【第一部完】ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうか   作:れいが

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 治療室に設置されたベッドの上でレナは苦しんでいた。

 発熱、発汗、息切れなどの症状が出ており、顔色も芳しくない状態だ。

 ネフテュスの要望でアミッドのみが治療にあたってくれている。

 

 「はぁ...はぁ...」

 「おい、レナ!しっかりしろよ!」

 「アミッド。何でこの子はこんなに苦しんでるんだい?

  血も流れていないっていうのに...」

 「恐らくですが...

  彼女が受けたカースには出血させる以外に苦痛が伴う効果も付与されていて、それが原因となっているのではないかと思われます。

  やはり解呪しなければ...しかし、その方法がわからなければ、手の施しようが...」

 

 悔しそうに下唇を噛みしめるアミッドにアイシャは眉間に皺を寄せ、

 苦い顔を浮かべる。

 何も出来ない自分への苛立ちとセクメト・ファミリアの暗殺者達に

 対する殺意を込めて握り拳を傍にあった柱に叩き込んだ。

 ビシリと罅が入り、建物全体が揺れた様な感覚にアミッドは

 驚きつつも手を怪我しかねないので注意した。

 その時、出入口の扉が開き、ファルコナーがアイシャとアミッドの

 目の前に現れる。

 アミッドは見た事のない物体に驚愕し、アイシャはファルコナーを

 掴んでカメラのレンズに顔を近付けネフテュスに救いを求める。

 

 「急いで解呪の方法をアミッドに教えてもらえるかい、ネフテュス様!」

 「(ネフテュス...?)」

 『そのつもりだから、落ち着いて?アイシャ』

 

 アイシャが手を離すと、ファルコナーは少し距離を空けて滞空する。 

 光が投射されるとネフテュスの姿が浮かび上がり、アミッドは

 思わず硬直してしまった。

 

 『初めましてね、私はネフテュスよ』

 「...は、はい。こちらこそ、神ネフテュス。

  ...失礼ながら、解呪の方法をご存知なのですか?」

  

 ネフテュスは頷いた後、やれやれと落胆した様に首を振ってため息を

 つく。

 アミッドは首を傾げて何かあったのかと疑問を抱く。

 

 『セクメトとは同郷で邪神のお手本みたいな子だからよく手を焼いていたものよ。

  何より疫病神の中でも指折りだから、彼女が苦しんでいるのも病に関連する呪いに違いないわ』

 「なるほど。では、貴女の知る解呪の方法を教えていただけますか?」

 『ええ。いつも不要な物をあげているから、教えるくらいお安いご用よ』

 

 その発言にまたアミッドは疑問を抱く。

 何の事を言っているのか最初の内は、気付かなかったがハッと

 気づいて息を呑んだ。

 

 「...ま、まさか、貴女の眷族は」

 「ちょっとアミッド。

  患者の命の方が大事なら、話は後にしてもらえるかい?」

 「っ、も、申し訳ございません。すぐに取り掛かりましょう」

 

 アイシャに叱咤され、アミッドは自分のすべき事に集中しようと

 一度その事について問いかけるのを止めた。

   

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 『あらあら...随分と念入りに解呪の対策を施したようね。

  最初期のヒエログリフまで刻み込んでいるわ』

 「現在よりも古くに使われていた文字があったのですか」

 『そうよ。今はコイネーの様な文字の形状だけど、最初期は見たままの形状を文字にしていたのよ』

 「では、最初期のヒエログリフの解読もお願いします」

 『ええ。じゃあ、まずは...この蛇みたいな文字は文字通り毒蛇。

  次にこの2つは手足と読むの。それから...』

 

 アミッドは解読される文字の意味を書き残す。

 初めて知る事を覚えるのには、最適な手段であるからだ。

 最初期のヒエログリフの文字は、現在使われている文字よりも

 比較的、人が読めるとアミッドは思った。

 1つの文字に様々な種類があるというのが難点と思われるのだが、

 それさえ覚えてしまえば、誰でも読めるというのは間違いない。

 しばらくして、全てを解読し終えるとネフテュスは言った通りに

 最初期のヒエログリフを並べて書くよう言った。

 指示通りアミッドは文字を書き並べる。

 

 『...それが解呪となる呪文よ。

  ちゃんとした物ではないけど、魔道具の創り方を教えてあげるから、すぐに助けてあげなさい』

 「はい。...改めてお聞きしますが...

  そちらのファミリアがドロップアイテムを贈呈してくださっていたのですか?」

 『ええ。迷惑でないと思ったからあげていたけど...

  やっぱり迷惑だったかしら?』

 

 アミッドはネフテュスに対して首を勢いよく横に振った。

 

 「いえ、滅相もございません。とても感謝しております。

  今後も贈呈していただけるのでしたら、是非良好な関係を築きたいです」

 『もちろん。私もそうしたいわ』

  

 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 ネフテュスに教えられて創り出した即席の魔道具を、すぐさま

 使用した事でレナはみるみる内に快復した。

 アミッドが診察を行った所、既に退院出来る程だという。

 

 「ん~~~~っ!はぁ~~...すごくスッキリした気分!

  ありがとう、アミッド、ネフテュス様」 

 「無事に快復して何よりです。

  ...正直に申しますと、即席でここまでの効果を発揮する事に驚いています」 

 

 一度きりしか使えない解呪の魔道具を見つめてアミッドは内心、

 興奮が抑えきれなくなりそうだった。

 しかし、普段の雰囲気を壊してはならないと平静を装うのに徹した。

  

 「じゃあ、また後日支払う事にするって事でいいかい?

  今すぐの手持ちが無いからね」

 「いえ、初めて行う治療でしたので...無料という事で構いません。

  あってほしくはありませんが、また別の治療を行なった際はお願いします」

 「...ん。そういう事でいいなら、お言葉に甘えるとするよ」

 

 プロとしての意思を尊重し、アイシャは無料という厚意を聞き入れた。

 そうしてイシュタルに報告するためにホームへ戻ろうとした際、

 ふとアミッドが問いかけてくる。

 

 「それにしても、カースによる傷口を塞ぐ事が出来る応急処置とは、どういった物をお使いになられたのですか?」

 「ん?あたしもよくは知らないけど...

  こんな感じに持つ器具の先端から出てきた液体で塞いでいたね」

 

 そう答えていると、アイシャは肩を叩かれた感覚に振り返って

 手を持ち上げられる。

 開いている掌の上に件の器具がどこからともなく置かれた。

 捕食者がわかりやすいように見せてやろうと思ったのだろうか。

 

 「...これだよ。確か、こうして...ほら、この液体で傷口は塞がれていたよ」

 「拝見させてもらえませんでしょうか?」

 「...ネフテュス様、いいかい?」

 『ええ。構わないわよ』

 

 ネフテュスの許可を得て、アイシャはその器具をアミッドに差し出す。

 落さないようアミッドは気をつけながら受け取り、様々な角度から

 それを隈無く観察する。

 先程、アイシャが試したように引き金を引いて液体をトレイに

 塗り付けてみると、白い煙を立てながら瞬時に凝固化してしまった。

 アミッドは触れてみて仄かに熱を持っていると確認しながら、この

 熱によって傷口の皮膚と出血を焼き、焼灼止血法と同じ方法であると

 考察した。

 

 「ポーションではカースの傷は塞げませんが...

  こちらの医療器具でどのように塞ぐのかという原理は理解出来ました。

  ただ...麻酔なしでは正直言いますと...失神してしまいますね」

 「そうそう。私がそうなっちゃったもん。

  痛いし熱すぎるし...」

 『私の眷族は麻酔を使わずに我慢出来るから、そのまま使うのよ』

 「とてつもなく痛みの耐性があるのか、余程のへ...

  いえ、何でもありません。とにかく、こちらを普及するのは難しいですね」

 

 そう結論付け、アミッドはアイシャに器具を返却した。

 アイシャは確かに無理だろうね、と思いつつ捕食者へ渡す。

 

 『...わかったわ。

  アイシャ。暗殺者を捕まえたから、私はこれで失礼するわね』

 「ギルドに突き出すなら、あたしらでやってもいいけど?」

 『少しお話しをするから、任せてくれていいわよ。

  ケルティックとゆっくり休んでいても構わないから』

 「...じゃあ、そっちは任せるよ」

 『ええ。じゃあ、アミッド?

  また要らない物があったら贈呈するからね』

 「はい。ありがとうございます」

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