神を喰らいし者と影   作:無為の極

104 / 278
第101話 目論見

「やぁ、毎回すまないとは思うんだが、宜しく頼むよ」

 

「はぁ、できる限りの事はやりますけど、これって僕だけの話じゃないですよね?」

 

 当初の混乱は既に落ち着きを見せ、アナグラ内部の大規模改修工事もそろそろ終わりが見え始めてきた頃、唐突に榊から呼ばれ内容が聞かされていた。そもそも第1部隊はアラガミの討伐を主たる任務としているが、それ以外の業務となると色々と調整すべき事が多くなる。だからこそ榊の真意が見えなかった。

 

 あれから本部からの介入を一切受け付けない様にする為に、結局の所は榊が兼任で支部長を務める事を決定する事で一定の平安が保たれる事となった。平安と言ってもやるべき事はこれからも色々と出てくる事は間違いなく、そんな厄介事とも取れる内容が榊から聞かされていた。

 

 

「もうこれは決定事項なんだよ。君達以外にも他の人間にもある程度話はしてあるんだが、これは此処だけの話では無く極東支部全体の問題でもあるんでね。前回の様なトラブルは今後は無いと言いきりたい所なんだが、それでも人の心は難しいのは君も知っているだろ?」

 

「榊博士、いえ、支部長がそう言われるのであれば協力は惜しみません。自分にできる範囲の事をさせて頂きます」

 

「そうかい。じゃあ頼んだよ」

 

 支部長室から出る頃には何かが吸い取られた様な感覚にエイジは陥っていた。これならまだアラガミと戦っていた方が何倍もマシだとばかりに足取りが重い。一先ずは内容の整理の為に自室へと戻る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事で、これは極東支部全体としての業務だから拒否権は無いらしい」

 

「え?なんでそんな話になったんですか?」

 

「へ~。面白そうだとは思うけどね」

 

「で、俺たちに何をどうしろって話なんだ?」

 

 エイジの自室に全員が集合し、先ほど榊から言われた内容をそのまま発表すれば、エイジの予想通り三者三様の発言が起こっていた。

 

 

「簡単に言えば、何かイベントの目玉的な物をしてほしいんだって」

 

「それは分かりますけど…一体何をするんですか?」

 

「それを皆で考える為に呼んだんだよ。因みに、今回の件は極東支部が主催だから全員が強制参加らしいよ」

 

「あのオッサンの考えそうな事だ。俺は見世物になるつもりは無いぞ」

 

 ソーマの言わんとする事は誰もが理解していた。今回榊から言われた内容は前回の外部居住区にまでアラガミが侵入した事での被害者の慰問と同時に、新しくなったアナグラのお披露目を兼ねるイベントが決定される事となっていた。

 この話は一番最初に聞かされたエイジもまだ何も考えてはいない。肯定する事は無かったが、大義名分があると同時に、既に各方面への根回しが既に完了していたのか、榊だけではなく無明からも言い渡されていた。

 

 

「僕も賛成したつもりはなかったんだけどね。そうそう、シオも参加するらしいよ」

 

「シオちゃんもですか?」

 

「そう聞いてるけど、まだ確認してない。ソーマ聞いておいてくれない?」

 

「何で俺なんだ」

 

「一番懐いているから適任じゃん。今更何訳の分からない事言ってんだよ」

 

 コウタの発言は正確に的を射抜いていた。確かに屋敷に顔を出せば皆と一緒になる事は多いが、結果的にはソーマのそばに居る事が多く、本人は否定するが恐らくは一番心を開いているのは間違いなかった。

 

 

「貴様に言われる筋合いは無い。……まぁ、時間が有れば聞いておく」

 

 以前のソーマであればここで鉄拳の一つの飛んできたのだろうが、性格に落ち着きが出始めてきたのか、以前ほどでは無くなっていた。もちろんコウタもそれを知った上での発言ではあったが、結局の所シオに甘い事はここに居る全員が知っている事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シオは、みんなの前でうたをうたうんだ。いまから楽しみだな~」

 

 何気に確認出来たのは時間が有ればではなく、ほぼ即日の状況だった。毎度の定期検診でアナグラに来ていた所をコウタが確保する事でそのまま確認する流れとなっていた。既に外堀は自分の手で埋めている以上、ソーマに拒否する事は出来なかった。

 

 

「シオちゃんは何を歌うつもりなんですか?」

 

「えへへ。ないしょだよ~」

 

 隠し事ではないが、何かを考えている様子だけは直ぐに理解出来た。本当に隠しているつもりは無いのか、何か楽しそうな雰囲気がそこにはあった。

 

 

「そう言えば、皆さんは何をするつもりなんですか?」

 

 ロビーでの話であった為に、ヒバリの素朴な疑問に全員が振り向く。まさか話を聞かれていたとは思いもしなかったのか、ソーマが一番動揺していた。

 

 

「まだ決めてないんです。因みにヒバリさんは何を?」

 

「私は当日のアテンダントの役割なので特に何かをする事は有りませんが、皆さんがやる事は楽しみにしてますよ。それと榊支部長からの伝言です。『第1部隊に限らず、他の職員も全員が何かしらやってもらうんだけど、それ以外にもやってもらう事が有るので宜しく』だそうです」

 

 笑顔で厳しい話を持ってくるあたりが食えない部分ではある物の、今回の事に関しては悩むべき物が幾つも存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウタ、お前が今回の全部の要になるんだから、もう少ししっかりやれ」

 

「ソーマも意外とノリ気だったんですね」

 

「まさかここまで熱くなるとは想定外だけどね」

 

 ほどなくしてやるべき事は結局の所、ソーマが主体となってのバンド演奏となった。この時代に音楽だけで生計を立てる事は難しいが、実際には娯楽らしいものは殆どなく、それならば普段から音楽を聴いているソーマが適任だからと一任した事が全ての始まりだった。

 

 

「お前らも少しは真剣に練習しろ。特にアリサ、お前はボーカルもするからなおさらだぞ」

 

「分かってますよ。エイジ少し音を合わせてくれますか?」

 

「分かった。じゃあ、早速やろうか…」

 

 内容が決定してからの行動は誰もが驚く程に早かった。当初は準備に時間がかかると思われていたが、どこから調達したのか楽器一式が用意され、あれよあれよと言う間に段取りが進んでいた。

 

 当初は楽曲に関しては何かしら参考にする予定だったが、ソーマが譜面を用意する事で、既に曲目もピックアップされている。後は習うより慣れろの感覚で通常の任務をこなしながら練習は連日連夜と続ていた。

 

 

「よお、お前ら随分と練習熱心だな」

 

「リンドウさんは何をする予定なんですか?」

 

「俺は特に何もする予定は無いぞ」

 

「……ええっ?全員が何かしらやるって聞いてますけど?」

 

「そうなのか。俺は…何も聞いてないが」

 

 何気ないリンドウの発言に一同は驚くが、残す時間は殆どない。ここまで来て今更やめますと言う訳にも行かず、連日の練習は本番当日までずっと続く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予想以上に人が多かったから緊張したよ」

 

「私もドキドキしました」

 

「でも、上手くいって良かったけど、ソーマがあそこまで大活躍だとは思わなかったよ」

 

 本番当日、第1部隊の演奏はどこから情報が漏れたのか、当初の予想を超える勢いで人が集まっていた。事前にシオの綺麗な歌声が響き、3曲ほど歌った後での登場は戦場へ出る以上の緊張感をもたらしていた。

 当初は緊張のあまりグダグダになるかと思われていたが、ソーマの演奏とハスキーな歌声がアリサの歌声と併せリードした事で大盛況の内に演奏は終了していた。

 

 

「お前たちご苦労さん。評判は随分と良かったらしいぞ」

 

「リンドウさん見てただけですよね?」

 

「アリサ、それは禁句だ」

 

 演奏終了後に労いの言葉と共にリンドウが周りの感想を伝えるべく、楽屋へと来ていた。評判が良かった事は表情と反応で直ぐに分かる。これで大役は果たしたと思われたその時だった。

 

 

「リンドウ、こんな所で油売ってる暇は無いわよ。あなたの仕事はこれからなんだから」

 

「…いや、俺は何も聞いていないけど?」

 

「今朝、検診のついでに聞いたんだけど、もう準備は出来てるらしいって榊博士が言ってたわよ」

 

「はぁ?」

 

 同じ様に労いの言葉をかけに来たサクヤはリンドウを見つけたと同時に、これから行われるミッションを極当たり前の様に伝えていた。もちろん聞いていないリンドウは疑問しか湧かず、今回の伝達の中で、リンドウに何をさせるのかを聞いているサクヤは笑みが零れる。

 一体何をさせるのかこのままでは何も解決しなからと、まずは指定された場所へと移動する事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁサクヤ、これは何だ?」

 

「見ての通りよ」

 

 連れてこられた場所にあったのは、どこからか用意された厚みのある鉄板が置いてある。他にもいくつか置いてあるが、今回のミッションはここらしい。他にも困惑気味に来ていた人間が他にもいた。

 

 

「なぁタツミ。何か聞いてるか?」

 

「実はさっきヒバリちゃんに言われてここに来たんで、何も聞いてないんですが」

 

 他にもブレンダンやカノンも呼ばれたのか、ぞろぞろと集まってはいるが、やはり内容は聞かされていないのか困惑気味な表情を浮かべている。これから何をするのか判断する材料が欲しいと思われた頃に、ツバキが数枚の紙を持って歩いて来た。

 

 

「全員揃ったな。ではこれからの任務を発表する。各自に書類を配布するからその様にやる様に。念の為にアシスタントは付けるが、基本は自分達でやる様に。

 これは命令だと思え。確認した者から順次開始するんだ。時間はそう残されていないからな」

 

 ツバキがいつもの任務を発注するかの様に各自に紙を配布する。何の任務が始まるのかと各自が内容を書かれた紙を見た瞬間、誰もが目を見開きその場に居た者は一言も発する事なく硬直していた。

 

 

「姉上、質問があります」

 

「何だ?発言を許可しよう」

 

「はっ!これを見ると焼きそばの作り方と書かれている様にも見えますが、何かの間違いではないでしょうか?」

 

 リンドウの質問はここ来た全員の言葉を代弁している様にも聞こえていた。それぞれが渡された内容は簡単に作れる屋台レシピなる物と営業時間が記され、既に誰が何を作るのかが記されていた。

 単なるメモ用紙であれば冗談で済んだはずだが、その紙はフェンリルがゴッドイーターに配布する命令書でもあり、極東支部長でもある榊の印鑑とサインがされていた。

 

 

「見ての通りだ。現在の時刻からすれば一二○○より開始となっている。これは神機使いを身近に感じてもらう為に支部長が考案した任務である。なお、報酬に関してはそれぞれの売り上げから捻出するので、売上如何によっては報酬は無くなると思え」

 

 この発言に対して誰も意見を言う者は居なかった。それぞれ書かれた物は確かに誰でも問題無く作れる物ではあるが、実際に自炊している人間はそう多くない。だからこそ戸惑いを隠す事が出来ない。

 しかし、これは発布された命令である以上、従うしかない。だからこそ、その場にいた全員が一人の人間の顔を思い浮かべた。

 

 

「それと、言い忘れたが、第1部隊の人間は別の所でやっているから、お前たちは自分達の手で完遂する様に」

 

 ツバキの一言で全てが阻止される事となった以上、今は出来る範囲の事をやるべく準備にとりかかる以外に何も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソーマ、よく似合ってますよ。シオちゃんもそう思いますよね?」

 

「おお~ソーマよくにあってるぞ。シオのはどうだ?」

 

 演奏が終わる頃にやって来た内容は第1部隊にも伝えられていた。内容に関してはこの場に居ない他の人間にも伝えられているが、この時点では何も聞かされていない。しかし、同じ様に命令書が来る事で拒否権はなく、ここまで来ればと半ば自棄気味にやる事となった。

 ソーマに関しては以前にロビーで作っていた綿あめを作る事が決定していたのか、既に準備は終えていた。

 

 

「……悪くない」

 

「もう少し褒め方があるんじゃないんですか?」

 

「黙れアリサ。お前こそ毒物配布は流石に拙いだろうが!」

 

「毒物なんて失礼な。私は今回アシスタントですから、メインはエイジなんです」

 

 まるであつらえたかと思うほどの服にシオはご機嫌だった。シオに用意されたのは旧時代にあったと思われるエプロンドレス。それに対して、ソーマには真っ白のコックコートが用意されていた。

 

 服だけではなく、一番の懸念はアリサにあった。口には出さなかったが、アリサが単独で何かを作った場合、どんな事が起こるのか誰も予想する事は不可能とも取れた。以前に試作と称して食べた物は思い出す事すら拒否したくなる様なレベルの物だった。

 胸を張って言う事ではないが、エイジのアシスタントであれば、恐らく何も触らせるつもりは無いのだろう。アリサとシオ以外の人間は密に安堵する事となっていた。

 

 

「エイジは何をするんだ?」

 

「紙には何も書かれてないよ」

 

「は?なんだそれ。俺なんてたこ焼きって書いてあったぞ。生まれてこのかた作った事ないし、たこ焼きってなんだよ!」

 

 紙を見たコウタはこのメンバーの中で一人固まっていた。たこ焼きなんてアーカイブで見た事はあっても作った事は無い。レシピと作り方はあったが、実際にはやってみない事には分からいシロモノだった。

 

 

「じゃあ、試しに作ろうか?」

 

 エイジの何気ない声に4人は改めて手元を見ながら確認する事となった。手際良く鉄板のくぼみに入れた液体と同時に一口大のタコのぶつ切りを入れる。液体が焼けるにつれ、ピックでひっくり返すと徐々に丸く形が出来上がる。ほどなくして見た目も美味しそうなたこ焼きが次々と出来上がっていた。

 

 

「すげぇ。これがたこ焼きか……じゃあ早速」

 

「コウタ直ぐに食べるのはき…」

 

「は、はふい…は、はふい…」

 

 一言忠告をしようと思う前に、ソースの匂いに誘われたのかコウタが出来立てのたこ焼きを口の中に入れた瞬間、動きがそこで止まった。十分すぎる程の熱を持ったたこ焼きは口の中が火傷する勢いだった。

 コウタの顔色が次々と変化している。熱いそれを口の中から出す訳にも行かず、無理矢理食べた途端に水を口の中に流し込む。見ている方は面白いが、本人は必死だった。

 

「く、口の中が火傷した」

 

「だから言おうとしたのに。作り方はさっきの通りだし、材料は混ぜるだけだから後は頑張れ。これ、かなり良い材料使ってるから味は焦がさなければ保証出来るよ。多分、ノゾミちゃんも来るだろうからね」

 

 笑いをこらえながらも、人の話を聞かない方が悪いとばかりに作り方を伝える。ソーマの綿あめは以前に作っていた事もあったので、特に説明する事も無く、試作品はシオが喜んで食べていた。

 当初から何となく嫌な予感はしていたが、まさかこんな事になるとは誰も想像する者はおらず、開始の時刻だけが迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁサクヤ。これ何時になったら終わるんだ?」

 

「そんな事言わないの。ほらお客さん来てるからもう少し愛想よくしないと」

 

 榊の目論見は物の見事に成功し、大盛況となっていた。極東の外部居住区は他に比べれば幾分かはマシな環境とは言えるが、決して裕福ではない。前回の襲撃の件もあり、住民の不安を取り除くべく企画したが、当初のキャパを軽く超える程の人出に一人満足気な笑みを浮かべていた。

 屋台に関しては、何らかの形での住民への還付とばかりに企画したが、用意された物は普段口にする機会が少なかったのか、それとも神機使いが珍しかったのか、人の流れが途切れる事は無かった。

 

 

「り、リンドウさん。良く似合ってますよ」

 

 笑いをこらえる様な表情で市場視察の様にコウタが様子見で来ていた。今は休憩中なのか、コックコートは着たままだが、手にはいくつかの食べ物が入った袋をぶら下げている。これから休憩だからと購入したのか、それとも家族と食べるつもりなのか、袋の中身はそれなりに入っていた。

 

 

「なんだコウタか。暇なら少し手伝え」

 

「こっちは休憩です。家族も来てるんで一緒に食べようかと思って」

 

「そうか。で、お前たちは何してるんだ?この場所には見かけてないが?」

 

「俺たちは反対側のブロックでやってます。この時間だとエイジの所は大盛況です」

 

 この状況が始まる前には確かにツバキからの命令とも言える指示書を渡され、そのまま否応なしに作っていたが、第1部隊の面々に関しては何を作ってるのか聞かされていない。リンドウも関心はあったが、この状況下でこの場を離れる事は難しく確認する事は出来なかった。

 

 

「エイジは…まぁ、行けば分かるんですけど、人出は多いですね。サクヤさんよかったら、賄いの用意が出来るみたいな事言ってたんで、時間が有る様なら行ってみてください」

 

「あらそう?じゃあ、少し顔を出そうかしら。リンドウは一人でも大丈夫よね?」

 

「マジか…身重なんだから無理するなよ」

 

「気をつけて行ってくるわよ」

 

 妊婦が歩く事ができるのかと思う部分はあったものの、何だかんだと人通りを避ければ移動には困らない。サクヤの事は心配ではあるものの、目の前のお客さんをないがしろにする事は出来ない。まずはこの状況を打破すべく慣れつつある手際で素早く焼きそばを作り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがエイジのやってる所……本当にここなの?」

 

 サクヤが裏道を使いエイジが居る場所へと来ると、そこには簡易店舗ではなく、むしろ通常の店舗の様な場所が用意され、かなりの行列が出来ていた。一体ここは何を作っているのだろうか?そんな疑問と共に周囲を見渡せば、そこには案内と給仕をメインにアリサが動き回っていた。

 

 

「サクヤさん。リンドウさんの所は良かったんですか?」

 

「さっき、コウタが来て賄いがどうとかって言ってたから、ついでに見に来たのよ」

 

「そうですか。こっちは…まぁ、見ての通りなんですが、結構ギリギリだったんで無明さんにも来てもらってるんです」

 

 当初は他のメンバーと同じ様な環境下での販売を予想していたが、指定された場所はオープンカフェの様な場所と共に、外から見える位置でのキッチンが併設されていた。どうやら白紙の真意はここにあったのか、確認すれば調理器具はかなりの物が揃えられている。キッチンの中ではエイジと無明がフライパンを振っている姿が確認できていた。

 

 当初は疑問に思っていたが、どうやらラウンジ用の器具のチェックを兼ねた仕様となっていた。こんな状況であれば多少手の込んだ物でも大丈夫かと思っていたが、どうやら世間の反応と本人の認識が大きく違った事が要因となっていた。アリサは調理のアシスタントの前に給仕で手一杯となっていた。

 

 

「で、何を作ってるの?」

 

「今はオムレツですね。ふわふわで軽い食感が人気らしく、一番人気ですね。そう言えば、これ賄いなのでリンドウさんと一緒に食べてください。ここは店舗外の人も賄いで来るので、これは問題ないですから」

 

「あら、ありがとう」

 

 既にに持ち帰り用の容器には出来立ての暖かいオムレツにホワイトソースがかかっているのか、まだ湯気が立ち上っている。これなら人気が出るのは仕方ないと考えながらも、サクヤはリンドウの為に受け取ると、もう一つの疑問が湧いていた。

 

 

「そう言えば、ソーマはどうしたの?」

 

「ソーマならあそこですよ」

 

 アリサが指差した先にはシオと一緒に綿あめを作っている。時間的には食事の時間帯な事もあって人は若干少な目だが、それはあくまでもここと比べての話であった。行列が途切れるような事が無いのか、全体的には人はやはり多かった。

 

 

「ソーマが作ってシオちゃんが渡してるので、上手くいってるみたいですよ。本人は不満げですが」

 

「まぁ良いじゃない。これ以上はお邪魔ね。まだ時間はあるから、良かったらいらっしゃい。と言いたい所だけど、これは無理そうね」

 

「何とか時間を作って行きますから」

 

 サクヤが遠目から見ても人の流れが切れる事は無い事は直ぐに予想できた。元々人気がある所に料理の腕もあれば人が来るのはある意味当然なのかもしれない。とりあえずは苦労しているであろうリンドウの元へと戻る事にした。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。