神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第98話 生体兵器

 突如として極東支部が襲われはしたものの、個人の能力の高さ故に外部居住区の一部で負傷者は出たが、人的な被害としては僅かな物に留まっていた。ガーランドの宣言は恐らく全ての支部の回線にジャックした事で、各支部でも既に検討と言う名の責任の擦り付けが始まっている事は容易に想像が出来ていた。

 仮にあの発言が本当に本部の意思の下での発言であれば、今後の状況が良くなる可能性は無いに等しい。

 

 ただでさえ上層部の人間を入れ替えた所で権力と言う名の麻薬に勝てる人間は早々居ない。そこに来て、人類最大の敵でもあるアラガミの制御が可能とされば、権力が更に集中する事になり、その結果、完全なる支配をする事になる。

 自治権の返納に関しては、そもそも本部が全てを管理する事が不可能だからこそ、各支部への裁量権と言う名で与えていた物でもあった。

 

 

「無明君、彼の言っている事は恐らく本当の事なんだろう。機密情報にも新型神機使いの感応現象における考察と検証についての論文が見受けられた。これでは早晩何かが起こると考えた方が良いだろうね」

 

「過去に起こった二つの事件が今回の一つの判断材料となるのは間違いないでしょう。しかし、あの理論にはまだ矛盾している事があります。本部では論文の内容に関しての検証はしたのかもしれませんが、実地に関してまでも検証している訳では無いですから、恐らくその矛盾点には気が付かないのでしょう」

 

 先ほどの宣言を確認すると同時に、今ここで起こっている内容を完全に解決しなければ、まともな議論をする事は出来なかった。ヒバリからの情報を確認すると戦況が徐々に上がり、ここで一つの山場を越えた事が理解できた。だからこそ、これ以上は無いとの判断から次の一手に移る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいアリサです。今エイジスに向けて移動中ですが、何か分かったんですか?」

 

「こちらはほぼ終結したと言っても良いだろう。後はガーランドの件だが、また君達に頼る事になるのは申し訳ない」

 

 一刻の猶予も無いとばかりに、コウタの運転でひたすらエイジス島へと急ぐ。ここにはアラガミの気配はまるでなく、アクセルを床が抜ける程の勢いで踏みつけていた。

 

 

 

「実は今回本部の情報を精査した際に分かった事なんだが、今回の検証の中で一つ本部が各支部に対して秘匿していた情報があったんだ。

 これは新型神機使いに関する事なんだが、元来の神機使いは自分の体内に偏食因子を取り込む事で神機とリンクさせる事で運用するんだが、新型に関しては少し内容が違っていてね。偏食因子は体内だけに留まらず、一部が脳にも影響を与える事が分かったんだ。

 その結果、新型神機使いはアラガミと同じような偏食因子を保有する事で磁場の様に偏食場パルスを発してるんだ」

 

 榊の話があまりにも難しのか、運転しているコウタは一体何語を話しているのかと言った表情のまま運転を続けている。聞きはしたが、やはりこの場で話す様な内容ではなく、しっかりと落ち着いた場所で聞く様な内容だった。

 

 

「それは分かったが、今の状況とそれがどう関係があるんだ?」

 

「簡単に言えば、新型神機使いの感応現象はアラガミが発生している偏食場パルスと同様の効果を発揮する事で、お互いの脳波がつながるんだ。恐らくはその現象を利用した実験をここでやっていたんだろうね。だからこそ今回の結果とも考えられる」

 

 未だ頭の上にクエスチョンマークが出ているコウタは既に理解する事を放棄したのか、既に口を挟む事は無い。横で聞いていたアリサが、この時今の状況と照らし合わせた事が口から出ていた。

 

 

「って事はエイジの感応現象は他の神機使いよりも強いから、今回の件に巻き込まれたって事ですか?」

 

「データ上では現在、極東に限らず他の支部も含めてエイジ君がダントツで一番だね。それはこちらが確認した資料にもそう書かれていたよ」

 

「……だから半分アラガミみたいな俺があそこまで影響を受けた訳か」

 

 任務の最中に何度か原因不明の頭痛に悩まされ、挙句の果てには聞こえてくるはずの無い声までが聞こえてくる感覚がソーマだけに限定された事がここで理解出来た。あのままの状態が続く様であれば、今のソーマはここには居ない。

 下手をすればアーサソール達と同じ運命になる所だった。

 

 

「でも干渉されるなら、あいつらだって同じじゃないの?」

 

「恐らくはあのヘッドセットで操るのと同時に他の信号を遮断しているのかもしれないね」

 

「だったらそれを壊せば良いんじゃないの?」

 

「コウタ君の言う通りなんだが、無理に外せばどんな影響が出るのか分からない以上、それは得策とは言えないね」

 

 この時点での答えを持つ者が居ないのは榊だけではなく、エイジス島に向かっているアリサ達も同じだった。これから向かう先でどんな状況が待っているかは分からないが、少なくともエイジの能力が狙われている事実は間違いない。

 今は一刻も早くエイジの元へと行く事を最優先と考え、それ以上の事を考える事を止めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 既にガーランドが全支部に向けた発信を終え、後は最後に培養された中身を起動させる事で全ての計画が完了する事が優先とばかりに準備を始めていた。両腕を拘束されたエイジもこのまま黙って言われる通りに従うつもりは微塵も無い。だからこそ、最後に邪魔をするべく周囲の様子を窺っていた。

 

 ガーランドの計画を阻止する為には、注入するコアを廃棄させるのが一番簡単な手段となっているが、肝心のガーランドは生憎とエイジから距離が離れている。このまま行動に移した所で何も出来ないまま終わる事だけは理解できていた。

 恐らくは自分の居場所を探知して誰かがこちらに向かっている可能性も捨てきれない。それならば僅かな時間でも引き延ばすべく、改めてガーランドと対峙する事を決めていた。

 

 

「今回の計画に関して一つ確認したい事がある。各支部の自治権を統一した所で本部は一体何をどうするつもりなんだ?」

 

「なぜ、そんな事を気にする必要がある?今回のケースは突然決まった訳では無い。本部が決断した事に我々が疑問を持つ必要はない」

 

「だったら教えて貰えないか?自分が今回の計画にいての重要なポジションなら聞く権利はあるはずだ」

 

「それを君に答える義務はない」

 

 あまりにもストレートすぎた内容はガーランドの気分を損ねる事となっていた。この時点で詳細を確認する事は無いが、恐らくは本部の一部の人間が暴走した結果なのだろう。

 事前に無明が予想していた事はどうやら事実の様でもあった。時間をどこまで稼ぐ事が出来るか分からないまでも、このまま話を続ける事にしていた。

 

 

「今のままだと、フェンリルの保護下に置いていない人間の事はどうするつもりだ?まさか見殺しにでもするのか?」

 

「彼らは好き好んで我々の保護下を離れたに過ぎない。そんな人間の事まで関知するつもりは毛頭ない」

 

「……それは本気で言ってるのか?」

 

「なんだと?」

 

 今までの理知的な話から突如エイジの声に怒りがにじみ出る。ガーランドは知らなかったが、エイジはフェンリルから放り出された人間である。だからこそ、フェンリルの支配下に入らない人間は知らないと言い切ったガーランドに怒りを覚えていた。

 

 

「くだらない。そんな子供の様な意見で決めるなんて馬鹿げている。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()も大勢いるんだ。貴様如きに何が分かる」

 

 両腕を拘束はしていたが、足は自由になっていた事が災いとなった。両腕を拘束されていても動く事が出来るのであれば、これ以上無駄な事をする必要は一切ない。一気に動き出したエイジの動きは、拘束の為に付いていた人間を足払いで倒し、そのまま操作しているコンソールへと走り出した。

 

 

「さっさと止めるんだ!」

 

 ガーランドの声に反応したアーサソールの一人が止めようとエイジとの距離を一気に詰める。両腕が拘束されいてるのであれば鎮圧は容易いと考え、無造作に近寄った時だった。

 

「げほっ」

 

 近寄ってくるアーサソールの死角から鋭い膝蹴りが鳩尾を貫く。強固となった神機使いと言えど、人体の急所までは鍛える事は出来ない。息を吐いた音と共に鎮圧に来たアーサソールの一人が膝から崩れ落ちていた。

 

 

「両腕だけ拘束したのは間違いだったな」

 

 一言ガーランドに向けた言葉と同時にコンソールへ向かって改めて走り出す。このままでは計画が完遂出来ないと悟った研究員はすぐさま起動すべく、水槽を叩き割りコアを注入した。

 

 

「どうやら間に合わなかった様だな」

 

 ガーランドの歪んだ顔と同時に、計画は発動した事が決定づけられた。周りの水槽が一気にひび割れ、水圧と共に水が噴き出す。まるで新たな生命体の誕生とばかりにその場で大きな個体水槽からこぼれ出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌な予感がする。コウタまだか!」

 

「もう着くはずだ……入口が見えたぞ」

 

「行きましょう」

 

 3人が到着したと同時に水槽が割れ、中から4本足の動物を模したアラガミが周囲を見るべくゆっくりと立ち上がっていた。そこにはビーコン反応があったエイジもいる。 

 それを確認すると同時に神機のケースを持ちながら一気に近づいた。

 

 

「エイジ大丈夫ですか!」

 

 両腕を拘束され、取り抑えられたエイジを発見したと同時にアリサは現状を一気に理解した。エイジの背後には未だ動きはしないものの、巨体とも言える身体が横たわった物がいた。

 

 

「好き勝手させるか!」

 

 アリサがエイジを呼ぶと同時にソーマは拘束してる人間に斬撃を加えるべく襲いかかる。このまま直撃かと思われた所へアーサソールの一人は素早く神機を忍び込ませる事で渾身の斬撃を防ぎ切った。

 

 

「…畜…生……これ…でアラ…ガミを…操ってた…のか」

 

 神機で防がれれば、本来であれば次の攻撃へと移行するはずのソーマが突如として呻き声をあげていた。目には見えない感応波が改めてソーマを襲う。

 既に意識が混濁し始めた頃に改めてエイジは隙をつく様に回し蹴りを繰り出し、操っているであろう人間を吹っ飛ばした。

 

 

「ソーマ大丈夫か?」

 

「お前ほどじゃねぇ。直ぐに拘束は解く」

 

 素早く拘束具を破壊すると同時に、渡されたケースから神機を取り出し接続する。吹っ飛ばされたアーサソールも既に戦闘態勢に入っているのか、改めて神機を構え襲い掛かろうとした時だった。

 

 突如として耳には聞こえないほどの超音波とも取れる咆哮があたり一面に響き渡ると同時に、横たわっていた巨体をゆっくりと立ち上げ、覚醒したかの様にあたり一面を見渡していた。

 

 

「これが我々の検証の成果と言える生体兵器フェンリルだ。あとはお前たちを処分するだけだ」

 

 実験の検証が予定通り完了する事で、自身の論文と検証結果が正しかった事が証明されたのか、ガーランドの声が響き渡る。それと同時に、フェンリルを守護するかの様に、操られた複数の小型アラガミまでもが一気に集合した。

 当初の予定ではエイジの感応現象によって操る予定だったが、肝心のエイジが自由になった事により、数人のアーサソールが操ろうと試みようと一瞬だけ意識が途切れた。

 感応現象を起こすには一定の距離と対象に意識を向けない事には特定の思考を植え付ける事は難しく、戦いの最中に意識を他に向けるのは死にも等しい行為だった。

 

 

「なぜだ。理論上は間違いないはずだ!」

 

 小型アラガミの制御を外し、フェンリルに改めて意識を向けようとした途端、小型アラガミが一気に暴れだし、周りにいたアーサソールを捕喰し始める。

 感応現象で操る事が出来ても、完全に支配下に置いた訳で無ければリンクが切れた瞬間の本能の赴くままに目の前の物を捕喰するのは自明の理でもあった。

 

 ガーランドの感応現象におけるアラガミの制御に不備は無い。だが、この戦場に置いて管理出来ない物を使用すべく、片方の制御が外れればどうなるかは戦場に身を置いている人間であれば容易に想像出来た事だった。

 本来であれば研究者が戦場での理論など知る由も無い。ある意味この結果は当然ともとれたが、ガーランドはそんな可能性すら考えていなかった。

 

 

「貴方の理論は間違っていない。ただ、戦場がどんな物なのか知らなかっただけだ」

 

 幾ら今まで拘束していた相手とは言え、目の前で捕喰されているアーサソールを見殺しにするつもりは元々なかったが、至近距離での捕喰の為に助ける事は不可能だった。

 

 優位に立っていた筈が一転して窮地へと追いやられる。未だこの結果を受け入れる事が出来ないガーランドを尻目にソーマ達もまずは小型アラガミを殲滅すべく一気に攻撃を仕掛けようとした時だった。

 先ほどのフェンリルがまるで餌を与えられたかの様に、小型アラガミを次々と捕喰し始める。

 

 相当数のアラガミは一気に捕喰される事で、数はいなくなったと同時に、本能が察知したのか捕喰されていないアラガミは一気に逃走していた。

 

 あまりの出来事に何が起きているのか理解が追い付かない。餌とも言えるアラガミを捕喰したフェンリルは一気に暴れだし、新たな餌を見つけたとばかりにエイジ達へと襲い掛かって来た。

 

 4本足のアラガミである以上、ヴァジュラ種同様の素早い動きを見せ予想以上の早さでこちらへと跳躍しながら襲い掛かる。この場にいれば間違いなく押しつぶされる事を予測し、すぐさま退避行動に移ると、元々いた場所が大きく凹み、着地点を中心に大きく蜘蛛の巣の様なひび割れが起きていた。

 

 

「なぁエイジ、あれ操れないのか?」

 

「流石に無理だって。あれだけの巨体を操るって言ってもやり方は分からないし、今の状況だとこのまま野に放たれるのは悪手だ。ここは一気に討伐しないと拙い事になる」

 

「何か手は無いんですか?」

 

 着地点の衝撃は想像以上の物だった。本来頑丈なはずのエイジスであれば、凹む様な事は無かったはずだった。しかし、フェンリルは意にも介さない様な動きを見せると、再び襲い掛かる。

 先ほどの攻撃とは打って変わって跳躍はせずに、今度は鋭い爪でアリサに狙いをつけていた。

 

 

「きゃぁあああああ!」

 

 盾をギリギリのタイミングで展開するも、巨体から繰り出される重い一撃は簡単にアリサを吹き飛ばしていた。軽々と飛ばされたアリサはそのまま近くの壁に激突し、激しく体が打ちつけらる。勢いよくぶつけた事により、アリサの肺の中にあった空気が一気に外へと押し出される。衝撃の強さを身を以て体感していた。

 

 

「アリサ大丈夫か!」

 

「だ、大丈夫です。私の事よりもあのフェンリルを何とかしないと……」

 

「新型のアラガミのデータなんて無いぞ。どうする?」

 

 アリサが軽々と飛ばされる事で、いかに強力な一撃だったのかが直ぐに理解できていた。アリサの盾には3本の深い傷が刻み込まれ、次の攻撃を受ければ盾は大破するのは確実とも思われていた。

 盾があってこれではコウタは直撃すれば命の保証はどこにもない。冷たい汗がコウタの背中を伝っていく。これまでに無い危機感は知らず知らずのうちにその場の空気を支配し始めていた。

 

 

「このままだとジリ貧なのは間違いない。かと言って、このまま撤退する訳には行かない。ソーマ、持ってきた装備品って何がある?」

 

「用意された物はそこにあるだけだ…まて、おいコウタ。そこに別で入ってる物は何だ?」

 

 神機ケースの中にいくつかのバレットが同梱されていた。これを用意したのはナオヤだったが、中身に関しては何も確認していない。中身を確認する為には少し時間を稼がない事には、何も出来ない状況が続いていた。

 

 

「確認するにも、このままだと直撃を食らう。エイジ、10秒で良いから時間を稼げないか?」

 

「それ位なら何とか出来る。頼んだぞ」

 

 エイジが動くと同時にフェンリルは新たな狙いをつけ、先ほど同様に鋭い爪で襲い掛かる。先ほどのアリサへの攻撃で軌道を見極めた事により、カウンター気味に鋭い一撃を顔に向かってしかけた。

 本来であれば、鋭い一撃が顔面を攻撃することで、大きく怯ませる事が出来るが、フェンリルの反応はエイジの予測を大きく上回っていた。鼻面への一撃を鋭い牙で防ぎそのまま勢いを相殺する。

 鋭い斬撃と強固な牙がぶつかり合う事で、甲高い音が周囲一面に響き渡った。

 

 弾かれた衝撃をそのままに、フェンリルは改めて爪でエイジの胴体を薙ぐ様に振り回した。まさか受け止められるとは想定していなかった事に加え、予想外の衝撃にエイジの一歩が遅れる。

 本来であれば回避できるはずだが、衝撃で鈍くなった身体は思う様に動く事を許す事無く、ほぼ直撃とも取れる攻撃を受け止める形となった。

 

 

「エイジ!」

 

 目の前で直撃を喰らった事に驚きはしたものの、このまま激情に駆られて攻撃すれば、エイジの二の舞になり兼ねない。その為にはギリギリの部分を見極め、クレバーに攻撃する事が一番の防御とばかりに、渾身の力でソーマは自身の神機を振りかざした。

 

 

「…何だと」

 

 完全に攻撃の隙をついた一撃はフェンリルの身体に直撃するはずだったが、危機回避能力の高さなのか、反応速度の高さなのかソーマのイーブルワンは空を切った。致命的とも言える大きな隙を逃す事無くフェンリルが太い前足を振り回す。まるでゴミでも払うかの様にソーマは吹き飛ばされていた。

 

 

「これは、前に使ったバレットだ。これなら何とかなるかもしれない」

 

「コウタ急いでそれを撃ってください」

 

「いや、このままだと無理だ。バレットの数は全部で3発しかない。外せば終わりだ」

 

 コウタが見たのは終末捕喰が始まる戦いの際に使ったバレットだった。あの時は無我夢中で撃ち込んだが、元々動く事が殆ど無かったから出来た事だった。しかし、目の前にいるフェンリルは移動速度が早く、このまま撃っても当たる可能性は低い。

 となれば、ここで致命的な一撃を当てる事で怯ます事が出来なければ無意味に終わる可能性が含まれていた。

 

 

「だったら、動きを止めるしか無いんだけど……誰かスタングレネード持ってない?」

 

 先ほどの攻撃はエイジに予想以上のダメージを与えていた。ギリギリの所で爪の回避には成功していたが、太い前足からの攻撃をそのまま受けた事で肋骨が骨折したのか動きが鈍く、息が荒い。口元に流れる一筋の赤が状況の悪さを物語っていた。

 この状況が続く様であれば、動きが止まった瞬間に命が散る可能性が高くなる。だからこその選択でもあった。

 

 

「スタングレネードなら私がやります。コウタはその隙に撃ってください」

 

「無理は禁物だから、使ったらすぐに離脱。コウタが撃った所へソーマと2人で攻撃しよう」

 

「お前こそ無理するな」

 

「ここまで来たらそんな事言ってる暇は無い。コウタ準備は出来た?」

 

「俺はいつでも大丈夫だ」

 

「フェンリルが来ます!」

 

 アリサの叫びと共に、フェンリルは異常とも言える速度で突進し、戦場にいる全ての物を押し潰すかの如く跳躍した。この瞬間に狙いを定め、余計な行動をしない様にエイジが銃撃を浴びせる事でフェンリルの意識を固定させる。着地と同時にアリサのスタングレネードがフェンリルの目の前で炸裂し、辺り一面を白い闇が閉ざした。

 

 

 

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