【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 突然のアクシデントに見舞われたリヴィラの街。

 しかし、街そのものに与えられた被害は少なかったので一段落した

 フィン達は酒場で休息を取っていた。

 ボールスに頼み、店主には貸し切りにしてもらっているそうだ。  

 何が起きていたのか状況を改めて確認し合う事になり、リューと

 フィルヴィス、デミ・スピリットが生まれた瞬間を目撃していると

 いう事で、ルルネも加わっている。

 始めにオリヴァスが捕食者の手によって、殺されたという話を聞き、

 リューは最初こそは理解が及ばず呆然としていた。

 だが、話を聞く内に何故死んでいたはずのオリヴァスが生きて

 いたのかという疑問を抱いた。

 かつて因縁があったらしく、死亡したという事は当時、ギルドからの

 発表で知っていた。 

 故に死亡していたはずのオリヴァスが何故生きていたのか、それが

 信じられなかった様だ。

 

 「極彩色の魔石を体内に埋め込んでいたからだと思う」

 

 フィンはそう考察した。

 実際に見た訳でもないので確証は無いが、オリヴァスの証言があるため

 仮にそれが事実だとすれば、かつてイヴィルスを率いていた幹部も

 蘇っている可能性がある。

 更に、極彩色に輝く魔石は、ヴィオラスやヴィルガから採取した事が

 あるので、リヴェリアはこう予想した。

 どちらのモンスターもイヴィルスがパントリーで繁殖させ、調教した後

 ダンジョンに放っていたのではないかと。

 フィンもその予想はしていたらしく、否定はしなかった。 

 だが、あくまでも予想なので確信はまだ持たない様にと、その場に居る

 全員に伝えた。

 次に、デミ・スピリットの話へ移る。

 まず、ルルネが宝玉を持ち去ろうとしていたのか、そこから説明を

 始めた。

 曰わく、昨日夜道を歩いている際に真っ黒なローブを全身に被った

 人物が現れ、目印を頼りにその宝玉を、物資置き場から回収する依頼を

 受けたからだと言う。

 怪しいとはルルネも思っていたそうだが、報酬と前金に釣られてしまい

 承諾したという事も話した。

 

 「今後は、不審な人物から軽率に依頼を受けないでください」

 「はい。もちろんです...」

 

 呆れた様子のリューに注意され、ルルネは耳と尻尾を垂らして頷くしか

 なかった。

 すると、レフィーヤはそのローブを被った人物もイヴィルスの使者では

 ないかと予想して答えた。

 だが、フィンがそれをやんわりと否定した。

 レフィーヤは少し焦りながら、何故否定された事に困惑する。

 

 「もしイヴィルスの使者だったら、彼らに殺されてるはずだ。

  恐らく彼らもその人物に依頼され、宝玉をどこかで手に入れた後...

  物資置き場に隠したんじゃないかな」

 

 リヴェリアもその推測であれば、辻褄が合うと頷いて納得した。

 しかし、モンスターに寄生してあの様な姿に変える事が出来る宝玉を

 回収しようとしていた目的が何か、それもまたわからない。

 仮にレフィーヤが言った通り、イヴィルスの使者であるのなら、その

 人物を見つけ出し目的を聞き出す方が最善の選択だとフィンは考え、

 ギルドに提出するか決めかねていた。

 イヴィルスに関する話しはそれで終いとなり、次にフィルヴィスと

 捕食者について話は移った。

 フィルヴィスは6年前に起きた事を全て話した。

 

 「なので、彼らは私や仲間達にとって恩人だ。

  オリヴァス・アクトを討ち取ってくれた事も感謝している」

 

 フィルヴィスは清々している様子で答え、リューも口で言わずに

 内心で共感していた。

 親しい交流関係があるアスフィを殺そうとしていた、オリヴァスを

 自身もあの時は仕留めるつもりでいたからだ。

 しかし、捕食者が代行したというので、少なからずフィルヴィスと同じ

 気持ちになっている。

 だが、アーディの気持ちを知っている以上複雑な気分になっているのは

 自分自身でもわかっていた。

 今更ではあるが、ここにティオナとアーディの姿はない。

 アイズは居るのだが、どうやら話の内容は一切耳に届いていない

 様子だった。

 先程のフィルヴィスの発言を聞けば、アーディがどうなっていたかと

 思うと、リューは不安な気持ちで埋め尽くされる。

 

 「あ、あの、フィルヴィスさん。質問があるのですが...」

 「何だ?答えられる範疇でなら問題ないぞ」

 「フィルヴィスさんは前衛職なんですか?

  短剣の他にも、杖を持っていらっしゃいますけど...」

 「そうだな...所謂、魔法剣士といったところだ。

  後衛職はどうも合わなかった。だから、自ら前に出る事を選んだ」

 「ほぉ、魔法剣士か...」

 「だ、だったら私尊敬しちゃいます!

  私にとって、憧れのバトルスタイルなんですもの!」

 

 目をキラキラと輝かせ、憧憬の眼差しを向けられるとフィルヴィスは

 若干困惑する。

 それにリヴェリアはため息をつきながら、レフィーヤの目を手で

 押え眼差しを途切れさせた。

 

 「尊敬するのはいいが、過度になるな。フィルヴィスが困っているだろう」

 「あぅ...ご、ごめんなさい...」

 「い、いや、いいんだ。リヴェリア様もその辺りで...」

 

 フィルヴィスは止めてもらうよう言うと、リヴェリアは手を離した。

 

 「けれど、レフィーヤの気持ちはわかるよ。

  僕としても称賛しなければならない実力だ。今回は本当に助けられたね」

 「気にしないでほしい。私は...

  彼に会えるかもしれないという気持ちでここへ来た。

  協力する事になったのは偶然と言えるが...

  彼に会え、【勇者】に感謝してもらい嬉しく思う」

  

 それが素直に思った気持ちで、フィンの感謝の意を受け入れる。

 すると、フィンは手を差し出し握手を求めた。

 それを見てすぐにフィルヴィスは手を握り締め、握手に応じる。

 エルフが肌の触れ合いを基本的に嫌がるのは、一般的に知られており、

 フィンは応じてもらえらた事に安堵したのか、微笑んでいた。

 その時、リューが立ち上がるのにティオネは気付く。

 

 「少し...アーディと【大切断】の様子を見に行ってきます。

  まだ戻ってきていないので、心配になりましたから」

 「え?...あぁ、うん。もし気に食わない事言ったら、引っぱたいても構わないわよ」

 「い、いえ、そんな事は...」

 

 しない、と言い切れないポンコツなリューはお辞儀をして席を立つ。

 握手を終えたフィルヴィスは、リューの背中を見送る。

 どこか思い詰めている様に見え、少し気がかりとなった。

 

 「フィルヴィス。もし良ければ、並行詠唱の指導をお願いしてもいいだろうか?」

 「え?い、いえ、そんな!リヴェリア様の並行詠唱は私よりも巧ではありませんか」

 「あぁすまない。私ではなく、レフィーヤに助言などをしてもらいたいんだ」

 「ぜ、是非お願いします!小さな事でも、コツの様なものでも教えて頂けたら...」

 「...指導の程に自信はあまりないが、リヴェリア様の頼みとなれば喜んで引き受けよう」

 「!。あ、ありがとうございます!」

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 アーディを探し回っているリューだが、一向に見つからない。

 ガネーシャ・ファミリアの団員に聞いてみたが、わからないと言われ

 途方に暮れていた。

 

 「(...物資置き場でしょうか?)」

 

 そう考え、物資置き場に辿り着く。

 すると、誰かが座り込んでいる影を見つけすぐに駆け寄った。

 近付くに連れ、影が薄くなりその人物が明らかとなる。

 

 「...【大切断】?」

 

 リューの目の前に居るのは、ティオナだった。

 膝を抱え込んだまま三角座りとなり顔を伏せている。

 普段の彼女を少しは知っているリューにとって、その様子は明らかに

 変だと思った。

 アーディと一緒に居れば、必ず頭を悩ませる天真爛漫なはずなので、

 こんな風に落ち込む様は今までに見た事がない。

 ティオナはリューが目の前に居るのに気付いているのか、気付いて

 いないのかわからないが微動だにしない。

 無言のままティオナに近寄り、隣にリューは座った。

 座った土台には罅が入っており、そこから近付くなとティオナの

 心境を表わしているかのように思えた。

 

 「...アーディと言い争いになってしまったんですか?」

 

 ティオナは首を小さく横に振る。

 どうやらそうではないらしい。それにリューは一先ず安堵し頷く。

 

 「では...アーディと仲直りする方法を模索しているんですね」

 

 喧嘩ではないが、このままお互いの関係を終わらせたくないという

 気持ちは理解している。

 今、こうして悩んでいるのもそのせいだとリューは思っていた。

 しかし、ティオナはまた首を横に振った。

 思っていた返答と違う事に、リューは首を傾げる。

 

 「違うのですか?それなら...何故、ここに1人で?」

 「...オリヴァスって人が捕食者に殺されるところを見て...

  あたし...たの...」

 「...申し訳ない。もう一度、言ってもらえませんか?」 

 

 リューは少し顔を近づけ、膝に顔を埋めるティオナに聞き返す。

 それにティオナはまた小さく言った。

 

 「あたし、興奮したの...

  鳥肌が立って、体が震えるくらい...すごく喜んでたみたいで...」

 

 それを聞いたリューは以前に学んだ記述を思い出す。

 アマゾネスが強い男を好む、という習性を。

 ティオナは親友との関係を修復するという悩みではなく、種族の習性に

 対して悩んでいたのだ。

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