【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 『...これで協力関係は結んでもらえるわね?』

 「...結バナイトイウ選択肢ハ選ベナイカラナ。

  ラーニェ、オ前モイイナ?」

 「いいだろう。...しかし、本当にどうやったというんだ...?」

 『ん~...貴女達には難しい話だから、魔法とは違う力で授けたって思ってほしいわ』

 「フンッ...そういう事にしてやろう」

 『ありがとう。何かあったら知らせてほしいわ

  それじゃあ』

 

 そう言い終えると、ファルコナーから投影されていた我が主神の

 お姿が消える。

 肩の装甲にファルコナーを収納すると僕は自分自身から出入口を指し、 

 地上へ戻る事を手振りで伝えた。

 グロスとラーニェというゼノスはすぐに理解してくれて、僕は頷き

 出入口へと向かう。

 その際、リドというゼノス達と楽しそうに思い出話に花を咲かせていた

 レイというゼノスに呼び止められる。

 

 「本当に、ありがとうございましタ。

  またいつでも来てくださいネ」

 「ああっ!アスっち達も大歓迎するからな」

  

 カカカカカカ...

 

 僕は鳴き声を上げて返答し、クローキング機能で姿を消すと

 そのまま出入口を通過していった。

 来た道を戻る様に通路を進む。時折目に入った獲物を狩りながら

 地面に落ちた獲物の一部を拾いつつ。

 

 

 18階層へ辿り着くと、僕は湖の畔で足を止めた。

 ...戻る前に体を洗おう。

 腰を掛けるとまずは鎧と両腕のガントレット、そしてブーツを外し、

 適当な長い草を毟り、その草を丸めて水に浸けると肩から腕にかけ、

 汚れを落すために擦り付ける。

 脚と胴体も拭き終え、最後に少し前のめりに屈んでヘルメットを

 ズラし濡らした手を突っ込んで顔を洗う。

 成人の儀を迎えるまでは絶対に外さない、そう決めたからには

 片手でこうして洗うしかないんだ。

 洗い終わるとズラしたヘルメットを着け直し、脱いだ順にまた

 装備を身に付けていく。

 

 ピピッ ピピッ ピピッ ピピッ

 

 ...この反応はモンスターではなく人間の反応だ。 

 以前にも同じ様な事があったが、まさか二度も同じ事が起きるとは

 驚きだと思った。

 僕は木の枝に跳び乗り、姿を消す。

 やがて森の奥から現れた人物を見る。

 ...ティオナという少女だった。

 何故ここに来ているのか、疑問に思ったが...個人の行動を

 気にする事はない。

 僕は立ち去ろうとしたが、ヒアリングデバイスが彼女の発した声を

 拾ってしまい思わず立ち止まってしまう。

 

 「はぁ...ここに居れば会えると思ったんだけど...

  やっぱり会えそうにないなぁ...

  アミッドの手紙も渡してあげたいのに」

 

 ...アミッドという人物が誰なのか僕は知らないが、手紙を彼女に

 託したというのなら恐らく知っている人物かもしれない。

 僕は受け取るべきかと考えるが、また掟に背けば今度こそ僕は

 処罰されるはずだ。

 すると、ティオナという少女がこちらへ向かって来るのに警戒して

 僕が枝に止まっている木の下まで歩み寄ってきた。

 

 「ここに刺さってたから...

  もしかしたら取りに来るかもしれないし、それに賭けてみよっか。

  ここには誰も来ないはずだから盗られる事はないもんね」

 

 そう独り言を呟きながら取り出した手紙を、彼女は徐ろに胸に

 巻いている布から何かを取り外して木にその手紙を固定した。

 視野を拡大して見てみると、それはステープルだ。

 ...思い出した。確かこの木に角の生えた兎をあのステープルで

 突き刺して仕留めた事があるんだった。

 

 「...無くなってなかったら、その時は取りに戻らないとね。

  アミッドの想いが書いてあるんだし」

 

 ティオナという少女はその場から立ち去り、森の奥へと消えていった。

 僕は足音が聞こえなくなるまで待ち、枝から飛び降りて着地すると

 その手紙を見る。

 ...僕に宛てた物なら受け取る権利は当然ある。

 そう思い、刺さっているステープルを引き抜いて落ちた手紙を拾って

 広げ、内容を読む。

 

 [我がディアンケヒト・ファミリアに多くのドロップアイテムを

  いつもお贈りくださり、誠に感謝致します。

  無償で頂くというのに抵抗はありましたが、貴方のお気持ちを

  無下にはしたくありませんので、献上品の方は様々な薬品の

  材料としてありがたく使わせていただいています。

  お怪我やお風邪を引かない様お祈り申し上げます。

                     アミッド・テアサナーレ]

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ...なるほど、あの店の団員からだったのか。

 字の綺麗さと名前からして女性であって、受け取ったからには返事を

 書かないといけないか...

 僕は紙を取り出すと手紙の内容に対する返事を書き記す。

 書き終えるとその紙を折り、手紙と一緒にガントレットへ挟み込んで

 落さないようにすると僕はその場を後にしようした。

 

 ...ガシュッ!

 

 その前にリスト・ブレイドで手紙が刺してあった箇所に切り傷を

 付ける。

 これで僕が受け取ったとわかるはずだ。

 ティオナという少女は渡そうとしてくれていたので、彼女に対しての

 感謝の意として残す事にした。

 直接的に話した訳でもないので、掟に背いたという事にはならない。

 

 

 地上へと戻った時には日付が変わろうとしていた。

 屋根を跳び移りながら、アミッドという女性がいる店へ辿り着く。

 店の灯りは既に消えており誰も居ないと確認して、僕は出入口に

 手紙を獲物の一部と一緒に添えて置く。

 あの傷痕に気付かなかったとしても、アミッドという女性が

 ティオナという少女にこの手紙の事を話せば知る事は出来るか。

 そう結論づけて戻ろうとした際に通信が入った。

 ...我が主神からだ。先にマザー・シップへお戻りしているので

 そこから通信しているんだ。

 僕はガントレットを操作し、応答する。

 

 『ついさっきウラノスから聞いたのだけど、フェルズから話があるそうよ。

  何でもゼノスに関する内容らしいから... 

  アストレアのホームで待機して、そこを集合場所にしましょうか』

 

 カカカカカカ...

 

 僕は跪き、眉に拳を当てて承諾する。

 ゼノスとは協力関係となったので、何かあった場合は僕らが何かしらの

 対処をしなければないと思ったからだ。 

 我が主神は労いの言葉と共に返答してくださり、通信は終了する。

 ...向かうとしよう。

 僕はその場から跳び上がり、再び屋根を伝ってアストレア様のホームへ

 向かった。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...エルダー。そろそろ準備を始めましょうか」

 『...T'hewn wer huvew tu c'uputra thew kainde amedha』

 

 ネフテュスはそう伝えるとエルダーは、人間には聞き取れない原語で

 答えた。

 その言葉にネフテュスは頷き、パネルを操作するとある場所の

 上空写真を投影する。

 映し出されているのはカイオス砂漠だった。

  

 「この惑星にも聖地があったのね。

  別の部族が勝手に創り出したのかしら...

  でも、別の惑星に行く手間が省けるしありがたく使わせてもらうわ。

 

 次に映し出されたのは、ダンジョンに出現するようなモンスターではなく

 虫の様な異形の怪物と戦う、白い髪に赤い瞳を持つ少年の写真だった。

 その表情は幼さを掻き消す程、気高く獰猛な咆哮を上げている。

 

 「この子の成人の儀のために...」




wikiでいつの間にかプレデター文字が掲載されてたので
それを元に何となく話数の数字を再現するため、全部直しました。
サブタイトルだけは簡便してください。

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