【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 ヴェルフに頼んで刀の整備をし終えた頃には夕暮れ時となっていた。

 以前にインファント・ドラゴンと遭遇した際の対処について反省点を

 隈無く、詳細に考察した。

 そして、それぞれが得意とする武器を所持する役割や編成を変えた事で

 昨日の探索よりも円滑に13階層へ到達する事が出来た。

 更に奇跡的な再会を果たした春姫との初冒険では、再び遭遇した

 インファント・ドラゴンにリベンジを挑み、様々な戦術を駆使して

 快勝とはいかずとも勝利を収めた。

 その時の喜びは忘れられないと命は整備の最中に、熱弁していたのを

 ヴェルフは鮮明に覚えている。

 尚、危うく髪の毛が焦げそうになったのもあり、別の意味で忘れるのは

 難しいだろう。

 肩の整備を終えた後の現在、ヘファイストスにステイタスの更新を

 してもらうついでという事で、ホームへ帰路に付き添ってバベルの

 入口まで来ていた。

 

 「ではヴェルフ殿。またよろしくお願いします」

 「おう、またな!」

 

 お辞儀をして歩き去る命の背を人混みで見えなくなるまで、ヴェルフは

 見送った。

 やがて、どれほどステイタスが伸びたのか、期待を胸にバベルへと

 歩き始める。

 しかし、命が歩き去った方向とは反対側から大声を発しながら誰かが

 向かって来るのに気付く。

 

 「うわわわっ!?退いて退いて退いて~!」

 「げっ!?」

 

 振り返る時には回避する事も出来ず、ヴェルフは突っ込んできた

 リーシャと衝突してしまう。

 ヴェルフは背中から倒れ、リーシャはヴェルフに抱きつくような

 姿勢となっていた。

 

 「いっででで...お、おい!気をつけろよ!?」

 「ご、ごめんね!その、もう一刻の猶予もないから、ってあれ!?

  あのナイフどこ!?」

 「ナイフ?...って、危ねぇ!?」 

 

 見ると、リーシャの探しているナイフは地面に直立する様に

 突き刺さっていた。

 幸いな事にヴェルフの手には掠っていないようだ。

 ヴェルフは慌ててそのナイフを地面から引っこ抜き、リーシャに

 渡そうとしたが刃に刻み込まれた文字を見て眉間に皺を寄せる。

 

 「ね、ねぇ、ちょっと、それ返してほしいんだけど」

 「...お前、これどこで手に入れたんだ?こんなヤベェ代物を...」

 「ヤ、ヤバイって、何がどうヤバイっていうの?」 

 「俺は専門外だが...こいつにはカースの文字が刻まれてるぞ」

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 少し乱暴なノックの音にヘファイストスは、書類に走らせていた

 羽ペンを離して入口のドアを見る。

 声の主がヴェルフであるとわかり、安堵すると同時に少しばかり

 注意しようと思いながら開けるよう言った。

 その瞬間、ヴェルフの他に2人組のアマゾネスが入ってきたのに

 意表を突かれ目が点になる。

 

 「ちょ、ちょっと、ヴェルフ?後ろの2人は」

 「今はそれより...こいつを見てください。

  その2人が襲撃された時に相手側が使ってた武器みたいです」

 

 ヘファイストスはヴェルフがデスクの上に置いてきたナイフを

 手に取る。

 ヴェルフと同じくその文字を見て、怪訝そうな表情を浮かべて椅子から

 立ち上がる。

 

 「...間違いなく貴女達の物ではないのね?」

 「ち、違いますって!?まさか、カースを纏ってるなんて...」

 「そのせいで同僚の子が1人、やられたんですよ!

  多分、今頃ディアンケヒト・ファミリアの治療院で診てもらってるはずで...」

 「...そう。それで私に解呪の方法を求めにきたって訳ね」

 

 ヘファイストスは手頃な布を手にすると刃に巻き付け、誰かを

 斬り付けられないようにする。

 刃の文字は見えなくなってしまったが、ヘファイストスは目を細めて

 重くため息をつきながら答えた。

 

 「これはセクメトという女神が施したヒエログリフよ。

  破壊と殺戮と復讐を司る女神で特殊な呪術師を育てているそうだから...

  きっと襲撃してきたのはセクメトの眷族ね」

 「なら、犯罪を働いてるファミリアって事ですか」

 

 ヴェルフは稀にギルドが公表するブラックリストのファミリアが

 思い浮かび問いかけた。

 ヘファイストスは頷いて答える。

 

 「そうなるわね。実際に会ってもいないからわからない。

  でも...セクメトは人間を殺戮しようとしていた事があるの。

  その時は運良く止める事が出来たわ。私達、神々の先輩のおかげで」

 「じゃあ、その先輩の神様がここに居ないと無理って事ですか...?」

 「そうね。ただ、幸いにもオラリオには居るのだけど...

  どこで何をしているのかサッパリなのよね。

  多分、この解呪もわかるはずなのに...」

  

 すると、リーシャとイライザは顔を見合わせて頷き合う。

 それに気付いたヘファイストスが何か心当たりがあるのかと思い、

 問いかけようとするが先にリーシャに言葉を遮られる。

 

 「目の色が変わったり天界では女神にモテるすごく女神様ですよね?」

 「!?。え、ええ...どうして知って」

 「事情は言えないんですけど、わかりました!

  じゃあ、それ持ってるの怖いから預かってください!」

 「失礼しますっ!」

 「あ、ちょ、ちょっと...!?」

 

 ドアを勢いよく開け、リーシャとイライザは嵐の様に去って行った。

 残されたヘファイストスとヴェルフは呆然としたままでいるしか

 なかった。

  

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 24階層の木々を駆け抜けるセクメト・ファミリアの暗殺者の

 1人が頭上から捕食者に押さえ付けられ身動きが取れなくなる。

 

 「ギャッ...!」

 

 バキャッ!

 ベギ ベギ ベギベギィッ...! 

  

 両手を背面の中心部に突き刺し、背骨に沿って縦状に引き裂かれた。

 内臓は分かれた上半身のどちらかに接着したまま地面に転がる。

 捕食者は残る1人が既に走力でも追いつけないと判断し、弓を取って

 直ぐさま2本の矢を番え跳躍した。

 

 バシュゥウッ!!

 バツンッ! バツンッ!

 

 2本の矢は暗殺者の進行方向へ放たれ、プラズマによる推進力で

 加速しながら矢が地面に突き刺さる前に暗殺者の足を飛ばした。

 足を失った暗殺者は痛みを感じていないのか、腕だけでも進もうと

 するも目の前に現われる影に気付き、動きを止めた。

 その巨体から滲み出る威圧感に暗殺者は恐怖を覚え、奥歯を舌で

 外そうとするが捕食者は親指と人差し指の根元となる部分を突っ込み

 強制的に開口させ、そのまま後頭部を勢いよく地面に叩き付けた。

 暗殺者が白目を剥いて気絶したと確認し、捕食者は右腕に装備している

 武器で両腕の前腕を切断する。

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