転生特典として世界最強の魔法を選んだけど、まさかネタ魔法扱いされてるなんて思わないよね?   作:苺1円

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前途が多難

「本当に申し訳ないとは思うのですが、しばらくジャイアントトードの討伐を制限させていただいてもよろしいですか?」

 

僕の冒険者登録を担当したことから、すっかり数少ない顔馴染みの1人となった、けれど別に名前などは知らない職員から告げられた言葉を飲みこむまでの数瞬が一度時間が止まるという工程を挟んだのではないかと錯覚するほどに長く感じる

 

ただの現実逃避だとは自覚しながらも、別の解釈はできないだろうかと食材の下処理を行うような丁寧さで意味を咀嚼していき……やはりと言うべきか結論は1つしか出せないことを悟った、さようなら、安定した(と思っていた)収入

 

そこまでは理解できたが、肝心のことが何もわかっていない、僕が今まで(クリスから)聞いた話のなかには特定の依頼を制限されることがあるなんて話はなかったはずだ、何か僕に大きな過失があったのだろうか?理由を知らなければ同じことを繰り返すかもしれない、もしくは平常時では起こりえない事件でもあったのか、そんな二重の恐怖心から僅かばかりの焦りを滲ませながら理由をたずねれば、ひどく単純明快な返答があった

 

「狩りすぎです、他の初心者の皆様が困惑するレベルでジャイアントトードが近辺から消えているそうで、狩るなとは言えませんが考慮していただかないと困るのが現状になります」

 

心当たりは……当然のように存在している、潜伏スキルを使用してからゆっくりとジャイアントトードに近付いて剣を振り下ろすだけで報酬が貰えるものだから、ついつい冒険者ギルドに併設されている酒場でジャイアントトードの唐揚げが値引きされる程度に狩ってしまっていた僕、ベテラン冒険者などから酒のつまみが安くなったことに感謝をされたことすらあるために浮かれていたが、そうか、他の初心者に迷惑をかけているなら自重しないという選択肢はない

 

納得もほどほどに、途方に暮れている事実は変わらぬまま受付を離れた僕は依頼ボードの目前にて次の金策について思考を巡らせる

 

とは言ってもジャイアントトードの討伐並びに納品は常設された依頼であったため金策と呼べるレベルの安定性を叩き出していたが、普通に受注するとなるとそうはいかない

 

依頼が解決したなら当然その依頼は取り下げられるし、かといって一度に多額の金銭を獲得できるものは大半がベテラン冒険者が命をチップに討伐できるかの博打をするモンスターであったり危険地帯に赴いて数ヶ月探し続けることでようやく発見できるレアアイテムの採取であったり、僕ではどうあっても手が届かないものばかり

 

モンスターの討伐なら武器の強さでなんとかなりそうなものだが、いかんせん使い手である僕が強化されているわけではないために特定のラインを超えた強さのモンスターには太刀打ちできないだろうことは容易に察せられる

 

爆裂魔法を使える状況を整えることができたなら現状も変わるだろうか?いや、そこに多額の金銭が必要だから稼いでいるという前提があるのだから考えるだけ無駄か

 

そして次に考えるのはジャイアントトード以外の常設依頼、だがこれに関してはあまりに受けたいとは思えない、何せ先程狩りすぎを理由に注意されたばかりなのだから、明らかに初心者用依頼として張り出されている常設依頼を受け続けるとか、また何か起こりそうな予感しかしないのが実情

 

ここまで考えて明確になってきたのは、冒険者という職で安定性を求めることそのものが間違っているのではないかという疑問、だが安定だけを考えて普通の職についたりバイトをするというのは魔王討伐のために必要な経験が積めないし、何よりモンスターを倒しているだけで物理的にレベルとかいう謎システムで強くなれるのだから利用しない手はない

 

そろそろ考えるべきだろうか?パーティを組むという選択肢を、だが固定のメンバーでパーティを組む場合において優先されるのは実力の釣り合いもそうだが、依頼先において自身の命を、背中を、相手に預けられるだけの信頼があるかどうか、そんな相手は僕に存在していない、いやクリスならそれだけの信頼はあるが相手が忙しそうなのでノーカウント、となると臨時パーティを………

 

「すまない、クリスが言っていた冒険者とは君のことで間違いないだろうか?」

 

不意に、背後からかけられた声に聞き覚えなどなく、それでも当然のように振り向いたのはクリスという名前が聞こえたから

 

「クリスさんが何を言っていたのかは知りませんが、あなたが僕だという確信を持って近付いたなら僕なのでは?」

 

僕にとっては平常運転であるが人によっては邪険に扱われていると感じるような皮肉めいた言葉を伴わせながら、声の主だろう人物へと視線を投げかければ……

クリスが楽しげに話していた少し変わっているが心から信頼している友人とやらの特徴と合致する、金髪の女性がいた

 

………何故か僅かに頬を赤く染めながら




主人公の思考を垂れ流してると文章は書きやすいけどキャラとの会話激減、困ったものです

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