ドンモモタロウが童磨をオトモと認めるまでのアレコレ! 略してドン×どま! オンリーワンのハイブリッド鬼退治物語、満員御礼・大好評連載中…ドンドン行くぜぇ!!   作:マキシマムとと

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③【幸せなエラーが】鬼滅の刃 第55話 無限夢列車【に■♡し∞しΩ!】前編!

 

那田蜘蛛山での戦闘。

戦地に赴いた隊員の大多数が重軽傷を負ったものの、奇跡的に死者はゼロ。

 

理屈は全くの不明なのだが、蜘蛛男のように取り返しがつかないほど酷い血鬼術に犯されていた隊員達は、ちびカナエちゃんの一撃による累の討伐と同時に人間の姿に戻る事が出来たし、ドンブラザーズの介入により早い段階で累の家族役が吸収されていた事が功を奏したと見られている。

 

しかし、桃井タロウは気付いていた。

 

鬼退治がなされたにも拘らず、人間の累が居ないこと、そして累から得られる筈のオニガカリ・ギアが存在していない、その事実に。

 

 

 

 

 

…まぁ。

それは兎も角として。

実は鬼殺隊の重傷者リストには竈門炭治郎の名前が無かった。

 

毒を除去され傷口を塞がれたとはいえ、累の指は完全に腹を貫通していたし、それによって命が消えかけた事実は重い。

 

彼は約一月の間昏睡状態にあり、しかし重傷者とは見なされなかったのだ…不思議なことに。

 

そして、彼が意識を取り戻した、その時。

 

 

 

 

 

「死ねよ炭治郎」

 

 

 

 

 

何故か友人だと思っていた我妻善逸に呪詛を吐かれ。

 

 

 

 

 

「おめ、おめで、と♪」

 

 

 

 

 

何故か日の光の下で生き生きとした笑顔を浮かべる妹に祝福され。

 

 

 

 

「ふ…フツツカもの、ですが」

 

 

 

 

何処かで見た覚えのある………ような、気のする、凄まじく、、、言語に変換する事が出来ないほど、もぅ…なんだろう、綺麗というだけで語彙力の限界を八百万回ほど突破してしまうような美女が、炭治郎に潤んだ瞳を見せて『白無垢姿で』正座して、深く身体を丸めてお辞儀をしたのだった。

 

「ーーーーーひゅ…」

 

声を荒げなかったのは、炭治郎が長男だからだろう。

流石は長男、長男は世界を救うぜ…ゴクリ。

 

現状把握のために脳が全力で稼働し『身に染み付いた』ヒノカミ神楽の呼吸を行って平静に努める。

 

何故、自分の身体がこれ程完全に、日の呼吸に適応しているのか。

そこに思い至る事が出来れば、もしかすると現状把握の切っ掛け程度にはなったかもしれない。

 

だが、至らない。

 

炭治郎…お前は判断が遅い!

『ぺんぺんぺしぃぃぃん!!』

 

彼が首を動かさず、必死で読み取った情報は三つ。

 

 

 

① ここが厳かな雰囲気の小部屋であり、どう見ても神前、神主様がムニャムニャ祝詞をあげている。

 

② 自分の服装は今まで見たこともないくらい立派で綺麗な和服。それは五つ紋の黒紋付羽織袴であり、羽織には黒羽二重の染め抜きの五つ紋が付いていた。

 

③白無垢姿のどえれぇ別嬪さんからは自分の、そして自分からはどえれぇ別嬪さんの匂いがぷんぷんしていた。

 

 

 

明らかに、馬鹿でも理解できるアレである。

 

(ケ・ボーン!!)

 

騎士竜戦隊もアッツアツで『イカしてる!』て違うでしょ、炭治郎くん?

 

(けっ、けけけけけ…! 結婚!?)

 

さよう。

ケ・コーンである!!!

 

結婚式の前にはしっかりと、入念に禊をします。

にも拘らず、婚前であるにも関わらず!!

 

お互いから、拭いきれないほど濃厚に、お互いの匂いが!

 ぷんぷん はふはふ しておるこの現実!!!

 

炭治郎は鼻が良い。

だから炭治郎は匂いに段階を付けて人間関係を把握していた。

 

 

 

縁の無い、もしくはこれから縁を持つ人。

 

縁があり、そこそこの頻度で触れ合う事のある知人。

 

血縁、もしくは共に生活をしている伴侶や戦友。

 

 

 

驚くべき事に、目の前に控える美女は3番目に該当する禰豆子よりも濃く、自分の匂いを香らせており。

 

そして。

 

その中でも、一番匂いが強い場所を意識した瞬間、炭治郎の…いや、15歳の少年の脳ミソが沸騰し、ショート寸前の非常事態に陥った。

 

「こちらを…」

 

その瞬間を見計らった訳でもないのだが、実に絶妙なタイミングで小さな盃を押し付けられ、硬直した炭治郎に神主様が小声で話しかけ、飲み干す動作をしてみせて。

 

「あ、ぁぁ…?」

 

意味を理解しないまま、その通りに中に注がれた液体を口に含んだ。

 

「ーーーーー!!」

 

気付いていた。

酒だと気付いていたのだが、気付いてその上で至らずに口に含み、含んだからには………呑んでしまう。

テンパりキッズと化した炭治郎であれば、それは仕方のない失態であり(他の世界線ではどうあれ)この世界の炭治郎は驚くほど酒に弱く、その一口で前後不覚に陥った。

 

だが、だが…!!

 

それでも彼は炭治郎…いや、長男なのだ!

長男は負けない、長男はくじけない、長男は酔っぱらわない!!

 

炭治郎の魂に染み付いた『長男』という概念が、公の場で醜態を晒す事を拒み、その結果…炭治郎は本当に意味がわからない状態のまま、つつがなく結婚式を終え、(旧姓)栗花落カナヲと夫婦になったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物事に結果があるのなら、当然ながら原因がある。

 

那田蜘蛛山での決戦の後、お館様は原作通り負傷した隊員の回収と共に『竈門炭治郎』及び『竈門禰豆子』の拘束を命じた。

 

そして旧花柱・胡蝶カナエ、元上弦の鬼・童磨、赤と紺色の隊服…制服? を身に纏う長身痩躯の男、黄色っぽい服装の女の子、この四人には絶対に手を出さず、誠心誠意…心からお願いして任意同行を求めるよう通達された。

 

そこで三姉妹の再開という美しいドラマがあったのだが、この時点ではまだ、そこまで重大なエラーに及ぶ事象は発生せず。

 

 

 

その狂いは『柱合裁判』から始まった。

 

 

 

「裁判の必要などないだろう! 鬼を庇うなど明らかな隊律違反! 我らのみで対処可能! 鬼もろとも斬首する!」

 

皆大好き!

炎柱の煉獄杏寿郎を筆頭に、四人の柱がその意見を肯定し。

 

「おい、何でソイツはまだ寝てやがるんだァ?」

 

つついても殴っても、耳元で騒いでも何をしても目を覚まさない炭治郎に痺れを切らし、禰豆子が入っている箱を片手に不死川実弥が現れた。

 

「この鬼は特別だァ? 人を守るために戦えるゥ? そんなことはなァ………」

 

右手を刀の柄に伸ばし、抜き放とうとしたその瞬間。

 

『バン!!』

 

内側から蝶番もろとも、その扉が十数メートルほど吹き飛んだ。

それは打撃。

極めて高威力の。

 

「ん、んん~…んふ」

 

身体の大きさを整えながら、竈門禰豆子がその姿を表した。

 

「…え?」

 

思わず空を見上げる実弥。

うん、快晴…今日は洗濯物が良く乾くぜ! ヒャッハー!!

 

てーーーはァ!?

 

 

「お、おは…おは、よ♪」

 

 

口枷の紐を指の鋭い爪で切り捨て、後ろ手に荒縄で拘束されたまま眠り続ける兄に微笑みかけた。

 

 

 

 

 

 

裁判を保留し、日陰で安らかに眠る炭治郎と、その頭を撫でる禰豆子に厳しい視線を向けながら、実弥はお館様の到着を待った。

 

あの後の話。

目覚めない兄と、その拘束された姿に。

 

「にいちゃ、お…おにい、ちゃ…う、うぅ…!」

 

目を潤ませ、あわやギャん泣き寸前の禰豆子を助けたのは他の誰でもない、不死川実弥その人。

 

流石は風柱様でいらっしゃる、と下手すれば(友達だからきっとそんな酷いこと言わないと実弥は信じてるが…)伊黒小芭内に揶揄されそうな神速で空を駆けて炭治郎を拘束する縄を断ち切り、禰豆子と同時に小脇に抱えて庭の隅に移動させたのだ。

 

「わん、わん…わん!」

 

ねずこちゃんニコニコである。

何故か実弥を「わんわん」と呼んで可愛らしく手首だけ動かして好き好きアピールする。

 

絶妙に空気を読んでその場から動かないのだが、万が一実弥が近付いたら頭を抱えてその白い髪の毛をワシャワシャする未来しか見えず、その絵づらを思い浮かべてしまった甘露寺蜜璃は今まで経験したことのない超ハイレベルのギャップ萌えに脳をやられていたし、伊黒小芭内はそんな彼女の扇情的な姿にハラハラドキドキを募らせていた。

 

この三人は退席させるべきなのではないだろうか。

 

まとめ役的なポジションにある悲鳴嶼行冥は本気で検討したが、よくよく考えれば冨岡義勇は常にボッチだし、時透無一郎は上の空、胡蝶しのぶは姉に付き添っているため、まだここには参上していないこの有り様で、今さら何をどうしても無意味だと結論付けたらしく、ひたすら数珠をガシャガシャ鳴らして涙を流した。

 

…うん、行冥くんも大概アレやないかい。

 

 

 

「すまない、待たせたね」

 

 

 

お館様が見えられた。

 

「しのぶと客人扱いの四名は少し遅れていてね、ただ待つのも芸がないし、那田蜘蛛山で起こった出来事を一度整理しておこう」

 

それから、那田蜘蛛山での戦果や話題の彼らの素性など、それはもう重要な話が頭の上で飛び交うのだが。

 

正直、実弥はそれどころではなかった。

 

だから彼らの実力を知りたいと意見した宇髄天元に頷き、こう言った役割に定評のある人物に話を割り振ったお館様に罪はないのだが、彼のその発言により事態はさらに加速して狂った。

 

 

 

 

「実弥…お願い出来るかな?」

 

「…お館様」

 

(流石はお館様だ。俺の思考を見抜いていらしたとは)

 

実弥は彼の事を改めて尊敬した。

そして躊躇いを切り捨てて歩き出す。

 

「…え?」

 

後ろでお館様が困惑している事も知らず。

 

 

 

 

向かう先には禰豆子。

さっきの騒動からこっち、実弥の『お兄ちゃんスイッチ』は入りっぱなしである。

 

木陰に座っていた禰豆子のもとに、美しい蝶々の番がヒラヒラと舞い寄った事に気付いていたし、それに魅せられてフラフラ歩き出して(あぁ~こら、もぅアカン! アカンよォォォォォ!!)と内心で絶叫していたその時にお館様からGOサインが出たのだ(出てません)やはりお館様は素晴らしい。

 

側に控えていた隠の二人が、そのあまりの鬼気にお互いを抱き合い、震えながら涙を流した。

だが、今の実弥にはそんなもの目にも入らない。

 

「…わ? わん? わん、わ!」

 

うれしい!!

 

蝶への興味を消し去って、ただひたすらに真っ直ぐな感情を身体ごと実弥に投げ掛けて、禰豆子が頭からその腹に突っ込んだ。

 

「ヒィィ!!」

「ヒエェェェ!!」

 

上弦の肆だったか伍だったか、こんな怯え方する鬼がいましたね。そう言いたくなるような見事な悲鳴をあげる隠の二人を背景に、実弥がゆっくりと腰を下ろす。

 

「わん、もも、ももふ、ふふっ♪」

 

禰豆子が実弥の頭をワシャワシャ撫でまくる現実の光景。

妄想よりも一段飛ばしで萌え萌えキュンキュンな神の景色を前に、蜜璃の理性は遂に決壊し、だくだくと滝のように鼻血を流した。

 

しかしそこは流石、伊黒小芭内が即座にハンケチーフを差し出し、彼女は感謝と共に息を乱して事の推移を見守ったし、そんな彼女を見守りながら大切な友人のやらかし映像を眺めると言う至福の時間に彼は心から感謝していた。

 

 

 

「お嬢ちゃん、嬢ちゃんの兄貴は少し疲れてるみたいだなァ」

 

「う? あに、あにき、ちかれ? おちか、れ?」

 

「アァ…そうだなァ、おちかれだ」

 

(ブッフォ…!!!)

蜜璃さん、静かにしててね?

 

「だから、もちっと静かな場所でネンネさせてやろうぜ?」

 

(ネ・ン・ネ…☆♡♡♡*∀*)

もう目が血走ってるんですけれども。

 

「………? わん、いっ…しょ?」

 

なんとなぁ~く理解した風な禰豆子に微笑み、実弥が優しく頭を撫でた。

 

「まだこっちの話しは終わりそうにねーから、先に行ってなァ。オイお前ら、この二人を蝶屋敷へ連れてけ、目を離すんじゃねーぞォ?」

 

目を離したら…死ぬ、地獄の果てまで追い回されて、噛み殺される。

そんな未来を幻視した二人がコクコクと首を振りーーー、

 

「あらあら、不死川くんはいつの間に蝶屋敷の主人になったのかしら?」

 

遅れてやって来たドンブラ御一行と胡蝶しのぶ。

四年ぶりに再開した花柱の発言によってそれまでの空気が一変した。

 

「しのぶ、もしかして不死川くんと祝言をーーー」

「「馬鹿なことを言うな!(言わないで姉さん!)」」

 

おっとりと、見たまま聞いたままの客観的な推測によって飛び出したカナエの問いは、当人二人によって即座に否定された。

 

「て、オィマジかよ。お前、カナエ…本当に」

 

夢現の状態で、実弥の手がカナエの頬に伸びて、

 

「俺のお供に気安く触るな」

 

当然のように桃井タロウが払い除けた。

 

「それにしても驚いた、この世界の犬は喋るのか、しかも人間に良く似ている!」

 

恐ろしい事に、まったくの、鼻くそ一ヶ程度の悪意も無くタロウが言い放った。

 

…作者が思うに、タロウは良く舌が回る義勇なんだと思うんですよ。本気で、本人には悪気の欠片もないまま除雪車のようなクソ馬力で目の前にある問題に体当たりして行く所とか、もぅそっくりじゃね?

 

「テんんんんメェ、殺されてェのかァァァァァァン??」

 

一触即発。

頭を撫でようとしたタロウの細腕を掴み、へし折る前提で圧力をかける実弥に、その力強さを理解して「ほほぅ?」と狂暴に笑うタロウ。

 

「ね、ねね! カナエちゃんカナエちゃん! あの人ってカナエちゃんの何? 恋人? 恋人??」

 

外野で騒ぐのは漫画家・鬼頭ハルカ。

もうネタとしか見ていない。

 

そして、

 

「おぃ! なんでプリンがねぇんだよ! 3時のおやつはプリンなんだよ! わかんだろ? なんでもいいわけじゃねぇんだ! プリンじゃなきゃドン王にはなれねぇんだ! な? わかんだろ? なぁあ??」

 

騒がしくおやつについて熱弁を振るう童磨(モモタロス)まで現れて一気に場が騒然とした。

 

(絶対にヤバイぞ)

(死ぬわね、ここにいたら絶対に巻き添え死するわ)

 

隠二人の意見が合致し、彼らは即座に禰豆子と炭治郎を担ぎ上げ…それはもう『隠』の名に恥じぬ素晴らしい隠密力を発揮してその場から遁走したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…死ぬかと思った」

 

「そうね」

 

「あの細い奴が『赤色』なんだろ?」

 

「たぶん、そうね」

 

「強い奴は皆、頭のネジ取れてるんかな?」

 

「さぁ…わからないけれど、聞いた話あの『赤色』の人が水柱様と共闘して下弦の弐・参・肆・陸を討ち取ったらしいわ」

 

「…は? あの、一晩で? どこ情報だよ??」

 

「寛三郎さま」

 

「かん………み、水柱様の鎹鴉やんけ。お前それ…」

 

ボケてんじゃね?

 

その一言を飲み込んで、二人は走った。

そして蝶屋敷へとたどり着く。

 

「…あっいる。人いる」

 

「あれはえーっと、そうだ」

 

「"継子"の方だ、お名前は…」

 

カナヲの後ろ姿を見つけた二人、その背中で『彼』が目を覚ました。

 

「ツグコ?」

 

まだ眠そうに目を擦りながら。

 

「ツグコって………?」

 

ふわり、風に舞い揺れるように身体の向きを入れ換えて、カナヲがこちらに向き直った瞬間。

 

ーーーお前起きたのか!?

ーーーいつから!?

 

そんな隠の悲鳴に似た声など、無価値同然。

 

「まま…」

 

その二文字の意味を理解出来る人は、その場には存在しなかった。

 

「ママ!!」

 

ママ、お母さん、母上、母親、お袋、マザー、等々など。

沢山の呼び名があるその意味は、ただ一つ。

 

「ムギゃ!?」

 

ここまで背負ってくれた隠の背を足場にして炭治郎が…いや、彼の中にいるリュウタロスが飛び跳ねる!!

 

「ママァァァァァァァァァ!!!」

 

全力全開の笑顔でルパンシャンプを決め、カナヲの胸に顔を埋めた。

 

「ふぇ?」

 

そう。

これが今回のerrorstoryの走り。

栗花落カナヲ(16歳を)を心の底から自分の母親だと断言する竈門炭治郎(15歳)の中のイマジンが引き起こした『僕はママとずっと一緒にいるよ! だってママが良いよって言ったんだもん!!』事件である。

 

ガチで、炭治郎が意識を取り戻した祝言の日に至るまでの約一ヶ月間、彼はガチで四六時中カナヲにくっついて過ごした。

 

ご飯の時も、お散歩の時も、鍛練の時も、鬼退治の時も。

 

…そして、うん。

そうなのである。

お風呂の時も寝る時も、いつ如何なる時も炭治郎(リュウタロス)はカナヲと共に過ごしてしまった。

 

カナヲさんと彼女を教育した胡蝶姉妹の名誉の為に言っておくが、カナヲさんの貞操観念は十分に有る。

ただそれは欲望任せの下衆な男や犯罪から身を守るようにと指導された物であり、同年代の息子?? との距離感については明記されていなかったのだ。

 

那田蜘蛛山の戦後処理や、童磨と禰豆子の現状確認、想定される鬼の今後の動向、現在の推移、ドンブラザーズが何者なのか、何をどうしたいのか、その今後は…などと、話し合う話題が途切れずに続き、胡蝶姉妹がようやく家に帰りついた頃にはとっくのとうに(アレな交渉事は無いのですが)客観的に見た場合の既成事実は成立していたし、困ったことにカナヲ本人が炭治郎を含むリュウタロスにクソデカ感情を抱いており…。

 

「炭治郎の魂はもうすぐ目覚めるよ。そしてその時、炭治郎の命と同化した僕の意識は、その魂に包まれて眠ることになる。だから…だからその前にーーー結婚したいんだ、ママと!!」

 

リュウタロスはそう。

昔から結婚に強い憧れを抱いたイマジンだった。

 

「僕の意識は眠るけど、ママと炭治郎が結婚して赤ちゃんが出来たら、きっとそれがら僕だから。だから大丈夫!」

 

どういう理屈でそうなるのか、一切不明なのだがリュウタロスの中ではそれが真実であり、カナヲもそれを信じた。

信じたし、それまで自発的な言動を取らなかったカナヲが「結婚します」と断言して譲らなかった。

 

 

 

「カナヲ、立派になって…!」

 

いや、違う。

 

「姉さんどうしましょう、カナヲの結婚式よ? 私の権限で使える限度額は全て投入するけれど、、、足りない…ですよね? ごめんなさい…私の失敗です、四年前の上弦の弐討伐報酬を受け取っておけば、妹に心配かけなくても済んだのに…!!」

 

かなぁぁぁり、間違っている。

 

「大丈夫よ、お館様はお優しいから。姉さんに任せなさい、カナヲに悲しい想いはさせないから…絶対、絶対に…!!」

 

「姉さん、素敵…♡」

 

…まぁ、そんな感じてある。

素敵脳と化した二人のとんでもねぇ妹愛を原動力に、結婚式の準備は時間と資金とお館様の寿命の限界までを酷使して行われた。

 

その一月の間、鬼は鳴りを潜めており鬼殺隊に珍しく余裕があったことも幸いし、柱を含む部隊の役半数が炭治郎の故郷に向かい、里の人々と一緒に彼らの門出を祝福したのだった。

これが炭治郎の住む山の麓の町の名物となる『炭カナ祭り』の始まりであるとかなんとか、ムニャムニャムニャ…。

 

 

 

 

 

式の翌日。

炭治郎は宛がわれた旅館の一室で目を覚ました。

 

「おはよう御座います」

 

目覚めたら彼に微笑むのは、妻となったカナヲ…ではなく。

 

「お、おは…おはよう、ございます?」

 

その姉『胡蝶しのぶ』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口下手な妹に代わり、まるで状況をわかっていない炭治郎への説明役を買って出たしのぶは、那田蜘蛛山から今日までの一連の話を順序立てて説明した。

 

最初こそ、混乱や困惑といった感情の乱れが多かったものの、那田蜘蛛山で死者が出なかったことに加え、妹が人間に戻りつつある現状、その後の顛末など…。

事の経緯を知る毎に落ち着きを見せる炭治郎の胆力に、しのぶは内心で彼の評価を上向けた。

 

「俺の事は良いんです。正直、家族を亡くしてからここまで、妹を人間に戻す事だけを考えて生きて来ましたから、こんな…その、綺麗な人と夫婦になれただなんて、嘘みたいな幸福だと思ってます」

 

そう述べる炭治郎の表情は、硬い。

しのぶの隣にちょこんと座ったカナヲを見据えて続けた。

 

「けど、俺は炭売りです。鬼狩りとしての生活が終わったら、きっと山で炭を作って、それを売って生活していきます。炭売りは普通の家庭に比べれば遥かに貧しいし、苦労をさせない保証はありません。

 

本当なら、式を中断してでも話すべきでしたし、今の話だって五体満足に生き残れたら、の夢物語の上にある話です。カナヲさんを戦いから遠ざけたとしても、俺は不具になるかもしれないし、それこそ死ぬかもしれない。不安を言い出したらキリがありません。

 

そもそも、カナヲさんが好きなのはリュウタロスであって、俺とは殆ど初対面ですよね? 本当に、本当に俺なんかと結婚して良かったんですか?」

 

炭治郎は聡明だ。

だが謙虚だ。

だからこそ、確認しなくては納得出来なかった。

 

「私は…」

 

カナヲは怯える。

自分の心を言葉にする行為は、やはり苦手で。

難しくて、頼りなくて。

けれど、真っ直ぐに自分を見詰める彼の瞳が美しくて。

だから、そんな彼に恥じないように、懸命に言葉を紡いだ。

 

「私は、いらない子供…だったの。間違えたり、遅かったりしたら、両親は容赦なく私を打ったし、ご飯を抜かれたり、酷く怒鳴られたり、泣いたりしたら、それこそ動けなくなるまで叩かれた。

 

けどね。

ある日ぷつんと音がして、何もつらくなくなったの。

 

気味が悪かったのか、お金が欲しかったのかわからないけれど、私は親に売られたの。売られて、紐にくくられて。

男の人に犬のように引っ張られていた時、大きな大きな橋の上で姉さん達に拾われたの。

 

汚い汚い私の手を掴んで、しっかり繋いで走ってくれた。

お風呂に入れてくれて、ご飯を世話してくれて、綺麗な服を着せてもらって、皆が知っている常識を教えてもらって。

 

私はね…私は、空っぽなの。

この『私』は姉さん達に貰った私。

本当の私は惨めで無価値で、誰からも必要とされずに二束三文で売り払われる汚ならしい子供なの」

 

真っ白な膝の上で、握りしめた拳を震わせながら。

それでも、彼女は真っ直ぐに彼を見詰め、彼もまたそれを真正面から受け止めた。

 

「でも、リュウタロスはそんな私の事をお母さんだって言ってくれた。代わりなんか居ない、大事な大事なお母さんだって言ってくれた。私の全部が大切なんだって、言ってくれた。

 

それに…炭治郎、本当に覚えてない? 三日月の夜、リュウタロスが寝た後、少しだけお話したよね」

 

炭治郎はカナヲを知らなかった。

顔だけは見た記憶もあるが、名前すら知らず気付けば夫婦になっていた。

 

そう告げられて、落胆した。

 

落胆したカナヲは、それでも諦めない事を選んだ。

自分は、人に覚えてもらう価値などない存在だと思っている。それでも、諦められなくて、だから、だから震える手で一枚のコインを取り出した。

 

「覚えてない…かな?」

 

それには『表』と『裏』が書いてある。

 

「投げたの…お、覚えてない……かな?」

 

彼を見る。

しっかりと、細部に至るまで。

 

(…あれ?)

 

瞳孔の開きが、大きい…?

 

光の加減でそう見えるだけかもしれない。

けれど…!

 

「『表が出たら、カナヲは心のままに生きる』そう、言って投げたの…お、覚えてる?」

 

炭治郎の頬を、一筋の汗が伝う。

 

「…!! 覚えて、る。覚えてるよね? 覚えてるんだ! そ、そうでしょ!? 返事して、炭治郎!!」

 

らしくなく、うつ向いて返答を控える炭治郎に、カナヲがにじり寄った。

 

「表が出たんだよ。私、ドキドキしたけど、表が出て炭治郎が言ったの『人は心が原動力だから』って、そしてーーー」

 

言い募ろうとしたカナヲの口を、炭治郎が押さえた。

 

「ゴメン。本当に、ゴメン…! 夢だと思ってたんだ、ホントに悪意は無かったんだ、意識がボンヤリしてて、ふわふわしてて、きっとリュウタロスの意識が混ざってんたです!!」

 

狼狽している。

あたふたあたふたと、みっともなく慌てふためくのは。

 

「詳しいお話を、聞かせてもらいますね?」

 

隣にお姉さんが座っていて、困る話だからですよね?

 

「ーーーーーは、い…」

 

 

 

 

 

 

原作ファンのちびっこには申し訳ねぇんだか。

これが、この世界の事実なんだ。

 

いいかい?

 

リュウタロスはガチでカナヲを母親だと思ってた。

だから一緒に風呂にも入るし同衾(同じお布団でお寝んねする事だよ! 家族でもない年頃の男女は普通しちゃイケない破廉恥な行為なんだよ!)するし………オッパイだって、吸うんだよ。

 

炭治郎が目覚めたのは、カナヲがコインを使って乳吸いを拒絶した日の夜でね?

ふて寝したリュウタロスの代わりにおっきした炭治郎くんが聞いたのよ。

 

「なんで自分で決めないの?」

「カナヲはどうしたかったの?」って。

 

もう、ほんとゴメン。

作者は原作大好きなんだよ?

汚す気持ちはこれっぽっちも無かったんだよ?

 

けど、何故か、世界がこの展開を求めていたんだよ。

 

「何で表を出せたの?」

 

問いかけるカナヲに、炭治郎は笑顔で応えた。

 

「偶然だよ、それに裏が出ても表が出るまで、何度でも投げ続けようと思ってたから」

 

そう言って、カナヲの隣に腰を下ろし。

 

「さぁ、カナヲ…カナヲは、どうしたい?」

 

その細い腰に手を回して、隊服の下に隠された脹らみを見詰めた。

 

 

 

 

 

 

「ギルティですね」

 

しのぶの氷のような笑顔が、有罪を告げた。

 

「ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさい」

 

そこには少年漫画で一世を風靡した主人公の面影はない。

 

「だ、大丈夫? おっぱい吸う?」

 

そんな炭治郎を心から心配したカナヲの言葉が、炭治郎の罪を抉る。

 

「カナヲちゃん? そう言うのは夜、二人だけの時しか言っちゃイケないのよ?」

 

「そう…なの? ごめんなさい姉さん、気を付けます。リュウタはいつも、どんなに泣いててもおっぱい見せたら機嫌が治ってたから、つい」

 

『つい』で出てくる台詞じゃねぇんだよなぁ。

監督不行き届きを恥じながら、それでも過ちの相手が悪人では無かった奇跡に感謝して、しのぶが口を開いた。

 

「しかし、わかりました。お互いに結婚に際しては問題は無いようですし、あと必要なのは時間だけのようですね」

 

そして、懐から取り出す。

 

「これは…?」

 

それは切符。

 

【東京 無限 9373】

 

運命が刻印された、一枚の。

 

「新婚旅行、炭治郎くんは知っていますか? 西洋では蜜月…ハネムーンと言う大切な行事があるそうです。

 

二人で見知らぬ土地に赴き、共に過ごす。

 

それはにお互いの事をもっと知る良い機会になるでしょう。貴方達にとって一生に一度の思い出になりますし、是非、楽しんで来てください」

 

そして運命は動き出す。

 

さぁ。

次の駅はーーー過去かーーー未来かーーー。

 

 




今週も最高を更新しました。
ドンブラザーズ、どこまで高みに昇っていくんだ。
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