かつてハーレム主人公だった貴方へ〜NTRから始まるバトルモノ〜 作:ウジ虫以下
元来、"僕"という人間はどっち着かずな鈍感クソ野郎であった。
今だからこそわかる、否こんなことをこんな歳まで気づけなかったなんてことは愚かさでしかなかった。失ってからこそ理解する僕は周りに甘えていた。
少しツンとした性格の幼馴染。
からかい上手な先輩。
おっちょこちょいの後輩。
しっかり者の義理の妹。
そんな彼女達が、いつも周りに居てくれて、和気藹々とした日々を過ごす。それこそが僕が感じていた当たり前。当たり前の日常であった。
誰かが言っていた。『お前はハーレム主人公みたいだ』、と。誰しもが羨むような環境であったのは事実だ。だけれど、あの時の僕はそんな環境が極々自然なものであると、そう勘違いしていた。
『—誰が好きか、そろそろはっきりさせて欲しい』
最初に口にしたのは誰だったか。彼女が口にしたことが理解できない。僕は彼女達、皆が大好きであり、誰がというようなものはなかったのだ。そうだ、自分は鈍感クソ野郎で大馬鹿者であったのだ。
その時なんて言ったのか。『僕は皆が大好きだよ』だとか、『好いてくれるのは嬉しいけれど、このままでいいんじゃないかな』だとか、そんな優柔不断な言葉を口にした覚えがある。
『…………そう、よね。ワタシが間違ってたわ。…………一番だなんて決めていいわけない、か………。』
そんな彼女の言葉を鮮明に覚えている。いつもはツンツンとした態度の彼女が、初めて見せた物悲しげな顔が頭から離れない。この時に気づくべきだった。女の子を悲しませる様な奴は死ぬべきなんだと。これは過言ではない。僕の様な人間は死んでも良かった。
それからは、僕を愛してくれた彼女達を平等に愛すからという理由で縛り付けて、きっと僕なら、自分なら彼女達全員を幸せにしてあげれるんだ、なんて浅いことを考えて。
最初のうちは、皆笑顔を振り撒いてくれた。僕にだけ見せてくれる彼女達の様々な表情だってあった。
「ボク達4人と付き合えるだなんて、キミは幸せモノだな〜?」とか「もっとしっかりしないと、ワタシ達誰かに盗られちゃうかもね」なんて揶揄われたのを覚えている。だから、より一層躍起になって彼女達の幸せを考えた。
「………ごめんね、義兄さん。」
予兆はあったのか。最近なんだか、義妹が素っ気ないなというのが始まりだった。
「…………今日は先輩とは違う方との予定がありますから。」後輩が予定があるからと断る。
「…………ボク今は、一人にして欲しい気分だよ。」先輩が今は一人の気分なんだと僕を遠ざける。
「……………悪いけど、近寄らないでくれない?」幼馴染が僕を露骨に避け始める。
きっと皆、少しだけ疲れてしまったんだと思った。これは時が解決してくれる問題なんだ、と自分から何か行動に移ることすらなかった。またすぐに、仲良し5人いつもの日常に戻る。そんなことを呑気に思っていた。
もうとっくに終焉を迎えていたというのに。
家の郵便受けに入った一つの封筒。最近はあまり顔を合わせなくなった義妹と二人で住む家に届いた宛先不明の異質な物体。
中に入っていたのはUSBメモリ。
なんだか嫌な予感がした。獣の第六感とも言うべきそれは、焦燥感を与える。こんな物はただの悪戯だ。きっとメモリを差し込めば機器をぶっ壊す、そんなハックツールに違いないんだ。
だけど、これがなんなのか確かめずにはいられなかった。好奇心とかじゃあない。何か別のものが作用している。
中に入っていたのは4本の映像。ご丁寧に、タイトルに①〜④まで振り当てられている。順番に従わらされるのは癪だったが、①から再生する。
再生してから数秒程経過して、現れたのは顔を隠した男と、よく知る幼馴染の彼女。
映像の撮影地がラブホテルであることくらい、その時には知っていた。そして気づく。それが、この近くのモノと同じ背景だということに。
『———■二。ワタシ、この人のこと好きになっちゃった………❤︎』
そんな言葉を彼女が口にして、顔を隠した男を恍惚とした顔で見つめる。僕にも見せたこともないようなうっとりとした顔をしていた。もう理解していた。これから何が行われるのかを。
なんだ、これは。なんなんだ。
嘆いたところで、映像は終わってはくれない。そして、彼女は男とおざましい行為を始める。僕には聞かせたこともないような甘い声を漏らしながら。
一本で限界だった。後はもう何となく察しがつく。これと同じような惨憺たる映像が続くだけだ。僕の愛した女性の人数分だけ。
握り拳に爪が食い込んで、真っ赤な血が流れる。奇しくも幼馴染の髪色とよく似た、褪せることのない深紅が広がった。
何がダメだったのか。すぐに理解した。自分では彼女達を満足させてあげるだけ愛せていなかったのだろう。4人とも平等になんて本当に馬鹿みたいな考えを本当に実現できるのだと愚かなだった。
———結果はこうして破滅に終わる。誰も幸せにできなかった。そもそも、自分が幸せにしてあげようなんて考えが驕っていたのだろう。
ただただ、愛した彼女達の幸せを願うのみだ。
それでも、その映像に違和感を覚えずにはいられない。フェイク映像だとか、そういう類の話ではない違和感があった。
彼女達が映像の男を心から愛しているというのなら身を引くべきだっただろう。だけど、違う。なんだかそう思える。
その違和感が何なのかわからなくて、惨烈な映像を繰り返し視聴する。ずっと頭がどうにかなりそうだったけれど、歯を食い縛り正気を保った。
そうして、気づく。この映像の奇妙な点に。
顔を隠した男が彼女達の頭を撫でると、彼女達は決まって拒絶の反応を含んだ声を出している。そして、金切声のような音を口から漏らす。だが、そんな声も一瞬で好意的な淫靡な声音に様変わりしていた。
この行為に違和感を覚えて、タネを調べ始めた。何にも見つからなければ愚かな行為になっていただろう。でも僕は、勘違い野郎なんだ。もう形振り構ってはいられない。帰っては来ない彼女達の無事を祈りながら、日々を解明に費やす。
そのうち外にも出なくなって、見つかった。これだというものが。
《
超常現象を可能とする奇々怪々のトンデモ能力。人じゃないナニカが織りなした災厄。それが答え。
男の使っていたのは超音波によって人間を操作するという憎ましき《厄災》。そんなモノによって彼女達は奪われたのだ。
判明した時にはもう手遅れだった。あれから一度として、彼女達は帰っては来ていない。男に繋がる手掛かりすら当時の自分ではわからなかった。
もう打つ手なし。男の正体には近づけない。彼女も戻っては来ない。
あぁ、憎い。《厄災》が憎い。彼女達を奪った男が憎い。そして何より、護れなかった鈍感クソ野郎だった自分が憎い。
———もう何も奪われたくないと思った。
そうだ、奪われてはいけない。自分に力が無かったから全部奪われた。自分に力が無かったから男の正体も判らない。自分に力が無かったから嘆くことしか出来ずにいる。
力が必要だ。誰にも負けないような力が。もう何も奪わせないための力が。大切な人を護るための、そんな力が。
ならば、この身を修羅と化そう。憎しみを原動力に、何人たりとも到達出来ない極地を求めて、極限を己が身に。《厄災》なんかに負けないように立ち向かう力を宿してしまえばいい。
立ち止まる必要はない。ただ、突き進めばいい。
———そうして至った。何者にも負けない極点へと。
これこそが、かつてハーレム主人公だった鈍感クソ野郎。"俺"、
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