【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
「うぁぁぁぁぁあああああああ!!
いたぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
グランは叫びながら一心不乱になって、大剣を自身の前後左右に
大きく振るう。
ディックスは自分ではなく、グランに姿を見せるとは思って
いなかったので慌ててグランの方を見る。
団員達もグランを見ているが、何に攻撃しているのかわからないが
とにかく錯乱した様子となっているのがわかった。
「出て来いクソッタレェェエエエ!化け物めええええぇ!
チキショォオオオ!!」
「グラン!おいっ!何を見たん、うおぉっ!?」
「キャッ...!」
ディックスが立っている位置まで近付き過ぎたせいで、グランが
大剣を振るうと直撃しそうになった。
それを回避するためにディックスは仰け反って後退するが、足元に
落ちていた仲間の一部を踏み付けてしまい体勢を崩して、背中から
転倒した。
首を掴まれていたフィアはその拍子に離され、地面を転がった。
「っ!ルルネ、貸してください!」
「え!?お、おい!?」
「彼女の救出に向かいます!ここで待機を...!」
「お願いしマス...!」
アスフィは岩陰から飛び出し、タラリアに巻き付いている金の翼を
展開し飛行能力を有すると、地面ギリギリを低空飛行してフィアの元へ
急いだ。
ディックスは倒れた際、後頭部に仲間の武器が強くぶつかったため、
立ち上がる事が出来ずにいた。
その隙を狙い、アスフィはフィアに近付くとルルネから奪い取った
ハデス・ヘッドを頭部に装着させる。
フィアは透明化し、周囲からは見えなくなった
「落ち着いてください。貴女の同胞の味方です」
「!。...あ、ありがとうございます...」
「さぁ、こちらに...」
頷いたフィアは大人しくアスフィに従う事にして、その場から離れて
行った。
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他の奴らは2人に任せ、僕はあの大柄な男に狙いを定めた。
大柄な男は巨大な剣を乱雑に振るい、冷静な判断が付かないまま
見えない敵に攻撃している。
今は待とう。そう思い、僕は動きが止まるのを待った。
疲弊し切った所を狙う...獲物を狩る基礎基本だ。
しばらくして、大柄な男は両足が縺れて転んでしまった。
息を切らし、もう立つのもやっとの状態になっている。
...今か。
僕はガントレットを操作し、音響波を背後の壁に向かって飛ばした。
『こっちだ』
「っ!」
フォシュンッ!
大柄の男がこちらを向いた瞬間を狙い、僕はバーナーを撃った。
砲口から放たれたプラズマバレットは一直線に飛んで行き、大柄な男の
右腕を貫く。
ブシュッ!
「うあああぁぁぁぁぁあああああああ!!」
右腕の手で大剣を握っていたため、そのまま大剣諸共吹き飛んだ。
大柄な男は激痛によってなのか、腕を失ったショックで叫んでいるのか
わからないが...
前者なら早く殺そう。
ピッ ピッ ピッ
ピピピピッ
僕は三点レーザーを大柄な男の頭部に照射し、バーナーの照準を
合わせる。
フォシュンッ!
ドパァッ...!
大柄な男の額にプラズマバレットが命中した。
プラズマバレットは着弾時に爆発させる事や物体を貫通させる事も
可能だ。
...あの男は戦利品に値しないので、後頭部を破裂させた。
顎の根元から頭部が消失した大柄な男の死骸は、直立不動のまま
前のめりになって倒れる。
フォシュンッ! フォシュンッ! フォシュンッ!
「ギャァアアアッ!!」 「アァアアアアアッ!!」
周囲で僕らが居る空間から、通路まで響き渡る程の断末魔が上がる。
振り返るとバーナーで奴らと関わっていた残りの冒険者は、ある者は
胸部を貫かれ、ある者は頭部を失って死んでいた。
残るは獲物を嬲っていた、あのゴーグルを付けている男だけだ。
覚束ない足取りで、岩肌に手を掛けながら立ち上がろうとしている。
...あの男にはバーナーを使用しない事にして、僕は肩の装甲に収納する。
ゴーグルを付けている男に近づいて行き、どうするか見定める。
「ぐっ...おい、どうなって...ぁっ...!?」
ゴーグルを付けている男は既に仲間達が、全員死んでいるのに絶句し、
震え始めた。
恐怖を感じているんだと思いつつ、僕は呆れながらに怒りを覚える。
理由は当然、こんな弱き者が獲物を嬲り、快楽に浸っていたからだ。
僕らにとって狩りとは、単なる娯楽や遊戯で行ったりなどしない。
獲物の命と引き替えに名誉を獲得し、その獲物に対し賞賛を捧げる事が
掟とされている。
それは、我が主神が最初に定めた掟だと教えられた事がある。
獲物を嬲る事は断固として許せない。
...それに加え、こいつは奴らと関わっている。
あの喋るモンスターは既に姿を消しているが、もしも同種が居るので
あれば、このゴーグルを付けている男に報復として同じ様な目に
遭わせているかもしれない。
...だが、僕らはそうはしない。
我が主神の教えを裏切ったりなど出来ないからだ。
それなら...こうしてやろう。
気付かれない様にワイヤーの先端を獲物の足を締め付けるための
輪にして、ゴーグルを付けている男の足元に置いた。
次にワイヤーを引っ掛け、スピアガンを天井に向かって撃つ。
天井に刺さった事でフックとなり、ワイヤーが引っ張られると輪が
縮まってゴーグルを付けている男の両足首に巻き付いた。
ズルルルルッ ビシィッ...!
「うぉっ...!?」
上手くゴーグルを付けている男を吊し上げる事が出来た。
最後の仕上げに掛かろう...と、した矢先、あの人物が姿を現す。
どうしたのかと思ったが...何となく、予想は出来た。
「お前が我が同胞達を苦しめていた密猟者...
【暴蛮者】 ディックス・ペルティクス...君が首謀者だったのか。
ここで捕まったのが運の尽きだな」
「テ、テメェ...!こんな事すりゃ、ギルドが黙ってないぞ!?」
「問題はない。お前達はイヴィルスと何かしらの関係を築いているようだな?
あそこで死んでいる亡骸を証拠として、お前達の悪事を暴かせてもらう。
...モンスターの密輸を行なっていたのは、特に誇張させてもらおう」
「っ...!お、おいおいおいおい、勘弁してくれよ。
なぁ?頼む。金ならいくらでも払う!今すぐに解いてくれりゃ」
...少し、黙らせるか。
指が食い込む程首を掴むと、ゴーグルを付けている男は突然、
窒息状態となった事に驚き、苦しみ始める。
気にせず僕は、無防備となっている鳩尾に拳打を叩き込んだ。
黙らせるには徹底的に叩き込むしかないと思いながら、10回程、
叩き込む。
ゴーグルを付けている男は呼吸が不安定になり、胸部に走る鈍い痛みで
呻き声を出し、咳き込んでいた。
「ありがとう。...では、少し待っててもらえるかな」
カカカカカカ...
僕は鳴き声を出して、掴んでいる首を話した。
ゴーグルを付けている男は咳き込んで、すぐには言葉を
発せない様に思えた。
しかし、ヒアリングデバイスが音を拾ったのに気付くと、
ゴーグルを付けている男を見る。
「【迷い込め、果てなき悪夢】
【フォベートール・ダイダロス】!」
ギ ィ ィ ィ イ イ イ イ イ イ ンッ...!
ゴーグルを付けている男の左手の指から、赤黒い光波が放出した。
赤黒い光波は稲妻の様に僕を呑み込む。
「しまった...!?」
ビビーッ! ビビーッ! ビビーッ!
その途端に自身に危険を促すアラートがヘルメット内に響き渡る。
状況を知らせるために表示されている3Dスクリーンには、僕自身の
脳内にある神経細胞が、その赤黒い光波によって過剰に刺激され、
徐々に神経伝達物質が減少していくのがわかった。
ヘルメットに備わっている緩衝機能などの防御策によって、頭部に直接
赤黒い光波を浴びなかった事が幸いし、まだ手足は自由に動く。
緑色に表示されている脳内が完全に赤くなってしまうと、恐らく
混乱状態に陥るに違いない。
僕は足を掴んでいた手を離し、ガントレットを操作した。
音波や電磁波ではなく、光波のみの様なのでヘルメットの内側に
内蔵されている遮光機能でそれを防ごうとする。
ピッピッピッ
ピピッ ピピッ
ビビーッ! ビ...
アラートが聞こえなくなり、もう安全だと確認する。
赤黒い光波が消えるのに気付き、僕は後ろを振り向く。
ゴーグルを付けている男は憎たらしく高笑いを上げ、勝利を確信した
様子でいた。
「これで俺の勝ちだ!おら!そいつを殺せよっ!殺せぇっ!」
...どこまでも愚かな男だ。
あの人物は僕を警戒しているので、僕は鳴き声を上げると
ゴーグルを光らせた。
僕が正気である事を伝えるためだ。
あの人物はそれに気付き、構えていた右腕を下ろした。
僕にはもうあの赤黒い光波は効かないが...
二度と使えない様にしておこう。
ヴゥウン...
僕はクローキング機能を解除して、ゴーグルを付けている男の前で
姿を見せた。
これは認めたから姿を見せた訳ではない。
最後に見えた光景が、僕という敵いはしない敵だと知らしめるためだ。
「...お、お前が、グラン達を殺した奴か。ハ、ハハハッ...!
そんな仮面付けてるなんて、自分の顔が醜いから」
バキィンッ!!
グチャッ!
「グァッ...!?ああぁ、ぅぅ...!」
なのか、と言い切る前に僕はリスト・ブレイドの片側の刃のみを、
短く伸ばした状態でゴーグルを叩き割ると同時に、右目の眼球に
突き刺す。
グチュッ! ミチミチィッ...!
ブチィッ! ブツッ...!
「ギアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
刃間を少し狭くしているので、眼球の中央となる瞳孔に刺せた。
リスト・ブレイドを念入りに捻じ込み、深くまで刺すと勢いよく
引き抜く。
眼窩から眼球は突き刺さったまま抜かれた。
ゴーグルを付けていた男は、両手で眼球を失った右目部分を押さえ
叫んでいる。