【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 クノッソスに存在する複数もの大広間の1つで、檻を運び終えた

 イケロス・ファミリアの団員達は、ディックス達を待っていた。

 既に置かれている檻の中には、傷つき動けなくなってしまっている

 モンスター達が閉じ込められている。

 もうじき密輸する予定なので、また稼げると団員の1人は

 思っていた。

 しかし、未だに戻って来ないディックス達が気になり始めている。

 

 「なぁ、ディックス達まだ戻って来てないのか?」

 「ああっ...まさか、モンスターにやられたとかじゃないよな?」

 「おいおい、アイツはレベル5なんだぞ?それにカースだって使えんだ。

  そう簡単にくたばって」

 

 カツーンッ...

 カラン カラーン...!

 

 たまるか、と言い終える前に何かが団員達の前に転がった。

 それはディックスが愛用している、槍先が赤い槍だった。

 団員は目を凝らして、よく見てみると柄部分に血痕が付いていた。

 イケロス・ファミリアの団員達はそれが何を意味しているのか、すぐに

 察知し武器を構え、敵に対し警戒し始める。

 

 「だ、誰だ!?出てこいっ!」

 

 その呼び掛けに、返事は返って来ない。 

 周囲を警戒しながら、団員の1人がディックスの槍に近付き、

 回収しようとする。

 目と鼻の先まで近付くと、血が付着していない箇所を掴んで、

 拾い上げた。

 

 ピッ ピッ ピッ ピッ...

 

 ド ガ ァ ア ア ア ア ア ア ア ンッ !!

 

 その瞬間、爆発が起き団員は爆発による爆炎と爆風に呑み込まれた。

 付近の団員達も爆風で吹き飛ばされ、檻や岩肌に叩き付けられる。

 離れた場所に居た団員達は直積的な被害を受けなかったものの、突然の

 爆音に耳を塞ぎ、脳を揺さぶられたかの様な感覚に襲われ顔を歪める。

 痩せ細った男の団員の顔に何かが降りかかってきて、それを振り払い、

 地面に落ちたそれを見る。

 爆炎で黒焦げになった手だった。

 手首から下の前腕が欠けているのは、衝撃波を直接的に浴びたせい

 だろう。

 痩せ細った男は先程まで生きていた仲間の手が、自身の顔に

 触れたのだとわかると、顔を急いで袖で強く拭く。

 だが、皮膚の焼け焦げた臭いが取れず更に強く拭いてみるが、寧ろ

 皮膚に臭いが沁み込んでしまい逆効果となった。

 

 「う、ぅぁ、ぁあ...!ぁぁ、ぁ、ぁあ、あああああああああっ!!」

 

 痩せ細った男は臭いが取れなくなり、一生このままになると思い込んで

 しまい発狂した。

 爪を立てながら手で顔面の皮膚をガリガリと引っかき、皮膚そのものを

 剥こうとし始める程に。 

 他の団員達はその異常な行動を取る仲間を見て、戦意喪失してしまい

 クノッソスから出るための出入口へ向かおうとする。

 

 ジュッ...

 

 「いぎぃっ!?...?」

 

 女性のエルフの団員が一番最初に、出入口の前にある巨大な階段を

 登っている最中、転んでしまった。

 階段で躓いて転んだと思い、自身の足部を見る。

 だが、躓いたはずの足部が下の段に転がっているのに気づいた。

 

 「...ひ、あぁ、あぁあ!!足がぁあああ!?」

 

 足首から下が切断され、断面が焼け焦げていた。

 それを見て団員達は慌てて階段を登るのをやめ、別の出入口へ

 向かおうとした。

 

 「どこへ逃げても無駄だ。イケロス・ファミリア」

 「「「「!?」」」」

 「リド!グロス!」

 

 すると、その別の出入口からフェルズが姿を現してそう宣言する。

 団員達は突然現れたフェルズに驚き、数歩後退していった。

 フェルズの後に続いて、リド達も大広間へ入って来た。

 檻に閉じ込められているモンスター達がリド達を見て、助けにきて

 くれたのだと歓喜した。

 

 「テ、テメェら、どうやってここに...!?」

 「決まっているだろう。ディックス・ペルティクスが君達を裏切り...

  クノッソスの鍵を渡してくれたからだ。

  他にも仲間が持っていたので、こちらに回収させてもらっている」

 

 フェルズは鍵を見せつけながら経緯を話し、降伏を迫った。

 

 「既に理解している通り、ディックス・ペルティクスも他の仲間達も無残な死を遂げた。

  君達もそうなりたくないのなら、降伏するんだ。

  さもなければ、君達も」

 

 ドチャ...! ドチャッ!

 ガコォーンッ!

 

 フェルズの言葉を遮って、団員の目の前に何かが吊り下げられる。

 団員達はそれを見て、ただ戦慄した。 

 内蔵を抜き取られ、生皮を剥がされている死体が天井から

 吊るされているのだからだ。

 片方はゴーグルを額に付けられたままで、もう片方の死体は頭部が

 無く、傍には先端の割れた大剣が落ちていた。

 リド達もその死体を見て驚き、リドとラーニェは以前に見た事が

 ある事を思い出した。

 

 カカカカカカ...

 

 低い顫動音が鳴り、フェルズ達の前方で3つの淡く発光する物体が

 出現した。

 

 「...こうなってしまうようだな。残念だが、彼らを止める事は出来ない。

  来世では真面目に生きてくれ」

 

 フォシュンッ! フォシュンッ! フォシュンッ!

 

 青白い光弾が連続でいくつも発射され、立ち尽くす団員達の胸部を

 貫いていく。

 また次々と死んでいく仲間達を目の当たりにして、我に返った幾人かの

 団員は恐れ慄き、檻の影に隠れ始める。

 やがて青白い光弾の発射が止むと、1人が剣を引き抜いて檻の中に

 閉じ込めているモンスターを引き寄せ、首を絞めつけながら言った。

 

 「こ、こいつを殺すぞ!?いいのか!?」

 「貴様ァ!」

 

 グロスは仲間のモンスターに手を掛けようとしている団員に向かって

 吠える。

 団員は不敵に笑みを浮かべ、本気だと示すために剣を突き刺そうとした

 

 ザシュッ!

 ズバァンッ!

 

 瞬間、自身の首を絞めている腕が肘の根元から斬り落とされる。

 

 「ギャァアアアアアアアアッ!?」

 

 フォシュンッ!

 ドパァッ...!

 

 切断された箇所に走る激痛で、檻の影から出てきた途端に冒険者の

 頭部が消し飛んだ。

 同じ様に隠れている団員は、それを見て震えが止まらなくなっている。

 俺だけは助かりたい、そう利己的な事を思っている団員の耳に 

 風切り音が届いた。

 前を向いた瞬間、檻の柱を縦向きにすり抜けてきた円盤が団員の

 頭部を、顔面から後頭部に掛けて一直線に斬り裂く。

 円盤は非常識な動きで大広間を飛び交い、隠れている団員達の頭部を

 切り裂いていった。

 

 「ウァア...!アァアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 最後に残された団員は、隠れていた檻の影を飛び出し階段を登って

 逃げようとする。

 しかし、あるものを見つけて立ち止まった。

 先程、足を切断された女性のエルフの死体だ。

 だが、妙な事に腰から上半身と下半身とで真っ二つになってしまって

 いた。

 恐らく、あの後暴れた拍子に階段を転げ落ちてしまった事で、自ら

 死を招いてしまったのだろう。

 

 『どこへ逃げても無駄だ』

 

 その言葉が再び聞こえ、震えながら恐る恐る振り返る。

 目線の先には、黄色い2つの光が浮遊していた。

 それは、捕食者の両目だった。

 団員は腰が引けながらも、歯を食いしばり腰から剣を引き抜いた。

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ...こいつは強くもない臆病者だ。決闘する気もしない。

 

 「オ、ォオオオオオッ...!」

 

 僕は向かってくる男が手にしている武器をリスト・ブレイドの

 刃間で挟み込む。

 そのまま刃間を狭め、腕を勢いよく振るい捩じると剣の刃を折った。

 それに驚いている男の首を掴むと、持ち上げながら腰に巻き付けている

 革のベルトも掴んだ。

 首を掴んでいる方の手を持ち直し、少し飛び上がって膝を曲げながら

 着地しようとする。

 

 メギョッ...! 

 

 片膝を付いた姿勢で着地すると、落下の勢いを利用して男の背骨が

 突き上がっている膝に直撃した。

 胸髄と腰髄の中間が砕け、更に頚髄も着地の際に折れた事で呼吸困難に

 させた。

 僕は立ち上がりながら男を投げ捨て、地面に転がす。

 男は虚ろな目で、首を動かせないため天井を見る事しか出来なくなって

 いた。

 ...無謀なまま最期を迎えようとしているこの男に、情けを掛けるか。

 

 ジャキンッ

 ドシュッ!

 

 リスト・ブレイドの刃を伸ばし、刃間を先程と同様に狭めさせて

 喉を一突きする。

 頚髄が折れているため容易く突き刺さった。

 ヘルメットで心肺と呼吸が停止し、生命活動が途絶えた事を確認すると

 僕はリスト・ブレイドを引き抜く。

 

 ブシャァアアッ...!

 

 刺創から鮮血が噴き出し、ヘルメットや僕自身を汚していく。

 ...獲物なら気にしないが...

 こいつらの血は、気分が悪くなりそうに思えた。

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