【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 夜空を滑空するレイは時折屋根の上へと着地して、周辺を見渡す。

 建物の灯りや夜道を照らす魔石灯の灯りも消えており、月明かりのみが

 暗がりで動くための頼りになっている。

 なので、建物の角で見える赤い3点の光を見つけると、レイは両腕の

 翼を羽ばたかせて飛び立った。

 捕食者が指示をしながら案内しており、順調に進んでいく。

 やがて、人気の無い未開拓地の森林へ辿り着いて、レイは地面に

 降りるようにという指示が出されて、ゆっくりと着地した。

 アスフィはハデス・ヘッドを頭から外し、レイに伝える。

 

 「この森の奥に、彼らのホームがあるそうです。

  ここから先は一緒に歩いて行きましょう」

 「わかりましタ。...あの、アスフィさん?1つお願いガ...」

 「はい?何でしょう?」

 

 アスフィは足を止めて、レイが居ると思われる方を向く。

 レイは翼の翼角を擦り合わせながら、怖ず怖ず答えた。

 

 「て、手を...翼ですガ、繋いでもらえたらと、思いましテ...

  迷ってはいけないですかラ」

 「そういう事ですか。もちろん構いませんよ」

 

 と微笑むアスフィは自身の手を差し出した。

 それを見て、レイはアスフィ達からは見えないが満面の笑みを浮かべて

 片方の翼の大きな羽を指代わりに握らせる。

 

 カカカカカカ...

 

 捕食者が低い顫動音を上げ、進む事を促される。

 アスフィはレイの羽を引きながら、森の奥へと進んでいった。

 暗闇の中を樹木にぶつかったり、石で躓いたりしないように気をつけ、

 捕食者が示す、3点の光に向かっていく。

 すると、先程まで木々に当てられていた3点の光が足元の地面に

 当てられている。

 恐らく止まれという意味だと思い、レイの羽を引くのを止めてアスフィ

 自身も足を止めた。

 2人は周囲を見渡し、アスフィはここにホームがあるのかと首を

 傾げる。

 

 ...ヴゥウン...

 

 「「...!?」」

 

 突如として、目の前に何かが現れる。

 それはとてつもなく巨大で、奇妙な形状をしていた。

 度肝を抜かれたレイは口を半開きになったまま放心状態となる。

 アスフィはそうなるのを何とか堪え、その巨大な物体に近付いていく。

 まず始めに、軽く接触して人体に問題がないかを確かめる。

 腫れ物を触るかのようにそっと触れ、表面の溝を沿ぞりながら、その

 感触をしっかりと確かめる。

 

 「(...今、私は未知なる物をこの目で見て、この手で触っているようですね...)」

 

 アスフィは触るのを止め、レイの元へ近寄る。

 ようやくレイも正気を取り戻し、アスフィに問いかけた。

 

 「こ、こ、これが、その、ホーム、というものですカ...?」

 「そのようですね...あちらから入るようです。行きましょう」

 「は、はい...」

 

 ゴクリとレイは固唾を飲み、巨大な物体の後方部分から開かれた

 出入口らしき開口部へ近づいて行く。

 開口部には開かれた側面がスロープとなっており、そこから2人は

 入ろうとした。

 だが、入る直前にアスフィは立ち止まり、ある個所を凝視する。

 自身が知る扉の開閉とは違う構造体で、筒状の部分に支えとなる棒が

 収納されており、それが伸びきってから固定されるという仕組みに

 なっているのだと独自に考察し、間近で観察しながら唸った。

 アイテムメーカーとしての性なのか、その部分を自分が理解出来る

 範疇での解析を徹底的に行い始めてしまい、アスフィはそこから

 動こうとしない。

 レイは夢中になっているアスフィに、どう声を掛けて良いのか戸惑って

 いる。

 すると、姿を現わした捕食者の1人がアスフィの肩を軽く叩いた。

 それに気付いたアスフィは、ようやく顔を離して何度も頭を下げる。

 

 「も、申し訳ございません!つ、つい、興味深い構造をしていたものですから...

  さ、さぁ、では案内してください」

 

 捕食者は頷き、2人を連れて中へと入っていった。

 その場に誰も居なくなると、スロープとなっていた部分が置き上がって

 いき、閉じられる。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「よく来たわね。初めまして、私がネフテュス。

  2人の事を歓迎してあげるわ」

 「ありがとうございます。神ネフテュス」

 「は、はイ」

 

 玉座に座りながら、アスフィという女性とレイというゼノスに

 我が主神は微笑んだ。

 2人はそれに頭を下げて、応えた。

 シフターはアスフィという女性が布から取り除いたので、既に

 姿が見える状態となっている。

 

 「それじゃあ、早速だけど...アスフィは案内に従って、別の部屋に行ってもらうわね。

  そこに装備を集めておいたから」

 「わかりました。早速、案内をお願いします」

 

 カカカカカカ...

 

 案内を担う事になったのはウルフだった。

 ウルフに連れられ、アスフィという女性は居なくなってレイという 

 ゼノスが残される。

 我が主神はパネルを操作し、レイの姿を3Dモデル化させた映像を

 投影する。

 上半身まで拡大し、両腕を広げた状態に3Dモデルを動かすと説明を

 し始めた。

 

 「まず両手をどこに施すかを検討してみたわ。

  やっぱり腕を翼となる位置に生やすと不格好になるから、やっぱり翼のこの部分に施そうと思うの。

  ここなら人間と同じ様に腕を動かして、誰かを抱きしめたり物を掴めるわ」

 「ここ、ですカ」

 

 我が主神が示している部分は、翼にある初列風切を動かすための

 翼角だった。

 その位置は僕らでいう手首と同等となるので、我が主神が説明した通り

 不便にはならないだずだ。

 

 「まぁ、何はともあれ手を使ってみない事には判断しかねるわね。

  まずは練習から始めてみましょうか」

 

 すると、ビッグママがのそりとレイというゼノスに近寄る。

 ...やっぱりと言うべきか、その巨体に硬直してしまっているよう

 だった。

 だが、そんな事は気にせずビッグママは持っていたボックスから

 何かを取り出した。

 それは、応急処置用に開発した義手だった。

 万が一、腕を失った際それを切断面に嵌め込む事でコネクタ部分が

 装着者の細胞を採取し起動する。

 そうする事でEEGを受信する事で思う様に動かせる代物だ。

 今回は上腕部は無く手首から先の部分のみの義手をレイというゼノスの

 翼角に挟み込む形にするようだった。

 ビッグママは片方の翼を折らないよう慎重に掴むと、義手のコネクタを

 挟み込ませる。

 

 キュリリリッ...

 ピッ ピッ ピッ... ピピッ

 

 「今、それは擬似的に貴女の手となったわ。動かしてみて?」

 

 レイというゼノスは翼の前腕部となる関節を曲げ、義手が自分から

 見えるようにする。

 深呼吸をし、義手に意識を集中させ始めた。

 

 ...ギュィィン

 

 すると義手が動き、ぎこちなくだが開閉した。

 レイというゼノスはそれを見て、驚きと歓喜の声を上げる。

 我が主神が小さく拍手を送り、お褒めした。

 

 「動かす事は出来たわね。それじゃあ、次は...」

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「こちらの仮面は、被ってもよろしいのでしょうか?」

 

 カカカカカカ...

 

 その問いかけに捕食者は頷いて、アスフィに差し出した。

 アスフィは受け取ると緊張しながら仮面を顔に付けた。

 すると張り付いた感触はあったのだが、一瞬にしてそれがなくなり、

 顔の一部になったような感覚となった。

 触ってみると確かに、顔には付いている。

 

 「(これも何かしらの細工があるのでしょうか...)」

 

 そう思いながら瞬きを2回した。すると視野が拡大される。

 

 「...うわっ!?」

 

 突然、壁が迫ってきたように見えて、思わず仰け反った。

 様々な捕食者の扱う道具が置かれている台に腰を強打してしまい、 

 鈍痛で声にならない悲鳴を上げる。

 捕食者はその様子に、棒立ちのまま見続けていた。

 

 「(せ、せめて説明を願いたいところですが...

  アイテムメーカーのプライドとして、自力で理解しなくては...!)」

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