【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 ...予想していた通りの発言を、我が主神は口にした。

 ゼノスという知性を持つモンスターに我が主神は、興味を持たれたの

 だろう。

 その上、レイというゼノスの歌声を大変気に入っているのも把握して

 いる。

 リドというゼノスは、突然の申し出に戸惑いを隠せないでいた。

 すると、蜘蛛の女性のゼノスが前に出てくる。

 

 「協力関係だと?何故我々が、人間と協力しなければならないんだ!」

 『貴方達、ゼノスの事はウラノスから聞いたわ。

  15年前にレックスが見つけて、初めてコンタクトを取ったのも彼女である事も』 

 

 レックスの名前が出てきて、僕は直感だがスカーは前を向きそうに

 なったと思う。

 しかし、首を垂れたたままでいなければならないので堪えてもらうしか

 ない。

 周囲のゼノス達はザワついており、岩の竜のゼノスが叱咤すると

 静かになった。

 

 「...アイツノ事ヲ知ッテイルノカ?」

 『ええ。あの子は私の眷族になっていて...

  今、遠くへ行っていて、しばらくは会えないのよ』

 「それは直接レックスから聞いてるぜ。

  じゃあ、俺達と時々会ってるって事は聞いたのか?」

 『ええ。あの子に事情を説明して、話してもらったわ。

  ウラノスに内密にするように言われていたから、私や皆に内緒で仲良くしているって事を...』

 

 レックスは元々、我が主神の夫であるオシリス様の眷族だった。

 我が主神が先に地上へ降り立っていたオシリス様にある条件を出し、

 それが成立した事で入れ替わるように地球へ降り立った。

 その条件というのが...

 

 「...神ネフテュス。話しを反らしてしまいますが、単刀直入にお聞きします。

  何故、オシリス・ファミリアの団員達を引き入れたのですか?

  貴女と神オシリスのご関係は私共の主神からお聞きしてはいますが...

  その事と関係があって、貴女はオラリオへ来たのですか?」

 『...そうよ。私がここへ来るためにあの方に条件を出したわ。

  あの方の眷族の面倒を引き受けるから、天界での役割を交代してほしい、と』

 「役割って、死んだ人の魂の管理とかそういうの、だったりします?」

 『ご明察ね。でも、交代したのは...あの子のためなのよ』

 

 ファルコナーが低空飛行して、僕の顔を見据えた。

 3人の視線がこちらに向けられる。

 

 「...彼らの素性は明かせないのでしたね?

  では...それ以上は聞かない事にします」

 『ありがとう。ヘルメスの子供にしては、聞き分けがよくて助かるわね。

  ヘルメスなんて天界に居た頃は、いっつも言う事を聞かないでフラフラとどこかに行くのよ?』

 「本っっ当に申し訳ございません!

  今も昔も変わらないクズですっとこどっこいなヘボ神で...!」

 

 アスフィという女性は額を地面に付けながら、我が主神に謝罪する。

 ルルネとローリエという女性はその姿に動揺しているようだった。

 それに我が主神は腹を抱えて笑っていらした。

 

 『自分の主神を、そこまで罵倒するなんて...面白い子ね。 

  これからも、ヘルメスの事をお願いしていいかしら?』

 「仰せのままに!」

 「...えっと、ホントに話が逸れちまってるんだけど...

  ネフテュス様達は俺っち達と本当に協力してくれるのか?」

 

 リドというゼノスが目の上辺りを爪で掻きつつ、問いかけて来た。 

 次いで、岩の竜のゼノスが割って入って来る

 

 「アイツには幾度も世話になっている。そこの人間も同胞達の手当てをしてくれた。

  ...だが、他の人間を信じるつもりなど、私は無い」

 「おいおい、ラーニェ。今それを言うもんじゃねえだろ?」

 「黙れ!そもそもお前は何故、あんなものを見て平然と話しかけているんだ!」

 「あ、あれは、その、確かにやる事が派手だとは思ったけど...」

 

 ...僕らにとって生皮を剥いで吊るす事は、示威として行う事だ。

 奴らであれば、子供や妊娠している女以外では問答無用でそうすると

 決めている。

 それが原因で、どうやらあの石の竜のゼノスは僕らを警戒しているの

 だろう。

 

 『...待って?貴方達...気付いていないのかしら?彼らは...

  1人を除いて、人間ではないわよ?』

 「何?ドウイウ事ダ...?」

 

 ...僕は耳を疑った。気付いていなかったのか?

 今こうしてスカーとヴァルキリーは姿を見せているのに、何故なのか

 気になっているとファルコナーはアスフィという女性の目の前に

 移動する。

 

 『貴女達も気付いてなかったの...?』

 「そ、その...今は姿が見えていますが、それまでは見えていませんでしたし...

  それに、仮面で顔は見えないですから...」

 

 そういう事か...それなら、仕方ないと思おう。

 ファルコナーはアスフィという女性から離れ、20-D5の中央で

 灯りのための燃え盛る炎の前へと、再び移動した。

 

 『...2人共。ヘルメットを脱いで?貴方はいいから。

  これは名誉に背く事ではなく...私からのお願いとして見せてほしいの』

 

 ...カカカカカカ...

 

 我が主神に言われ、2人は立ち上がるとファルコナーに背を向けて、

 並んだ。

 僕も邪魔にならないよう立ち上がって、2人の背後へ回った。

 アスフィという女性達やフェルズという人物、そしてゼノスの全員が

 注目している。

 

 カチッ

 プシューッ...

 

 ヘルメットの左側前頭部に接続されているパイプを引き抜く。

 呼吸するために必要なメタンガスが少量だけ溢れ、白い煙となって

 噴き出した。

 パイプを離すと、2人は両手をヘルメットに掛けロックを解除し

 顔から引き剥がす様に外した。

 ヘルメットを脇に抱え、その顔を見せる。

 人間であるアスフィ達やフェルズ、モンスターのリド達は、その顔を

 見て硬直した。

 ...まぁ、無理はないだろう。僕も初めて見た時は...

 

 ゴルルルルルッ...

 ガロロロロロッ...

 

 ...特徴において、まず挙げるなら口の部分だ。

 僕と同種である人間とは全く異なっていて、口の外周に外顎となる

 2対4本の牙がある。

 全て大きく開くと、正面から見て四角形を描くようになっており、

 その内側には人間と同様の上下に開く顎、正確には小さな牙と歯茎が

 剥き出される、という二重構造になっている。

 外顎の牙は節足動物の大顎の様に、それぞれ独立して動かす事が出来て

 ヘルメット内部にあるバーナーのトリガーや通信機能を起動するための

 ボタンが備わっている。

 僕のヘルメットには、そういった物は排除されている特殊な物だ。

 2度瞬きをする動作がトリガーとなる。

 その他に特徴を挙げるとすれば、人間のような鼻孔や耳介に相当する

 部位はない。

 だが、10M程の音ならヘルメットのヒアリングデバイス無しでも

 聴く事が出来る。

 眼窩が大きいが、対して眼は小さい。なので皆はあまり目が良くない。

 眉に当たる部分には棘が生えていて、年齢を重ねるとその棘や外顎の

 牙の本数が増えていくそうだ。

 エルダー様がその例となる。

 側頭部から後頭部にかけ黒色で先細りの管が数十本生えていて、それが

 何なのかは僕もわからないが、皮膚に生えているだけの体毛ではなく、

 それぞれが骨格の一部として頭蓋骨に関節を介して繋がっている。 

 ただ、意識的に動かせないらしい。

 体表には人間にない爬虫類に似た模様や鱗があり、体色も黄土や茶、

 緑、黒など爬虫類に近い色をしている。

 

 『彼らはこの地上とは違う所...

  空を越えた遥か彼方から、私と一緒に来訪してきた異星人よ。

  人間から見れば人間のようなモンスターに見えて、モンスターから見れば人間のような同種と見て取れないかしら?』

 「...偶然、遭遇シテイレバ確カニ、同胞ト見間違エテイタダロウ。

  ソレハ否定シナイ。ダガ...ナントミ」

 『ストップ。その言葉を言い続けたら、彼らの逆鱗に触れるわ。

  だから...胸の内に秘めて置いてね?』

 「...ソウシテオコウ」

  

 石の竜のゼノスは頷いて、我が主神の言う通りにしたようだ。

 命拾いしたな。

 僕らにとってそれは禁句であり、ディックスという男の眼を抉ったのも

 それが原因だったのだから。

    

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 『協力関係を結べば多くのメリットを与えてあげるわ。

  だから、どうかしら?』

 「...何故、そこまで我々の肩を持つんだ?」

 

 ラーニェは率直に質問した。

 そうまで言って協力関係を結びたいネフテュスの本心を知りたかった

 からだろう。

 ファルコナーは一度ラーニェを見てから、方向転換してレイの方を

 向く。

 

 『以前、レイに素敵な歌を聴かせてもらった事があるのだけど...

  それは盗み聞きをしてしまって申し訳ない気持ちになったから、そのお詫びも兼ねているの。

  贔屓してしまうけど、レイには特別に欲しいものを与えたい次第よ』   

 「欲しいもの、ですか...?」

 

 レイはその言葉に反応し、ネフテュスは続ける。

 

 『ええ。遠慮せず教えて?

  今まで私は退屈な7年間を過ごしていたのだけど...

  貴女の歌を聞けて、すごく気持ちが晴々したの。

  でも、ゼノスが密猟者に襲われる事があるのを知って、すごく心配になったから今日は話し合いに来たのだけど...

  もう密猟者も始末した事だし、その心配は無くなったわね。

  でも、同胞の皆も含めて協力関係になれば、そちらの負担は大いに減らしてあげられるわ』

 

 アスフィはもしも自分がゼノス達の立場になって考えてみる。

 第一級冒険者をも葬る力を持つ捕食者達が味方になれば、これ以上無い程

 心強く思う。

 しかし、反面デメリットがどの様なものとなるのかという、不安が

 過ぎった。

 恐らく金銭などに興味はないと思われ、魔石やドロップアイテムも

 彼らだけで十分大量に獲得するだろうから何を要求してくるか本当に

 わからない。

 そう考えながら、リド達を見る。

 いつの間にかヒソヒソと話し始めており、真面目に考えているよう

 だった。

 そして、話が纏まったようで前に出てきた。

 

 「ネフテュス様。本当にレイになら、何でも欲しいものをくれるのか?

  物じゃなくても、何かこう...願いとか」

 『ええ。可能であれば、という話しにならなければね』

 「...なら、協力するためにも1つだけレイの願いを叶えてくれないか?

  それでここに居る皆の信用が得られるはずだ」

 

 なるほど、とアスフィはリドの提案に納得した。

 条件が成立すれば、確かな信頼性を得られるからだと。

 

 『じゃあ、レイ。貴女の願いは何かしら?』

 

 ネフテュスは間を空けず、ファルコナーをレイへと移動させて

 問いかけた。

 あまりにも唐突な問いかけに、レイは戸惑うが意を決して答える。

 

 「私は見ての通り、両方の腕が翼になっていまス。

  なので、抱きしめる事が出来まセん...

  ですから...もしも...もしも、願いが叶うのでしたら両手が欲しいです」

 

 生物は不必要な部分を取り除き、環境に適応しようとする。

 鳥類は空を飛ぶために手を捨てた。何故なら、手があったとしても

 飛行時には邪魔でしかならないからだ。

 翼に指があるとしても、それはあくまで壁などに張り付くための

 補助として使うに過ぎない。

 両腕を残したまま翼を背中から生やしているドラゴンなどは、生物の

 概念を超越しており鳥類の成り立ちとは当てはまらないのだ。

 翼を差し出して答えたレイに、ネフテュスはしばらく間を空けてから

 問いかけた。 

  

 『それが、貴女の願いね?...わかったわ。その願いを叶えてあげるわ』

 「!。ほ、本当ですカ...!?」

 『嘘なんてつかないわ。だって、貴女は私を楽しませてくれたもの。

  神に二言なんてないわ』

 「...あ、ありがとうございまス...!」

 

 レイは笑みを浮かべ、頭を深く下げる。

 リドを始め、ゼノス達は本当にそんな事が出来るのかと訝るが、

 喜んでいるレイを悲しませないためにも黙っているしかなかった。

 すると、ファルコナーはレイから離れ、今度はアスフィ達の目の前に

 移動する。

 

 『さて...それじゃあ、次は貴女達と話さないとね』

 「あ...そういえば、私達をお呼びした理由とは何ですか...?」

 

 ルルネとローリエも理由を知らないため、耳を傾ける。

 

 『今日の今まで見た事を...

  ヘルメスに言わないでほしいから、それをお願いしたいの』

 「...口止め、という事ですか?」

 『私達が使っている装備をいくつかあげるから』

 「わかりました。ヘルメス様には何を聞かれても口を閉ざします」

 

 ルルネとローリエは即答するアスフィに呆気にとられた。

 いくら何でも相手の言いなりになりすぎてるのではないかと、

 思っていると今度はその2人に問いかけられた。

 

 『貴女達も要望はあるかしら?』

 「え?...。...じゃあ、4億ヴァリスとか?」

 「...私は5000万ヴァリスで...」

 

 流石に2人まで相手の思い通りにはなりたくないと考え、多額な

 口止め料を要求した。

 合計で4億5000万ヴァリスとなる。

 但し、ローリエは控え目に言っているがルルネは割と本気で言った

 ように思えた。

 それに対し、ネフテュスは即答する。

 

 『じゃあ、貴女の5000万ヴァリスを2倍にして...

  丁度5億ヴァリスをあげるわね』

 「「...えぇ...」」

 

 もはや打つ手無しと悟り、2人は項垂れるしかなかった。

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