【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか 作:れいが
リューという女性が隣に座ってからも僕は湖を眺め続け、数分が
経った。
我が主神から通信が入り、決闘をする事になったという。
ケルティックとチョッパーに敵う相手であるなら、見てみたいと
思っていたが、不意にリューという女性が話しかけてきたので
決めるのは後回しにする事にした。
「...あの、貴方は...貴方は何故、殺した相手の生皮を剥ぎ、吊すのですか?
見せしめか、それとも相手を侮辱するためなのか...」
...前者は当てはまると言えるが、後者は違う。
僕はペンシルを手に取り、その事を紙に書き記すとそれを差し出して
伝えた。
リューという女性は読み終えると、紙を折り畳み何かを考え始める。
「...私が言うのも説得力に欠けると思いますが...
少々...やり過ぎでは...」
僕は否定するべく首を横に振る。
リューという女性は眉間に皺を寄せ、納得していない様だった。
僕は人間での感性が薄れていると自覚はあるので、彼女が示威行為に
対して思う所があるのは理解しているつもりだ。
しかし、あの示威行為は必至な理由となる起源がある。
僕は先程の紙よりも大きめな紙を取り出し、かなり長い文章となるが
その起源をなるべく重要な点を据え置きつつ書き綴った。
それは反逆した伝説の狩人の歴史を辿る事で、その示威行為を明確に
理解する事となる。
全面いっぱいを使い、ようやく書き綴る事が出来たのでそれを渡した。
リューという女性は受け取って文面をまず一目して、整った眉が
揃え違いになって戸惑いながらも読み始める。
時間が掛かると思うが、それを読んでもらい過度な示威行為をする
理由を理解してもらうしか他ない。
やがて我が主神から決闘を時間が経ち、チョッパーが相手を倒し、
次にケルティックがアイシャという女性と決闘を始めると通信が
入った頃、リューという女性も読み終えた様だ。
「古から続く種族としての示威行為、か...
...それならば阻む事は無礼に値しますね。
ただ...1つだけお願いがあります。よろしいでしょうか?」
...カカカカカカ
彼女の事は認めており武器を貸した事のある関係なので、1つなら
聞き入れる事にした。
僕が頷くのを見て、リューという女性は言った。
「アリーゼの前では絶対に...
イヴィルスであっても、あの示威行為だけは控えていただきたいのです。
彼女は生皮を剥がれ吊された死体にトラウマを抱えてしまっていて...
もしも、貴方がそうしていると知った場合は、良好な関係が崩れるはず。
なので...どうか、お願い出来ないでしょうか...?」
...そうか。そういった理由があるのなら承諾しよう。
我が主神の恋仲であるアストレア様の眷族であるので、確かに良好な
関係を崩すのは不本意だからだ。
僕が鳴き声を上げ、頷くとリューという女性は安堵した様だった。
「ありがとうございます。
...あの、そろそろ戻りませんか?
アリーゼが昼食を摂りたいと言い始めていると思いますので」
そんなに時間が経っていたんだ...
そう思っていると空腹感を覚えたので、彼女の言う通り戻ろうと
思った。
ピピッ ピピッ
だが、その途端に生体感知センサーが反応したので湖を見る。
水中専用の赤外線に切り替えると湖の底を動く水棲生物を発見した。
僕はそれを獲物にすると決め、リューという女性に先に向かうよう
指示をする。
リューという女性は首を傾げるが素直に従ってくれた。
彼女が立ち去って、僕はヘルメットと顔の密閉補助が機能しているかを
確認するとガントレットを操作し、ブーツのチャージタンクに
プラズマエネルギーを蓄積させる。
そして、勢いよくその場から湖へ飛び込んだ。
ザッパァァンッ!
水深は僕の身長よりも深く、すぐに潜行を開始する。
靴底からプラズマエネルギーを変換させた衝撃波が放出される事で
推進力を得るため、高速潜行が可能となるのだ。
僕らが跳躍したり、木々を移動するのは鍛え抜いた脚力によって
出来る事だが、補助として常時稼動しているこの機能のおかげもあり
俊敏性が向上する。
そのため、補助ではなくメインエンジンとしての役割に切り替えた事で
この潜行方法は編み出された。
水中での呼吸もヘルメットに酸素が送られるため溺れる事もない。
更に僕らが今使用しているクローキング機能も、今までは防水性が
皆無であったが我が主神の知恵により改良され水中でも姿を消して
獲物を狩る事が出来る。
ピピッ ピピッ
見つけた。先程、湖の底を移動していた獲物だ。
僕は一度潜行を止め、水中で浮遊した状態となりながら獲物の動きを
見据える。
狙っている獲物は蟹だ。それも、かなり大きい。
地上のモンスターは子孫を残す手段を選んだ事で進化はせずに、
その生態を保ったまま棲息していると言われる。
なので、この蟹も同じだろうと思った。
僕は腰から筒状のジョイントパーツと掌に乗るサイズの鋭く尖った
銛の先端を取り出し、根元を軽く捻る。
そうする事で根元から伸びたパイプ部分をジョイントパーツの穴に
差し込みハンドプラズマキャノンに装着させる事で、水中戦専用の
武器であるハープーン・ガンとなった。
ピッピッ ピッピッ...
レーザーポインターを蟹に照射し、狙いを定めた。
蟹の弱点は腹部の下となる部分。
真正面を向いているが、まだ僕の存在には気付いていないようで
絶好のチャンスだ。
ピピピピ ピロロロロロッ!
バシュッ!
水の抵抗力に避ける様に発射された銛は水中を突き進んでいき、
蟹が気付くよりも早く腹部の下を貫いた。
数秒藻掻いた蟹は、眼の光を失うと絶命する。
パイプには発光する細く頑丈なロープが、先程ジョイントパーツに
差し込んだ際に取り付けられているので僕はガントレットを操作し、
ロープを収納させていく。
蟹は水中を漂いながら向かってきて、目の前まで辿り着くと胴体の
横を掴んだ。
ピピッ ピピッ
また生体感知センサーが反応したのに気付き、反応がある方を
見る。
今、狩ったのと同種の蟹がこちらへ向かってきていた。
恐らく、この蟹から溢れている体液につられ共食いにでも来たの
だろう。
...残念だが、喰らうのは僕の方だ。
「遅いなぁ~...捕食者君、何してるんだろ?」
「先に戻るようにと言われたので、私もわかりませんね...」
「...ん?」
鳥類のモンスターであるレイは人間よりも鋭い聴覚で、遠くから
何かが近付いて来るのに気付いた。
凄まじい速度で近付いてくるので、慌てて叫ぼうとした。
しかし、既に遅かった。
ザ バ ァ ァ ア ア ア ア ン !!
「「「「「!?」」」」」
ブ シャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア !!
水面からヴィオラスが出現したのに、全員が驚く。
茎の部分で頭部を擡げ、アリーゼ達を狙おうとしている様だったが
突然、頭部の根元に閃光が走る。
風切り音が遠離っていき、動きの止っていたヴィオラスの首が
水飛沫を上げながら水面に落ちた。
胴体も水中へ沈んでいき、一瞬にして静寂が訪れる。
「...な、何だったの?」
「...!。...どうやら、また助けられた様ですね」
そう言ったリューにアリーゼ達が視線を向けると、リューは
沖合にある突起した様な磯を指した。
カカカカカカ...
そこに立っていたのは捕食者だった。
腰に2匹の青色をした蟹型のモンスターを引っ提げている。
先程の風切り音がまた聞こえてきて、空を切っていた円盤を
捕食者は掴み取った。
「...なるほど、リオンが認めた実力を確かめる事が出来ましたねぇ」
「私は知ってはいましたが...
やはり装備の威力も、使い熟す技術も並外れていますね...」
輝夜に対して答えるアスフィは捕食者の実力を改めて認知し、
固唾を飲む。
リューも同じ様子になっていたが、磯から水面を飛び越え浜辺に
着地した捕食者にアリーゼがいつの間にか近付いていたのに気付く。
「すごい武器ね!ねぇねぇ、私にも使える?というか使わせて!」
ロログ湖を見てはしゃいでいた時と変わらない興奮状態のアリーゼは
捕食者が投げ飛ばした武器を貸して貰い、使う気満々だった。
リューは投げ飛ばした後、掴み取るのに失敗して大惨事になる事は
必至だと察し、全速力で向かうのだった。
ザ・プレイが海外Huluにて視聴回数最多記録を達成した模様。
更にロッテントマトでは92%、81%のスコアを出したとの事。
Congratulation!