【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ

 

 ...出発する30分前になったか。

 僕は体を起こし、屋上からそのまま地面へ飛び下りる。

 着地すると同時に周囲を見渡して人影の有無を確認し、屈んだ体勢から

 ゆっくりと立ち上がる。

 クローキング機能で姿は消しているが、自然と警戒する癖がついて

 しまっているんだ。

 なので、すぐに背後から現れた人影に気付く事が出来る。

 リスト・ブレイドを伸長させながら振り返り、正体を確かめる。

 

 「...アリーゼ達とは二度と口を利きません」

 

 ...正体がリューと言う女性だとわかったが、どこか疲弊している様に

 見える。

 アリーゼという女性達と何かあったみたいだ。

 僕は鳴き声を上げ、リューという女性に僕が居る事を伝える。

 

 カカカカカカ...

 

 「あっ...お、おはようございます。

  とても、早く起きていたのですね...」

 

 僕も彼女に対してそう思っていた。

 30分も前に出発準備をする所を見ると、かなり真面目な性格で

 あるとも僕は思った。

 しばらくすると、アリーゼ、輝夜、ライラという女性と少女達を

 合わせ全員が集まった。

 怪しまれないようにと全員、衣服のどこかにエンブレムを付けていた。

 我が主神とレイというゼノス、そしてアスフィという女性も姿を

 消したまま集っている。

 

 「それじゃあ、出発しましょうか。皆、離れないよにね?」

 「ちびっこい子供じゃあるまいし、大丈夫ですっての」

 「とは言え、姿が見えないですからねぇ。

  下手をすれば本当に見失ってしまうかもしれませんし、気を付けなければ」

 

 輝夜という女性の言っている事は間違いない。

 我が主神が指示を出しながら移動するが、もしも誰かがルートを

 外れた場合は僕が引き戻す役割を担う事にした。

 レイというゼノスは目的地まで飛行するため、先に向かわせると

 その後を追う様に、僕らも移動を開始する。

 魔石灯に照らされている夜道を進んで行き、途中立ち止まると

 我が主神がルートを示す。

 時折、アリーゼという女性が離れてしまいそうになるがリューという

 女性が引き戻してくれたりしたので順調に進んで行き、森林の前まで

 辿り着いた。

 レイというゼノスは先に到着しており、僕は全員が居るのを確認する。

 僕はスカーが用意してくれたドロップ・シップをガントレットの

 遠隔操縦で起動させる。

 

 「何かワクワクしてきたわね!ちょっといけない事してるみたいで」

 「ちょっと所ではないのですが...」

 「完全に無許可でオラリオから出るもんな。

  どんだけキツいペナルティを受けるもんだか...」

 「バレない事を祈るしかありませんねぇ。

  本当に見えない船なんてあるのやら...」

 

 輝夜という女性がそう言っていたので、僕は信憑性を持たせるために

 ドロップ・シップをクローキング機能で見えなくする。

 重力制御システムによって無音のまま頭上へ接近させると、僕らの

 目の前に着陸させた。

 少量の風が吹くが、レイというゼノスのみが気付いたようで

 ドロップ・シップを着陸させた方を見ている。

 

 「レイ、どうかしましたか?」

 「あ...今、そこに何かガ...」

 「え?...何もないように見えるけど...?」

 

 ヴゥウン...

 

 クローキング機能を解除しドロップ・シップを肉眼で確認出来るように

 する。

 アリーゼという女性は驚きのあまり硬直してしまっていた。

 リューという女性も同様な状態となってしまっているが、残る2人は

 何事もなくドロップ・シップへ近付くと躊躇なく外装を触り始める。

 

 「何だこりゃ...鉄、って感じでもねぇな。

  アダマンタイトでもこんな形にするのは無理があるだろうし...

  第一、もしそうなら、いくら注ぎ込んだって話になるな」

 「そうですよね、【狡鼠】。貴女の考えは非常に共感します。

  私も詳しくは理解出来ていませんが、どうやら私達には知り得ない金属か鉱石で造られているようです。

  凄まじく強固で頑強、そして腐食液でも溶けない素材なのだと思われますね。

  彼が身に着けている装備や武器も、同様の素材が使われているのではないかと」

 「...お、おう、そうか」

 

 どこか引きつった笑みを浮かべるライラという少女はアスフィという

 女性からスッと距離を取り離れた。

 未だに考察している彼女の熱弁にたじろいだのだと思う。

 

 ガゴンッ!

 

 その時、何か硬質な物体同士が衝突し合う音が鳴り響いた。

 振り向くと、輝夜という女性が右手を振るいながら顔を顰めている。

 ...まさかとは思うが、拳で叩いたのか? 

 

 「...確かに、ビクともしないな。拳に罅が入ったかと思った...」

 「ちょ、ちょっと輝夜大丈夫なの!?」

 

 ...外装に傷やへこみは無い。彼女の拳も血に染まっていないので、

 怪我はしなくて済んでいたようだ。

 本当にまさか叩いたとは思わなかったので、僕は輝夜という女性を

 見て呆れながらため息をつく。

 輝夜という女性が僕の方を見てきて、何か言いたそうにしていたが

 気にせずガントレットを操作しドロップ・シップのハッチを開ける。

 

 「あそこから乗る事が出来ますので行きましょう」

 「ええっ!早く乗りましょう!ほらほらリューも固まってないで!」

 「あっ、え?あっ、は、はい...」

 

 リューという女性はアリーゼという女性に手を引かれながら、後方部へ

 回り込みハッチの前まで移動させられる。

 先程まで呆然としていたのに、あっという間に立ち直っている事から

 並みの精神力ではないと思った。

 ライラと輝夜という女性達も後を追い、乗り込もうとする。

 アスフィという女性も足を進めようとしていたが、レイというゼノスが

 戸惑ってその場から動こうとしない事に気付く。  

 恐らく、自分で飛ぶのではなく他人に任せて飛ぶ事が不安なのだろうと

 僕は思った。

 

 「大丈夫ですよ、レイ。私が手を握っていてあげますから」

 「アスフィさん...で、では、お願いしまス」

 

 レイというゼノスの手を握り、アスフィという女性はハッチを

 登っていった。

 アストレア様はというと...姿を消している我が主神と口付けを

 交わしていた。

 見ているのも野暮だろうから、先にコックピットに搭乗しよう。

  

 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 「ん、はぁ...ネフテュス様、いきなりするのは...」

 「あら?昨日、先にしてきたのは貴女じゃなかったかしら?

  それならお相子じゃないの」

 「...もう」

 

 多少呆れつつもアストレアは微笑みを浮かべたまま、ネフテュスを

 見つめる。

 ネフテュスも微笑みながらアストレアを見つめ返した。 

 無言のまま数秒が経ち、先にネフテュスが口を開く。 

 

 「ニョルズは恐らく関わってると言っても、子供のためだろうから...

  私も知ってる事を伝えるといいわ。すぐに訳を話してくれると思うし」

 「わかったわ。...本当は貴女と一緒に居たいけれど...

  また会える...のよね?」

 「ええ、大丈夫よ。もう寂しい思いはさせないと誓うから」

 

 そう答えると仮面を脱ぎ、姿を見せると最初に唇と髪の毛と鼻、次に

 喉から首筋へ、そして最後に胸元に口付けをしていった。

 唇は相手への深い愛情を表わす。

 髪の毛は愛おしく思い、鼻は大切にしたいと強く思う気持ちを表わす。

 喉は強い欲求、つまり離したくないという思いであり首筋も執着心、

 胸元は独占したいという気持ちの表れだ。

 それらの意味を理解しているのかアストレアは頬を赤く染め、苦笑いに

 似た微笑みを浮かべるとネフテュスの瞼に唇を寄せた。

 それは相手を大切にしたいと強く思う気持ちを表わしている。

 

 「...約束よ?」

 「ふふっ...ええ」

 

 瞼へのキスにくすぐったそうにしながらも返事をし、ネフテュスは

 仮面を被り直す。

 呼応するようにアストレアはネフテュスから離れ、ドロップ・シップへ

 搭乗しようとする。

 しかし、立ち止まると振り返ってネフテュスに呼び掛けた。

 

 「戻ったら...」

 「言わなくてもわかってるから、安心しなさい。アストレア」

 「...うん」

 

 仮面でネフテュスの表情は窺えないが、笑みを浮かべているように

 思えた。

 ネフテュスが姿を消すとアストレアは足を進め、ドロップ・シップへに

 搭乗した。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 少し時間を潰してしまったが、何事もなくオラリオから飛び立った。

 ...今のところは何も起きていないが、モニターを見て僕は

 気が気では無かった。

 

 『うわぁああああ~~~!本当に飛んでる!

  しかも速い!もうオラリオが見えなくなっちゃったわ!』

 『ア、アリーゼ、はしゃぐのは程々に...』

 『団長、まるで幼女に戻った様でございますねぇ』

 『本当にね。でも、輝夜?

  貴女も今まで見た事のない楽しそうな顔になってるわよ』

 『ですが、これなら確かに日帰りで戻れそうですね。

  テイムしたドラゴンに乗って飛行するよりも速いのですから...

  ...どのような仕組みで、この船を動かしこれ程の速さを生み出しているのか...』

 『あー、悪いがそれは独り言に留めてくれ』

 

 アリーゼという女性が特に何をするかわからないのが不安だからだ。

 

 『ん?これ何かしら?』

 

 あ、まずい。

 

 ヴヴーーーッ!! ヴヴーーーッ!!

  

 『え!?何々!?何でさっきの入口が開いていってるの!?』

 『さっきそれ押したからだろ!』

  

 今すぐにハッチを閉じないと。

 コンソールパネルを展開し、操作して開いていくハッチを止める。

 同じ操作を行なってハッチが閉じていくのを確認し、僕は安堵した。

 

 『あ、と、閉じていってる...』

 『どうやら捕食者が何とかしてくださったようですね...』

 『団長?もしあのまま開いていっていれば...

  わたくし達はともかくアストレア様が落ちていましたよねぇ?

  そうなった時はどう責任を取るつもりだったのでしょうか?』

 『ご、ごめんなさい...』

 『後で捕食者にも謝っとけよ。ったく...』

 

 ...とにかく、黙って座っててほしいな...


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