ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「話は変わるけど...そのルナールの子はどうするのかしら?」

 「そうだな。ヘルメスに頼んでいた殺生石は奴に譲るとして...

  国へ帰すなり、別のファミリアへ売るとするか。

  身請けをするなら...奴なりに努力した分として5億はくだらないとしよう」

 

 身請けとは即ち、その女性がそれくらい稼いでいるので、その対価を

 支払い身を引かせる事だ。

 5億ヴァリスとなれば零細なファミリアはまず手出しは出来ず、

 安定した生活環境を賄えているファミリアでないと身請けをする事は

 出来ない。

 春姫という女性はそれだけ人気なのだとネフテュスは思った。

 アイシャが眉間に皺を寄せて訝っているのには首を傾げたが。

 しかし、すぐにネフテュスは唇に指を添えて、何かを考え始める。

 イシュタルは何を言い出すのかと待ちながら煙管を吸い、煙を吐く。

 

 「...売れなかったら、その子はここにずっと居る事になるのかしら?」

 「まぁ、そうだな。ただ、居ても清掃くらいにしか使わん。

  何しろ男の裸を見るだけで倒れてしまうのだからな。

  正直に言えば、5億は吹っかけだ。今まで生殺しにされた男達が懐の深い輩で幸運だったと言える」

 

 そう答えたイシュタルにネフテュスは、悪戯を思い付いた子供の様な

 笑みを浮かべると、こう提案した。

 

 「じゃあ、こういうのはどうかしら?

  その子を賭けて、お互いの眷族同士の決闘をするのは」

 「決闘、だと...?それは、戦争遊戯になるのではないか?」

 「いいえ。遊戯なんてお遊びじゃない、真剣勝負よ。

  こちらが勝てばその子はこちらに。そちらが勝てば...

  キチンと相応の支払いをするから、身請けを」

 「いや、交換条件として春姫の代わりにそいつを貰おうじゃないか」

 

 と、今まで沈黙していたアイシャが唐突にそう要求してきて、

 何を言い出すのかとイシュタルは驚き、黙らせようとする。

 だが、ネフテュスが人差し指を立てて何も言わないよう指示を出した。

 イシュタルは戸惑いつつもそれに応じて、口を閉ざす。

 

 「確かアイシャだったわね?そいつ、というのは...

  彼の事かしら?」

 

 ネフテュスは掌を上にしたまま後ろに居る捕食者を示す。

 その捕食者は、もう1人よりも一際屈強且つ圧倒する威圧感を

 醸し出している。

 アイシャは頷きながら嬉しそうに微笑むと、舌舐めずりをして答えた。

 普段のアイシャであれば多少は歯止めが効くはずなのだが、明らかに

 異常な程雄を求めている所からして、イシュタルはアマゾネスの本能が

 抑えきれていないと判断する。

 

 「ああ、そいつさ。少なくとも、アンタなら春姫の面倒を見てくれそうだから賭けるのは良しとするよ。

  ...まぁ、本音を言うと交換条件なんてのはどうだっていい。

  戦わせてほしいんだ、そいつとね...!」

 「口を慎めアイシャ!私が決める事だというのに勝手な事を」

 「落ち着いて、イシュタル。

  そもそも、決闘で賭ける提案をしたのはこちらなのだから...

  お誂え向きになって好都合だわ」

 

 イシュタルはネフテュスの方もやる気があると察して、止めるようと

 するのは無駄だと、ため息をついた。

 

 「...はぁ...いいだろう。但し、無様に負けた場合はここから出て行け」

 「ああ、いいさ。どうせ春姫も出て行くなら一緒に出て行こうと思ってたからね。

  で?タイマン張ってやるのかい?」

 「ん~...1回だけだとつまらないし...1対1の2組でやりましょ?

  どちらが勝っても負けてもその春姫って子はこちらが引き取るのだから、とことんやってほしいわ」

 「上等だよ。イシュタル様、私が出るとしてもう1人は誰にするんだい?」

 「...当然、奴に決まっているだろう。

  少し痛い目に遭ってもらおうではないか」

 

 

 歓楽街の一角にある、極東様式の巨大な建物。

 その屋上に、イシュタル・ファミリアに所属する眷族のバーベラ達が

 集まっていた。

 何か見物となる事を行なうとアイシャから聞かされているだけで、

 これから決闘が行なわれる事など知る由も無かった。

 

 「ふあぁ...ねぇねぇサラミ。何が始るのかな?」

 「さぁな。というかわざと名前間違えただろ?」

 「え?サラミって言ったけど?」

 「サミラだよ!サ・ミ・ラ!」

 

 まだ寝ぼけているようで名前を間違えるレナにサミラは

 首根っこを掴んで前後に振るう。

 周囲のアマゾネスが止めに入っていると、床を揺らすが如く大きな

 足音を立てながら迫ってくる黒い影に気付いた。

 

 「ゲッゲッゲッ、退きな。あたしの通り道の邪魔だよ」

 「ちっ...レナ。ヒキガエルに潰されない内にそうしなよ」

 「あ、うん...」

 

 サミラに手を引かれ怖ず怖ずとレナは道を開ける。

 他のアマゾネス達も恨めしそうにしながらも下がると、フリュネは

 イシュタルとアイシャが立っている場所まで足を進める。

 

 「遅いぞ。呼ばれたら早く来いと言っているだろうが」

 「早々に怒らないでくださいよぉ、イシュタル様~。

  その肌がシワクチャになって老婆になってもいいんですかぁ?」

 

 嘗めきった態度を取るフリュネに、イシュタルは怒りを堪えつつ

 鼻で嘲笑ってみせた。

 そして、2人から離れると用意していたイシュタル・ファミリアを

 示すエンブレムが描かれている旗の前に立つ。

 

 「お前達!これよりネフテュス・ファミリアとの決闘を行なう!

  選ばれたのはアイシャとフリュネだ。

  対するファミリアの眷族は...」

 

 イシュタルの唐突な宣言にバーベラ達は動揺と困惑を隠せずにいた。

 名前を挙げなかったのは、事前にネフテュスから口止めをされて

 いたからだろう。

 イシュタルが背後を振り返ると、どこからともなく現われた

 ネフテュスが立っていた。

 仮面とガントレットを身に付け、威風凛然としている。

 バーベラ達が見知らぬ女神を凝視する中、イシュタルと対面する形で

 ネフテュスは両腕を広げる。

 

 「この子達よ。名前は教えてあげられないけど...

  見た目で恐そうだとか、判断はしないでね?」

 

 ヴゥウン... 

 

 カカカカカカ...

 

 その場所が揺らいだ様に見えると同時に捕食者が姿を現わす。

 それに驚き絶句するバーベラ達だが、フリュネだけは低い笑い声を

 上げながら捕食者を品定めする様に見ていた。

 アイシャも同じく目を付けている捕食者に釘付けになっている。

 左側の捕食者は筋骨隆々ではあるが若干細身に思える肢体で、

 背中から伸びているポールには白骨化した何かの生物の頭蓋骨が

 装飾となっている。

 右側の捕食者は左側の捕食者と比べると、体格の差が著しく違い

 屈強な巨体をしている。

 見た目の違いとしても、ヘルメットの鼻から顎までのデザインが複雑な

 形状をしており頬部分にある穴からは突起が覗いていた。

  捕食者の2人が並んでネフテュスの前に立つと、反対にイシュタルは

 アイシャとフリュネの背後へ下がった。

 

 「これより行なう決闘は2組の1対1とし...

  どちらかがくたばるまで徹底的に打ちのめす事を規則とする。

  この決闘では春姫を賭ける事となった。あちらが勝てば身請けとして差し出し、こちらが勝てばあちらの眷族を貰い受ける。

  文句は言わせないぞ。いいな!」

 「「「えぇ!?」」」

 

 またも唐突な発言に、今度はアイシャとフリュネ以外のバーベラ達が

 驚愕して叫ぶ。

 あれだけ春姫を使い、何かしらの企てを試みようとしていた主神の

 不可解な意図を読めないからだ。

 それを気にせずイシュタルは更に下がっていくと、ネフテュスも

 後方へ下がっていく。

 それに合わせてバーベラ達も巻き込まれるのは危険だと思い下がって

 いった。

 

 「第1戦はフリュネ、お前だ。

  精々...その綺麗な顔を傷付けないようにしろ」

 「ゲッゲッゲッゲ!価値が下がらないようにってのかい?

  美しすぎるのも罪だねぇ~」

 

 フリュネが前に出ると、ネフテュスは左側の捕食者の肩に手を乗せる。

 

 「名誉なき者は一族にあらず。そして名誉のために戦わぬ者に名誉はない。

  ...認めるのなら、ヘルメットを外して構わないわ」

 

 カカカカカカ...

 

 捕食者は低い顫動音を鳴らして返事をすると、前に出てフリュネと

 対峙した。

 唇から涎を垂らしながらフリュネは二挺の巨大な斧であるゴルダを

 手に取り、捕食者は両腕のガントレットの側面が割れると内部から

 長細い突起がせり上がり、その中から大型の一枚刃が伸びた。

 開始の合図は互いの主神の掛け声となる。

 

 「...始め!」

 「Ā,u!」

 「ゲッゲッゲッ...アンタ中々良い匂いがするじゃないか!

  たっぷり嬲ってから搾り取るしようかねぇえっ!」

 

 フリュネは外見とは裏腹に凄まじい走力で捕食者に襲いかかり、

 ゴルダを振り下ろす。

 ヒキガエルと醜く罵倒されるが、腐っても実力有りきで団長という

 立場になったフリュネだ。

 勝てるはずがないとバーベラ達は仮面諸共、勢い余った攻撃で頭が

 砕ける様を見まいと目を反らす。

 

 ガギィンッ!

 

 しかし、骨が砕かれる音ではなく金属同士がぶつかり合う音が代わりに

 耳に入ってきた。

 思わず視線を戻したバーベラ達は開いた口が塞がらなくなる。

 捕食者は数C滑って後退したのみで、フリュネが振り下ろしたゴルダを

 片方の一枚刃で受け止めていたからだ。




初戦はチョッパーVSフリュネです。

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