「わかってくれて嬉しいわ。ちなみに、これ何だかわかる?」
「もうええもうええそれは~!先輩がくれたすごく素敵なプレゼントやろ!
天界で散々聞かされ見せられたからわかっとるっちゅうね~~ん」
フレイヤは幼女のように喜々として身を乗り出しながらロキにそれを
見せつける。
それを見るなりロキはうんざりした様子で仰け反りながら見ないように
していた。
それに不満を抱いたフレイヤは座り直すと、目を細めてロキを見つめる。
「何よ鷹の羽衣を取られた事、忘れていないのだからね?」
「それをここで持ち出すか~...つか他にもい~~っぱい貰ろうてるんやから1つくらいええやん...」
「どれも私の大切な物なのよ?それを無くした貴女を殺そうと思ったけど...
ネフテュス先輩が止めたから、今、ここに居るという事を忘れないでね」
「さり気なしに自分もウチの首狙ろうとったんか!怖いわもう~!」
包み隠さずフレイヤが答えた事にロキは思わず、椅子ごと後退りする。
背後にいたアイズは内心戸惑いつつも、表情は変えずにいた。
「...ま、それならそういう事で...ネフテュス先輩に迷惑かけるんやないで?」
「それ、そっくりそのまま返すわよ」
「ちぇっ...ほな、勘定はしとくから、ごゆっくり~」
レシートを挟んでいるバインダーを持つと、それを振りながらロキは
出入口へ向かう。
ロキを追う前にアイズはフレイヤに一礼をしてから、後を追った。
「...でも、少しだけ気になるわね...ネフテュス先輩の子供が、どんな子なのか...」
グラスを傾け、ワインを嗜むフレイヤ。
彼女のすぐ横にある、少しだけ開いている窓の外から見える建物。
その建物の屋根が少し歪んだように見えたが、彼女は気付けなかった。
「ロキ、レフィーヤ達の所に行こう?」
「せやな。思ったより話も早よう終わったし、行こか」