神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第141話 予兆

「そう言えば、あの時以来2人で任務になるのは久しぶりだな」

 

 サテライト拠点の視察から数日が過ぎる頃、北斗の神機が修理から戻っていた。修理後、リッカの話によれば、純粋に補修をしただけと聞いていた。

 しかし、以前とは何も変わっていないはずにも関わらず、変形に関しては以前よりもスムーズで時間も短縮されている。

 話を聞いた当時はほぼ流す様に聞いたものの、実際には大幅なアップデートを施したのでは無いのかと思える程の出来栄えに北斗は驚きを隠せなかった。

 当初は誰かと組んでミッションに出ようと考えていたが、生憎と捕まった人間は誰もおらず、結果としてギルと改めて出動する事になっていた。

 

 

「神機が修理だったから仕方ないって。でも、返ってきてからの神機が以前のよりも稼動にストレスが無いみたいだ」

 

「ここは激戦区だからな。多分細かい部分のパーツに対策品が使われているんだろう」

 

 何気ない会話だったはずが、何となく今までとは違う様な感じがしていた。以前であればここまで細かい話をした記憶が無い。しかし、最近ではあのミッション以来ギルとの間には随分と砕けた様な雰囲気が漂っていた。

 

 

「ギル、ひょっとして神機に詳しいのか?」

 

「いや、実はお前の神機の修理の際に偶々見学してたんだ。で、その際にリッカとナオヤから色々と話を聞いてたんでな。

 しかし、ここは凄いな。神機一つとっても今の現状に甘んじる事無く、常に改良と開発が繰り返されている。適合者が出ているなら分かるが、まだ誰も使う事も無いものまでもが開発の対象になっているとは思ってなかった」

 

 北斗は神機が使えないのであれば訓練だと常時訓練室にこもる事が多かった事もあってか、その後のやり取りに関しては何も知らない事が多かった。

 事実、訓練から戻ってラウンジに行けば、当時エイジが捕獲した小動物がシエルに飼育されていると聞かされた時には随分と驚いた事が思い出されていた。

 

 

「なるほどね。やっぱり何かしら自分が出来る事があるのは何となく心強いかもな」

 

「その辺りは人それぞれだろ?実際にロミオやナナに関しては何かしている様にも思えないが、見えない所で何かをしてる可能性もあるだろう。北斗の事はブラッドの人間は全員が認めているんだから、それ以上何かをする必要は無いだろ」

 

「そうか?自分としてはそんな事すら考えた事は無かったんだけどな」

 

「自分で自覚するのは難しいかもな」

 

 極東に来てからは、ちゃんとした部隊が存在している為に、今までフライアに居た時の様なミッションになる事は少なくなっていた。

 事実、ここでのブラッドの位置付けは遊撃。ブラッド隊として正式に出動するのは感応種が出た時位だった。

 

 

「まぁ、ここは各自の技術も他の支部よりも数段上だからな。少なくとも以前いたグラスゴーとは比べものにならない」

 

 まさかギルの口から以前いたグラスゴーの言葉が出るとは思ってもいなかった。配属当初は忌避とも取れる反応だったが、やはりカリギュラを討伐した事でギルの中で何かが変わっていたのだろう。

 当時あったであろう悲壮感は微塵も感じなかった。

 

 

「ギル…もう大丈夫なのか?」

 

「…?ああ、ハルさんから聞いてたんだったな。完全では無いにしろ、当時の俺は多分自分の不甲斐なさに行き場の無い怒りがあったのかもしれない。

 ケイトさんの事は完全に忘れる事は不可能だし、グラスゴーの記憶が無くなる訳でもない。今回の件で自分と向き合った事で前に進む事が出来た。少なくとも今はそう考えている。

 それよりも俺も血の力に目覚めるとは思ってもなかったがな」

 

 今回の一番収穫はギルが完全に過去と向き合う事が出来た事だった。

 勿論それだけではなく、今回の結果ギルも血の力に目覚めた事により、今後のブラッドとしての立ち位置も完全に固まったと考えても過言では無かった。

 

 余談ではあるが今回のギルの件で榊博士は興味を隠す事無くギルの事をくまなく検査していた。理論上は従来の偏食因子でもあるP53ではなく、ブラッドの中に眠るP66偏食因子がどんなプロセスで発動するのか純粋な知的好奇心の対象となっていた。

 ラケルが発表したP66偏食因子は未だブラックボックスの中。今後の事も考えれば一刻も早い解明は必須だった。

 

 

「これからは頼りにしてる」

 

「ああ、任せておけ」

 

 既に帰投の時間が近づいたのか、ヘリの近づく音が2人の耳にも届き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハルさん。そんな所で何やってるんですか?」

 

「なんだギルか。ツバキさんかと思ったじゃないか。驚かすなよ」

 

 帰投後にラウンジへ行くと、そこにはハルオミとカノンが何やら話をしているのか、お互いが何かに向かって構えをしていた。

 ここは便宜上部隊としての活動はするが、実際には完全な部隊運営をする事は少なく、事実ハルオミも一番最初に紹介された際には第4部隊の隊長だと聞かされていた。

 

 

「別にそんなつもりは無いんですが……。確か、台場さんでしたよね?」

 

 何となく紹介された事はあったが、あの時は僅かな時間だった事と、お互いが話した訳では無かった事もあってか、話かけたギルも何とか覚えている程度にしか過ぎなかった。

 北斗に関しては完全に分かろうとしていないのか、既に視線は違う所へと向いていた。

 

 

「はい。第4部隊所属の台場カノンと申します。あなた方はブラッド隊の方々ですよね?」

 

「俺の名はギルバート・マクレイン。ギルと呼んでくれ」

 

「饗庭北斗です」

 

 取って付けた様に自己紹介をすると、ここで何かを思いついたのか突如としてハルオミがカノンの耳打ちをする。何を言っているかは分からないが、カノンの視線はこちらに向くと同時に何かを考えている様にも見えた。

 

 

「あの、これからは宜しくお願いします。教官先生!」

 

 何を耳打ちされたのか分からないが、突如として教官と言われ、北斗とギルはお互いの顔を見ていた。誰に対して話をしたのかは分からないが、確実に視線が向いている事だけは確かだった。

 

 

「えっと。これは一体どんな意味を持ってるんですか?」

 

「はい。先ほどハルオミ隊長から饗庭さんがこれからは指導教官になったと先程聞きました」

 

 何が起こったのか、気が付けばハルオミはその場から離脱していた。この短い時間に何が起こったのかと考えて隣を向けば、そこには先ほどまで居たはずのギルの姿も無かった。

 この場に居るのは自分と台場カノンの2人だけ。この時点での戦略的撤退は不可能だった。

 

 

「でも、台場さんは第4部隊の所属では?」

 

「そうなんですが、今回に関しては本部の特殊部隊としての戦術を学ぶのが趣旨だと言われましたので、不束者ではありますが宜しくお願いします。後は私の事はカノンと呼び捨てにして頂いて構いませんから」

 

 そう言われた事で先ほどの内容の全容が理解出来た。良く言えば指導教官だが、悪く言えば体よく押し付けられたとも解釈出来ていた。時すでに遅し。北斗の中で退避の二文字は完全に失われていた。

 

 

「それで、一体俺は何をすれば良いんですか?ここだと確かエイジさんが教導してたはずですが?」

 

 北斗が疑問に思うのは無理も無かった。元々北斗は教えるなんて事は一度も考えた事がなく、ましてや今はエイジが居るのであれば教導は自分の仕事では無い。これは一体どんな事なのか理解が追い付いていなかった。

 

 

「エイジさんは実戦が多いんです。実は私、旧型のブラストなので、エイジさんと方向性が若干違うと言いますか……でも、今までにハンニバルも討伐した事もありますし、一部の接触禁忌種だったら経験はあるんです。

 ただ、エイジさんはクレイドルなので常時ここに居る訳では無いので…」

 

 何気に接触禁忌種やハンニバルの名前が出た際には流石に北斗も驚いていた。接触禁忌種に関しては極東以外の地域では事実上、支部の全勢力を傾けなければ最悪は全滅の恐れすらあった。

 しかし、目の前に居るカノンのは旧型。しかも討伐に関しては個人の討伐記録を見ればすぐに分かる為に嘘を吐いても無意味でもあった。ここが激戦区である事が改めて理解出来ていた。

 

 

「それで俺なんですか……ですが、俺も正直銃は若干苦手なんですよね」

 

「それでしたか。では2人で一緒に頑張りましょう!」

 

 教官として紹介されたはずが、気が付けば同僚と変わらない対応に気が付くには時間がかかり過ぎていた。しかし、このままにしておく訳にも行かず、これからどうしたものかと改めて悩む事になった。

 

 それと同時に、北斗はこの後で激しく後悔する事になる。目の前にいるのが、かの有名な極東の誤射姫の二つ名を持っているとはこの時点では気が付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で容体はどうなんだ?」

 

 カノンとの訓練をしながらに自身も訓練を続けていた際に、突如として北斗に報告が上がっていた。

 当初は一体何があったのか理解出来なかったが、内容を聞けば、どうやらナナがミッションの帰投の際に倒れたとの内容だった。

 ミッションそのものは完了した後だった事もあり、現状は大きな問題にはならなかったものの、やはり今後の事もあれば何か大きな疾病に罹患している可能性が捨てきれなかった。

 北斗が来る頃にはブラッド全員が医務室に集合していた。

 

 

「北斗。そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。検査の結果、何かの病気では無いそうですので安心して下さい」

 

 慌てる北斗をなだめるかの様にシエルが今までの状況を報告する。何かに罹患していない事に安心はしたものの、今後の事を考えれば決して楽観視するのは危険だとも判断できた。

 

 

「北斗。今はナナの安静が一番だ。俺は一旦フライアに行ってナナのメディカルデータを確認してくる。ここはフライアでは無いから、無理なミッションは少ないとは思うが、暫くの間はこの部隊の指揮を頼む」

 

「ああ。何か分かったら教えてほしい」

 

「出来る限り、すぐに戻る」

 

 原因は不明だが、まずは病気で無いのであれば今はただ見守る事しか出来なかった。原因が何も分からない以上、治療の手だては何処にも無い。今後の事に関してはジュリウスからの連絡を待つ以外に何も出来なかった。

 

 

「最近ナナと一緒にミッションに行ってなかったから気が付かなかったんだけど、最近はずっと調子が悪かったのか?」

 

「そうですね。最近は北斗も一緒にミッションに行く機会が少なかった様ですから気が付かないのも無理はありませんね」

 

 シエルの言葉の内容だけを聞けば普通だが、どこかその言葉には心なしか棘がある様にも聞こえていた。

 ここ最近は確かにギルかカノンに同行する機会が多く、決して蔑ろにしたつもりは無かったが、ナナだけではなくシエルとも行っていない事が思い出されていた。

 

 

「あの。シエルさん。ひょっとして怒ってらっしゃるのでしょうか?」

 

「いえ。北斗はひたすら任務に励んだけですから、私が怒る要素は何処にもありませんが?」

 

 いくら感情の起伏が少ない様な雰囲気があるシエルだが、その口調は決して平常だとは物語っていなかった。

 こんな状況になるまで気が付かない様であれば、副隊長として、管理者としても失格の烙印を追われても致し方ないとまで思えていた。

 

 

「これからは少し考えますので…」

 

「分かれば結構です」

 

 どちらが上司でどちらが部下なのか分からない様なパワーバランスがここに決定する事になった。今後はもう少し部隊そのものも見ない事には最悪の場合は空中分解する可能性が高い。

 ただでさえこんな激戦区で連携が取れない様な状況になればどんな結果が起こるのかは容易だった。

 

 

「あれ?ここは?」

 

 それまでのシエルとのやりとりはナナの目が覚めた事で終了していた。第一声から考えればやはり倒れた事の記憶が無かったのか、どこかぼんやりとしながらも周囲を見ている。

 このまま起き上ろうとした所をシエルが制した事でナナは再び横になっていた。

 

 

「ナナさん。ミッションの終了後に倒れた記憶はありますか?」

 

「ミッションの後?……ゴメンちょっと記憶が怪しい」

 

「検査の結果、特に問題はありませんでしたが、ミッションの直後にそのまま倒れたそうです。

 今は原因が不明の為にジュリウスがフライアでナナさんのメディカルデータを確認しに行っています。詳細についてはその結果待ちと言った所でしょうか」

 

 状況の詳細がシエルの口から全ての報告が成されていた。

 事前に確認していた北斗も改めてシエルの報告を聞いていく。確かのこの状況下で倒れるのは考えにくいとも思えていた。

 

 

「そっか~。実はここ最近頭が痛くなる事が多かったんだ。多分今回はその影響なのかもしれない」

 

 そう言いながらにナナはここ数日の自分の状況を話だしてた。ナナの明るい言い方に当初は些細な事だと考えていたが、話の後半になるにつれ、自身の生い立ちの話へと変化していた。

 以前に聞いた記憶では確かナナもジュリウス達と同じマグノリア=コンパスの出身だったはず。しかし、ナナの口から出たのはそれよりももっと以前の出来事だった。

 

 

「ごめん。ちょっと話すぎたから疲れちゃった。今日はこのまま休むね」

 

 そう一言言ったと同時にナナは再び眠りにつく事になった。このままここに居ても何もする事は出来ない。お互いがそう考えたからなのか、北斗はシエルと医務室を離れる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュリウス、ナナの事で何か分かったのか?」

 

 ラウンジではフライアから戻ったジュリウスの報告をブラッド全員が共有する事になった。

 原因が分からないのであれば、今後のミッションにも大きく障害が発生する。そうならない為の措置でもあった。

 

 

「ラケル先生の話だと、恐らくは血の力の影響が関連しているらしい。これまでのシエルとギルの事から考えると、恐らくはナナが倒れた原因はそこにあるだろうと推測している」

 

「って事は命に何か別状があるんじゃないんだよな?」

 

「暫くの間は経過観察になるだろう。このままの状態が続く様ならば改めて何らかの処置を施す必要があるだろうな。暫くの間ナナは安静にさせるつもりだ。心配だろうが、これは暫くの間の措置だから安心してくれ」

 

 ロミオの心配をよそに、フライアで確認した結果がジュリウスの口から発せられた。一先ずは絶対安静ではあるが、命に別状は無い。まずは一安心と言った所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、北斗。良い所で会いましたね。これから少し時間を頂きますが良いですね?」

 

 全員がそれぞれ散会すると、久しぶりに聞いた声が北斗を呼び止める。振り向くまでもなく、声の主はラケルだった。

 

 

「ご無沙汰してますラケル博士。一体どんな要件でしょうか?」

 

 おそらくはジュリウスから話があったからなのか、それとも特別な要件があったからなのか、今の北斗には何も判断する材料が無いと同時に少しだけ戸惑いを見せていた。フライアに所属はしているが、実際に北斗とラケルはそれ歩ぢ親しい間柄では無い。精々が一部下と上司程度だった。そんなラケルからの話。北斗は無意識のうちに警戒を高めていた。

 

 

「そんなに構える必要はありませんよ。今回の件で榊支部長にも用事がありましたので、そこで説明をさせて頂きますから」

 

「そうでしたか」

 

 ラケルは言葉通りにそのまま支部長室へと足を運ぶ事になった。既に連絡を受けていたのか、そこには榊も待っていたようだった。

 

 

「やぁ。忙しい所すまないね。今回来て貰った件なんだが、実は黒蛛病の治療施設をフライアで作る話があってね。その為に着て貰ったんだよ」

 

 ナナの事だとばかり思って話を聞けば、黒蛛病患者の治療の件だった。では、なぜ自分がここに連れてこられたのか目的を真意が分からない。しかし、この場から退出する事も出来ず、今はただ話を聞く以外に何も出来なかった。

 

 

「そうそう。それと君に伝えたい事があってね。実は今フェンリルが少しだけ頭を悩ませている問題が今後の大きな課題となる可能性があったんだ。北斗君、君はゴッドイーターチルドレンって聞いた事がないかな?」

 

 今までの退屈な話から一転し、今度は自分に対しての質問だった。しかし、榊のゴッドイーターチルドレンと言う言葉は今までに聞いた事が一度も無い。それ故に答える事は何も出来なかった。

 

 

「すみません。聞いた事はありません」

 

「そうかい。実はここ数年で少しづつ問題化し始めてきた事なんだが、君達神機使いは適合試験の際に微量な偏食因子を体内に投与しているのは知ってるね?」

 

「それ位なら」

 

「今までは神機使いは10年以内の生存率は5%程しかなかったんだ。ただ、近年になってからは技術的な要因が大きく飛躍したことから生存率が高くなったんだよ。そこで初めて大きな問題に直面したって事なんだ。

 これは今となって考えれば我々も予想出来た事だったんだが、神機使い同士、もしくは片方がそうであった場合、産まれてくる子供には親の偏食因子をそのまま受け継いでる事が発覚したんだよ。ここでも今その経過観察が成されている所なんだが、如何せん有効データが少ないと言った所なんだよ」

 

 一つづつ確認するかの様に榊は説明をし始めていた。

 フライアでは聞いた事がなかったせいか、ここに来て初めて今回の内容を聞く事によって今後起こる可能性が高い事を次々と説明されていた。

 

 当初、ここに呼ばれた真意は未だ分からない。この場にジュリウスではなく、何故自分が呼ばれたのかが未だ理解する事が出来なかった。それと同時に今回の件で一つだけ思う事があった。態々榊が口にする程の内容。誰がどう聞いてもナナの件であることは間違い無かった。

 

 

「って事はナナもゴッドイーターチルドレンって事なんですよね?」

 

「そうよ。それが今回貴方を呼んだ要因の一つなのよ。貴方の血の力は喚起の能力を備えているの。これは神機使いの秘められた能力を引き出す、言わば種が芽を出す為に必要な水と肥料の様な役割をあなたが持っているからなのよ。

 これはジュリウスでも出来ない事。既にあなた自身も思う所は幾つかかあるでしょ?」

 

 このラケルの一言で漸く呼ばれた理由が理解できた。ここまでにシエルとギルの血の力の発露は自分がもたらした物であり、以前にラケルからも聞かされていた言葉でもあった。しかし、それと今回の事についての因果関係が全く見えない。戦闘では卓越した勘を見せるが、こんな場面ではそんな勘が働く事は無かった。

 

 

「しかし、それが今回の件とどう関連性があるんですか?」

 

「ナナは生来より他とは違って大きな偏食因子を持ったまま産まれてきたの。

 私が保護した時は既にその片鱗は見えていたのだけれど、ブラッドに入る前に漸く制御する事が出来たから推薦したんだけれど、貴方の血の力に今は影響を受けた事で不安定になり始めているわ。

 恐らく今回の倒れた原因はその可能性が高いの。これからはナナの事をお願いしたいと考えているわ」

 

「それは構いませんが、具体的にはどうすれば?」

 

 話の内容が二転三転した事から北斗も理解が追い付かなくなっていた。

 黒蛛病の話がゴッドイーターチルドレンへと移り、最後になってナナの血の力の発露にまで発展している。この状況で求められる事が一体何なのかが理解出来なかった。

 

 

「ナナがこれからどんな選択をするかはあの子次第。あなたにはその為の道しるべとなってくれればそれで良いのよ」

 

 最後にナナの人生の選択肢までもが北斗の双肩に乗せられた様な感覚があった。

 自分はただ任務に行く事しか出来ない。そんな人間が果たして人生を選ばせる事が出来る程の事が出来るのだろうか。

 重苦しい言葉を背に北斗は支部長室から出る事になった。

 

 

 

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