【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「「「「恋人おぉおおおお!?」」」」」

 「そうよ。私はオシリスの妻だけど、アストレアの恋人でもあるの」

 「...おふ...」

 「おいクソザコエルフ!しっかりしろって!」

 

 リューという女性は目を虚ろにしながら桃色の髪の少女に寄り掛かる。

 余程、信じられないんだと思った。 

 ...実のところ、僕も最初こそは彼女と同じ反応になっていた事がある

 ので気持ちはわかる。

 我が主神の話しによると、神々の喧嘩が勃発しそれを止めようとした

 アストレア様だが、失敗し天界は破滅の一歩手前まで陥ったという。

 しかし、そこに我が主神が止めに入ったそうだ。

 紆余曲折を得て止められたらしく、壮絶な戦いだったのだろう。

 傷心に浸るアストレア様を我が主神が慰め、その時に感じた慈しみと

 温情に惹かれアストレア様から思いを告げられたそうだ。

 尚、その時には当然オシリス様とは夫婦になっており、包み隠さず

 その事を話した所、婚姻は不可能だが恋仲は良しとされたそうだ。

 イシス様は絶句していたそうだが後に恋仲と認識してもらえたらしい。 

 それらの事を我が主神は話した。

 彼女達は黙って聞き入れ、それぞれ顔を見合わせながら戸惑っている。

 

 「...えっと、それで...神ネフテュス?

  この度はどの様なご用件で、ここへお越しに...?」

 「ま、まさかアストレア様を奪いに!?そんな事は団長である私、がふ!?」

 

 アリーゼという女性が近付こうとしたので僕は止めようとした、

 だが、先に隣に座っていた桃色の髪の少女が頭部に拳を叩き込む。

 ...中々に優れた拳打だ。

 アリーゼという女性が悶えている間に、我が主神は答える。

 

 「実はね...後輩の神や女神の何人かが、イヴィルスに関与しているみたいで...

  それを確かめてほしいのよ」

 

 その言葉にアリーゼという女性はすぐに姿勢を正した。

 リューという女性も意識を取り戻すと、他の女性達も我が主神の話に

 耳を傾け始める。

 

 「その情報は、どこで手に入れたんですか?」

 「イケロスの子供であるディックスっていう子が教えてくれたの。

  把握しているのはソーマ、イシュタル、ニョルズが該当しているわ」

 「...じゃあ、やっぱりあの書類の内容は本当だったって事か。

  信じられないけど...密輸の事は本当なのね」

 

 アリーゼという女性は口元に手を当て、何やら考え始める。

 彼女の口から密輸という言葉が出てきて、僕は何かが引っかかった。

 隣に立っているアスフィという女性とレイというゼノスも恐らく、 

 同じ様に思っているはずだ。

 我が主神もその発言が気になったようで問いかける。

 

 「あら、もしかして...少し変わったモンスターの事、知っているのかしら?」

 「喋るモンスターの事か?まぁ、こいつが言ってた書類の内容には書かれてたが...

  ...マジで居るのか?」

 「...。...見た方が早いかしらね」

  

 そう言うと、握っていたアストレア様の手を離し席を立つ。

 アストレア様の表情は少し曇ったが、我が主神は頭を撫でる事で

 頬を赤く染めて微笑みを浮かべた。

 そして、僕らが立っている所へとお近づきになられる。

 

 「手をこうして?武器を持たないようにしてほしいから」

 「...ふざけんな。そこに居るってのかよ」

 「ライラ」

 「いいのよ、アストレア。...ごめんなさいね?勝手に連れ込んでしまって。

  外で待たせていても不安かと思ったから...」

 「...まぁ、とりあえず、その実物を見せてくれますか?」

  

 全員が先程とは違う雰囲気となった。

 鋭い視線がこちらに向けられている。僕はいつでもバーナーを

 発射出来るようにスタンバイしていた。

 我が主神に万が一があれば、僕も容赦はしない。

 

 「レイ。姿を見せて?...2人もそうした方がいいかも」

 

 ...ヴゥウン...

 

 ピピッ ピピッ ピッ

 ピッピッピッピッ

 

 レイというゼノスは言われた通り姿を現わす。

 完全に使い熟せている手でシフターを操作している。

 僕もクローキング機能を解除し、アスフィという女性も姿を見せた。

 彼女達はレイの姿を見て警戒心がより一層、高まったようだが

 アスフィという女性を見たアリーゼという女性が首を傾げる。

 

 「あれ?貴女達は...人間、よね?というかそっちはヘルメス・ファミリアの...」

 「アスフィ?何故、貴女が...?」

 「リオン、これには説明が長くなりますので...

  一先ず彼女の事を知ってください」

 

 そう言って、アスフィという女性はレイというゼノスの隣へ立つ。

 レイというゼノスはアスフィという女性を見つめる。

 それにアスフィという女性は頷いた。

 少し俯いてから前を向き、レイというゼノスは一歩前に出た。

 

 「...初めましテ、地上の方々。私はレイと申しまス。

  私は喋る事や考える事も出来る、ゼノスと呼ばれるモンスターでス」

 「彼女が危害を加えないという事は私が保証しましょう。

  まだ知り合って日が浅くもありますが...

  こうして...手を繋げられるんです。彼女の綺麗な手を」

 

 そう言ってアスフィという女性はレイというゼノスの手を握り締める。

 それに驚くレイというゼノスに、アスフィという女性は微笑んで

 心配させまいとしているように見えた。

 我が主神はその様子に微笑みを浮かべ、アリーゼという女性達は

 しばらく硬直していた。

 すると、唐突にアリーゼという女性が立ち上がり近付いてくる。

 アスフィという女性はレイというゼノスの傍から離れず、近付いてきた

 アリーゼという女性を見据えた。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 レイとアスフィに対峙するアリーゼは俯かせていた顔を上げると、

 ニコリと笑みを浮かべる。

 次いで、手を差し出した

 

 「じゃあ、私も友好の印として握手はしとかないとね」

 「おいおい、団長っ...!?」

 「...まぁ、何となく予想はしておりましたし。

  何を言っても意味が無いですよ、ライラ」

 「ここは...黙ってみていましょう」

 「...ったく」

 

 悪態をつくライラは、ソファに座り直す。

 モンスターと仲間が目の前に立っており、話せるからと言っても

 万が一があっては遅いと思い、心配しているんだろう。

 レイは戸惑いながらも、自身の腕を伸ばし手でアリーゼの手を

 握った。

 とても弱く、まるで花を撫でるように。

 

 「よろしくね、レイ。私はアリーゼ・ローヴェル。

  清く正しく聡明で美しい完璧美女であり団長なの!」

 「あ、は、はぁ、確かに綺麗です、ネ...」

 「(清く正しく聡明とはやはりモンスターでも思わないのですか...)」

 

 アスフィはモンスターでも前者はそうとは思わない自己紹介に

 ため息をつく。 

 アリーゼはそんな事もお構いなしに、今度は捕食者と向き合った。

 一瞬、アスフィは内心焦るが、何も起きない事を咄嗟に祈った。

 

 「貴方は同じ人間よね?名前は?というか、その仮面...

  中々カッコイイけど、部屋の中では脱いでもいいじゃない?

  ほら、恥ずかしがらずに」

 「ア、アリーゼ!初対面の相手に失礼な事をしてはいけません!」

 

 アスフィが止めようとしたが、先にリューが飛び出してアリーゼを

 引きずって、後ろへ下がらせる。

 以前にヴィオラスの群れを倒し、オリヴァスを倒した捕食者の

 実力を知っているので、リューは気に障るような事をしてはならないと

 判断したのだろう。

 アスフィは項垂れながら深くため息をつく。

 

 「も、もしも怪我をしていてそのために着けているのだとすれば...

  それこそ大変な事になります」

 「あ、そっか...それもそうね。ごめんなさい。

  ...けど、せめて名前だけは教えてもらってもいいんじゃないの?」

 「それは掟によって、誰にも教えられない事になっているわ。

  だから顔も明かせられないの。...まだ、ね」

 

 まだ、という意味深げな言葉を最後付け加えて答える。

 アリーゼは仕方なく諦めたようだった。

 しかし、再び捕食者の前へと近付いて、手を差し出す。

 

 「握手くらいはいいでしょ?」

 

 ...カカカカカカ...

 

 「え?今の何?声?どうやって出したの?」

 

 質問攻めのアリーゼを無視して、捕食者は握手に応じる。

 アリーゼの手を離すと、次に後ろに立っていたリューに捕食者は手を

 差し出した。

 リューは戸惑いながらも、その手を握った。

 その瞬間にアリーゼ達は驚く。アスフィも含めてだ。

  

 「うっそ!?リオン、何で普通に握手してるの!?」

 「認めた奴だけしか無理とか言ってなかったか?」

 「わ、私も初対面では、かなり拒否された事があるのですが...」

 「まさか、一目惚れでもしたか?」

 「な、なな、な、何でそうなるのですか!?違います!

  ...はぁ...ここは、もう明かしてもよろしいでしょうか?」

 

 カカカカカカ...

 

 捕食者が返事をしたのを確認し、リューは手を離してアリーゼ達の

 方へを向いた。

 

 「実はこの方は...捕食者と呼ばれていますが、数日前リヴィラに巨大なモンスターが出現した時に協力をした事があるんです。

  その際、武器を貸していただいたりもしました。

  それと...私達にとって恩人と呼べる方なんです」

 「え?恩人?というか捕食者って...

  リオン、もうちょっとネーミングセンスは磨いた方が」

 「私ではなく他の者が最初に付けたんです!

  ...話を戻します。5年前に出現した、あの怪物を倒したのが彼なんです」

 

 一斉にアリーゼ達は捕食者へ視線を向けた。

 捕食者は動じず、そこに佇んでいる。

 レイやアスフィは何の事かわからず、アリーゼ達と捕食者を見るのを

 行き来していた。

 

 「...そうなの?5年前に出て来た、あの骸骨ザウルスを?」

 「はい。フィルヴィス・シャリアという同胞も彼に助けられた事があり、同じ様に武器を貸してもらい協力していました。

  ...そうですよね?」

 

 カカカカカカ...

 

 捕食者は両目を光らせ、低い顫動音を鳴らし返事をした

 その途端にアリーゼが急接近し、捕食者の両手を掴み取る。

 アスフィとリューは心臓が口から飛び出す程、驚き硬直してしまう。

 

 「それならそうと早く言ってよね!そっかそっか!

  道理で只者じゃないなぁって思ってたのよ!

  じゃあ、改めて、助けてくれてありがとう。

  私からちょっとしたお礼をしてあげるわ。んーー...」

 「「馬鹿なマネは止しなさぁああい!」」

 

 アリーゼは顔を突き出し、捕食者の仮面に唇を付けようとした。

 アスフィとリューは意識を取り戻したと同時にアリーゼを捕食者から

 引き離し、事なきを得たのだった。

 

 「...なんつーか、悪いな?ああいう奴だからさ」

 「あまりにも気に障りましたら...

  噛み付くくらいは許可してさしあげましょうかねぇ」

 「だ、大丈夫ですかラ...」

 「話が中々進まないわね...」




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