【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 どこからか声が発せられ、突然の事にフィン達は驚く。

 オリヴァスも何が起きたのかわからず驚いているがすぐに逃れようと

 する。

 

 ヒュル ヒュル ヒュル ヒュルヒュルヒュルッ...!

 ギリギリギリッ...!

 

 だが、身動きを取ろうとする度に岩肌に固定されたアンカーがネットを

 巻き取っていき締め付けていく。

 更に、ワイヤーは鋭い刃となっている様で皮膚にめり込むと血を

 滲ませながら切り裂いた。

 徐々に全身を抉られる激痛にオリヴァスは呻き始める。

 

 「ぐぅうっ...!う、おぉおおおっ!!」

 

 バキンッ! バキンッ!

 

 オリヴァスは腕がネットで抉られながらも、強引に押し退ける。

 固定されていたアンカーが根元の岩肌ごと外れてしまい、オリヴァスが

 解放された。

 アンカーはネットを巻き取っていき、全て収納すると片方が蓋となり

 筒状となった。 

 

 「くそ、小癪なマネを...!誰だっ!?この私に対し図に乗る輩は!」

 

 ピピピッ

 

 オリヴァスは憤慨し、逃げる事を忘れてしまったのかその場で

 自身を磔にした敵を探し始める。

 周囲を見渡していると、何かを踏んだ感触がした。

 

 ガシュンッ!

 グシャッ...!

 

 「ぐ!?グアァアアアアアアアアッ!?」

 

 その瞬間、噛みつかれた様な激痛が足に走る。

 足元を見ると先程まで何も無かったはずなのだが、トラバサミのような

 罠が設置されており、それを踏んでしまったようだ。

 3つの刃が足を離さないようにガッチリと挟み込んでおり、

 オリヴァスが外そうとすると、余計に閉まっていく。

 

 「こ、の...!私をどれだけ虚仮にする気だ...!」

 「...オリヴァス・アクト」

 

 名前を呼ばれ、オリヴァスは前を向きフィンを見る。

 フィンは気の毒に、哀れに思っている様な表情で見ていた。

 その表情にオリヴァスは、フィンも自分を虚仮にしていると思い 

 歯を食いしばって怒りを顕わにする。

 しかし、違和感を覚えた。よく見てみるとフィンやティオナ達も

 自分を見ていない。 

 自分の背後を見ている様に思えた。

 

 「色々と聞きたかったんだが...どうやら、手遅れの様だね。

  ご愁傷様と言っておくよ」

  

 フィンの言っている意味をオリヴァスは理解出来なかった。

 何が手遅れで、自分に対し気の毒に思っているのかを。

 

 カカカカカカ...   

 

 だが、その低い顫動音が耳に届いたと同時に過去の記憶が蘇った。

 それは、あの時聞いた悪魔の笑い声だと...

 

 ド ス ンッ...!

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ガ、アァアアァアアア...!?」

 

 僕はオリヴァスという男の背後に回り、腰部分にバトルアックスを

 叩き込んだ。

 ガントレットから供給されたプラズマをアックスブレードの根本に

 あるエネルギーセーバーに蓄積し対象に叩き付けると、そこから

 アックスブレードへ流れ込む。

 プラズマは衝撃波に変換され、斬り裂くと同時に粉砕するという

 両方の物理攻撃を繰り出せる。

 アックスブレードが深く突き刺さり、引き抜くと裂傷した箇所から

 大量の鮮血が噴き出てくる。

 僕は横に居るため、鮮血は噴き掛からなかった。

 

 シュウゥゥゥ... 

 

 ものの数秒もしない内に裂傷が塞がっていく。

 これも石を埋め込んでいるからか...?

 なら...

 

 ドシュッ! ドチュッ! ドシュッ! ドシュッ!

 

 何度も、何度もバトルアックスのアックスブレードを裂傷が塞ぐ前に

 一点を集中して叩き込んだ。

 叩き込め叩き込む程、肉片や鮮血が激しく飛び散る。

 横に立っているが、それが付着してきた。

 オリヴァスという男はトラップによって動けなくなっている。

 だから逃さず叩き込んだ。

 激痛で喚いているが、気に留めない。耳障りなだけだ。

 見ている金髪の少年達の事も気に留めず、僕は叩き続けた。

 

 ゴツッ!

 

 しばらくして腰髄が露出する程の裂傷となりアックスブレードが

 届いたと同時に、僕はバトルアックスをその場に投げ捨てた。

 透かさず両手を裂傷に伸ばし、腰髄の椎骨を掴む。

 

 メキ メキ メキ メキ メキ メキッ...!

 ベキィッ!!

 

 布を絞る様に力任せに捻り続ける。

 音が鳴ると同時に椎間板の一部が砕け、千切れた。

 僕はその千切れた上下の腰髄を、両手の指の間に挟み込む。

 

 ブチブチィ... ブツッ ブチィッ...!

 

 両手はそれぞれ上下に向けており、また力任せに裂傷を広げながら

 身体を半分に裂いていく。

 

 「や、めろ、ぉ...!わた、しは、まだ死ね、ないと、言うのに...!」

 

 黙れ...死ね

 

 ブ ヂィ イッ!!

 

 あの時と同じ様に体を腰から半分に引き千切る。

 前回は容易く千切れたが、今回は武器も使ったりしたので少し手古摺った。

 上半身だけとなったオリヴァスという男を地面に叩き付け、下半身は

 トラップに挟んだままなのでその場に放っておく。

 

 「ぁ、が...ぉ...ぐ...」

 

 流石に下半身を生やす事は出来ないのか、地面に転がっている

 オリヴァスという男は口から血を吐き出し、手が蠢いていた。

 切断面からも血が噴き出ており、血溜まりを形成していく。 

 

 カカカカカカ...

 

 バチャンッ バチャンッ...

 

 僕は血溜まりに足を踏み入れ、戦利品にもならないその醜い顔を

 見下ろす。

 

 「...お前、は...一体...何だ...?」

 

 まだ息があるのか...人間ではなく、モンスターみたいだ。

 なら...あえて、聞き返そう。

  

 『お前は一体なんだ?』

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ド ズ ンッ !

 

 オリヴァスの胸部に穴が開いた。開いた、というより捕食者の手が

 めり込んで胸部の奥にまで到達した様だった。

 その穴から覗く極彩色の魔石がゆっくりと引き抜かれていく。

 

 「まさか...!よせ、よせぇ!私は、彼女に選ばれた人間...!

  私が、彼女を守らねば」

 

 ズルルルッ... ブチィッ!

 

 オリヴァスが言葉を言い切る前に、極彩色の魔石が抜き取られた。

 捕食者の手で握られている極彩色の魔石は浮遊する様にオリヴァスの

 顔の上で止まる。

 

 バキンッ!

 サラサラ...

 

 砕かれた極彩色の魔石は、オリヴァスの顔面に降り注いだ。

 まるで生き返った幸運を、再び死ぬ絶望へ貶めるかの様に。

 オリヴァスは正しく、悲痛に浸る顔を浮かべたまま動きが止まると

 上半身が徐々に石化していく。

 

 キュイィィン...

 

 すると、捕食者の左肩に発光するものが見えた。

 アーディはそれを見た瞬間、駆け寄ろうとする。だが、それを察した

 ティオナが羽交い締めにして阻止した。

 

 「アーディッ!」

 「や、やめ...!」

 

 ドッ パ ァアン...!! 

 

 オリヴァスの体が石化していく中、捕食者は顔のみを青白い光弾で

 吹き飛ばした。

 鮮血が噴き出し、地面が赤黒く染まった。

 それを見て、アーディは目を見開く。踏ん張っていた足腰の力が抜け、

 その場で座り込んでしまった。

 ティオナはアーディの肩に両手を乗せたまま、言葉をかけられず

 アーディを見つめるしかなかった。

 

 ...ゴシャッ!

 

 その音を聞き、アーディは肩をビクリと震わせた。

 ティオナは前を向き、石化したオリヴァスの上半身が粉々になって

 いるのに気付く。

 恐らく、捕食者が踏みつけたのだろう。

 

 カカカカカカ...

 

 捕食者は鳴き声を上げ、眼の光を消す。

 その場から去ろうとしているのだと察し、ティオナは呼び止めようと

 した。

 

 「待て!」 

 「!?」

 

 だが、先にフィルヴィスがそうした。

 声さえ出せず驚くティオナを余所にフィルヴィスは捕食者に向かって

 言った。

 

 「私を覚えていないか?6年前、お前のおかげで私は助けられた。

  またこうして...会えた事を嬉しく思う。

  今、言うべきではないだろうが...改めて、礼を言わせて欲しい。

  ...ありがとう」

 

 ...カカカカカカ...

 

 フィルヴィスの言葉に捕食者は眼を光らせ応えた。

 それにフィルヴィスは、心の底から嬉しそうに微笑む。

 ティオナは口を半開きにしたまま呆然としていた。

 ロキ・ファミリアと関わりは持たないという事は知らされているが、

 他のファミリアの団員と話し合う事があるとは知らなかったからだ。

 捕食者は眼の光を消して今度こそ去って行く。

 残されたティオナ達は、デミ・スピリットが離れた距離で横を通過して

 いく轟音に気付く。

 オリヴァスは捕食者によって倒されたので、次はあの巨大な敵を

 フィンは標的として捉える。

 

 「おーい勇者サマご一行~!【剣姫】や【千の妖精】が追われてるみたいだぞー!

  ウチのリューと【怒蛇】が先に向かったみたいだ!」

 

 広場へ避難誘導をしているライラが声を張り上げて、現状を伝えて

 きた。

 それにフィンは頷き、同じ声量で応える。

 

 「わかった!避難誘導は任せたよ!...ティオナ、君は傍に居てあげるんだ。

  僕らがあのモンスターに対処する」

 「...う、うん...」

 「シャリア。手を貸してくれるか?」

 「リヴェリア様と恩人のためならば、命を懸ける覚悟です」

 

 そう答えるフィルヴィスにリヴェリアは勇猛さに微笑んで、フィンと

 共にデミ・スピリットの元へと向かった。

 

 「...」

 

 正義感が強く快活な性格である事を知る者から見ては、想像もつかない

 程、アーディは悲傷した様子となっていた。

 ティオナはこのままにしてはいけないと思い、一先ず先程ライラが

 避難誘導していた広場へ向かう事にした。

 

 「アーディ?...行こ?」

 

 なるべく優しく言いながらアーディに手を差し伸べる。

 轟音が遠くから響く中、ティオナはアーディだけを見つめて

 手を握るのを待った。

 しばらくして、ようやくアーディはティオナの手に自身の手を

 重ねた。

 ティオナはゆっくりと立ち上がらせ、肩に手を回すと倒れない様に

 気をつけながら歩き始める。

 

 「...よ...」  

 「...なに?」

 「...怖い...よ...どうして...あんな、あんな事ができるの...」

 

 アーディは堰を切った様に泣き始めてしまった。

 大粒の涙がアーディの瞳から溢れ落ち、手を握っているティオナの手を

 濡らしていく。

 ティオナは口を紡いで、アーディを広場へ連れて行くのだった。

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