【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 捕食者の2人はヘルメットを顔に着け直し、外していたパイプを

 繋ぐ。

 すると、数回ほど全身が光に包まれた。

 それが収まると、捕食者は左腕に装着している物体を触って、何かを

 見始める。

 リドはその様子を興味津々に見ていたが、グロスに肘で突つかれると

 焦りながら振り向いた。

 見てはいけないと言われるのかと思ったからだ。

 

 「...ドウ思ウ?手ヲ与エル事ガ、本当ニ出来ルト思ウカ?」

 「んん~...何となくだけど、出来るって確信はあるんだよな。

  あんな見た事のない武器とか持ってるし、ネフテュスって神様はレイの事気に入ってるみたいだしな」

 「...ソウカ。ダガ、ドウヤッテ...?」

 

 グロスが疑問に思い、ファルコナーを見る。

 何かを話しているようで、レイは翼を水平に差し出していた。

 すると、ファルコナーの表面の一部がせり上がり、そこから球体状の

 物体が浮かび上がる。

 ファルコナーが頭を下げる様に上体を傾けて、その球体をレイの翼の

 上に落す。

 

 キュイィィン

 

 その瞬間にレイの姿が消える。

 グロスは目を見開きながら驚き、すぐに駆け寄っていった。

 尻尾でリドを突き飛ばしてしまうが、それを気にする余裕もなく

 ファルコナーに掴み掛かる勢いで近付く。

 

 「オイ!レイニ何ヲシタ!?」

 「グ、グロス、落ち着いてくださイ!私はここに居まス」

 「ナ...!?...姿ヲ消シテイルトイウノカ...?」

 『そうよ。これで冒険者や知性の無いモンスターにもバレずに地上へ出られるから安心出来るでしょう?』

 

 グロスは唸るしかなかった。仲間を案じた余り、我を忘れ攻撃しそうに

 なっていたからだ。

 姿は見えないが、レイはそれを察してクスリと微笑む。

 

 「グロス、心配していただいてくれて嬉しくはありますガ...

  あまり過度になると大変な事になりますから、気をつけてくださいネ」

 「ワ、ワカッテイル。...クレグレモ死ヌナヨ」

 

 そう言い残してリドの元へ戻っていった。

 リドは突き飛ばされた事に対し文句を言っているが、グロスは無視して

 いる。

 ファルコナーはレイの前へと移動し、カメラのレンズで見つめるように

 した。

 

 『彼はとても仲間思いなのね。素敵だわ』

 「はい。私もそう思っていますガ...

  ただ...レックスはともかくとして、人間に対しての不信感はとても強いんでス。

  かつて、関わりを持った人間に何度も裏切られた事が原因で...」

 『そうなの...可哀想ね...

  でも、レックスの事は多少は信頼してくれてるのよね?』

 「はい。そのおかげで人間を殺すといった事まではしていないのが幸いでス。

  私も彼女のおかげで、こうして言葉を少しだけ上手く話せるようになりました」

 『あら、そうだったの。...でも、秀才だから不思議ではないかしらね』

 

 カカカカカカ...

 

 ファルコナーに近付く捕食者が低い顫動音を鳴らして、何か話しかけて

 きた。

 先程、ヘルメットを脱がなかった方の捕食者だ。

 レイには聞こえていないが、話し終えるとアスフィの元へと向かう。

 

 『それじゃあ、地上へ向かいましょうか。

  少しだけゼノスの皆と離れてしまうから、挨拶しておくのはどうかしら?』

 「...そうさせてもらいまス」

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 アスフィという女性に内容を書き記した紙を読んでもらい、今後の

 予定を伝えた。

 その間にクローキング機能が正常に作動するかの確認を終え、スカーと

 ヴァルキリーが近寄ってくる。

 

 「...わかりました。ルルネ、ローリエ、地上へ帰還した後、適当な宿で宿泊しましょう。

  私はネフテュス・ファミリアのホームへ赴きますので、お2人はその宿で待っていてください。

  目印はいつものようにお願いします。

  後日、フェルズが報酬を保管してくださったセーブポイントへ向かいます。

  5億ヴァリスもそこに保管してくださるそうです」

 「はいはい...というか、5億って現金で持ち運べるもんか?」

 「まず、袋に入れているなら、どれほどの大きさなのかがわかりませんよ...」

 

 ルルネとローリエという女性は何やら、ヴァリスを持ち運ぶ事に対して

 困っている様に見えた。

 あれくらいなら持ち運ぶのは簡単だと思うが...

 そこまで非力なんだろうか? 

 そう思っていると、リドというゼノスが近寄ってきたのに気付く。

 アスフィという女性達も気付いて、一度考えるのを止めていた。

 

 「アスっち、ルルっち、ロリっち、捕食者。

  さっきレイと少しばかりの別れの挨拶をしといた」

 「(ロリっちって...)」

 「今日は皆と会えて嬉しかったぜ。

  今までも手助けしてもらったりしてたが、改めてこれからもよろしくな!」

 「...はい。よろしくお願いします」

 

 アスフィという女性とリドというゼノスはお互い握手に応じる。

 次に2人とも、握手をした。

 ルルネという女性は最初こそ戸惑っていたようだが、手を握ると

 ぎこちない笑みを浮かべていた。

 ローリエという女性は、それと対象的に明るく笑みを浮かべながら手を

 握った。

 そして、僕らへも握手を求めてくる。 

 

 「こっちの2人と違って、お前は人間なんだよな?

  いつか素顔を見せてもらえるくらい、仲良くなろうぜ」

 

 ...カカカカカカ...

 

 いつか、となると、もうすぐ始まるんだったな...

 無事に生きて戻れたら...その約束は必ず果たそう。

 僕はその想いを込めてリドというゼノスと握手を交わした。

 スカーとヴァルキリーも握手を済ませ、アスフィという女性達と

 20-D5と正規ルートへ続く通路の出入り口で別れる事となった。

 

 「では、皆さん。お先に地上へ進出する事になりますが...

  行ってきます」

 「おう!何か面白そうな思い出話聞かせてくれよな!」

 「はい。もちろんです」

 

 レイというゼノスがそう答えてから、僕らは通路へと入る。

 ゼノス達の声援や気を付けるようにという言葉を背に受けながら、

 通路を進んで行った。

 しばらくして隠し扉となる、水晶で隠されていた出入口から出て

 正規ルートへと戻ってきた。

 ふと、あの水晶で隠されていたのなら、どうやってここを隠すのかと

 疑問に思った。

 だが、よく見ると足元から花が芽を出す様に水晶が生え始めていた。

 ここへ来るのは上級者でなければ来る事はまず無い上に、今は深夜だ。

 恐らくここを誰かが通る頃には水晶で隠されているだろうと、僕は

 自己解釈して疑問が晴れた。

 

 「あ、あの、確認しますが本当に見えていませんか...?」

 「え?...あー、バッチリ見えてないから心配すんなって」

 

 両腕の翼で持ちながら歩くと落としてしまい、シフターが小さいため

 足で掴むのは難しいという事なので苦肉の策として彼女の胸を

 隠している布の中へ入れる事となった。 

 ...当然、性別が同じであるアスフィという女性が入れてくれた。

 それでも非常に恥ずかしがっていたが...

 ともかく、18階層まで上って来た時、フェルズという人物が提案して

 きた。

 

 「君達はそのまま地上へ直行してくれ。

  私は少しクノッソスから地上に辿り着けるのか、試してみようと思う」

 「わかりました。くれぐれもイケロス・ファミリアやイヴィルスの残党にはお気をつけください」

 「ああ、もちろんだ。では、君達も無事に戻る事を祈っているよ」

 

 フェルズという人物と別れ、それから僕らは言われた通りに地上へ

 向かった。

 道中、モンスターに出会したりしたが、戦利品に値しない獲物だった。

 なので、通り道の邪魔になるモンスターだけを排除して、通り過ぎて

 いくモンスターは手を出さず、素通りしていった。

 ようやく1階層を上り切り、バベルの外へと出て地上に帰還する。

 ルルネという女性が真っ先に姿を見せ、その場に座り込む。

 

 「だぁ~~~。やっと外に出られた~~」

 

 続いてアスフィとローリエという女性も姿を現す。

 僕らとレイというゼノスはクローキング機能を解除せず、そのまま

 姿は消したままだ。

 

 「予定通り、お2人は宿へ。

  私とレイはネフテュス・ファミリアのホームへ向かいます」

 「わかりました。...ほら、ルルネ行きますよ」

 「えぇ~~。もうちょい休ませてくれよ~...」

 

 ローリエという女性が先に歩き出すと、ルルネという女性はため息を

 つきながらも立ち上がって後を追いかけ始める。

 クローキング機能を解除して、マザー・シップが配置されている場所を

 伝えるために、ガントレットからマップを立体映像で投影する。

 現在位置からナビゲーションシステムとして、赤いラインを動かし、

 アスフィという女性が進めるルートを赤いラインが沿っていく。

 目的地にまで赤いラインが辿り着いて、理解出来たのか確認しようと

 する。

 

 「こんな小さな物体でこれほど精密な地図を描いている...

  姿を消すための球体もあんなにも小さいのには驚きましたが、一体どのような構造体に...?」

 

 ...食い入るように見ていたが...わかってくれたのか...?

 

 「ここが、地上なのですね...」

 

 一方でレイというゼノスは...不安そうな面持ちとなっている。

 わかった理由は、ナイトヴィジョンに切り替えているため、その表情が

 よく見えるからだ。

 現時刻は深夜の真っ只中で、周辺の光景は暗闇で肉眼では何も見えない

 はずだ。

 それに、もしかすればどこかに身を潜め、覗き見をしている人間が

 居るのではないかと、疑心暗鬼にもなりかけているのかもしれない。

 加えて...最大の要因としては仲間と離れてしまった事だと思う。

 すると、見兼ねたアスフィという女性が肩に手を掛けて励ました。

 

 「不安になるお気持ちはわかります。ゆっくりと慣れていけばいいですよ」

 「アスフィさん...ありがとうございます」

 

 笑みを浮かべるレイというゼノスを見て、少しは安心してくれたと

 思い、僕は安堵した

 そして、2人をマザー・シップへ向かうルートの案内を始める。


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