【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 贈呈し終え、僕は集合場所となる中央広場に辿り着く。

 ただし人が集う場所ではなく、人が入って来ない木々の中で待つ事に

 している。

 

 カカカカカカッ...

 

 鳴くと、順番にそれぞれが鳴いて皆が集った事を確認する。

 商業をしている各ファミリアへの贈呈を誰にもバレず無事に済んだ事も

 確認し、狩りへ向かう事にした。

 今回はそこまで潜らず、戦利品より石を集めようと思う。

 舗装されている道は使わず、そのまま木々の間をすり抜けて行き

 ダンジョンの出入口へ向かう。

 太陽が真上になるこの時間帯はダンジョンへ潜る冒険者も少ない。

 食事をしているためだと思う。

 けれど、少なからず潜る者もいるため気付かれないよう、ダンジョンへ

 続く階段を降りて行った。

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 上層である1階層。薄暗い通路には人影はない。

 代わりに、黒い影が蠢いた。

 その影の正体は3体ほどのゴブリンだ。その3体の頭部に3点の

 赤い光点が同時に照射される。

 

 フォシュンッ! フォシュンッ! フォシュンッ!

  

 ドパァッ!ドパァッ! ドパァンッ!

 

 その直後に青白い光弾がどこからともなく発射され、ゴブリンの頭部を

 撃ち抜いた。

 撃ち抜かれた頭部は風船の様に破裂し、残った下半身は関節部に負担が

 かかるような体勢で倒れる。

 静寂の中、ゴブリンの死骸が他者から見れば宙に浮いて、胸部が

 浅く斬り裂かれた。

 その裂傷した部分から覗く魔石が肉片ごと取り除かれる。 

 それによりゴブリンの死骸は消滅する。

 再び静寂が広がり、何も起きなかったような状況となった。

 少し潜って8階層。数体のウォーシャドウと一回り全長が大きい

 上位種のヒュージシャドウが小規模で群れている

 1体のウォーシャドウが何かが風を切りながら接近してきているのに

 気付くが、既に遅かった。

 

 シュパンッ! シュパッ! スパァッ! スパンッ! スパッ! シュパァッ!

 

 一瞬にして数体いたウォーシャドウの首が飛ぶ。異変に気付いた

 ヒュージシャドウは周囲を見渡し警戒する。

 

 『誰か、いるの?』

  

 グガアッ!!

 

 ヒュージシャドウの背後で少女の声が聞こえてきた。

 その声に反応し、ヒュージシャドウは3本の鋭い鉤爪で背後に腕を

 振るう。

 しかし誰も居ない。仕掛けられたトラップだった。

 背後から気配を感じ、ヒュージシャドウは首だけを振り向かせる。

 

 ブ ヂィッ!

 

 その途端に首だけが引き千切られる。 

 胴体を失ったヒュージシャドウの頭部はその胴体と、ウォーシャドウの

 死骸と同時に魔石を残して消滅した。

 消滅した数だけの魔石は浮遊して消える。

 更に潜り11階層。苔に覆われた岩肌の通路の脇にある大穴。

 そこを進んで行くと、正方形状の空間が広がっている。

 

 ガ ァ ア ア ア ア ア ア!!

 

 そこで1体のシルバー・バックが生み落とされた。   

 産声のように咆哮を上げ、その空間から通路へ繋がる大穴を見つけると

 そこへ向かおうとする。

 しかし、目の前で打ち上げ花火の如く大量の火花が襲った。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ガ ァ ァ ア ア!!

 

 マズルを調整し、通常のバレットではなく着弾すると激しい放電を

 起こすプラズマバレットを発射した事で白い猿の顔が火花に

 覆われる。

 この空間で仕留めた方が優位になると考え、足止めをするために

 ウルフが撃ったんだ。

 焼夷性が高く、飛び散る火花が散開するため白い猿の顔から上半身の

 数カ所が黒く焦げた。

 ...片目は無事みたいだ。

 両目を潰すはずだったが、片眼は健在だった。火傷して皮膚が

 黒くなっているので判別しやすかった。

 スカーに指示を出す。

 既に空間には皆が散開していて、白い猿の死角から狙っていた。

 

 ...ピヒュンッ!

 

 グシャッ!

 

 ガ ァ ア ア ァ ア ア ア アアアッ!!

 

 スピアガンを撃ち、片目も潰した。

 これで方向はわからなくなる。念のため、レーザーネットを出入口に

 仕掛けてあるので逃れはしないが。

 白い猿は空間の壁際へ移動し、激痛に苦しんで乱暴に壁を叩き始めた。

 その振動で空間の天井から石が降ってくる。

 

 ドガァアッ! ドガァアッ!

 

 ゴトンッ ゴツッ... ゴトッ...

 

 獲物を苦しませて楽しむのは僕らのやり方に反するからだ。

 慈悲として...早く仕留めなければならない。

 僕はチョッパーに指示を出して合図を待つよう伝える。

 他の皆には空間から出るよう指示した。

 段々と壁から天井へ罅が入っていき、崩れるのも時間の問題だった。

 僕はワイヤーを片手に、白い猿の背中へ回って後頭部に飛びかかる。

 

 キュリリリッ...

 

 ギリ ギリ ギリッ...

 

 ガァアアッ! グガァアアアアアアアッ!!

 

 ワイヤーを白い猿の額に巻き付け、僕は背を反らし全体重を後ろへ

 掛ける。

 白い猿は額を締め付ける感覚に驚き、壁から離れると僕が体重を

 掛けているため顔を上に向けた。

 今だ。僕は合図としてゴーグルを光らせる。

 

 ...ズパァッ!

 

 ...ゴトン...!

 

 シミター・ブレイドの切れ味は凄まじく、血が付着する事なく首を

 落す。

 そのまま背中から白い猿の胴体は倒れた。僕は潰されないよう肩から

 胸部へ乗っている。

 天井からの落石に加え、壁も崩れてきたが僕は胸部に

 リスト・ブレイドを突き刺し引き裂く。

 裂かれた皮膚から見えたのは、普段見るよりも大きめな石だ。

 両手そこへ捻じ込み抜き取ろうとする。だが、思う様に抜けない。

 チョッパーは白い猿の戦利品を持ち、僕を待っていた。

 先に行くよう指示し、僕はセレモニアル・ダガーを引き抜き石に

 へばり付く肉を切り離す。

 

 ドゴォォオッ...!

 

 十分切り離したと判断した次の瞬間、出入口となる大穴の前に巨大な

 落石が降り、出入口が

 半分塞がれてしまった。

 だが、隙間からなら出られると確信して石をもう一度掴み、力一杯

 引き抜こうとする。

 そして、ようやく抜き取れた。そのまま脇に抱え、落石を躱しながら

 出入口を目指す。

 隙間に石を投げ飛ばし先に向こう側へ送り、僕も行こうとする。

 その時、上からした音を聞き見上げる。天井が崩れた。単体ではなく

 天井そのものが、落下してくる。

 僕は岩を駆け上り、隙間へ飛び込む。

 

 ド ゴ ォ ォ オ オ オ オ オ オ オ ンッ !!

 

 隙間から土煙が漏れてくる。

 僕は間一髪のところで脱出する事が出来た。情け無く座り込むのは

 嫌なので立ち上がる。

 皆も無事か確認し、足元の大きな石を拾い上げて袋に入れようとしたが

 入らない。

 他の皆の袋も大量の石で入らず、これ以上は持ち帰れないと判断する。

 大きな石を抱え、来た道を戻るため僕らは歩き始めた。

 チョッパーは腰に掛けた戦利品に満足していた。

 スカーは僕に無茶はするなと昨日と同じように注意した。

 ケルティックは何も言わなかった。

 ヴァルキリーとウルフは石が手に入った事を称賛してくれた。

 僕は皆それぞれに返答しながら、皆と外を目指した。

 

 「はて?一体、何が起きたのでしょう?」

 「ここってモンスタールームの入り口になってたよね?」

 「岩で塞がれちまってる...まさか、誰か閉じ込められたんじゃ...」

 「それなら手遅れでしょうねぇ。隙間から奥はもう見えません」

 「...残念だけど、諦めるしかないわね。

  イレギュラーに対処するのは難しいってわかってるけど、やっぱり

  気負いしちゃうなぁ...」

 「リオンがここに居なくてよかったな。アイツはそれ以上に後悔してる

  とこだ」

 「ライラの言う通りですね、団長様」

 「ホントにね。...もう時間も時間だし、後日ここを調べてみて遺体を

  探してみましょ」


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