【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 目を覚ました僕は、起き上がり檻から出ると鉄格子を開閉するボタンを

 押して檻を閉めた。

 本来、この檻は新種の生物を捕まえた際に使うものだ。

 なので、凄まじい異臭を放っているらしく我が主神はここへ来るのは

 極力、避けているそうだ。

 僕らは、この程度では気分が悪くなったりはしない。

 これよりも酷い悪臭がする狩り場へ何度も行った事があるからだ。

 オープンスペースに着くと、我が主神の元へ歩み寄り、跪くと頭を

 垂れる。

 

 「おはよう。よく眠れたかしら?」

 『はい。...昨日、スカーからお聞きしましたが、僕は咎められないのですか?』

 「ええっ。もしも貴方が認めた子とは別の子と話したりしていたら、流石に処罰していたところだけど...

  その子が何も言わなければ、問題ない事にしたわ」

 

 つまり、ティオナという少女が口を堅くしていれば良いという事だ。

 ロキ・ファミリアとの連絡手段は確保しているそうなので、確認は

 容易に出来る。

 ...仮に彼女が口を滑らしてしまったとしても、僕は責めるつもりはない。

 僕が掟に背いたのだから、彼女は決して悪くない。

 なので、僕は素直に我が主神の意見を受け入れる。

 我が主神は頷きながら、満足そうに微笑んだ。

 

 「それじゃあ、今日も頑張ってね。皆、待っているみたいよ」

 『わかりました』

  

 僕は立ち上がり、オープンスペースから離れ、自室へと向かう。

 檻へ放り込まれる前にヘルメット以外の装備は全て外されており、

 恐らく自室に置いてあると思ったからだ。

 自室へ入ると、装備を収納しているウェポンボックスを開けた。

 予想通り全て収められており、僕は狩りへ向かうための準備を始める。

 

 ジャラララ...

 

 最初にネットメイルを頭から被り、全身を包み込むようにして着る。

 ネットメイルは保温機能が搭載され、寒暖の激しい過酷な環境下でも

 体温を維持する事が出来る。

 最初こそは全裸にされてから素肌の上にこれを着させられ、下半身は

 褌と布を腰に巻くだけという格好に僕は泣く程嫌がった。

 今は、この格好でないと落ち着かくなっている。不思議だ。

 ネットメイルの次は胸部と脚部のアーマーを身に着けた。

 このアーマーも母星で採取した鉱石を素材としており、並の力では

 破壊するのは不可能で、とても軽量なため移動時の負担を軽減して

 設計されている。

 ブーツは、足底が接地すると同時に地面の形状に合わせ変形し、音が

 鳴らないようになっている。

 ネットメイルが擦れる違和感を無くすために両腕を回し、ブーツの

 中で足を動かして移動の際に問題なく動けるか確かめる。

 それらをチェックし終え、次は装備だ。

 

 ガシュンッ ガシュンッ 

 

 ピッ ピッ キュリリリリ...

 ジャキンッ

 

 基本装備のガントレット、リスト・ブレイドを左右の腕に装着する。

 ガントレットは各種装備を増設する事が可能だ。

 武器はプラズマボルト、アーム・クラッティング、ネットランチャー。

 特殊装備としては情報分析装置をカスタマイズが施せる。

 僕はアーム・クラッティングとネットランチャーを施している。

 リスト・ブレイドは最大で50Cまで伸ばせる。

 状況に応じた伸縮、折り曲げての刃間の広狭、刃の向きを変える事で

 腕を振り抜いた直後に振り払う動作で攻撃が出来て、獲物に向け

 コッキングする事で刃自体を射出する事が可能だ。

 次にバーナーを肩の装甲にあるコネクタに固定した。

 

 ガチャンッ

 キュインッ キュインッ...

 

 僕らはバーナーと呼んでいるが、正式名称はプラズマ・キャスターだ。

 バーナー本体に蓄積されたプラズマがエネルギー源となっており、

 エネルギーを収束させた、プラズマバレットを発射出来る。

 改良を積み重ね、現在の最新型はチャージをコンマ単位で完了し、

 連射やフルチャージする事で膨大なエネルギーを一個体に収束させ、

 プラズマシェルとして放つ事も可能となっている。

 プラズマシェルは獲物を一撃で葬る程の威力を誇るが、使用すると

 数分間はバーナー自体が使用不可となってしまう。

 加えて、クローキング機能もバーナーと同じプラズマをエネルギーと

 しているため姿を隠せなくなる。

 動作チェックを行う。

 砲身はアームに接続されており、ヘルメットの視覚システムと連動して

 照準する方向へ自動的に向きを変えられる。

 ...問題なく稼動している。

 基本装備の3つを装着した僕は次にサブウェポンを手に取る。

 

 ギュロロロ...

 

 2種類あるレイザー・ディスクの1つ、スマートディスク。

 5つの穴に指を通す事でグリップを握り、表面のライトが点滅して

 起動する。

 ミクロサイズの鋭い刃が無数に付いた投擲型武器で、投げると

 獲物をホーミングし円形に沿って刃が回転し胴体や首を切断してから

 ヘルメットのガイディングシステムにより回収出来る。

 そのまま手に持って、手持ちの武器として使用する事も可能だ。

 もう1種類の、シュリケンと名称が付いたレイザー・ディスクは

 こちらと違い大きめな6枚の刃が付いており、切断する威力としては

 格段に上だとされる。

 しかし、扱うにはかなり癖があるため僕はスマートディスクを選んだ。

 2つ目はレーザーネット。

 壁に設置しガントレットを操作する事で起動する。

 赤く細い光線を放ち、それに触れた獲物や物体は切断される。

 光線は蜘蛛の巣のように張り巡らせる事も出来、操作する事で

 動かす事も可能だ。

 こちらも2種類あり、高圧の溶解液を噴きかけるといったものもある。

 3つ目はエネルギー・ボラ。

 昨日、使用した通りエネルギーの鎖で形成されたロープだ。

 自動的に先端の輪が広狭し獲物を捕まえると、強力な電流を流す事で

 感電死させられる。

 4つ目のサブウェポンは、セレモニアル・ダガー。

 僕が初めて我が主神から授かった儀式用短刀だ。

 特殊な武器ではないが、僕にとって特別な武器と思っていい。

 

 カカカカカカ・・・

 

 装備は整った。これで狩りに行ける。

 僕はウェポンボックスの蓋を閉じ、自室から出た。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「にへへ~...」

 

 朝食を食べるティオナは何時にも増して上機嫌だった。

 食堂に居る団員達は、その様子を不思議そうに見たりしていたが

 特に気にせず席へ着き食事を始める。

 何故、こんなにも上機嫌なのかは言うまでもなく、捕食者がお礼の

 気持ちに答えてくれたからである。 

 関わりを持たないとされていたが、自分だけには答えてもらえた事が

 何よりも嬉しいと思ったようだ。

 

 「あのー、ティオナさん?」

 「んー?何ー?」 

 「...今日の朝食、すごく美味しい?」

 「うーん...?うん。美味しいよー、えへへー...」

 

 隣で一緒に朝食を摂っているレフィーヤとアイズは、ずっとニコニコと

 笑みを浮かべているティオナが気になって仕方なかった。

 確かにいつも笑顔でいるティオナだが、この笑みは少し違和感がある。

 そう思っていると、ティオナの隣にティオネが座ってきて2人が

 思っている事を率直に問いかけた。

 

 「アンタ、何か良い事でもあったの?」

 「...え?い、良い事って?何の事?」

 「誤魔化しても意味ないわよ。

  そんなに嬉しそうな顔してるの、今まで見た中でも1番わかりやすいんだもの」

 「え、えっとー...ほ、捕食者が戦ってるところを見れて嬉しかったから...

  やっぱり強いんだなーって、思って」

 

 苦し紛れにした返答だが、それは決して嘘ではないのでティオナは

 ティオネの目から視線を逸らさず答えた。

 ティオネは、ふーんと鼻を鳴らし疑わず納得した。

 

 「まぁ、確かにあんなあっさり倒したのはすごいとしか言いようがないわね」

 「うん。すごく、強かったね...」

 「で、ですが私達も倒す事が出来たのですから、負けてはいませんよね!?」

 「どうかしらね。私達は手こずったのに、捕食者は手慣れた感じで首をもいでたし。

  正直言うと...あっちの方が上手だと思うわ」

 

 レフィーヤはティオネの返答に俯いてしまった。

 事実、自分達が苦戦した相手を見てわかる通り容易く倒していた。

 最後に出現した新種のモンスターも、相手にしなければならない

 状況になった場合、どうなっていたか想像したくもない。 

 そうマイナスな想像をしていると、ティオナが言った。

 

 「だからあたし負けていられないんだ!」

 「え...?」

 「もっと強くなって...認めてもらいたいから!

  そうすればきっと関係も良好になれるかもしれないし!」

 

 ティオナの決意に3人は顔を見合わせて驚くが、本人は至って真面目に

 そう考えていた。

 ファミリア同士の関係を改善するためには、きっかけが必要であり

 相手に認めてもらえれば上手くいくと思ったからだ。

 

 「(絶対に認めてもらえるくらい、強くならなくちゃ!)」


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