【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
アイズはレヴィスとお互いに斬撃を弾き、弾き返されるの応酬を
繰り広げ、どちらも退かない姿勢だった。
背後ではレフィーヤが森のティアードロップを突き出す様に構え、
アルクス・レイを放つための詠唱をしていた。
「狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!
【アルクス・レイ】!」
ド ゥウ ンッ !!
単文詠唱魔法であるため、即座に標準をレヴィスに合わせ光の矢を
撃ち出す。
背後から急加速して接近する光の矢にアイズはギリギリまで引きつけ
レヴィスから死角となるようにぶつけようとした。
ド ン !!
だが、レヴィスは光の矢を片手で受け止めた。
速度重視かつレフィーヤ自身のスキルや魔力の高さもあって、威力は
凄まじいはずだ。
それを受け止めるレヴィスに、レフィーヤとアイズ、ルルネは
目を見開いて驚愕する。
レヴィスはそんな事はお構いなしに、受け止めていた腕を振るい
光の矢だった魔力の塊を弾き返す。
ド オ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ !!
「きゃあああああ!!」
「うわぁあぁああ!?」
爆風で吹き飛ばされるレフィーヤとルルネ。
背後の巨大な水晶に背中からぶつかり、その場に倒れた。
その際、鞄の蓋に隙間ができ宝玉が零れ落ち、地面を転がる。
「レフィー...!?」
2人に気を取られレヴィスの接近を許してしまい、間一髪の所で
アイズは斬撃を回避する。
黒い大太刀を頭上に翳し振り下ろそうとするレヴィスに、アイズは
やむを得ないと判断して、エアリエルを発動させるべく詠唱した。
「【テンペスト】!!」
...ドクン
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ビビーッ! ビビーッ! ビビーッ!
カカカカカカ...
男と金髪の少年、赤い瞳のエルフの少女、青い髪と瞳の女性の戦いを
僕は見ていた。
1人は7年前にマチコが助けたと言っていた少女だった女性で、
もう1人の赤い瞳のエルフの少女は、6年前に僕が初めてコンタクトを
取った、あの時の少女だと思い出した。
女性と少女と男の力の差は、男の方が上手の様で多少押されているが
金髪の少年がそれをカバーし攻撃の隙をつくると、少女達が見事な
連携で男に攻撃を与えている。
やはりあの金髪の少年は強い。認める事が出来ないのが本当に惜しい。
そう思っている矢先、背中に乗せ大振りに見せかけたフェイントによる
槍の刺突が、完全に無防備となっていた顔面を捉えた。
パキン...!
男が被っていた仮面が割れ、顔が晒される。
金髪の少年と少女達は男から距離を一度取り、体勢を立て直していた。
顔を押えていた手をゆっくりと下ろしていき男は前を向く。
すると、その場に居る全員が驚いていた。...僕も含めて。
「あの人は...」
「【白髪鬼】...オリヴァス・アクト...!?」
...どうやら全員が知っている様だった。
当然と言えば当然か。
あの男は27階層にモンスターを集め、赤い瞳のエルフや他に誘き
寄せられた冒険者達を、殺そうとしていたのだから。
...ただ、僕や全員が驚いたのはそこではない。
驚いた理由は、アイツは僕がこの手で殺したはずだからだ。
「生きていたというのか...」
「いや、死んだ。だが死の淵から私は蘇った...」
男は着ていた衣服を自ら破き、上半身を露わにする。
その瞬間、止めていた生体感知センサーが再び鳴り響いた。
まさかと思い、電磁波を視覚化する赤外線に切り替え、男の胸部を
見る。
...僕はあの時、巨大な花の石に反応していたのかと思っていた。
だが、そうではなくあのオリヴァスという男の胸部に石が埋め込まれて
いたから、センサーが反応していたんだ。
オリヴァスという男は両腕を大きく広げ、天井に向かって喚いた。
「私は2つ目の命を授かったのだ!他ならない彼女に!!」
...そうか。蘇生されたのか...
それなら...
もう一度...この手で引き千切って、あの醜い顔を粉々にしてやる。
ピピッ ピピッ
しかし、その時ウルフから通信が入り応答する。
...卵が孵った...?
――――――――――――――――――――――――――――――――
「フィンー!アーディー!」
その場に居た全員が驚く中、どこからともなく跳んで来たティオナが
着地し駆け寄る。
ティオナは全員が自身に気を留めない事を不思議に思いながら、
オリヴァスを見た。
ティオナは暗黒期が終わった頃にオラリオへ来たため、相手が誰なのか
わからずアーディに問いかけた。
「ねぇ、あの白髪の人は誰?」
「...オリヴァス・アクト。かつて、イヴィルスの使徒であり...
27階層で殺され、蘇った死に損ないだ」
「ん~?...じゃあ幽霊なの?足あるみたいだけど」
気が抜けそうな程の軽やかな声音で答えるティオナに、後方で待機する
リヴェリアは緊張感の無さにため息をつく。
しかし、そのおかげかフィンは緊張がほぐれた様で小さく笑った。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ !!
次の瞬間、地面が揺れた。その次にかなり離れた場所で、土煙を
巻き上げながら何かが突起する。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふぅ...腕の立つ冒険者共が居てくれたおかげで、立て直すのも早かったな」
「感謝しなさいよね。全く...」
「ですが、油断は出来ません。あの食人花を操るイヴィルスの使者がどこかに居るはずです。
その使者を捕らえなければ...?」
リューはボールスに答えている際に、ふと剣を下ろした口を開けたまま
呆然としているシアンスロープの男が目に入った。
ボールスもリューの視線の先を見て、気付くと青筋を立てながら
怒鳴った。
隣に立っていたティオネは、その怒鳴り声に耳を塞ぐ。
「ぼーっとしてんじゃねえ!蹴り飛ばすぞ!」
「...いえ、ああなるのも無理はありませんね」
「あ゛ぁ゛!?...あ゛...?」
「何よ、あれ...!?」
キ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ァ !!
リュー達の視線の先で見えたもの、それは無数のヴィオラスを
下半身から生やし巨大な女体の上半身を持つデミ・スピリットだった。
以前に捕食者達が倒した51階層の巨大なヴィルガの上位種と似ている
様に思える。
咆哮を上げ、デミ・スピリットは足の代わりとしてヴィオラスを前に
進ませていき、移動し始めた。
目を凝らし、観察してみると進んで行く先にはアイズ達が走っており
デミ・スピリットに追いかけられている様に見えた。
「ちょっと行ってくるわ。リオン、助太刀してくれる?」
「いいでしょう。エルダー、貴方は仲間と共に広場へ避難を。
流石に貴方達では足手纏になるでしょうから」
「あぁちくしょう!腹立つ物言いだが...従ってやるよ!」
文句を言いながらも指示に従い、ボールスが仲間の元へ向かうのを
見送りリューはティオネと共に崖から飛び上がり、アイズ達の元へ
向かって行った。
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「おぉ...!彼女の片割れが...!」
デミ・スピリットを見るや否や、オリヴァスは歓喜の笑みを浮かべた。
フィンはその言葉を聞き、オリヴァスがあれの正体を知っていると
察知し問いかける。
「オリヴァス・アクト。あれが何か知っているのか?」
「フッ、ハハハハ...!当然だとも。だが、貴様ら如きに教えなどしない。
だが...忠告しておこう」
「忠告?...わざわざ何を企んでいるのか、教えると言うのか?」
フィルヴィスが呆れた様子で問いかけるが、オリヴァスは不敵に
笑みを浮かべた。
「オラリオを滅ぼす。そして...彼女の願いを叶えるのだ!」
その発言にフィン達は戦慄した。
イヴィルス自体なのか、オリヴァス自身の目的でそう言ったのか、
定かではないがその場に居る全員が思った。
ここでオリヴァスを逃してはならない、と。
それに勘付いたのかオリヴァスが一歩ずつ後ろへ下がっていくのに、
ティオナは気づく。
「逃げる気ならそうはさせないよ!」
大双刀を向けながらティオナがそう言うと、フィルヴィスも
護手のホワイトトーチの先をオリヴァスに向け、いつでも魔法を
放てる姿勢を取った。
オリヴァスは一度足を止め、鼻で笑いながら答えた。
「本来の目的とは異なるが、私は役目を果たした。
お前達と相手をする意味はもう無いだろう」
「【勇者】とリヴェリア様が恐ろしいだけなのではないか?
生前の貴様は臆病者だったと聞く。今のお前もその様なのだな...!」
「何とでもほざけ。彼女に選ばれ、種を超越した私が怯える事など」
...パシュンッ!
ない、と言い終える前にオリヴァスの全身が何かに覆われ、背後の
岩肌に磔にされた。
それはワイヤーが網目状となっているネットだった。
『そこに立ってろ』