【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
「あ、ロキ様ぁ!」
「お。ミィシャちゃん、今日も仕事仕事頑張っとるみたいやなぁ」
ギルドに到着したロキは、ベートを外で待たせ職員達のみが出入りする
カウンターの奥へ行こうとしていた。
そこへ、ミィシャが駆け寄って来ると早々にある事を伝えてきた。
「またまた丁度良いタイミングで来てもらえました。
ロキ様が来たら連れて来る様にと、ウラノス様がお呼びしていまして...」
「...ほぉーん?そないなんか。ほなら、会いに行ったるか」
「はい。ロイマンギルド長がご案内しますので」
ロキは頷くと、しばらくしてロイマンが汗を流しながら現れる。
どうやら重い贅肉をこさえているため少し走っただけでも、汗が
勝手に噴き出るのだろう。
ロイマンはカウンターのドアを開け、書類などを保管している本棚の
間を通りウラノスが居る祭壇へ続く道を案内していった。
そして、通路が行き止まりとなりその左側にある階段の前で止った。
「ここから先はお1人で、との事ですので...
私はここで失礼させていただきます」
「おー、ご苦労さんなー。
...ちなみに、ウチが来る前に他の奴も通しとったか?」
「は?い、いえ、貴女様のみです」
「あそう。おおきになー」
ロキはロイマンに手をヒラヒラと振りながら、階段を下りて行った。
暗闇の中を進んで行き、その先に見えた灯りが灯っている場所へと
近づいた。
「...よぉ、ウラノス。ご無沙汰やな。
ついさっき、18階層で騒ぎが起きてるの聞いたで。
イヴィルスの阿呆共がまた何か企んでる言うのは...
ネフテュス先輩の子供からの情報やろ?」
『ご名答。流石ロキね』
ウラノスの頭上に現れたのは、以前にも見たファルコナーだった。
声の主は当然ネフテュスである。
「...ネフテュス先輩、やっぱりウラノスと交流があったんですか」
『ええ、14年前からよ。それまでは別の場所に居て、居場所すら知らなかったけど...
7年前にオラリオへ、バレない様に入る事が出来たのはウラノスのおかげなの』
14年前という言葉を聞き、ロキはやはり7年前以上から下界へ下りて
来て、オラリオに居た事を突き止めたと思った。
ウラノスと何かしらの手引きをしているのであれば、ネフテュス自身や
ファミリアと眷族についての、詳細を極秘にする事が出来るからだ。
しかし、まだ疑問は残っている。ロキが唯一、知りたかった事だ。
「じゃあ、ネフテュス先輩。率直に聞きますけど...
地上に下りて来はってた理由は何ですのん?旦那はんは天界に還ってはるのに...
ここに居続けてるのがウチはごっつ気になってるんですわ」
『...約束をしたから、ここへ来たの』
「約束?それは、旦那はんとのですか?」
ロキの問いかけに、ファルコナーはゆっくりと降下していきロキの
目の前まで近付いた。
カメラのレンズが大きく開き、ロキの顔を見つめている様に見えた。
『いいえ...死んでしまった人間の女性とのよ』
「人間の、女性...?」
『そう。...あの子の...』
――――――――――――――――――――――――――――――――
行く宛てもなく歩き続けていたティオナは、いつの間にか物資置き場へ
着いていたのに気付くと足を止めた。
横目で見て、木箱が置かれていないコンクリートの土台を見つけると
そこへ腰掛ける。
ティオナは俯いたまま、アーディの言っていた事を考え始める。
「(...軽はずみだった、よね...
アーディはすっごく優しいから、自分が殺されそうになったとしても...
宥めて武器を捨てる様に言うんだもんね。
私にとっては恩人だけど、アーディにとっては違う...
...もしも、あの時助けてもらえず捕食者と会えていなかったら...
あの殺し方をした捕食者を、許せなかったかな...)」
顔を隠す様に膝を抱え込む。
瞑っている瞼の裏には、涙を流し怒りを顕わにしているアーディの顔が
鮮明に映っていた。
後悔と共に、これからアーディとどの様に向き合っていけばいいのか
不安が募り始めた。
...バキャッ!
「(...やだよ。絶対にやだよ!こんな終わり方。..
アーディとこれっきりになるなんて...!)」
座っている土台に拳を叩き付けた。バキッと罅が入り、
小さな破片が飛び散る。
その時、足音が聞こえ誰かが近付いてくるのに気付いた。
「ティオナさん...?」
「あ...アイズ、レフィーヤ...どうしてこんな所に?」
「そ、その、少し気持ちを落ち着かせようと歩いていまして...」
「...ティオナ、大丈夫...?」
「...うん。あれくらいで怪我なんてしないから」
「...えっと、そうじゃなくて...」
アイズが言わんとしている事はティオナもわかっていた。
アーディとの口論を見ていたので、気遣おうとしているのだろう。
それにティオナは心配掛けない様にと笑みを浮かべた。
「アーディとあそこまで酷いケンカはした事ないから、あたしもちょっと戸惑ってるけど...
これっきりでアーディと友達でいるのをやめるのは嫌だから...
ちゃんとアーディとは話し合って、絶対に仲直りするよ。
だから...心配しなくて、大丈夫だよ」
仲直り出来る確信は無いが、ティオナは決心した。
アーディと親友との縁は切らないと。
そう答えたティオナにアイズは、しばらく何かを考え出してから頷く。
「そっか...。...何か手伝える事があったら、私に教えて、ほしいな」
「わ、私も、力不足だとは思いますが...
ティオナさんには助けてもらっていますので、是非お願いします!」
「うん。ありがとう、2人とも...」
2人からの協力の申し出にティオナは嬉しそうに頷く。
18階層に夜が訪れた様で、天井の青水晶群の光が消えていた。
ティオナはそろそろ手伝いに戻ろうと、立ち上がった時だった。
ふと、物陰に隠れながら歩く人影が目に入る。
リヴィラの街で商業を営む者なら、コソコソせずともいい筈なのだが
明らかに不審に思えた。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ん~?どこだ...」
恐らく雇人だと思われる褐色な犬人の女性がやっと現れた。
僕が目印を付けた所をヘルメットのゴーグルに表示されるマップに
マーキングしているため、ここからならすぐに視線をそこへ移せる。
褐色な犬人の女性が向かってくれる事を見守りつつ、僕らは待った。
奥へ奥へと入り込んで行き、目印の近くまで来た。
予め持っていた発光する水晶を手に、木箱の表面を隈無く見続け
目印を見つけ出した。
「あったあった。...これか?」
布で包まれた卵を手にすると、中身を気にしながらも肩に掛けている
鞄へ押し込んだ。
...よし。これで依頼は...ん?
「ねぇねぇ?そこで何やってるの?」
「げっ!?」
ピピッ ピピッ
...立て続きに最悪な事態が起き始めようとしているみたいだ。
下の方は後回しにするとして、生体感知センサーが反応した方向を
確認する。
生体感知は獲物のみに反応するため、人間には反応しない。
だが視野を拡大すると、そこには2人組の人影が見えた。
...奴らを指揮していたあの男女だ。卵を取り返しに来たのか。
奴らの姿は無い。だが、生体感知が反応したという事は...
巨大な花か別のモンスターを呼び寄せているに違いない。
『オリヴァス、お前は冒険者共を惹きつけろ。私が奴らから奪い取る』
『フンッ...しくじるんじゃないぞ』
男の方はどこかへ向かうと、女は動かずそこで佇み、指を2本口に咥え
指笛を鳴らした。
ヒアリングデバイスによって聞き取れたが、その音は常人では
聞こえない程の高音だ。
となれば、予想通りあの巨大な花を呼び覚ませようとしているに
違いない。
すぐに皆に指示を出す。ウルフは監視する様、残ってもらい僕らは
街へと急いだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「だ、だから、これはその、別に大した代物じゃないからさ、気にするなって」
「そう言われると余計に気になるんだけど~?
やっぱり何か怪しい物を運ぼうとしてたんじゃ...」
「そ、そんな訳な」
ド オ オ ォ ン !!
ルルネはその爆音に驚き、小さく悲鳴を上げた。
アイズ達は即座に、街を一望できる崖の縁まで移動する。
そこから見えたのは、少数ではあるが街の至る所でヴィオラスが
地面から生えてきている光景だった。
「な、何だよあれ...!?」
「嘘でしょ!?どうしてアイツらがここに...!?」
ティオナが驚いていると、目の前から複数のヴィオラスが現れる。
レフィーヤは動けなくなっていたルルネを庇って前に立つと、アイズと
ティオナはそれぞれ対象を狙い斬り裂いた。
ものの数秒で現れたヴィオラスは斬り伏せたが、今度は違う場所から
現れ始めた。
「う、嘘だろ!?あっちからまだ来るぞ!」
「アイズ、レフィーヤ!その人を連れて広場に行って!
こいつらはあたしで何とかするから!」
「わかった...!」
「わ、わかりました!...来てください!」
「お、おいっ!行っちまっていいのかよ!?」
レフィーヤはルルネの手を引き、アイズと共に街へと戻る道を走った。
前回は無手による戦闘を強いられていたが、今回は大双刀があるため
容易に倒す事が出来るとアイズとレフィーヤは信じたのだろう。
下り坂となる道を進んでいるその時、前方に降り立つ人影が見えた。
レヴィスだ。腰に引っ提げている黒い大太刀を引き抜くや否や、
構えると即座に飛びかかってくる。
「いい加減、渡してもらおうか」
「っ...!」
ゴ ッ !!
咄嗟にアイズは斬撃を受け止めるが、凄まじい威力であったため傍に
居たレフィーヤとルルネは、衝撃波によって吹き飛ばされてしまった。