「やっぱり防戦一方は厳しいかな」
アリサは攻撃の手段を無くしたまま、ギリギリの部分でアラガミの攻撃を防いでいた。視線の端には非難する住民の姿がまだ見える。避難の為の囮としてアラガミの攻撃から只管耐えていた。アラガミからは目を離す事無く周囲の状況を察知すれば、残す人員はあと僅かとなっていた。
このままならば何とかしのぎ切れる。戦いの最中にあった油断と言うにはあまりにも短すぎた時間だった。轟音と共に突如として天井が破壊され、そこから再びサイゴードが群れを成して襲いかかる。これまでの奮闘をあざ笑うかの様な数は絶望を思わせるには十分過ぎていた。
「そんな!」
襲撃に来たサイゴードはアリサへ向かう事無く他の場所へと移動し始める。向かった先は議場から入る事が出来る部屋の様だが、そこに誰かが居るのかは今のアリサには知る由もない。
しかし、誰かが居た場合は確実に捕喰されるのであれば、この場から一旦動き、その場所へとフォローする必要がある。目の前に居るサイゴードの攻撃を躱しながらアリサはその部屋へと急いだ。
「現状はどうなってるんだ!衛兵は何をしている!」
那智は未だ総統室で現状確認の為に各地に連絡を続けていた。想定外のアラガミの襲撃に加え、予定していたはずの神機兵は既に駐屯地からの撤退より派兵は不可能。今は2人のゴッドイーターによってギリギリのラインで戦線が維持されているが、神機が使えるかどうかすら危ういのであれば、それを戦力としてカウントするのは躊躇していた。
フェンリルから裏切られた事で、新たなこの地での再起をかけた施設は既にアラガミの蹂躙に合い、このままでは壊滅状態に追い込まれるのは時間の問題でもあった。那智とてエイジス計画が理論通りに出来上がっていれば、恐らくはこんな所で生活をするなどとは想像もしていなかった。
エイジス計画の裏にあったアーク計画の概要を知らなければ、今この場に居たのだろうか?アラガミの襲撃を受けながらも、現状を確認し相手の状況確認しながら何が一体こうなったのだろうかと未だ答えを探している。
偶然この地に来た2人のゴッドイーターによって被害がもたらされたのだろうか?議会場では辛辣な言葉をかけると同時に今後のあらゆる可能性をあの時点で模索していた。
アラガミ由来のオラクルリソースがなければアラガミ防壁の更新が出来ない事位は元々技術者でもあった那智が一番理解していた。この地に居る住人は皆がフェンリルから見捨てられた事により、集団で生活をしながら日々アラガミの襲撃から怯える生活を送っていた。
キッカケはともかく、今の状況を見て一番心痛な思いがあるのは議員ではなく、那智だった。あまりにも無慈悲な神は一体何を考えて我々を苦しめるのだろうか?答え無き答えを模索しながらも自分の事だけを顧みず、現状を把握していた。
これ以上この場に留まるのは危険だと思われる頃、想定出来る中での最悪の事態が訪れていた。電話の背後からガラスが割れる音と同時に、何か大きな物が部屋に侵入してくる。
手元には小型拳銃が一丁のみ。この口径ではとてもじゃないが牽制にすら使えず、むしろ護身用とも取れる様な物しかなかった。
おもむろにアラガミに向けて数発発砲する。戦闘訓練をしていない人間が拳銃を構えた所で狙いが直ぐに定まる物では無い。しかも、これでは自分の身を護る事は不可能だと瞬時に悟っていた。
「大……丈…夫か?早く…逃げ……ろ」
声と共に今にも捕喰しようと襲いかかって来たサイゴードは轟音と共に大きな風穴があく。倒れたサイゴードの背後には息も絶え絶えになったマルグリットが無理矢理神機を稼働させる事で撃ち落とす事に成功していた。
「なぜ、お前が?」
「今…はそんな事を…言って…いる暇は…ない。早くここから…」
恐らくは先ほどの一撃がギリギリだったのか、マルグリットは力が尽きたかの様にその場から動こうとはしなかった。しかし、ここに侵入したサイゴードは一体だけでは無い。他にも数体のアラガミが侵入していた。難を逃れたはずが、再び最悪の状況が襲い掛かかった。
「これ以上は…ダメ」
これ以上の攻撃が出来ないからなのか、それとも諦めたのか、神機を捨て去りマルグリットは那智の盾になるべく目の前に立ち、防ごうとする。幾らゴッドイーターと言えど、丸腰のままでは一般人と大差はない。これ以上は何も出来ないと判断した瞬間だった。
「お前たち目を瞑れ!」
誰かの叫び声が聞こえると同時に、襲い掛かるサイゴードの手前で視界を妨げる様に白い閃光が辺り一面を覆っていた。
「スタングレネード。一体誰が?」
アリサは襲撃されている部屋へと急ぐべく走り続けていた。突如として光がどこからか漏れたのか、壁の隙間から白い閃光が光の筋を作り出す。恐らくは神機に干渉するアラガミが近くに居たらなのか、突如としてアリサの神機の制御が戻り出していた。
「ここがチャンス!」
神機を銃形態へと直ぐに変形させたと同時に、視認できるアラガミに向けて一気に銃弾を撒き散らす。今までの鬱憤が溜まっていたのを晴らすかの様に、オラクルが尽きる寸前まで一気に撃ち放っていた。浮遊するサイゴートはアリサが放った銃弾で次々と落下し命を散らす。気が付けば周囲のサイゴートは全てこの場に沈んでいた。
小型種が粗方討伐出来た頃、まるでこのタイミングを図ったかの様に触手が生えたシユウとシユウ堕天がアリサの前に立ちふさがる。扉の向こう側の事は気になるが、今は目の前のアラガミを討伐しないかぎり、再度神機が使えない状況に追い込まれる可能性があった。只でさえ厳しい状況下での神機に使用制限は自分の命が危うくなる。その為には一気に仕留める必要があった。
未だ神機が使えない状況に陥る事は無いが、それでもいつどんなタイミングで行動するのかは未だ解明されていない。通常のアラガミの様に、一定以上の攻撃を受けた事で発動するのか、それとも自身の意思で発動するのかすら検討が付いていなかった。
戦場での逡巡は命取りではあるが、特殊な攻撃をする事が事前に理解できれば、猶更慎重な行動を取らざるを得なかった。
「このままだと押し切られる」
動向を窺いながらの攻撃はどこか力が入り切らないのか、アリサの剣戟が何時もよりも鈍い。本来であればここまで苦戦するはずのない戦いは目に見えない部分での戦いでもあった。
徐々に行動不能になるのであれば、攻撃そのものを察知しながら慎重に出来るが、たった一度の見えない攻撃による神機の使用不可は一層神経を消耗させる。理想的な戦術は1体づつに分断して個別に討伐する事だが、この狭い部屋の中ではそれすらもかなわない。
今は何とか凌げているが、このまま追加でアラガミが来るような事が有れば、窮地に追い込まれるのは自明の理だった。
「え、何で?」
アリサがほんの一瞬視線を外した瞬間だった。突如としてシユウ堕天の翼手から轟音と共に巨大なエネルギー弾がアリサを襲う。いつもなら回避出来るが、至近距離ではそれすらもままならなかった。
「きゃあああああ」
アリサの悲鳴と共に、まるで共闘しているのか恐れていた事態がついに発生する。声なき咆哮と共に神機が突如として稼働停止し、今のままでは防ぐ事が困難となっていた。
先程の攻撃を受けたままの状態で、今は盾を展開する事すら出来ない。絶望とも言える状況がアリサの目の前に広がっていた。
シユウを倒したまでは良かったが、未だアラガミに侵入が止まらないのか、1体を攻撃している間に次々とサイゴードがソーマへと襲い掛かる。既に神機が使用不可能になる可能性は低いと判断したのか、ソーマは何も警戒する事もなくイーブルワンを振り回し、確実にアラガミを屠り去っていた。
既に霧散した物も含めれば討伐数はかなりの数に上っていた。正体不明のアラガミの能力を考えればソーマ自身もアリサの元へは向いたいが、未だ一向に減る気配の無いアラガミを討伐する事で足止めをくらっていた。
「次から次へとキリがねぇ」
気が付いていないと判断したからなのか、背後からサイゴートはソーマに襲いかかろうとした。捕喰までの距離はごく僅か。ソーマの肩口に食らいつくはずだったそれは視界が左右に離れていく。自分が斬られた事すら意識しない程の斬撃は一瞬にして身体を左右に離していた。断末魔を聞いたソーマが振り向いた先には無明が立っていた。
「ソーマか。アリサは今どうしてる?」
「アリサならあの塔の一番上だ。あのアラガミの事は知ってるのか?」
「アラガミの事は知らんが、神機の件は知っている。今は一刻を争う。ここはお前に任せる」
「了解した。それと、例のアラガミだが、翼手の根元から触手の様な物が生えている。恐らくはそれが神機を行動不能に追い込む器官の可能性があるが、そこは同時に弱点の可能性もある。さっきの戦いで明らかに直撃した後の行動が異常だった」
先程の戦いでの情報を短時間で共有する。ソーマは無明が戦っている姿そのものを直接見た事は片手で数える程しかない。普段の佇まいと今の斬撃で途轍もない能力を持っている事は直ぐに理解出来た。恐らくは自分が向かうよりも無明の方が状況判断に優れるだろうと考えたからなのか、この場に自分が留まりアリサの事を任せる事にした。
「そうか。すまないがここは頼んだ」
一言発すると同時に近くのアラガミを捕喰し、そのままバーストモードへと突入する。その瞬間、どこかで見た事がある様な光景だとソーマは思う頃、既に無明はその場から立ち去っていた。
ここを任された以上、後は自分がここでの砦となる。今出来る事だけをやりきらんとばかりに神機を握り直していた。
「なんでこんな時に」
アリサは思わず舌打ちしそうになりながらも、2体のシユウの攻撃をギリギリの所で躱し続けていた。先程の直撃した攻撃が尾を引いているのか、動きは鈍く身体中のあちこちに傷が出来ていた。
神機が不能になれば、今度はその神機が重荷となる。しかし、これを手放せば今度は反撃の手段を完全に失う以上、今はギリギリの所で踏みとどまっていた。
如何に歴戦の猛者だとしても一方的なハンデを背負わされたままでは、集中力が切れれば自分の命が簡単に消し飛ぶ。今ここで倒れる訳には行かないと、ギリギリのラインで踏みとどまれているのは使命感から来る物。戦闘時における神経の消耗は思いの外早く、時間の経過と共に集中力が切れ始めていた。
「エイジ、ごめんなさい」
今正に力尽きようとした時だった。突如として今までアリサを苦しめたはずのシユウ堕天が悲鳴と共に絶命する。目の前で一体何が起こったのかアリサの理解が追い付かない。しかし、シユウの命を奪う原因となった背中から胸にかけて貫かれた刃には見覚えがあった。
「アリサ無事か!」
「無明さん。何とか無事です。それよりも…」
漆黒の刃はエイジの愛用している神機と瓜二つの物。今までにも何度も見ていた神機に誰がここに来たのかを直ぐに理解した。しかし、今は目の前のシユウをどうにかしないと無明でさえも神機を使う事が出来なくなる。その事実がある以上、アリサは素直に喜ぶ事が出来なかった。
「ソーマから聞いた。その触手の様な物が例の器官だ。最低でもあれさえ何とか出来れば問題無い」
既に用意していたのか、そう言いながらも素早くスタングレネードを使うと同時にシユウの意識を完全に断ち切る。事前に位置を確認していたからなのか、閃光が走った瞬間シユウからは悲鳴が聞こえていた。
「アリサ、今だ!」
無明が叫ぶと同時に、アリサの神機が再び稼働する。閃光が治まる頃には既にアリサのアヴェンジャーはシユウの翼手を切裂き、無明の神機は肩口から袈裟懸けに斬り裂いていた。
「何でアンタがここに居るんだ」
「馬鹿野郎が。こんな戦場でお前のやって居る事は自殺と何ら変わらないんだぞ。お前の行動がその子を殺す所だったんだ。何で技術屋のお前がスタングレネードの一つも持ってないんだ」
立ちふさがるマルグリットの目の前に使われたスタングレネードは八雲が放った物だった。白い閃光が結果的にはサイゴードを撤退させる事になり、その結果として風前の灯とも思われた命が助かっていた。
「何を今更。私に構わなくて結構だ」
強がりとも取れる言葉なのか、強気の言葉とは裏腹に那智は腰が抜けたのか立つことすらままならない。この状況の中でどうやってここにこたのかは分からないが、それが元で助かったのは紛れも無い事実だった。
しかし、スタングレネードの効果は永続的には続かない。先ほど撤退したサイゴードが反撃とばかりに今度はサリエルを連れてきていた。ここには既に武器らしいものは何一つない。
このまま捕喰されるのは時間の問題だった。
「腰抜かした奴が何いってるんだ。親が子を助けるのは当たり前だろうが」
「何をそんなくだらない事言ってるんだ。今度はフェンリルを手なずけて何をするつもりなんだ?」
プライドが許さないのか、それともこの場においてもイニシアティブを取りたいのか、那智は強硬な姿勢を崩すことは無かった。このままだとサリエルが来れば、ここは再び死地へと逆戻りする。
言い争う前に、ここから一刻も早い撤退が一番だった。
「那智、お前もいい大人なんだ。いつまでガキみたいな理屈を並べれば気が済むんだ?いい加減、現実をもっとよく見ろ」
諭す様な言葉は既に那智の心には届いてなかった。妄執とも取れる一念でここを作り上げ、僅かとは言えここの住民をアラガミから守って来た自負があったのか、八雲の言葉が棘を持ったかの様に那智の心に突き刺ささっていた。
「何を今さら親らしい事を言ってる。アンタは昔からそうだった。母親が殺された時も、何も知らない神機使いが来て俺たちが追い出されても何一つ反論すらしない。全部を諦めたあんだが、今更親の面で何言ってるんだ!」
恐らくはこの局面に来て初めて親子喧嘩になったのだろう。既に那智と八雲の言い争いは立場を捨て去り、一個の家族の会話へとなっていた。もっと早くにこんな会話ができれば、違う未来があったのかもしれない。
今更後悔した所で過ぎ去った時間が戻る事は無い事位は誰でも知っている。那智は気が付いていないが、既に八雲の命の炎は消え去る寸前だった。アラガミの攻撃とスタングレーネドの光が収まると同時に視界が広がってくる。そこには驚愕の事実があった。
「今更俺は親だとは言わないが、お前にはここを作る事が出来た頭がある。そして、ここに集まった人間は全員がお前を頼ってきたんだ。折角素晴らしい頭脳を持ってるなら、それを精一杯行かせ。それがお前の責……務…」
言葉の途中で力尽きたのか、八雲の口からは喀血し、半身は既に無くなっていた。恐らくは今際の言葉だったのだろうか。それ以上の言葉を発する事は無かった。
「八雲さん!」
アリサが突入した際に見えた光景は凄惨の一言だった。既に力尽きたのか、八雲は動く事はおろか生気すら感じない。その瞬間、八雲はこの世を去った事実だけを残していた。
この惨状にアリサの目に怒りの炎が宿る。目の前のサリエルに向かって大きく跳躍する。高低差を活かした事により、レイジングロアからの一斉射撃はサリエルの頭蓋を破壊戦せんと全弾を撃ちおろす。銃弾に叩き付けられたのか、サリエルは勢いを無くし地面へと落下していた。既にダウンしたのか動く気配は感じられない。八雲の敵と言わんばかりに力任せに神機を振り下ろした。
サリエルは力なくその場に倒れ、絶命していた。
「アリサ、終わったのか……そうか。八雲さんが」
アリサの後で区画一帯を掃討した後に無明が部屋に入ると、そこには力が抜けたかのように佇んだ那智がへたり込んでいた。既に制圧は完了したが、今度は建物の倒壊の恐れが出てくる。完全には見ていないが、その場に漂う血の匂いが全てを語っている様だった。ここで感傷に浸る暇はどこにも無い。一旦、安全確認する為に全員は塔から脱出していた。
「ご苦労だったな」
「終わったのか」
「ああ、取敢えずは例のアラガミを討伐したから暫くは大丈夫だろう。あとはここの復旧次第だな」
塔から脱出した事で、漸く居住区の状況が見え始めていた。建物は大半が半壊、もしくは全壊している。恐らくは復旧に関しては相当の時間が必要になるのだろう。しかし、その前に一番重要なのがアラガミ防壁の補修だった。
大きな穴は一番最初に侵入されたままではあったが、今回の襲撃で新たに更新する必要が出ていた。まずはそれが出来ない事には復旧ノメドが立つ事も無く、一刻も早い判断が求められていた。
「那智さん。今回の件だが、我々から資材提供と復興に関する費用を受けもとう」
「無明さん。貴方からの申し出は有りがたいが、この場での応諾は致しかねる。少し時間を貰えないだろうか」
「那智さんの立場は理解しているが、今はそんな事で時間を無駄にする訳には行かないだろう。どのみち議会と言っても、この状況だと開催は不可能だ。この場は俺に任せて貰えないか?ここを悪い様にはしない」
現地の確認とばかりにアリサとソーマは今後の事も踏まえて2人のやり取りを見ていた。しかし、会話が何かおかしい。どう見てもお互いが初対面の様には見えず、そこには一定以上の信頼関係がそこにはあった。
自分達とのこれまでの対応との違いに理解が追い付かない。このまま口を挟む事も出来ず、今はそのやり取りを見る事しか出来なかった。
「……分かった。ネモス・ディアナとして屋敷の正式な援助を受けよう。議会には緊急時における対応だと伝えておこう」
「直ぐに手配をしよう。ただ、屋敷は知っての通りここに回す人員は不足している故、極東支部の人間を使う。管理は俺が受けもとう」
「仕方あるまい」
今までの苦労は何だったのか。あまりに呆気なく決まったのは良い事なのかもしれないが、アリサ達と無明との対応が違い過ぎた。一体今までの苦労は何だったのだろうか?本来ならば声を大にして聞きたい衝動に駆られていたが、今の状況下では聞く事すら憚られた。
「おい、無明。一つ聞きたい」
聞きたいのはアリサだけでは無かった。アリサの場合はエイジとの事が有るので安易に聞く事が出来ないのかもしれない。しかし、ソーマにはそこまでのシガラミはシオ以外には無く、その結果としてアリサが聞きたい事を代弁した様にも思えていた。
「何だ?」
「お前はここの場所の事は知ってたのか?」
「当たり前だ。通信で言っただろう」
「だったら、俺たちにも一言位言ってくれても良いだろうが」
苛立つソーマの言いたい事は尤もだった。事前に知っていれば、ここまで苦労する事は無かったはずだった。短い期間ではあったものの、ここでの内容はあまりにも濃すぎた。
内容が良ければまだしも、完全に敵視された中でのこの状況は面白くないのは当然だった。
「確証はあったが、お前たちの今後の事も考えた上での結果だ。話の齟齬が無い様に言えば、これは屋敷と、こことの取り決めであって、間にフェンリルは介在していない。ここまで言えばお前も理解出来るだろう」
極東支部では無く、屋敷と言われた事でアリサは理解していた。元々何の援助も受けていないのであれば、今回の件はあくまでもお互いが独立したコミュニティ同士のやり取りでしかない。偶々今回の支援に当たって極東支部を下請けとして使うだけの問題だけだった。短い期間とは言え、ここに滞在したからこそ分かる理由。
だからこそ、それ以上の事は何も言えずソーマは黙る事しか出来なかった。