【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 皆からの第一声は、強さに惚れるのはいいが性格も大事だとか、

 頼りない自分を見られたらその時は吠えろ、名誉挽回出来るとか、

 花と一緒に自分の敬意を示せばいいとか、とにかく僕が彼女に好意を

 抱いているという、認識で言ってきていた。

 僕はスカーを見る。スカーは素知らぬふりでいた。

 ウルフは特に何も言ってこない。わかってくれてると信じたい。

 皆の誤解を解くにはどうすればいいか、そう悩んでいると前方に獲物が

 居るのを確認した。

 蟻型の蟲だ。体表の外皮は硬いが関節部を狙えば容易に斬り落とせる。

 関節部でなくても外皮を斬り落とせるので別段気にする事はないが。

 周辺に同種の個体は確認されず、1匹だけのようだ。

 

 シュルルルッ...

 

 前に出たのはウルフで、既にスラッシャー・ウィップを手にしている。

 あの価値が高い獲物である虫の尻尾を模しており、鞭の本体には

 1つ1つ鋭い刃が連なっている。

 

 ヒュンッ ヒュンッ... ビシュッ!

 

 大きくスラッシャー・ウィップを振るい、鞭を投げ飛ばす。

 蟻の首に巻き付かせると同時に引っ張る。

 

 ブチィッ...!

 

 蟻の首は胴体から落ち、一撃で仕留めた。

 ウルフはスラッシャー・ウィップを巻き直し、腰の装甲に引っかけた。

 その場に崩れ落ちた死骸に近付き、リスト・ブレイドを突き刺すと

 体内から石を取り除く。死骸は灰となり消えた。

 今回は皆がそれぞれ新規で使用する事になった武器を試すために

 もっと奥まで潜る事になっている。

 なので、ここまでは既存の武器で倒していった。

 

 ...ド ド ド ド ド...!

 

 以前、歌声が聞こえてきた階層を過ぎ4つ下まで潜っていた。

 すると前方から地鳴りが聞こえて来る。僕らが今立っている地点へ

 迫り来るようだった。

 ゴーグルの視野を拡大し、暗がりの奥を確認する。

 ...とてつもない数のモンスターが向かってきている。

 そのモンスター達に追われているのか、冒険者達もこちらへ向かって

 来ていた。

 何故あんなにも多くのモンスターが出現したのか定かではないが...

 僕らは昂ぶり、体が疼き始める。

 あれだけ狩れるなんて、思ってもみなかったからだ。

 スカーとウルフにプロミキシティ・マインを前方の4箇所へ設置する

 ように指示を出し、僕は先にケルティック達と後方へ戻る。

 距離を取ってヴァルキリーと僕は、レーザーネットを2つ設置した。

 ガントレットからプラズマを充填させる事で起動し、設置後は獲物が

 接近した瞬間を狙って、プロミキシティ・マインで爆殺させる事が

 出来る。 

 後続の爆殺出来なかったモンスターは、レーザーネットで一網打尽に

 仕留めると僕は考えていた。

 背後で万が一、取りこぼして生き残ったモンスターがいた場合に備え

 ケルティックとチョッパーにはその始末を任せるつもりだ。

 スカーとウルフが合流し、狩りの準備は出来た。

 あの冒険者達を餌にするのは少しばかり気の毒だが、代わりに殺すので

 悪く思わないでほしい。

 

 ド ド ド ド ド...!

 

 僕らは通路の壁へ背を預けた。

 冒険者達が1つめのレーザーネットを通過したタイミングを見計らい

 起爆させた。

  

 ドガァァァアアアンッ!! ドガァァァアアアンッ!!

 

 爆音が通路全体に響き渡り、爆風が後から続いて吹き抜けた。

 冒険者達はそのせいで前のめりに転んでしまうがすぐに体勢を立て直し

 こちらへ向かってきている。

 前方は黒煙で視界が遮られるがすぐにビジョンを変更し、残りの獲物が

 向かって来るのを確認した。

 冒険者達が姿を消している僕らのそばを駆け抜けていき、獲物が

 プロミキシティ・マインを設置した付近のギリギリまで引きつけ

 起爆させる。

 

 ドガァァァアアアンッ!! ドガァァァアアアンッ!!

 

 再び爆音が鳴り響き、爆風が吹き抜ける。

 それに続いて、様々な獲物の叫び声が混ざり合うように響き、かなりの

 数を減らせたようだ。

 後続のモンスターも流石に爆発によって怯み、その場で留まっている。

 だが、何匹かは臆する事なく向かってきていた。

 ...本来なら戦利品にしたいが、後続の数を考えると前へ出るのは

 危険だと、思い留まる。

 向かってくる獲物の数だと、レーザーネットを使用する事はないと

 僕は判断し皆が新しく入手した武器による殲滅を指示した。

 

 バシュンッ! バシュンッ! バシュンッ!

 

 シュピンッ! シュピンッ! シュピンッ! シュピンッ!

 

 各自がそれぞれ狙いを定め、1体1体を確実に仕留めていく。

 ハンドプラズマキャノンは、身体の一部を掠っただけでも致命傷に

 なる程、1発1発がプラズマシェルと同等の威力を持つ。

 しかし、バーナーがプラズマシェルを放った後と同様に、弾数が

 無くなると、数分間のチャージが必要となる。

 シュリケン・ダーツはガントレットの手首部に増設した機構から

 レイザー・ディスクに似た、シュリケンを小型化させたような武器を

 射出し、獲物の急所を狙い仕留める事が出来る。

 頭部が粉砕され、胴体を貫かれたモンスターは絶命し、倒れた。

 怯んで留まっていたモンスターは、それを見て元来た方向へ戻り始めて

 逃げて行く。

 少し勿体ない気もするが、先に狩る事が出来た獲物の数を考えれば

 良しとする。

 既に冒険者達の姿は無く、逃げおおせたようだ。

 使用しなかったレーザーネットを回収して、僕らは石を回収するため

 倒したそれぞれの獲物に近付く。

 石を取り除くと獲物の一部が残るが、武器となるようなモノのみを

 拾い上げた。

 ...それにしても、何故あんなにまで大量のモンスターが出現したのか

 気になる。

 僕は理由を突き止めるために、モンスターが逃げて行った方向へ向かう

 事を皆に指示した。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...はぁ~~~~...」

 

 昨日の報告書を纏める作業に追われているエイナは、ため息をつき

 目頭を抑えた。

 今までにも、こうして報告書を纏めるという事はあったが今回は

 桁違いに感じる。

 新種のモンスターがダンジョン内ではなく、オラリオの街中に現れる

 という、異常事態は未だかつて無い案件だからだ。

 それに加え、自身が担当しているファミリアの冒険者がその新種の

 モンスターを倒したという事もあって更に仕事量が増えてしまった。

 ロキ・ファミリアの担当であるミィシャはというと既に力尽きている

 状態で突っ伏している。

 

 「(ごめん、ミィシャ。今回ばかりは手伝ってあげられないの...)」

 「お、おい!大変だ!」

 「は、はい!?ど、どうしましたか!?」

 

 突然声を掛けられたエイナは立ち上がり、目の前の冒険者に対応する。

 それに冒険者も驚いていたが、おかげで冷静さを少し取り戻したようで

 自身の身に何が起きたのか話し始める。

 エイナは耳を疑った。

 24階層に向かっている途中、通路を埋め尽くす程のモンスターが

 大量発生したというのだ。

 モンスターが出現するのは不定期的で突然、壁から産まれる。

 産まれると壁は壊れ、修復中はモンスターを産まないという特性上

 大量発生するという事は稀にしかない。

 但し、通路を埋め尽くす程となるのは異常事態だ。

 

 「...わかりました。直ちに調査して、原因を突き止めます。

  ご報告、ありがとうございました」

 「あ、ああ...」

 「しかし、そんな状況に巻き込まれたにも関わらず、ご無事で何よりでしたね」

 「それなんだが...どこの誰だか知らない奴のおかげで助かったんだ。

  通路を爆破して、大量のモンスターを倒してくれたからな...」

 「そ、そうですか...では、少し失礼します」

 

 エイナは冒険者の安否を労り、作成中だった報告書を放り出して

 レーメルに異常事態が発生した事を伝えた。

 

 「...等級D以上のファミリアに向かうよう伝えろ。

  アストレア・ファミリアかガネーシャ・ファミリアなら対応可能なはずだ」

 「わかりました」

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