【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 決闘ではなく飽くまでも勝負という事なので、何かを賭ける事は

 ない。

 だが、彼女の意思を尊重するからには手加減しないと僕は決めた。

 クローキング機能は解除するが、使用する武器に制限は無いと、

 敢えて誇張する。

 20-D5、基いゼノス達の隠れ里の中央の十分に広いスペースで

 ティオナという少女と戦う事になった。

 対峙すると、そこを囲うゼノス達は半数が僕を、もう半数は彼女に

 声援を送り始める。

 ティオナという少女は戸惑いながらも声援に手を振って応えていた。

 ...僕も誰かから声援を送られる事自体が初めてなので、応えるべき

 なのか悩んでいる。

 

 「お2人さん準備はいいか?」

 「うん。いつでもいいよ」

 「気合十分だなぁ、ティオナっち。捕食者もいいか?」

 

 カカカカカカ...

 

 いつの間にかリボンを首に巻いているリドというゼノスに僕も準備は

 出来ている事を伝える。

 

 「よーーしっ!んじゃ、少し離れてから俺っちの合図で始めるんだぞ」

 

 僕とティオナという少女は同時に頷く。

 背を向けず真正面を向いたまま後退していき、十分な距離を空けると

 リドというゼノスが両腕を掲げた。

 

 「いくぞ?...始めぇっ!」

 

 リドというゼノスが両腕を振り下ろし、合図をした。

 僕は照準を彼女に合わせ、バーナーの砲口からプラズマバレットを

 撃ち放つ。

 彼女が軽々と回避したので、次に足元へ2発を撃ち放つ。

 

 フォシュンッ! フォシュンッ!

 

 ドオォォォンッ! ドゴォオオンッ!

 

 着弾して地面が抉れ、土煙が巻き上がるとティオナという少女の

 視界を妨げる。

 その間に僕が横に逸れ、ティオナという少女の得物に対抗するため、

 バトルアックスを手に取る。

 攻撃を回避しながら追い詰めるのであればエルダーソードや刀でも

 良いが、恐らく彼女の力を見定めるなら真っ向からの方が良いと思い

 これにした。

 すると、彼女が土煙から勢いよく抜け出してきた。

 ...予想していたよりも動きが速いな。

 僕を視認すると蛇行して相手を翻弄するかの様に駆けて、手にしている

 大型のダブルブレードを横に振るってきた。

 僕は斧刃の根元と石突を握り締め、柄で受け止める。 

 

 ガ キ ィィ ンッ!!

 

 「くっ...!」

 

 凄まじい金属がぶつかり合う音が隠れ里に響き渡る。

 冒険者が扱う一般的な木製の戦斧であれば、この一撃で木っ端微塵に

 なっていただろうが僕らの武器はそう簡単には壊せはしない。

 僕は大型のダブルブレードをティオナという少女毎振り払うと、まだ

 どんな戦闘をするのかわからないので観察する事にした。

 ティオナという少女は大型のダブルブレードを構え、深呼吸をしながら 

 ゆっくりとすり足歩行で横へ移動し始める。

 僕も合わせようと身構え、同じ様な動作で移動する。

 ジリジリと獣が狙いを定め、いつ飛び掛かってもおかしくない程の

 距離まで詰めていく。

 僕が足元に転がっていた小石を潰した瞬間にティオナという少女が

 動いた。

 縦横、斜め、更に刺突の猛攻で攻め込んで来る。

 大型のダブルブレードを地面に突き刺し、柄を握り締めて自身を

 浮かばせる事による蹴りも繰り出してきた。

 ゼノス達は彼女の強さに興奮し、レイやフィアというゼノスは

 僕の心配をしながらも応援してくれているようだった。

 ...そろそろ、いいか。

 

 ギュロロロロォ...!

 

 ブーツにプラズマエネルギーを収束させ、彼女の攻撃を回避し

 カウンターで蹴りを見舞った瞬間を狙い...

 

 ドゴォンッ!

 ...ゴ ォ ッ !

 

 「ぐぶっ!?...カハァ!」

 

 腹部に靴底がめり込んだと同時に2段攻撃となる衝撃波を放出する

 追撃で蹴り飛ばした。

 肺の空気を吐き出しながらティオナという少女は地面を転がる。

 水中の移動や着地の制御をするための機能なので、攻撃手段として

 使用したのは初めてだが成功した。

 下手をすれば肋骨が折れているか、臓器が潰れているかもしれないので

 並みの冒険者では、立つ事もままならないはずだ。

 

 「っ!やるね...っ!」

 

 しかし、ティオナという少女は転がる勢いを利用して、体を起すと

 顔を歪め、痛みを堪えながらも向かって来る。

 僕はリスト・ブレイドを数C程伸ばし、バトルアックスによって

 大型のダブルブレードを弾き返すと、無防備となった隙を狙い

 二の腕と脹脛を斬り付ける。

 

 ザシュッ! ザシュッ!

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「い˝っつぅ...!」

 

 ティオナは傷の程度を見て、深くはあるが出血の量はそう大した事は

 ないと判断し再び攻め込もうとする。

 

 「こんっ!のぉおおおっ!!」

 

 普段のティオナであれば見せる事のない怒りの表情。

 自身の上半身からミシミシという音が聞こえてきた。

 肋骨が数本折れ、別の箇所には罅が入っているせいだろうと思いながら

 片手に大双刀を持ち替えると、もう片方の手で拳を握り締め振り翳す。

 捕食者に躱され、拳は地面を殴打する。

 拳が叩き込まれた箇所を中心にボコンッと地中が盛り上がり、表面の

 土や岩などが激しく散乱した。

 発展アビリティである拳打の補正がかかり、更に破砕の攻撃による

 破壊規模や効果の増幅が成されたようだ。

 捕食者は右腕に装備してるガントレットの下から大型の一枚刃を

 伸ばし、斬り掛かってくる。

 既に伸ばしていた上部の2枚刃は収納してだ。

 ティオナは大双刀を振るうのは間に合わないと即座に判断し、両腕に

 身に付けている金色の腕輪で防ごうとする。

 

 ザブッ!

 

 「い、ぎっ...!?」

 

 ところが、一枚刃は金属製である腕輪を容易く斬り裂き、腕まで

 斬ったのだ。

 二の腕や脹脛とは比較にならない程の裂傷を負った様で、腕輪の影に

 なっていて傷口は見えないが、多量の鮮血が流れている。

 

 「っ...!」

 「(動くよね...まだ、動いてくれないと...!)」

 

 ティオナはその場で蹲り、手が正常に動くのか確かめた。

 数回開閉させ、手首も動く事を確認すると大双刀を構え、捕食者と

 対峙する。

 

 「オイ、アノ血ノ量ハ放ッテオケバ死ヌゾ」

 「だ、だよな?今すぐに止めないと」

 『ダメよ。止めてはならないわ』

 「そ、そんな!?どうしてですカ、ネフテュス様...!?」

  

 レイは思ってもみなかった発言に狼狽する。

 リドとグロスもネフテュスの思惑に驚愕しており、止めるに

 止められなくなってしまった。

 

 『ティオナが止めて、と一言でも言ったかしら?

  まだ戦う気でいるのに止めるなんて...侮辱もいい所だわ』

 「で、ですガ...」

 『大丈夫よ。あの子だって彼女の重傷は見えているし...

  頃合いを見て終えるはずだから。

  それまで絶対に止めない事。...ただ、治療する準備はした方がいいわね』

 「な、なら、マリィの血を貰ってくるぜ!

  アイツの血なら回復させられるからな!」

 

 リドはラウラとフォーを同行させ、どこかへと向かった。

 レイとグロスは見送っていると同胞達が吃驚の声を上げたのに気付き、

 振り向くとレイ達も目を剥く。

 何と重傷を負っているはずのティオナは鮮血を撒き散らしながら、

 捕食者に猛攻を仕掛けているではないか。

 更に言えば、その表情は満面の笑みを浮かべている。

 

 「あたし、をっ!認めるの、はっ!まだ、まだっ!

  早い、よっ!もっと...!もっと!もっと!もっと!

  あたしの全力を、見せてあげるからぁっ!」

 『...ヴォオオオオオオッ!!

 

 ティオナへ答える様に捕食者は咆哮を上げる。

 片腕のみで巨大な斧を斜め下から振るい上げ、そこで握っていた手を

 離すと反対の手に持ち替え今度は振るい下ろした。

 予測はしていたティオナだが、受け止める反動が凄まじかったのと、

 血で掌が濡れていたため大双刀を放してしまった。

 

 「やばっ...!?」

 『グルォオオオオオッ!!

 

 メギィッ...!

 

 「ぁ、が...!」

  

 油断していたティオナの側頭部に捕食者の肘打ちが直撃する。

 骨が軋む音が鳴り響き、ティオナは地面を転がり横倒れの状態と

 なった。

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