【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「まだ残ってたっていうの!?」

 「っ!...もう一度...!」

 「ダメだよレフィーヤ!無理しちゃ!」

 「...私が時間を稼ぐから、レフィーヤとロキを安全なところに」

 

 ド シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュ シュッ!!

 

 アイズが指示を出そうとした瞬間、青白い光弾がどこからともなく

 発射されてきた。

 青白い光弾はヴィオラスの周囲に生えている蔓を地面ごと粉砕して

 文字通り伐採する。

 ヴィオラスが驚く間もなく、景色から突然現れるように何かが

 飛翔してきた。

 

 ヒュ ロ ロ ロロロ ロ ロッ...!

  

 ズパッ! ズパッ! ズパァッ! ズパンッ!

 

 ブ シャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア !!

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 それは以前に50階層で現れた、円盤状の物体だった。

 まるで生きているかのような軌道を描き、縦横無尽に飛び交う。

 ヴィオラスの周囲から新たに生えてくる蔓をも斬り伏せ、根元から

 頭部付近までヴィオラスの体となる太い茎を斬り刻んでいく。

 切り刻まれた箇所からは体液が噴き出し、地面を紫色に染める。

 ヴィオラスは見えない脅威に咆哮を上げ、怯み始めた。

 アイズ達は見た事のない飛翔する物体を見て愕然としていた。

 

 「何、あれ...?」 

 「...!。リヴェリアが言ってた武器だよ!」

 「えっ!?で、では、捕食者がどこかに...!?」

 「居るって事よね。という事は、あの糞花を獲物に選んだって事だわ」

 「ほんなら、巻き込まれん内に離れとこうやで!」

 

 ティオネは推測としてそう言うと、レフィーヤは信じられないといった

 表情を浮かべる。

 レフィーヤのすぐ傍に立っているエイナは何が起きているのか理解

 出来ず、立ち尽くすしかなかった。

 少女を肩車しているロキは、その場に居る全員に捕食者の武器による

 攻撃に巻き込まれる事を危惧して離れるよう指示を出した。

 しかし、ティオナとアイズは、円盤状の物体が一方的に攻撃する光景を

 目に焼き付けるように見ていた。

 強い。それだけしか言いようがないが、それだけでも十分にこの光景を

 見た者に言えば、伝わるだろう。

 

 「ティオナ!アイズ!何やってるの!?」

 「は、早くこちらに!」

 「あ、ご、ごめん!」

 

 ティオネとレフィーヤの呼びかけに反応し、2人もその場から離れた。

 周囲の蔓が全て駆逐され本体のみとなる。

 円盤状の物体はヴィオラスから離れ、向かい側の建物の屋根へ

 飛翔した。

 そこに居るであろう捕食者が掴み取ったようで円盤状の物体は消える。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ブ シャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア !!

 

 狩りにおいて獲物を弱らせるのは基礎基本として学んだ。

 ただし、無意味に甚振り、嬲り殺す事は掟に反する。我が主神が

 強くそれを、主張していたのをよく覚えている。

 巨大な花はスマートディスクに切り刻まれた事で怯んでいる。

 早速、これの出番が来た。

 僕は腰に引っかけていた新たな武器である、エネルギー・ボアの

 グリップのボタンを押す。

  

 ギュオン

 ジャ ラ ラ ラ ラララ...

 

 グリップの穴からエネルギーで形成された鎖ロープが出現する。

 その鎖ロープの先端が輪となっていて、僕は輪の根元を掴み頭上で

 振り回す。

 狙いを定め、投げ縄のように巨大な花へ投げつけると輪が自動的に

 対象物を捕えるために広がった。

 頭部が潜り抜けると、輪が瞬時に縮小して頭部の根元を締め付ける。

 

 ブ シャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア !!

 

 巨大な花が抵抗しようと首を振るう前に、先程押したボタンの位置から

 グリップの裏側にあるボタンを押し続けた。

 グリップから強力な電流が流れ、鎖ロープに稲妻が走る。

 

 バリ バリ バリ バリ バリィッ!!

 

 電流は巨大な花に到達し、茎や頭部全体を稲妻が包み込んだ。

 グリップは右手で握り、左手は鎖ロープを掴んでいるが電気を吸収する

 機能がガントレットに搭載されているため僕は感電しない。

 巨大な花は顔面を上空に向けて咆哮を上げようとする。

 それを僕は狙っていた。

 

 ミチミチミチッ...!

 

 先端の輪を更に締め付け、強引に引っ張り上げた。

 

 ...ブチィッ!

 

 上に引っ張った事で、斬り刻まれた箇所から引き千切られ上空を舞う。

 地面へ落下する前にグリップのボタンを押し、鎖ロープを収納していく。

 巨大な花の頭部は輪が短く残った首部分を締め付けているため、外れは

 しなかった。 

 鎖ロープを収納し、巨大な花の頭部を僕は手にした。

 

 カカカカカカ...

 

 文句無しの戦利品だ。僕は鳴き声を出す。

 クローキング機能は使用者が身に付けている物も不可視にする。

 戦利品も腰に付ける事で見えなくなった。

 僕は立ち去ろうとした時、背後に誰かが降り立ったのに気づく。

 ...振り向かずともティオナという少女が立っている。それは匂いで

 わかった。

 続けて、彼女の仲間達も集まってきた。

 

 「...そこに居る、かな?」

 

 ...僕は返事をしない事にした。

 彼女だけであれば鳴き声でもゴーグルを光らせて返事をしていたが

 仲間達が居る以上、諦めるしかない。僕は去ろうとした。

 

 「居ないなら、仕方ないけど...ありがとう!また、助けてもらっちゃったね。

  私達と関わりを持たないって事にしてるから、話せないと思うけど...それでも

  あたしは忘れないよ!すっごく感謝してるんだから」

 

 しかし、笑顔でそう伝えてきたのに足を止める。

 ...僕は思った。ここで去ってしまえば過怠となる、と。

 認めた相手に対する敬意無くして、自身の存在意義など無し。

 我が主神から教わった事だ。だから、僕は紙にペンを走らせた。

 しばらくして、彼女が背を向けたと同時に僕は気配を悟られないよう

 近付き、彼女の腕輪に紙を滑り込ませた。

 

 「!?」

 

 彼女が振り返ると同時に、僕は屋根から跳び上がり別の屋根へと移る。

 ...またケルティックやスカーに注意されてしまうかもしれない。

 だけど...後悔はない。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...」

 

 屋根から降りたティオナは、握っている紙を見つめていた。

 やはり捕食者があの場に居たのだと思いながら、後ろで話し合っている

 ティオネ達にバレないよう、そっと折り畳まれた紙を開く。

 

 [勇猛なる少女。感謝の意、受け取る]

 

 そう殴り書きされているのを見て、ティオナは嬉しさから自然と笑みが

 零れた。

 何が書かれているのか不安だったため、安堵した事で薄ら涙も浮かべて

 いた。

 

 「ティオナ?どうして、泣いてるの?」

 「どわぁ!?ア、アーディ...」

 

 今ここで会うと気まずくなるであろう、アーディが不思議そうな

 面持ちでティオナの隣に立っていた。

 他にもガネーシャ・ファミリアの団員達が集まっており、エイナが

 状況整理のため話していた。

 ティオナはバレないよう紙を握った手を後ろへ回し、誤魔化すように

 引きつった笑みを浮かべる。

 

 「そ、そのー...め、目に何か入っちゃって...」

 「え?大丈夫?それなら洗った方がいいよ」

 「だ、大丈夫大丈夫!もう痛くないから...」

 

 そう返すと、アーディは少し疑心しながらも納得してくれたようで、

 それ以上は何も言ってこなかった。

 

 「私達の間では捕食者と、呼んでいます」

 「捕食者...ですか?」

 

 しかし、背後から聞こえてきたエイナの言葉にティオナの心臓が

 縮み上がる。

 

 「そう。素性はわからないけど、ネフテュス・ファミリアの眷族で...

  噂を聞いてないかしら?うちのベートが姿の見えない誰かにボコボコにされたって。 

  その該当人物がネフテュス・ファミリアに所属してるのよ」

 「何か、知りませんか?ネフテュス・ファミリアについて」

 「...あ、あの、ネフテュス・ファミリアは...わ、私が担当をしているのですが...」

 「「「え?」」」

 

 思わぬところで発覚してしまった事実に、ティオネ達はただ呆然と

 する。

 ティオナも同じく呆然としていたが、それよりもアーディの様子を

 気に掛けた。

 

 「...ちょっとごめん」

 

 手掛かりを見つけたと言わんばかりにエイナの元へ歩み寄るアーディ。

 そんな彼女を止める事も出来ず、ティオナはただ頭を抱えるのだった。




スマートディスクかシュリケンでサクッと首を落してサックリ回収して
終わるというコンセプトもありましたが、流石に面白みがないので
新兵器でもぎました。

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