【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
「やっぱお前の仕業とちゃうんやな?あの気色悪い花のモンスターが出てきたんは」
「知らないわよ。そんなの」
何食わぬ顔で答えられて、ロキは深くため息をつきながらテーブルに
突っ伏す。
深夜に呼び出されたフレイヤは、最初こそ少し不満がっていた。
しかし、ネフテュスの眷族がそのモンスターを倒したと話した途端に
興味津々となって話に乗り始める。
「羨ましいわね。ネフテュス先輩の子供が戦っている所を間近で見たんでしょう?」
「戦いっちゅーか...正しく狩猟やったけどな。
あんだけウチの子達が苦労してやっと倒せたのに...怯ませてから首刎ねて終いって...」
そう思い出すロキは、自身の子供よりも桁違いな強さを誇るという事を
実感した。
レベルも不明なためどれだけ強いのかわからないが、とにかく
敵対してしまえば、間違いなく危険だとも改めて認識する。
「その子について知っている事は...ないわよね。
あの人の事だから、手掛かりすら掴ませてもらえないに決まってるもの」
「その通りや。ホンマあの人には敵わんわぁ...
...ところで、自分ネフテュス先輩がホンマ何で下りて来たと思う?
予想でもええから言うてみ」
このままネフテュスの眷族の話を続けていれば、フレイヤの眷族達と
どちらが強いかという話に発展しかねない。
そう考えたロキは、話を逸らすためネフテュスについて問いかけた。
「そうね...オシリスが居なくなったのが丁度7年前で、ネフテュス先輩が来たのと同時になるわよね?
もしかしたら、交代するために下りて来たんじゃないかしら」
フレイヤの言っている事は確かに辻褄が合っている。
7年前に忽然とオシリスは送還され、ファミリアは消滅した。
当時、眷族達も何故いきなり自身の主神が送還されてしまったのか
理由は定かではないと言い、結局謎のままとなっている。
ネフテュスが自身の事を秘密にするために、オシリスも黙って天界へ
戻り、ネフテュスが代わって下りてきたのだと言われれば納得はいく。
しかし、ロキは頷きつつも顔を顰めた。
「けど、そんな単純な理由かぁ?何かこう...パッとせんなぁ」
「あら、じゃあ貴女の考えはどうなの?」
「ウチの予想やと...オシリスに会いに来たからやと思うねん。
けど、入れ違いになってしもうた、とか...」
至極単純な予想にフレイヤは、考えるまでもなく納得した。
愛する夫に会いに来た、それだけの理由でも十分有り得る話だからだ。
しかし、1つの疑問が浮上する。
「でも、それならとっくに天界へ自ら戻っていそうじゃないかしら?
会いに来たのに、どうして残るのかそれが疑問だわ」
「あーせやな、それもそうや。...ほんならわからんやんけ」
ビシッと空を切って、ロキは手を振った。
フレイヤはため息をつき、ワインを嗜んで答える。
「私に言われても仕方ないでしょ...
ネフテュス先輩の事だから、何かしらの理由があるのは間違いないと思うけどね」
「何やろなー、その理由は...」
ポケットに仕舞っている呼び鈴と呼称されたあの装置にロキは触れる。
これを使いネフテュスに直接聞けば、簡単に済む話だ。
だが、それはネフテュスが本当に教えてくれるかどうかで決まるため
ロキはそれから手を離した。
「...まっ、ネフテュス先輩の事はちょっと後にして...
あのモンスターがどっから湧いてくるか、こっちは調べてみるわ」
「そう。頑張ってね」
「...手伝ってあげてもいいわよ?って言ってくるんやと、ちょっとでも期待しとったウチがアホやったな」
「ネフテュス先輩に言われたら、喜んでそうしてあげるわ」
「ちぇっ...」
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僕は檻に閉じ込められていた。
皆が居る前で我が主神とエルダー様に今までの経緯を報告し、
関わらないとされていたファミリアの団員と接触した事も告げた。
なので、処罰が下るまでここで反省するように言われ、ここに居る。
数回に渡り、掟に背く行為をしたのだから当然だと自覚はしている。
...しばらく時間が掛かると思い、寝る事にしよう。
しかし、鉄格子が開けられると誰かが入ってきた。スカーだ。
スカーは隣に座ってくると、僕の処罰を伝える。
僕は重い罰でも構わないと思っていたが、咎められない、とスカーは
言った。
何故なのか問いかけるとスカーは肘をついてきて、こう言ってきた。
そのティオナという少女に好意を抱いたな?と
...僕は自覚がないので、即否定した。強いと認めたのは間違いないが
異性として見てはいないとも加えて。
しかし、スカーは続ける。
自分も最初はそうだった。しかし、レックスとの出会いがあり敬意を
表した事で、番となれた。
正直になった方が自らのためになる、と言った。
...レックスとはスカーの言っている通り彼の番で、僕と同じ人間の
女性だ。
本当の名前ではなく、愛称としてそう呼ばれているらしい。
今は物資の補充の為に母星に向かっており、ここには居ない。
そのレックスとの話と咎められない理由に何の関係があるのか、僕は
意味がわからず、そう問いかけた。
そして、スカーが我が主神に許しを請い、僕は咎められないという事に
なった事がわかった。
曰く、掟に背いてまで相手に敬意を表したのなら、それは僕が好意を
抱いたからではないのか?と言ったらしい。
僕は頭を抱えてスカーの後頭部を叩いた。そんな訳ないだろうという
否定の意味を込めてだ。
カカカカカカ...
それにスカーは笑った。若いな、とも言って。
僕は怒るよりも呆れたので、就寝はここですると言い背を向けて横に
なった。
スカーは僕の背中を軽く叩き、じっくり考えてみるんだ、と言い
立ち上がる。
居なくなる前に、咎められなくなったのはスカーのおかげなので、僕は
とりあえずお礼を言っておいた。
スカーは何も言わず鉄格子は開けたまま檻から出ていった。
...僕はそのまま眠りについた。
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「ふーん...んくっ。あの子がねぇ...」
玉座に座るネフテュスはジャガ丸くんを頬張りながら、自分の子供が
異性に恋した事に、どうするべきか考えていた。
9年間もの月日が流れ、我が子同然に育てあげた子供であり
その恋を応援したくなってしまうのは、親としての性と言えよう。
「...まぁ、あの子が本当にその感情を抱いて、私に告げてきたら...
手伝ってあげましょうか」
そう結論付け、また一口ジャガ丸くんを食べた。
「ふふっ。美味しい...」
エルダー様も戦士と認めたレックス姉さんなら多分番になっててもいいはず。
いやなってないとダメなんです
スカレク万歳