【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 「オイ、サッサトココカラ連レ出セ!

  奴ラノ生キ残リカモシレナインダゾ!」

 「落ち着け、グロス。彼女は別のファミリアの冒険者だ。

  何故ここへ来られたのかは定かではないが...」

 

 グロスをフェルズが宥めている間に、レイはティオナが飛び出してきた

 穴を観察しながら考察する。

 大きさはティオナくらいの小柄な少女であれば十分に入る事が

 出来る程で覗き込むと前に真っ直ぐではなく、直上に伸びる細い通路と

 なっていた。

 

 「隠れ里に通じる入口から入り、迷い込んだと思われますガ...

  この穴から出てきたのは、何故なんでしょウ?」

 「あー、その穴はな...入口の足元に大穴があっただろ?

  その穴からここへ通じてるみたいなんだ。

  俺っちみたく大きいのは無理だが、そいつくらいならここに落ちて来られるな」

 

 そう説明するリドにグロスが激怒した。何故蓋せずそのままにして

 いたのかと。

 まさか入ってくるとは思わなかったし、俺達を見る前に気を失ったから

 問題ない、と信憑性に欠ける反論をする。 

 レイがその場を収めようとしている間に、捕食者が気絶してしまって

 いるティオナに近寄ると屈んで容態を調べているようだった。

 フェルズも近寄って、捕食者に問いかける。

 

 「岩が直撃したがまぁ...レベル5なら問題ないだろう。

  血も出ていない上に息もあるのだからな。

  ...しかし、どうしたものか。気絶したのはここに来た直後で、確かに問題はないと思うが...」

 

 ティオナがゼノス達を見たのか、あの一瞬ではまずわからないと

 思われるが、レベル5の第一級冒険者の視力を甘く見てはならない。

 モンスターと生死を懸けて戦い、ランクアップする事で並外れた

 身体能力を得ているはずだからだ。

 

 「...外へ運ぼうにも、途中で目を覚ませば厄介な事になるのは間違いない。

  どうするべきか...」

 

 ティオナがいつ目を覚ますかわからない状況で、フェルズは考えた末に

 ある事を思いついた。

 

 「すまないが、すぐに神ネフテュスに通信を入れてもらえるだろうか?」

 

 捕食者は頷き、左腕のガントレットを操作する。

     

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...っ、んん~...?」

 『お目覚めかしら?ティオナ・ヒリュテ』

 「え?...だ、誰?っていうか、何これ?目隠しされてるの!?」

  

 意識を取り戻したティオナは目隠しをされ、視界を奪われている事に

 困惑する。

 目隠しを外そうとするが、腕が上がらない。足もだ。

 どうやら拘束されてしまっているのだとわかり、ティオナは背筋に

 悪寒が走る。

 慌てて手足を動かし、何とか拘束を解こうと抵抗し始める。

 

 「な、何のつもり!?あたしに何をしようっていうの!?」

 『落ち着いて?私達は貴女に危害を加えるつもりは微塵も無いわ。

  寧ろ...協力してもらいたいの』 

 「協力って...どういう事?というか、誰なの?」

 『私はネフテュス。ロキから名前は聞いているんじゃないかしら?』

 「...え?」

 

 ティオナは思考回路が止まった様な感覚に陥った。

 自分は確かダンジョンに居るはずで、そこに神が居るのはあり得ない

 からだ。

 動かしていた手足を止め、冷静になったティオナは怖ず怖ずと答えた。

 

 「し、知ってるけど...ど、どうしてダンジョンに居るの?

  神がここに入るのは禁止だって言われてるんじゃ」

 『そうよ。だから、私はダンジョンには居ないの。

  ...これから目隠しを外して、状況を説明してあげるから』

  

 そうネフテュスが答えると、ティオナの視界を奪っていた目隠しが

 外される。

 目を開けると暗順応していたために、急激に光が目に入り込んできた

 ので眩しく感じた。

 細めていた瞼を徐々に開かせていき、慣れ始めるとその視界に映った

 光景にティオナは驚愕する。

 全身が少し赤みがかった包帯を巻き付けている女性の背後に、多数の

 モンスターの姿があったからだ。

 

 「あ、え...な...」

 『ふふっ。驚くのも無理はないわよね...

  でも、安心して?彼らは知性と心を持ったモンスター、ゼノス。

  そしてここはそのゼノスの隠れ里よ』

 「ゼノス...ま、待ってよ。知性と心って、どういう意味?」

 『普通のモンスターとは違う、話したり笑ったり出来る存在なのよ。

  私もつい最近知ったのだけど...』

 

 ネフテュスは振り返るとレイに歩み寄り、掌で差した。

  

 『彼女の歌を聞かせてもらって、そのお礼にゼノスとは協力関係を昨日結んだわ。

  ちなみにこの子の名前はレイよ』

 「...は、初めましテ、ティオナさン。レイでス」

 「ホントに喋ったぁ!?嘘ぉ!?モ、モンスターなのに...」

 

 ティオナは本当に喋るとは思ってもなかった様で、混乱状態となる。

 そんなティオナにレイは少しだけ近寄って、話しかけた。

 

 「ここへ通じる入口に入って、穴に落ちたのだと思いますガ...

  それは、ここへ入る誰かを見かけたからですカ?

  それとも...偶然でしょうカ?」

 「ぐ、偶然だよ?歩いてたら入れそうな隙間を見つけて、入ったら...

  勢いよく落ちて、後は覚えてないよ」

 「そうですカ...では、リドが悪いという事になりますネ」

 「えぇえええ~~~!?俺っちかよ!?」

 「当然ダ。オ前ガ穴ヲ塞イデサエイレバ、アイツモココヘ来ナカッタカモシレナイ。

  ダッタラオ前ガ悪イ」

 

 ガクリとショボくれるリドにネフテュスはクスクスと可笑しそうに

 笑っており、一方でゼノス達はやれやれ、といった反応を見せる。

 

 それにティオナは、喋っている以外に別の驚きを感じた。

 人間の様に驚き、落ち込み、呆れる。

 それが意味するのは、本当に彼らが知性と心を持っている事だと

 わかった。

 

 「...それで、あたしをどうするの?

  協力してもらうって、言ってたよね?」

 『ええ。貴女はロキ・ファミリアの眷族だから、私達の方では関わらない事としていたわ。

  理由はわかっているかしら?』

 「うん...ベートのせいだって事はね...」

 

 ティオナは口籠もりながら答えた。

 ベートが完治してから、時折会う度に以前よりも彼とは険悪な

 関係となってしまっており、ガレスやリヴェリアからの説教が

 絶えなくなっているのだ。

 それによって余計にベートとは折り合いが悪くなると自覚しては

 いた。

 

 『けれど...特別に貴女だけ、私達との協力関係を結べる条件を運良く満たしているわ。

  だから、こちらとしては協力関係となってゼノス達の事は内密にしてもらいたいのよ』

 「ちょ、ちょっと待って?その条件って...何の事?」

 

 ティオナは今までに捕食者と何かをしたという記憶は無い。

 あるのはミノタウロスから助けられ、ベートを庇い、ヴィオラスの

 襲撃の際に手紙を貰ったりなど、最後の出来事に関しては捕食者から

 一方的に受け取っただけだ。

 その他に思い当たる事はない、とティオナが答えるとネフテュスは

 微笑みを浮かべ答えた。

 

 『そのミノタウロスから助けられる前に、貴女は他の個体を倒したのよね?』

 「う、うん。そうだけど...」

 『それを貴女とよく会うあの子が見ていたの。

  それで...貴女を強いと認めてあげていたのよ』

 「...え...」

 『覚えていないかしら?あの時、あの子は姿を見せたでしょう?

  それは認めたからであり、関わりを持たないと決めた日よりも前となるから...

  協力関係となるのは有効となるの。

  だから、さっき言った通りに内密にしてもらいたいの』

 

 ティオナは絶句するしかなかった。

 認めてもらうために強くなろうと思っていたのに、そんな事を

 伝えられてしまっては仕方ないだろう。

 本来であれば認めてもらえていたという事に、喜びを感じている

 はずだがその感情が芽生えてこない。

 あまりにも唐突過ぎたからとも言えるが、それ以前に拍子抜けしてしまい

 どう思えばいいのかわからなくなっているからだ。

 

 『...という訳で、貴女が求むものは何かしら?

  協力関係を結ぶからには相応の対価を与えてあげたいの』

 「...せて」

 『ん?』

 「捕食者と戦わせて。強いって認めてもらえてたのは、嬉しいけど...

  あたし自身、納得出来ないから...お願い!」

 『...ですって。どうしましょうか?』

 

 カカカカカカ...

 

 ネフテュスの問いかけに、捕食者の低い顫動音が聞こえた。

 

 「...貴女がそれを望むなら、いいそうよ」

 「!...うん。お願いっ」

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