転生特典として世界最強の魔法を選んだけど、まさかネタ魔法扱いされてるなんて思わないよね? 作:苺1円
死ぬというのは明確な終着点であり物語で言えばエピローグ、ゲームで言えばエンディングと同じ意味を持つ、そんな持論とすら表現できない程に当たり前の常識が覆されることになるとは誰が想像できるだろう?それも、異世界に転生するという形で
先程までの女神を名乗る存在も不可思議としか言いようのない部屋も、まだ死ぬ間際の幻想だなんだと言い張ることもできただろう、あの時点では現実味も薄くどこか感覚も曖昧だったような気がする、だが今はどうだろう?どう足掻いても否定の言葉が浮かばないほどに……肌をなでる風も、踏みしめた大地も、行き交う人々も、僕が五感で感じる全ての要素が、これは紛れもない現実だと脳に刻みつけてくる
「いや、今だと六感か」
僕が転生時の特典として選んだのは【転生先の世界で最も威力の高い魔法】その副効果だと思われるが、魔力というものを鮮明に感じ取ることができる、それこそ、鮮明すぎて……酔ってきてしまう程度には
「最悪の気分だ……」
自らの肉体を巡る膨大な魔力だけならまだ大丈夫だが、流石に周囲の生物やら自然に溢れる魔力すら情報として脳裏に叩き込まれるのは如何なものか、もはやデメリットじゃないだろうか?
慣れたらどうにかなる気もするが、いったいどれだけの時間がかかるのか、まったくおそろしいものだ
それはそれとして女神から魔王を倒してほしいなどとは言われているが、期待していたナビゲートも特にない現状…正直何をすればいいのか分かっていない、酔ったうえに次の目的地もわからないとは踏んだり蹴ったりだが、僕が道具も持たずに異国に迷い込んだようなものなのだから現実なんてそんなものか、世知辛い
「どうやらお困りのようだね?」
そんな折に差し伸べられた手は地獄の亡者が蜘蛛の糸に縋るような必死さで掴むべきなのかもしれないが、あいにくそんな単純な性格をしてるなら女神に対して第一声で胡散臭いなどと言っていない
「お礼として渡せるようなものは手持ちにないですよ」
「自分から助けようとしてお礼の品を強請るような性格はしてないつもりなんだけど!?」
まるでボケにツッコミをするようなテンションで目前にいる白髪の少女は叫んだ、あまり唐突に大声を出すのは相手に驚かれるからやめたほうがいいと思うが
「なんであたしが勝手に叫んだみたいになってるんだろう……まあそれはいいとして、あたしはクリス、冒険者ギルドへの道が分からなくて困ってるのかな?良かったら案内するよ?もちろん、無償で」
「すみません、冒険者ギルドってなんでしょう?」
「あれ?そこからなんだ……」
どうやらこの世界においては常識の範疇に当たるもののようで、困惑の表情を見せた白髪の少女、クリスと名乗った人物はなんとも優しいことに冒険者ギルドについて簡単な説明をしてくれるのであった
「……………って感じかな」
まとめると異世界版のハローワークである、これなら確かに常識として知っていると思われるだろう内容、そしてナチュラルに無職扱いされた僕は泣いていいだろうか?事実無職だけど
…………
そんな紆余曲折ありながらも冒険者ギルドと呼ばれる建物の内部へ足を踏み入れた僕が抱いた感想は単純明快
「気持ち悪い……」
建物内という、限定的な空間に多くの人々がいる光景、ではなくその多くの人々から発せられる魔力の奔流、この世界にきてからずっと感じていた酔いが悪化するのが手にとるように分かった
「大丈夫?」
案内は完了したはずなのに何故かまだ隣にいるクリスにも心配される始末である、僕の顔色は相当に悪いらしい
「大丈夫とは言えないですけど、いずれ慣れるので…」
というか慣れないと生活もままならないのは目に見えている
道中でクリスと会話をしていて聞いた話だが、この街は初心者の街と呼ばれており、魔王軍との戦争が激化しているという王都は、その名称に恥じることなく馬鹿みたいに人口が多いそうで、魔王を倒すという役目を背負った自分が王都に行かない選択肢を取るかと言われたら迷いなくNOを突きつける用意はできている
というわけで若干覚束ない足取りで冒険者ギルドの受付へ並ぶ僕、こういう具合の悪いときはやはり人気(にんき)がある受付嬢なんて無視して人気(ひとけ)が少ない所へ並ぶに限る
そんな選択を肯定してくれるかのようにほんの僅かに待っていたら次の方どうぞなんて声がかかった、ふと隣の列を見れば並んでいる人は減るどころか増えている現状、魔が差さなくてよかった
「はじめまして、冒険者の方ですか?それとも冒険者登録ですか?または依頼でしょうか?」
「登録でおねがいします」
ここで結構重要なことなのだが、僕はクリスに助けてもらっていなければ詰んでいた可能性がある、どうやら冒険者登録にこの国の金銭であるエリスというものが1000必要らしいのだ、この金銭を返さなくていいと言いつつ渡してきたクリスが善良過ぎて無職扱いされたことは別に気にならなくなった、まあ返さなくてもいいと言われてもあとで絶対に返すつもりだが
「はい、確かに1000エリスです、では職業の決定になります、この水晶に触れてください」
これが僕が普通のハローワークではなく異世界版のハローワークと表現した理由、職業が自身の能力値というなんとも人材管理に便利そうなシステムの結果次第で自由に選択できるらしい
さて僕はどんな能力値を有しているのか、わずかな高揚を覚えながら僕が水晶に触れた途端、職員の表情が驚愕に染まった
「魔力が飛び抜けて高い…これならアークウィザードにもなれますね」
「冒険者で」
「はい?」
これは事前にクリスから情報を教えてもらっていたので即決だった、まあ職員のひとが驚く理由もわかる、アークウィザードとは上級職と言われている名前からして特別そうな職業で、並の能力値ではなることができないもの、それに最初からつけるメリットは計り知れない、対して僕が選択した冒険者という職業、それは器用貧乏で複数の職業のスキルという特殊技能を習得できるが、その全てのスキルが専門の職業に比べて効果が低く、習得に必要なポイントとやらも多いらしい
だがこと僕においては事情が変わってくる、特典として世界最強の魔法を得ているために、それを最終手段として扱い、他にも取れる選択肢を増やすというのは、おそらく理に適っているだろう
「再三確認しますが、本当に冒険者でよろしいのですね?」
「はい」
そうして最終確認を終えた僕の職業が冒険者として設定され、その能力値や職業、スキルが記された前世で言うところのスマホと同じレベルの便利アイテム、冒険者カードが手渡される段階になって、再度職員の表情が変わった
「え?あの、え?爆裂魔法?」
どうやら僕が授かった最強の魔法は爆裂魔法というものらしい
さて、どんな魔法か今から非常に楽しみである
…………
とまあこのときの僕は知らなかったのだ
爆裂魔法が世間にどんな扱いをされているのか
だがそれ以上に……
無類の爆裂魔法好きに目をつけられた僕が、なんともおかしな冒険をすることになるなんて
こんな中途半端な作品ですけど、読んでくださったみなさん、ありがとうございます