【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「ティオネ!出来る限りでいい、食人花を引き付けてくれ!」

 「はい!」

 「レフィーヤ、縄を結べ」

 「はい!」

 

 エルフの冒険者から弓矢を貸してもらい、リヴェリアは指の間で3本を

 掴むと同時に弦へ引っかける。

 1本のみ矢尻に縄を結んでおり、狙いを定め、限界まで弦を引く。

 

 「フィン!」

 「ああ!」

 

 ...ドヒュ!

 

 3本の矢はそれぞれの軌道を描き、デミ・スピリット目掛けて

 放たれる。

 左右に構えていた2本はヴィオラスに阻まれ、本体に刺さらなかった。

 だが、それは囮であり中央の矢が本命で見事にデミ・スピリットの腕に

 命中する。

 その矢に結ばれている長い縄が遠心力により宙を舞う。

 タイミングを見計らい跳び上がっていたフィンはそれを掴み取り、

 力一杯引っ張る。

 そうする事によりデミ・スピリットの方へとフィン自身が引っ張られて

 いく。

 

 ギュルッ

 

 片手で持っているフォルティア・スピアを器用に回転させ、そのまま

 降下していく。

 

 ギュ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ !!

 

 回転させているフォルティア・スピアが丸ノコの様に群がっている

 ヴィオラスの胴体となる茎部分をまとめて切断した。

 それにデミ・スピリットは咆哮を上げ、動きが止まった。

 したり顔となるフィンに数匹が襲い掛かる。

 フィンは掴んでいた縄を離し、遊撃しようとしたが横方向から接近する

 リューに気付き、フォルティア・スピアを構えるだけに留め、邪魔に 

 ならないようにする。

 

 「ハッ!」

 

 ズパァッ! ズパァッ! ズパァッ! ズパァッ!

 

 両手に構えたアルヴス・ルミナと捕食者が貸した刀で、容易に首を

 斬り落とし、数匹は瞬殺される。

 取りこぼしがない事を確認しながらフィンはリューと一緒に着地した。

 リューはその刀を見つめ、やはり凄まじい切れ味だと感心する。

 

 「リオン、その武器は君の得物かい?」

 「...協力している恩人から借りた物です。後でキチンとお返しします」

 「...そうか、それは羨ましい限りだね」

 

 捕食者の思っていた通り、フィンは察した様でそれ以上は何も

 言わなかった。

 自分達とは関りを持たないという訳であり、別のファミリアである

 リューに協力している事は不公平でも何でもない。

 なので、苦笑いを浮かべつつも不満気な様子は見受けられない事に

 リューは安堵する。

 

 「では、攻撃を続行しましょう。【勇者】」

 「ああ。恐らく魔石が埋まってるあの上半身...

  リヴェリア達のために時間を稼ごう」

 「わかりました」

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 フォシュンッ! フォシュンッ! フォシュンッ !

 バシュンッ! バシュンッ! バシュンッ!

 

 ウルフとヴァルキリーのバーナーとハンドプラズマキャノンによる

 遠距離射撃で、巨大な花を目に入った個体は仕留められていく。

 僕とスカー、ケルティック、チョッパーは赤い瞳のエルフの少女と共に 

 行動する事になり、接近戦を挑んだ。

 3人はエルダーソードを片手に、もう片方にはアルファ・シックル、

 ノースハンマー、ハンド・ブレイドをそれぞれ装備している。

 アルファ・シックルは祖先から受け継いだとされる、スカーの

 固有武器だ。故に1つしか存在しないらしい。

 素材はかつて惑星の生物を全て食い尽くした、凶暴な獲物の骨が

 使われており、切り裂くだけでなく鉤爪の様に引っかける事で得物の

 肉体に突き刺し、引き千切って肉塊にする事が出来る。

 ケルティックが持っているのは、新たに手に入れた武器である

 ノースハンマーだ。

 プラズマを収束させ、標的に叩き込むとハンマーのヘッドから

 衝撃波を放ち地面ごと粉砕出来る。

 機構は僕が持っているバトルアックスと同じだが、ノースハンマーは

 衝撃波の他に閃光を放つので、獲物の目を眩ませられる。

 チョッパーの持つハンド・ブレイドは文字通り拳に嵌め、拳打すると

 ギザギザの刃が突き刺さり、急所を狙うと一撃で殺せる武器だ。

 それに加えてシミター・ブレードも装備しているので、どこから

 襲われようとも斬り伏せるつもりみたいだ。

 僕はエルダーソードと刀の両方を協力する事を証明するために

 渡したので、標準装備のリスト・ブレイドを伸ばし、左手には

 バトルアックスを握っている。

 僕らの姿は見えないが、赤い瞳のエルフの少女は見えているため

 巨大な花の群れは近付いて来るのに気付くと、襲い掛かってくる。

 

 ザブッ! ザシュッ! グシャッ!! ドゴォオッ!! ズパァッ!

 

 第三者からみれば赤い瞳のエルフの少女が何もしていないのにも

 関わらず、勝手に巨大な花の群れが薙ぎ払われた様に見えるだろう。

 赤い瞳のエルフの少女は僕が教えた通り、エルダーソードを逆手持ちで 

 構え、回転しながら跳び上がると、その勢いを利用し巨大な花の頭部の

 上顎と下顎の境目を斬り裂いた。

 滞空中に襲い掛かる巨大な花は、反対の手で構えている杖から放った

 雷撃により真っ黒に焦がされ粉々になった。

 

 カカカカカカ...

 

 認めた事に間違いがなかった事を僕は嬉しく思った。

 きっとティオナという少女も、あの一件さえ無ければ、こうして共に

 協力出来ていたと思うと...

 ...いや、今は余計な事は考えないでおこう。

 皆にまた何か言われるのはもう沢山だ

 しばらくすると、以前にも見かけた髪の長い褐色の女性が近くに

 降り立った。

 

 「ねぇ!貴女、アイズを...

  アイズ・ヴァレンシュタインをこの付近で見てない?」

 「【剣姫】か?...!、あそこだ!赤毛の女と交戦している!」

 

 赤い瞳のエルフの少女が杖で指すと、その先でアイズと呼ばれた少女と

 オリヴァスという男と一緒に居た女が剣を交えながら、移動していって

 行くのが見えた。

 髪の長い褐色の女性はその後を追おうとした時だった。

 

 グゥ ウ...!

 ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア !!

 

 女体の怪物が咆哮を上げたかと思うと、頭上から夥しい数の蔓を

 鞭の様に振るい下ろしてきた。

 

 ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド !!

 

 蔓は地面を砕き、広範囲に及ぶ程の攻撃で巨大な花とは違って意思が

 無いため、動きが予測出来ない。

 髪の長い褐色の女性と赤い瞳のエルフの少女は、その蔓を時には弾き、

 時には斬り落としていく。

 僕らも何とか捌き、地面が砕かれ飛び散ってくる破片を片手で

 防いだりもするが、段々と回避しなければならなくなってくる。

 ウルフとヴァルキリーも援護射撃をしてくれている様だが、数が

 数だけに全て撃ち抜く事は到底無理だというのはわかっている。

 ...髪の長い褐色の女性はロキ・ファミリアの冒険者だが、ここを

 切り抜けるにはこれしかない。

 僕は3人に指示を出し、それぞれが持つレイザー・ディスクを使用する

 ように伝えた。

 

 ヒュ ロ ロ ロロロ ロ ロッ...! 

 シュ ル ル ル ル ル ル ルッ!

 

 ズパァッ! ズパンッ! ズパンッ! ズパァッ!

 

 スマートディスクとシュリケンは僕らの操作により、頭上を飛び交って

 蔓を斬り落としていく。

 その光景を見た髪の長い褐色の女性は、僕らの存在に気付いた様で

 周囲を見渡していた。

 徐々に勢いが弱まっていくと、僕らは蔓の合間をすり抜けて退避する。

 髪の長い褐色の女性は何か言いたそうに赤い瞳のエルフの少女を

 見ていたが、女体の怪物が後ろを振り向いたのに気づき、そちらへ

 意識を向ける。

 僕は視野を拡大して見てみると、エルフの女性が杖を横に構えながら

 魔法を放とうとしている。

 女体の怪物は腕の蔓を射出する様に伸ばし攻撃した。

 エルフの女性はその場からすぐに退避していき、女体の怪物はそれを

 追う様に上半身を動かす。

 僕は別の場所から魔法を放つのかと思い、周囲を見渡してある事に

 気付いた。

 エルフの女性は囮だ。本命であるエルフの少女はその別の場所から杖を

 構えていた。

 

 「雨の如く降り注ぎ、蛮族どもを焼き払え】!

  【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!」

 

 ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ !!

 

 女体の怪物に数え切れない数の炎の矢が、豪雨の様に降り注いだ。

 炎の矢は女体の怪物の下半身に居る巨大な花の群れを焼き尽くし、

 腰部分の葉や、上半身、腕に命中していく。

 広範囲且つ絶大な威力により、女体の怪物は怯んでいた。

 その凄まじい火力に僕は魅入っていると、離れた場所から金髪の少年と

 金髪のエルフの女性が跳び上がるのが見えた。

 

 「ティオネ!畳み掛けるぞ!シャリアは追撃をしろ!」

 「はい!」

 「わかった!」

 

 金髪の少年の指示で髪の長い褐色の女性も、女体の怪物の頭上へ

 跳び上がった。

 赤い瞳のエルフの少女も走り出して、僕もヘビーバーナーを用意する。

 

 ザ ザ シュ !

 

 金髪の少年達が3方向から交差して女体の怪物の上半身を斬り付ける。

 女体の怪物は力無く背中から、その巨体を倒す。

 土煙が立ち込め、姿が見えなくなる。すると、勢いよく女体の怪物は

 下半身の巨大な花を自ら切断して逃走し始めた。

 それを赤い瞳のエルフの少女は追いかけていき、杖を構えて魔法を

 放つ用意をしていた。

 ...別方向からエルフの女性も追いかけていて、協力する必要も無いと

 思うが、せっかく用意したのだから足止めくらいはしてやろう。

 照準を女体の怪物の進行方向にロックし、砲口を斜め上に向けた。

 一定の速度で移動しているので、タイミングを見計らう。

 

 ピ ピ ピ ピ ピピピピピ...

 

 標的がロックした地点に近付いてくると、センサーの音が段々と

 短くなっていく。

 

 ピロロロロロッ!

 バシュウッ!

 

 そして、ロックした地点より50m先でミサイルを発射する。

 ミサイルは上空を飛行していき、自律誘導によって進路を変えつつ

 急降下する。 

 追いかけていた赤い瞳のエルフの少女と、エルフの女性はミサイルに

 気付き足を止めた。

 女体の怪物も気付いたが、その時には目の前に着弾していた。

 

 ド オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ンッ !!

 

 エルフの少女の魔法に負けない程の威力を持つ爆発が起き、

 女体の怪物は爆炎に呑み込まれた。

 爆風で土煙が地面を這うように押し寄せてくる。

 通常の赤外線からX線に切り替え、土煙に遮られている向こう側を

 確認する。

 爆炎によって女体の怪物は全身が焦げており、腰の葉や頭部の毛髪が

 燃えている。

 それでも尚、逃げようとしているのか起き上がろうとしていた。

 そこへ、エルフの女性が丘の上に降り立ち杖を向けた。

 

 「【吹雪け、三度の厳冬--我が名はアールヴ】

  【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

 

 ヒュ ゴ オ ォ オ オ オッ !!

 

 強力な吹雪が発生し、女体の怪物が覆い隠される。

 一瞬にして頭部から上半身の根元までが氷漬けになり動かなくなった。

 その動かなくなった女体の怪物の上空から赤い瞳のエルフの少女が

 杖を構えて降下していく。

 

 「【一掃せよ、破邪の聖杖】!」 

 

 バキィンッ!

 

 氷漬けになっている女体の怪物の胸部に杖を突き刺し、魔法を放った。

 

 「【ディオ・テュルソス】!」

 

 ビ ギィィィィイイイッ!! 

 

 ...バ キャ ァ アッ...!!

 

 直接浴びせられた雷撃により、女体の怪物は断末魔を上げる事も無く

 氷を弾き飛ばして爆散した。

 恐らく体内にあった石が雷撃で砕けたんだろう。

 ...終わった。謎の人物の依頼は失敗になってしまったが、奴らの

 思惑通りにはならずに済んだろうから、問題はないだろう。

 砕け散った氷の破片が煌めく中、赤い瞳のエルフの少女が着地して

 いると、エルフの女性が近寄ってきていた。

 ...彼女からエルダーソードを返してもらおう。

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