ドンモモタロウが童磨をオトモと認めるまでのアレコレ! 略してドン×どま! オンリーワンのハイブリッド鬼退治物語、満員御礼・大好評連載中…ドンドン行くぜぇ!!   作:マキシマムとと

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①【深刻なエラーが】ドン10話『オニがみたにじ』鬼頭はるか転送中【発生し■§た!】

 

 

平行世界(パラレルワールド)という概念がある。

似たような歴史を辿り、似たように人が死ぬ。

けれど、決して同じではない。

 

そうした可能性の世界。

 

 

 

あらゆる世界において、ドンブラザーズという集団を管理する人間は同一人物が勤めており、皆が同じように『マスター』と呼ばれていた。

だが、とある世界における『マスター』は他の世界の彼と比べて少しだけ気弱だった。

 

 

 

ある時、一つの出来事があった。

ドンブラザーズしての戦績に応じて配られる『キビポイント』を使用して同戦隊から離脱した少女がいた。

 

彼女は戦いという責務から解放され、幸せを手にした。

だが、その幸せの影に他人の涙が流れている事を知り、彼女は自らの意思で戦う道を選んだ。

 

 

 

決意した少女が荒々しく歩みより、マスターの服を掴む。

 

「マスター! ホントは私の事覚えてるよね? なんせ管理人なんだから」

 

動揺しながらも押し隠そうとする彼を睨み、

 

「覚えてるんだろコラ!!」

 

少女が声を荒げて叫んだ!

 

「お………覚えてます」

 

 

 

少女の名は鬼頭ハルカ。

 

 

 

通常であれば、その後ハルカの要望は叶えられ、元の時間軸で元のオニシスターとしてヒトツ鬼と呼ばれる人の欲望と戦う。

 

だが、この世界のマスターは気が弱かったのだ。

その輝くような意思の光を前に、端末を操作する指が震える程度には。

 

「あ………!」

 

enterkeyを押した瞬間に、その間違いに気付く。

しかし、その瞬間には、もうーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、お仕舞いかな?」

 

上弦の弐・童磨が、微笑みながら飽きた玩具に語りかける。

 

「は、はぁ…はぁ」

 

跪くのは花柱・胡蝶カナエ。

 

「無駄なんだって、わかってるだろ? どれだけ呼吸を意識しても無駄。俺の氷はとっくに君の肺を凍りつかせてる。今さら足掻いても無駄なんだから、大人しく俺に喰われなよ。楽になれるぜ」

 

(まだ致命傷には遠い。でも、勝ち目はもうありませんね)

 

冷静に判断して、呼吸の力に頼らずに立ち上がる。

 

「おぉ? おやおやぁ? まだ立つのかい? 信じられない。面白いな君は!」

 

(足掻けば、日の出までは生き長らえる可能性はある。それなら…どれほど苦しく、肺も脳も…身体の全てが焼けつくような痛みを理解していても、この鬼に喰われる未来だけは、退けてみせます!)

 

「ごめん、ね…しのぶ」

 

大切な妹は、きっと悲しむだろう、苦しむだろう。

それだけが彼女の心残りとなる。

 

 

ーーーーーはず、だった。

 

 

 

【ドン! オニシスター!!】

 

 

 

「なーーー!?」

 

突如、鬼の肌を焼く神々しい光が立ち上ぼり、そこから黄色い戦士が現れたのだ!

 

《鬼に金棒ゥ!》

 

どことも言えない空間から不可思議な声が響くと同時に、黄色い戦士の手には凶悪なトゲが無数についた巨大な金棒が握られた。

 

「おっりゃぁぁぁぁぁあ!」

 

猛獣のような気迫を込めて童磨に襲いかかる。

 

「な…! こ、れは!」

 

その仕草は歴戦の剣士とは程遠い。

まるでそこらの子供が我武者羅に振り回したような稚拙さ。

しかし、そこに秘められた脅威を童磨は己の鋭敏な感覚で掴み取った。

 

「こ、のぉ! 避けるなぁ!!」

 

「無茶苦茶言うねぇ君、これ当たったらヤバそうなんだが?」

 

しかし、回避を重ねる内に童磨の動きが小さく、少なくなる。

最適化が進み、脅威を正確に把握した。

 

「当たらなければどうということは無いんだぜ?」

 

金棒の振り終わりに鉄扇を添えて、容赦なく叩き落とす。

 

他愛無い。

童磨がそう思い、気を緩めた一瞬。

 

「なめんじゃねーよ!」

 

奇術のように、黄色い戦士の手に小銃らしき絡繰り(カラクリ)が現れる。

 

「アバターチェンジ!」

 

戦士がそれの一部に歯車のような部品を嵌めん込んでグルグルと回した。

 

【ドン!】【ドン!】【ドン!!】【ドンブラコォォォォォ!!】

 

《オニ・ロボタロウ!》

 

再び立ち上った光に身を焼かれ、後ろに後退った童磨。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!」

 

強靭な鎧を身に纏った戦士、いつの間にかその手に収まっていた金棒が火を吹き、表面にあったトゲの一つ一つが花火のように射出され、童磨目掛けて飛翔した。

 

「アハハ! なんだこれ! なんだこれはっ!! 面白いじゃないかぁぁぁ!」

 

着弾、そして爆発。

静まり返った市街地の中心で巻き起こった爆音と閃光。

異変に反応して一帯の住宅に明かりが灯った。

 

「…やるなぁ」

 

鉄扇で煙を仰ぎ、視界を確保した童磨。

しかしその先に求める人影は既に無く。

 

「今度は鬼ごっこ…か」

 

傷一つ無く現れた鬼が、冷たく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいて、行って…ください」

 

生きも絶え絶えな様子のカナエをハルカが睨んだ。

 

「馬鹿なこと言わないで!」

 

目を吊り上げて怒る少女に、カナエが疲弊した笑みで応える。

 

鬼と戦う道を選んだのはカナエ自身だ。

助けてくれた女性が戦う力を持っていたからと言って、この血塗られた道に引き込むわけにはいかない。

 

「あの鬼は、強い。きっと…追いかけてきます」

 

だが、カナエを救った女性はただの女ではない。

 

鬼頭ハルカ。

 

彼女はドンブラザーズのオニシスターであり、盗作漫画家と誹謗中傷されながら、それでも人を助けるために戦う道を選んだ戦士なのだ!

 

「だったらなおさら、ほっとけない! だって私は知ってるもの、貴女が死んじゃうって知ってて逃げたら、私はずっとずっと、この先私自身を許せないままだって。そんなの、絶対に認められない!」

 

輝くような瞳の強さに。

その美しさに吐息が漏れた。

ーーーその時。

 

「えらい!!」

 

廃墟となったあばら屋の屋根上から、声が降った。

 

「つっ!」

 

咄嗟にカナエを突飛ばしたハルカへ、鬼が襲いかかる。

 

「アバター…!?」

 

変身用のドンブラスター、そのトリガーが…硬い!

 

「俺は感動したよ! 出会って間もないゆきずりの女一匹のために命をかけられるだなんて!」

 

獲物に絡み付く蛇のようにハルカの肢体へ身体をすり寄せ、髪をひと房取って口へ運んだ。

 

「美味しい…」

 

「キッッッッッッッッッショ!!!」

 

足掻き、童磨から身体を離しながらドンブラスターを見て、異変の正体を掴んだ。

 

「凍ってる!?」

 

「その絡繰りの力で変身してるんだろ? バレないように凍らせるのは大変だったんだけど、喜んでもらえたみたいで俺も嬉しいぜ」

 

悪意。

それ以外の感情を捨て去った笑顔に、ハルカの表情が凍る。

 

ドンブラザーズとしての力を失った彼女は、結局のところ盗作疑惑の渦中にある売れっ子漫画家女子高生でしかないのだから。

 

「おっと?」

 

弱々しくも剣が切る。

カナエの剣。

その死線から身を躱して童磨が笑みを深めた。

 

「大丈夫さ、心配しなくてもちゃんと二人まとめて喰ってやるぜ」

 

うっすらと、常のごとく薄っぺらな楽しさが童磨口から溢れ出た。

正しく軽薄を絵に書いたような嘲笑が、しかし。

 

「来た!」

 

笑い声が重なり、確信したハルカの声が弾む。

 

「な…に?」

 

不可解な現象、その連続に知らず知らず童磨の鼓動が高鳴る。

それを更に高める雅な音色。

 

「ハッハッハッハッハ! やぁやぁやぁ! 祭りだ祭りだ! 踊れ歌えぃ! 袖振り合うも多生の縁、この世は楽園! 悩みなんざぁ吹っ飛ばせ!」

 

きらびやかな神輿に乗って、現れたるは暴太郎戦隊ドンブラザーズ・その主たる男の中の漢!

 

桃井タロウ、またの名をーーー【ドン!】

 

【モモタロウ!!】

 

「いざいざいざァァァ!!」

 

発射したエンヤライドン(※あの赤いバイクの名称。作者も今日初めて知りました)から飛び降り、重力を絡めた一撃を勢いよく振り下ろす。

 

「勝負!」

 

交差した鉄扇で真っ赤な戦士の一刀を受け止める。

その童磨の足元が沈み、嘘のように巨大な亀裂が入った。

 

「今度は赤色か、男は不味いから嫌いなんだ…ぜ!」

 

舞うように一対の鉄扇を振り払い、ザングラソードと火花を散らす。

 

「ほぅ! 少しは使えるヤツか!」

 

「そっちこそ、黄色い女の子と同じかと思えば、なかなか、どうして! ヤルじゃないか!!」

 

常人では認識すら不可能な剣と扇が生み出す生と死の舞踊。

 

タロウの剣を右の鉄扇で捌き、崩れた体勢を独楽のように回すことで左の鉄扇に活力を集め、全身をバネのように連動させてタロウの背後から斬りかかり、

 

「ゼッアァァ!!」

 

その動作を完全に把握していたタロウが飛び込むように前方に転がり、起き上がる勢いを剣に乗せて薙ぎ払う。

 

暇の無い攻防が数瞬の内に幾度も入れ替わり、金属の弾かれる音が破砕音となって空間を切り裂いた。

 

「す、すごい!」

 

「お供! バカみたいに口を開けるな! 手を動かせ! お前は何のために此処にいる!」

 

ハルカへの叱咤。

その間隙を見逃すほど、童磨は鈍くない。

 

「グハァ!」

 

鳩尾(みぞおち)を貫くような鋭い突きの一撃。

当たると同時に後方に跳ねてはいたが、小細工など意にも介さぬ鬼の怪力にタロウの足がよろめいた。

 

「なんだか、君のことは嫌いかも」

 

抜け落ちた表情。

感情の機微を知らぬ鬼が、それでも確として存在する不快感に突き動かされる。

 

「奇遇だな! 俺も全く同じだ!」

 

強烈なダメージを腹の奥底に封じ込め、威風堂々とした構えでタロウがそれを迎え撃つ。

 

【血鬼術・散り蓮華】

 

細かな硝子のような蓮華の花弁が、美しい死を伴って吹き荒れ、タロウの視界を塞ぐ。

 

「その奇天烈な服。肺は保護できても、全てを見通せるわけじゃないんだろ?」

 

僅かな戦闘の経験から、ドンブラザーズが纏うスーツの性能を理解した童磨が一気に攻勢に入った。

 

【蔓蓮華】を用い、煙幕となった散り蓮華の外側からタロウを打ち据え、二体の【寒烈の白姫】を生み出して足場を凍らせる。

 

「さっさと死ねよ」

 

普段の飄々とした態度からは想像もできない厳しさを見せ、告げた。

 

「【血鬼術・冬ざれ氷柱】」

 

宣言を行い、威力と範囲を増強した氷柱の雨が降り注ぐ。

 

「タロウ!!」

 

仲間の危機に、ただ悲鳴をあげるハルカ。

 

(このままで良いのかアタシ! こんな、ただ見てるだけで、何も出来ないだなんて!!)

 

負けられない、助けたい、力になりたい!

 

そうした想いが炎となって燃え上がる。

炎は照らす。

凍え、凍りつき、諦めかけた命の中に火を灯す。

 

「ハルカさん、呼吸を…!」

 

口から血を吐きながらカナエがハルカの持つドンブラスターに手を添える。

 

「カナエさん?」

 

「一瞬だけ、手本を、見せます。きっと貴女なら、呼吸を扱える」

 

ハルカの片手を自らの胸の内側に誘い込み、慌てふためく彼女へと微笑みかけた。

 

「血の流れを意識して、心臓の鼓動を…早めてください。ひたすら、愚直なまでに、肺を大きくして。たくさん空気を取り入れて」

 

カナエの声。

悶えるような痛みと苦しみを押し込めて、それでも凛と響いてハルカを導く心地よい音の列が、その内側に入り込む。

 

「フーーーーーー!!」

 

少しずつ、トリガーを固める氷に亀裂が入る。

 

「血が驚いた時、骨と筋肉が、連動し、熱くなって…強く、なって!!」

 

「「全集中!」」

 

二人の叫びと共に、光を弾いて氷が散った。

 

【ドン】【ドン】【ドン!】

 

【ドンブラコ~!!】

 

「アバターチェンジ!」

 

《オニシスター!》

 

「鬼に金棒! タロウをいじめるなぁ!!」

 

驚き過ぎて固まった童磨に、この夜初めての痛打が入る。

 

「グハ!!」

 

吹き飛び、壁にめり込んだ童磨へ警戒を続けるオニシスターの肩を、タロウが叩いた。

 

「タロウ!」

 

「良くやった!!」

 

そして。

 

「お供達! 最終奥義だ!」

 

「え?」

「え?」

「「えぇぇぇぇ??」」

 

二人の困惑を他所に、豪奢に光る櫓が興る。

 

「あぁぁ、もう! カナエさん、つらいと思うけどあと一押し、手伝って!」

 

「え、えぇ? はい??」

 

ガラガラと音を絶てて巻かれる歯車、その回転が櫓を天へと持ち上げる。

その最上段に位置するタロウが高らかに声を張り上げた!

 

 

 

「桃代無敵・アバター乱舞!!」

 

 

 

虹の剣線を棚引かせ、闇夜に舞い踊る剣の閃光。

 

《モモーータローーザン!》

 

光は、狂いなく鬼を切り捨てた。

 

「やった!」

 

達成感から、軽く肩を下げるタロウと喝采を上げるハルカ。

しかし鬼狩りとして、柱として生きた胡蝶カナエだけは見ていた。

 

「まだです! 鬼は頚を斬らなければ死なない!」

 

ドンブラザーズが普段相手取っている『ヒトツ鬼』と『鬼』の違い。

それが明暗を別ける。

 

「は、ははははは! やってくれるねぇ」

 

「な、バカな!」

 

胴体から下をなくし、それでも微笑んだ童磨が睨む。

 

「とどめを!」

 

カナエの声も虚しく、鬼の願いは無慈悲を招いた。

 

「【血鬼術…霧氷・睡蓮菩薩ゥゥウ!!!】」

 

全身全霊を賭けて放たれた鬼の術!

見上げれば首がもげるほど、莫大に巨大な仏の氷像が現れ出でた。

 

全てを捧げて行使した鬼の秘術は、朝日の訪れとともに消え去るだろう。

だが、質量とは力だ。

純然で純粋なその暴力は、近隣一帯…あらゆる命を容赦なく奪う。

 

その事実に、耐え難い現実に。

至らなかった己の弱さに。

これ程の業を抱え込み、足掻き震えて人を害する以外に進めない、そんな悲しい鬼の魂の嘆きを聞いて。

 

カナエの瞳から涙が零れた。

 

「…?」

 

その涙をタロウが拭う。

表情の見えない仮面の奥から、暖かな心がカナエを励ました。

 

「泣くなお供よ! まだまだこれからだ!」

 

「…え?」

 

「よく見ておけ! 祭りとは! 笑うものだぁ!」

 

呵々大笑!

 

天すら突き動かすような笑いの声を響かせて、タロウが黄金のロボタロウギアを手に取った。

 

【ドン】【ドン!】【ドン!!】

 

【ドンブラコー!!】

 

光が渦巻き、金色の奔流となって氷像を押し退ける!

 

「ドン全界合体!」

 

アバター空間を引き裂き、巨大化したエンヤライドンとジュランティラノが現れて重なる!

 

《ドンゼンカイオー》

 

現れ出でるは大巨神!!

 

異なる世界の境を超えて!

 

輝く機械の日輪を纏いて!!

 

「祭りだ祭りだぁ!!!」

 

いざ!

いさ!

いざいざいざァァァ!!!

 

風が逆巻き大地が唸る。

世界の条理を狂わせて、いざ尋常に!

 

「勝負! あ・勝負ぅ~!!」

 

ドンゼンカイオーそのものとなったタロウの口上に、童磨の氷像が目を光らせて応える。

 

「気にくわない、こんなに誰かに苛々したのは生まれて初めてだぜ! 何が祭りだ! 何が極楽だ! この世は地獄、誰も彼もが無知蒙昧で、自分で自分の頚を絞めている事にすら気付かない馬鹿ばかり! わかってる癖に! お前は俺と同じ側のイキモノの癖に!!!」

 

童磨は生まれつき優秀だった。

どのようなことでも習えば完全に理解し、指導者よりも優れた結果へと至った。

 

「ハッハッハッ! 笑わせるな! お前程度が俺様と同じであるものか!」

 

アバターソードの剛刃が唸り、氷像の拳が悲痛を奏でる。

その剣舞が火花を散らす。

 

太郎も生まれつき優秀だった。

彼にとって大人が言う難しい事など片手間で処理できる雑事でしかなく、その程度の小石に躓いて動けなくなる他人が理解できなかった。

 

「何故だ! 同じはずだ! お前は、俺と! 同じ筈なのに!!」

 

「………!」

 

わかっている。

どれほど暴れ、武威を示そうともその本質は同じ。

タロウと童磨は、同じ鬼を抱えて産まれついた。

 

しかしーーー。

 

「俺には人の幸せがわからない」

 

嵐のような攻防が終わり、タロウが呟いた。

 

「は、はは。そうだろ? そうだろうとも! 俺達にはーーー」

 

的を射たとばかりに童磨が喜び、しかし。

 

「たから! 人を幸せにすることで、幸せを学ぶ!」

 

この考えに至れたのは、決してタロウが童磨より優れていたからではない。

 

「ふざけるなよ?」

 

彼には、道を示す人がいた。

 

「ふざ、け……ぁぁぁぁあああああ゛!!!」

 

童磨と違って。

 

 

 

羨望、怒り、憎しみ、渇望。

 

 

 

表と裏。

鬼と人。

 

決して変えられない過去がもたらす平行線が、今ここで交わる。

 

「【血鬼術・冬ざれ氷柱】」

 

突如として猛吹雪が天へと逆巻き、恐ろしき氷の柱を作り出す。

 

ーーー無数に。

 

空を埋めつくす死柱の影。

これがもし放たれたならば、ドンゼンカイオーの力で食い止める事は不可能…!

 

天災の如き鬼の術が今、世界を食い潰そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばい!」

 

ピンチがヤバすぎて超やばい!

 

慌てて鬼ぴょいポーズを決めたハルカだが、それで事態が変わることもなく。

 

「やばいよ! 鬼やばい!」

 

見上げれば山のように巨大な敵と、それが生み出した氷の柱。

頭を抱えて転がるハルカを他所に、カナエは明確で不可避な『死』に立ち向かうドンゼンカイオーを見つめていた。

 

(力になりたい…!)

 

タロウは受け止めてくれた。

他人はおろか、本質的には実の妹にすら理解されなかった『鬼を救いたい』と言う思いを。

 

受け止め、その上で笑い飛ばしてくれた…!

 

「貴方の、力に!」

 

現実は非情だ。

願いだけでは叶わない。

 

だが、現実は!

願わなければ! 叶わない!!

 

 

 

【ドン!】

 

 

 

「え!?」

 

唐突に響いたその音に、ハルカが固まる。

 

【ドン!!】

 

しかしカナエにはわかった。

その銃の意味が。

突如、眼前に現れたドンブラスターのその価値が!

 

【ドン!!!】

 

ためらいなく手に取り、喜びを胸に解き放つ!!

 

「アバターチェンジ!」

 

【ドンブラコー!!!】

 

目映い閃光の中、カナエの身に光が纏う。

それこそは『白』の戦士!

 

胡蝶の羽織と同色のスーツに身を包み、現れたるは新たなお供。

 

《ヨッ! チョウシスター!!》

 

「え! え! えぇぇぇぇぇぇえええええ???」

 

混乱するオニシスターへ、ロボタロウギア見せ付けてカナエがーーーチョウシスターが先導した。

 

【ドンドンドン!】

 

「花の呼吸!」

 

【ドンブラコー!!】

 

艶やかな花吹雪が白を彩る。

 

《チョウ・ロボタロウ!!》

 

鋼の花弁を身に纏う。

一拍遅れでオニシスターもロボタロウへと身を変えた。

 

「行きます!」

 

「へ、は、ひ! ヒャーーーー!!」

 

ハルカの理解を待たず、その腕にオニシスターを抱えてチョウシスターが飛翔した。

 

《天限突破ァ! 月・光・蝶ォ!!》

 

巨大な蝶々の翅が虹色に輝いて闇夜に浮かぶ。

カナエは知っていた。

己が進むべき道の名前を!

 

「超次元合体!」

 

「わわわわわ! やってやるわよぉ!」

 

二人の戦士の意思を受け、ドンブラスターが唸りを上げる!

 

「「ユニオンライン・アバタードライブ!!」」

 

光の線がドンゼンカイオーと繋がり、三つの心が一つに重なる!

 

背に蝶を、両腕に鬼を!

これこそが!!

 

「ドン全界三位一体!」

 

《ドンゼンカイ・キッチョウダイオー!》

 

新たなる巨神が、天の定めを貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

 

キッチョウダイオーの内部では、姦しい高音が繰り返されていた。

 

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

 

「さっさと押せ!」

 

カナエとタロウの前には既に止まったルーレットが表示され、そのど真ん中に桃の絵柄が揃っていた。

 

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

 

この音の正体。

それこそが三人の眼前にあるルーレット。

 

『鬼』『蝶』『桃』(キッチョウトウ)

 

この3つの絵柄がグルグルと回り、今もハルカの停止ボタンを待っている。

 

「だーーーーー! なんなのよ! なんでルーレット!? スロットゲームとか誰得なのよ! 目押しなんて出来るわけないでしょ!?」

 

至極もっともなツッコミなのだか、それを理解出来る人はここに居ない。

 

「何故だ!? 真ん中に桃が来た時にボタンを押すんだ!」

 

「わぁぁぁぁがってんの! そんなのわかってて困ってるんだよぉ!!」

 

【5】【4】【3】

 

「ファ! カウント!? 時間制限!?」

 

容赦ない宣告に、ハルカの混乱が最高潮!

 

【2】【1】

 

「だー! んもー知らない!!」

 

目を閉じてボタンへと拳を振り下ろす。

その結果は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『桃!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【桃】【桃】【桃】大当たり~!!

 

《ヨッ! 両手に花ぁ~!!》

 

祝福のファンファーレが花束を落とす。

 

「やた! やたやたやたっ! すごいアタシ! 鬼凄い!!」

 

喜ぶハルカの頭をカナエが優しく撫でた。

 

「よし! オプション選択、Wi-Fi接続!!」

 

「ファ!? たたた、タロウ今Wi-Fiつった? Wi-Fiなの? ゼンカイオーってスマホアプリだったの??」

 

「Wi-Fi…ワイド、ファイブスターだ…」

 

「苦しいよね? その語呂合わせ無理じゃね? てかなんでファイブスター…ロボ漫画の神かよーーーよ!?」

 

唐突な浮遊感。

アバター空間とドンブラザーズが強固に繋がり、その結果として鬼とドンゼンカイ・キッチョウダイオーを異空間に落とす事に成功したのだ。

 

「これで周囲への被害は防げた」

 

「けど、今度はあの氷が全部コッチ目掛けて落ちてくるんでしょ? て、やばい! 目が光ってる! 来るよアレくるくる! 絶対来るよタロウォォォォォォォォ!!」

 

「ここは私が!」

 

二人を押し退け、チョウシスターが立ち向かう。

この身は仮初め(アバター)

だから、今だけは呼吸が使える!

 

 

「花の呼吸・終ノ型ーーー彼岸朱眼ーーー」

 

 

カナエの呼吸により、キッチョウダイオーの目が変わる。

真紅に瞳が燃え上がる!

 

《ヨッ! EXAMシステムゥゥウ!》

 

「おおお、怒られるよ!?」

 

ハルカの渾身のツッコミも虚しく、赤光を放って機神が吼える。

 

「これは、行けるぞ!」

 

迸っては迫り来る氷の柱。

一つの巨大な濁流のように思えていた柱の中に、確かな隙間が存在している!

 

「「「全力・全開・全集中!!!」」」

 

三人の心が一つとなり、合わさった全てがキッチョウダイオーを突き動かした。

 

蝶の翅が羽ばたいて、鬼の(カイナ)が煌めいて!

 

「「「必殺奥義!!!」」」

 

【ドン!】【ドン!!】【ドン!!!】

 

三枚のロボタロウギアが光を放ち、空中に三つの輪を描く。

その光はシルエット。

 

「やってやるぜぇ!」

 

氷柱の雨をかわしながら、タロウがキッチョウダイオーの拳を操る。

殴りるは光、光の影よ!

 

【鬼!】

 

一枚。

 

【蝶!!】

 

二枚。

 

【桃!!!】

 

三枚の光輪がドンゼンカイ・キッチョウダイオーへと吸い込まれてれて、

 

《スキャニングチャージ!》

 

月光蝶の翅が空間を超えて広がり、キッチョウダイオーが天へと舞い上がった!!

 

 

 

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

キッチョウキッチョウ・キッチョウトウ!

 

 

 

【ドン・ゼンカイ・OOO(オーズ)クラッシュ】

 

 

 

「「「セイヤー!!!」」」

 

 

 

超質量の神威が氷像を打ち砕く。

 

「馬鹿な…」

 

鬼としての終わりを前に。

しかし、童磨の心に残ったのはーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ってしまうのですか?」

 

朝日。

輝く太陽に照らされた、この町並みを守った勇者が別れを告げる。

 

「俺のお供が向こうの世界で戦ってる」

 

「え゛帰ったら二回戦突入コースなの? もぅ私限界なんだけど!?」

 

目の下にクマが出来たハルカの嘆きをサックリと無視して、タロウがカナエの頭を撫でた。

 

「お前も俺のお供だ、ピンチの時には駆けつけてやる」

 

「タロウ様…」

 

潤んだ瞳でカナエが彼を見つめ。

 

「たろーさま…」

 

その隣で童磨が同じようにタロウを見つめた。

 

「うん、お前(童磨)は無いな!」

 

そう、タロウはドンブラザーズだ。

鬼を斬り、人へと戻す正義の戦隊。

 

「ヒドイなぁタロウは、俺とお前の中じゃないか」

 

ニヤリと唇の端を吊り上げて笑い、タロウの肩に手を回した。

 

「まさか、人間に戻る日が来るとは…」

 

流石に感慨深いのだろう。

登り来る朝日を眩しそうに見つめる童磨の横顔はどこか超然としていた。

 

「俺は人喰いの人殺しだ」

 

「そうだな」

 

例え人に戻った所で、その事実は変わらない。

だからタロウは極めて冷静に童磨を見つめた。

その瞳の鋭さが、童磨にはまだ厳しくて。

 

「誰ぞ殺した人間の縁者にでも、首を捧げるかな?」

 

軽く、まるで気さくなジョークのようにこぼした言葉。

 

「バカ野郎!」

「グハァ!」

 

ハルカが童磨の腹を殴った。

 

「ふざけんな! そんな逃げ道許さないんだから! アンタ私がどれだけ苦労して退治したと思ってんの? アンタはね! これから死ぬまで働くの! 人を助けて人を助けて人を助けて人を助けるの! そうやって、お爺ちゃんになっても前のめりで生きて! 生き抜いて! それで初めて人間になれるんだ! 中途半端な覚悟で人間やってんじゃねーよ!!」

 

かなり深い所に入ったのか、腹を抱えて蹲る童磨の頭にカナエが手を添えた。

 

「貴方一人では難しいでしょう。けれど貴方は独りではありません。乗り掛かった船ですもの、私が手助けしてあげますよ」

 

カナエが優しく微笑んでみせた。

 

 

 

 

 

こうして歴史は変わった。

その因果が何処へと通ずるのか、それを知るものはまだいない。

 

だが、世界を超える繋がりが互いを思いやる限り、物語に終わりは無いのだ。

 

戦士よ、鬼を倒せ。

戦士よ、鬼を救え。

 

 

暴太郎戦隊ドンブラザーズ『ドン10話・errorstole』開幕。

 

 

 

 

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