【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「タ、タナトス様!イケロス・ファミリアの団員達が消えました!」

 「んー?...消えたってどういう事?」

 「で、ですから、そのままの意味でして...

  モンスターを地上へ運ぶ手筈のはずが、誰1人戻ってきていないんです!

  それに檻が何者かによって破壊されていました!」

 「...イケロスを探しに行ってきてくれない?

  アイツなら把握してるはずだし、というかしてるから」

 「は、はい!直ちに...!」

 「...ま、イケロスが居なくなっても、こっちにはとってきおきの子達が居るから大丈夫でしょ」

  

 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 「...あぁ...?」

 

 イケロスは目を覚ますと、周囲を見渡した。

 薄暗く、異臭を放っているそこはどうやら檻の中のようだった。

 立ち上がろうとしたが動けない。見ると全身にワイヤーが巻き付けられ

 身動きが取れなくなっていた。

 

 「イケロス。やっとお目覚めかしら?」

 「...おっと...これはネフテュスパイセン。どうもお久しぶりで」

 「そうね、久しぶり。...今の状況、理解してるかしら?」

 

 イケロスは目頭を押えながら、ここで目を覚ます前の記憶を辿った。

 最後に覚えているのは割れた瓶でも使い、自害して強制送還しようと

 したが、頭に衝撃が走った以降から何も記憶がない。

 つまり頭を殴られ、気絶させられたのだと判断した。 

 

 「貴方達はイヴィルスに関わっていたそうね?

  だから、処罰を下すために捕まえたわ」

 「...それはアストレアやガネーシャのする事じゃないすかね?」

 「いいえ、私の子供達の名誉のためにやっている事よ。

  だから...貴方の子供達はみーんな、殺したわ」

 

 鉄格子越しに見ているネフテュスの瞳が真っ赤な血の様に光っていた。

 ただし、口元に映る白い歯が三日月を描いている。

 いつもなら七色に変色するはずだが、それは怒りを表わしていると

 イケロスは悟り、そして言い訳をしても無意味だという事も悟った。

 

 「あぁ、それは知ってますよ。...で、俺を強制送還させるつもりなんすか?」

 「それは決めかねるわね。神々の皆と話し合って、決めようかしら』

 「別にいいすよ?今すぐでも。

  楽しみがもう無くなっちまったなら、ここにいても退屈すからね」

 

 そう答えるイケロスにネフテュスは背を向けて、数歩前に歩く。

 何かを考えているようだった。少しするとすぐにまた振り返る。

 

 『じゃあ、皆との話し合いをする日まで、ここに居てね?

  それが貴方に対する罰よ。いい?』

 「はいはい...というか、何か声が最初より変になってないすか?」

 『まぁ、そうでしょうね。それじゃあ、まだ眠いからおやすみなさい』

 

 ネフテュスの姿がまるで縮む様に消える。

 イケロスは誰もがあり得ないと思う現象にも関わらず、気にしないで

 いた。

 その場にまた寝転び、寝る事にしたようだ。

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ファルコナーを操縦し終え、ネフテュスはベッドの縁に座ると

 ガントレットを枕元に置く。

 窓の外を見るとまだ月明かりに照らされている、深夜の時間帯だった。

 先程まで真っ赤に染まっていた瞳は、月の灰色と夜空の群青色と同じ

 色に変色し始める。

 

 「..もう一眠りしましょうか...」

 「ん...ネフテュス様...?」

 「あら...起こしちゃったわね。もう少し寝ましょ?」  

 

 隣に寝ていたアストレアが起きたのに気付くと、ネフテュスは優しく

 微笑みながら寝そべり寄り添った。

 腰の位置で引っ掛かっていたシルクの掛け布団を引き寄せ、自分と

 アストレアの全身を覆うように掛け直す。

 言わずともだが、お互いに何も身に着けていない。

 とてつもなく長い包帯は1つの塊に巻かれ、アストレアが着用している

 寝間着も綺麗に畳まれて机の上に置かれている。

 ネフテュスから足を絡めると、滑らかな陶器肌同士が擦れ合って熱を

 持つ。

 月明かりに照らされ、白皙な肌の頬がほんのり赤く染まっているのを、

 ネフテュスは見逃さなかった。

 手をその頬へ伸し、そっと添える。

 赤く染まっているためか少し熱い。頬に指を滑らせ、アストレアの

 下唇に沿ってなぞるとアストレアも同様にネフテュスの唇をなぞった。

 ネフテュスは不意を突いて口を開き、アストレアの指を咥えた。

 口内で舌を蠢かると舐め回し、唇を窄めて吸い、歯を覗かせて甘噛みを

 する。

 

 「んっ...ぁ...」

 「...っはぁ...ふふっ。これだけで劣情を抱いたの?」

 「...だって...」

 

 ムスッと頬を少し膨らませ、アストレアはネフテュスに抱き付く。

 胸に顔を埋めたまま上目遣いになってネフテュスの瞳を見つめる。

 アストレアの潤んだ瞳にネフテュスは背筋から首筋までが、興奮と

 喜びで震える。

 

 「...オシリス様にお叱りを受けるかもしれないけれど...

  貴女を求めてしまうの...」

 「私と姉と関係を持っているのだから、何も言わないわよ。

  だから...」

 

 ネフテュスは何故かアストレアを引き剥がすように起き上がる。

 包帯を下半身のみに巻き付け、片腕で胸元を隠しながら部屋のドアの

 前に立つ。

 

 「いいのよ...もっと肉欲を、潤いを、私の全てを求めて...

  私も貴女の全てが欲しい...けど」

 

 ドアノブを軽く捻る。すると、ドアが自然と開いていき向こう側から

 ドタドタと複数の影が傾れ込んで来た。

 アストレアは慌てて掛け布団で自分の体を隠して、室内に設置してある

 小型の魔石灯を付けた。

 

 「痛ったた...もう!リオン、重いから早く退いてってば!」

 「なっ、わ、私が肥えているとでも言うのですか!?」

 「おいおい、今喧嘩してる場合じゃねえだろ...」

 「そうでございますねぇ...」

 

 と、輝夜とライラは視線を上に向ける。

 アリーゼとリューも自分達に影が被った事に気付き、顔を上に向けた。

 そして全員揃って顔が青ざめ、固唾を飲む。

 体に掛け布団を巻き付けた自分達の主神が目の前に立っていたからだ。

 それも笑みを浮かべながら禍々しいオーラを漂わせて。

 

 「この子達には悪影響よね...」

 「...何をしているのかしら?」

 

 ネフテュスはクスクスと可笑しそうに笑いつつ、ベッドに腰掛けて

 離れた所から傍観する気のようだ。

 助け船は来ない、そう全員が悟る中、アリーゼは思考を巡らせて何とか

 言い訳をしようと考える。

 最初は偶然にもリューからアストレアの自室から音が聞こえてくると

 聞き、ライラと輝夜を呼び出して盗み聞きをしていた。

 何やら卑猥な会話が聞こえ、リューがこれ以上はプライバシーの侵害で

 あると言っていたのだが、そんな事は気にせず聞き続けた。

 そして、ドアが唐突に開き、全員が見つかってしまった。

 なので...結論から言えば言い逃れ出来ない。

 つまり、雷が落ちるのは必至である。

 取るべき行動は2つ。まず1つは自分に被さっているリューを退かす。

 

 「うわっ!?」

 

 2つ。逃げる。

 

 「ごめんなさぁ~~~い!」

 「少なからずリオンが原因なんでぇ~~~!」 

 「わたくし達は巻き添えに過ぎませんからぁ~~~!」

  

 どさくさに紛れてライラと輝夜はリューのせいにしながら、アリーゼの

 後に続いて逃げていく。

 置き去りにされてしまったリューは突然の事に呆然としていたが、

 逃げ遅れたとわかり冷や汗が顔中に吹き出る。

 その時、フッと仄かに甘い香りが鼻をくすぐってきたので、横を向くと

 アストレアの顔が目の前にあった。

 リューは肺を鷲掴みにされた様な感覚になり、思わず呼吸を止めて

 しまった。

 

 「ア、アストレア様、ど、どうかお話を...」

 「どう話したとしても、盗み聞きはしていたのでしょう?

  それなら...問答無用よ」

 

 その瞬間、リューは怒れる正義と秩序を司る女神の影に覆われる。

 

 「お仕置きはしないとね」

 「...ひぃっ...!」

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ん...?」

 

 用意された寝室で就寝していたアスフィは目を覚ました。

 悲鳴が聞こえたように思えたが、気のせいだったのか何も聞こえない。

 不思議に思いつつアスフィは、欠伸をかいて再度眠りにつこうとする。

 目を瞑って寝返りを打ち、腕を伸ばした所で何かに触れた。

 ムニムニと触り心地のよい柔らか過ぎない柔軟な物体。

 枕とは違うそれにアスフィは疑問を抱いて、目を開く。

 

 「すぅ...すぅ...」

 「...!?」

 

 瞬時に顔が赤面した。いつの間にか自分が寝ているベッドに

 潜り込んでいたレイの胸をガッツリ揉んでしまっていたのだ。

 慌ててアスフィは手を離し、感触を忘れようと両手の掌同士を擦り

 合わせる。

 また寝返りを打ち反対側を向き、レイの顔を見ないようにして、

 早く寝ようと思ったようだが、ここでレイが何故かすり寄ってくる。

 先程まで手で得た感触が今度は背中に感じて、アスフィは声にならない

 悲鳴を上げ悶絶するしかなかったのだった。

 

 

 尚、捕食者は月明かりに照らされている星屑の庭の屋上で寝ており、

 何事も無く翌日まで睡眠したという。




ベル君にラキスケ成分がいかないためアスフィさんがこうなります。
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