神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第18話 就任祝い

 アリサとのミッションから数日が過ぎる頃、アリサ自身が勘が戻ってきたのか、漸く以前の頃へと戻りつつあった。

 当初はリンドウが不在のままの運用に、心配される場面はあったが、結果的には杞憂に終わると同時に、第1部隊として通常業務に戻りようやく落ち着きを見せ始める様になっていた。

 特段トラブルも無く、安定した運用をし始めた頃に珍しくツバキからの招集がかかった。

 

 

「ツバキ教官が招集かけるなんて珍しいな。何かあったのかな」

 

「う~ん。あんまり良い予感が感じないけど、アリサは何か知っている?」

 

「何も知らないです。と言うか、知っていてもコウタには教えません」

 

 一時期の態度よりも軟化したとは言え、相変わらずコウタに対してのアリサの態度は辛辣な物だった。

 

 2人のその後ろでやり取りを見ていたサクヤは苦笑しながらも、今までにそんな招集が殆ど無かった事に対してに疑問を持ち、情報の確認の為に何気にソーマを見るも、自分には関係ないと言わんばかりの態度をとっていた。

 

 

「全員集まったな。今回の招集だが、この後のミッション完了後に如月エイジ、貴官を第1部隊の隊長に任命する」

 

 今回の招集で何かがあるとは思っていたが、ここでまさかの人事異動。

 この昇格人事に関してエイジ自身は何故?と思うも、他のメンバーは今回の任命に対しては、ある意味当然と思っていた。

 

 エイジは気がついてないが、ここ最近のミッションでは建前としてはサクヤか副隊長である以上、現場での指揮統制をする事になっているが、アリサとのミッションが多かった事から自然とコウタも含めて細かい指示を出す事が多かった。

 他の人間であれば階級や何かと言う事があるかもしれないがこの第1部隊は実力が全て。部隊運営に関しての報告はサクヤから逐一ツバキの耳にも届いていた。

 

 

「凄いじゃん。大出世じゃん。これって確か下剋上だっけ?」

 

「それ裏切りですよ。コウタはもう少し勉強したらどうですか?まあ、それ以上馬鹿にはならないと思いますが。今回の任命は当然だと思いますよ。ねっサクヤさん」

 

 さりげなくコウタに毒を吐きながらも、この人事に関しては反対するつもりはアリサには無い。ただでさえ自分の我儘に付き合ってもらってる以上、この話は喜び以外の何物でもなかった。

 アリサから話を振られるも、考え事をしていたサクヤは慌てて肯定する。

 

 

「俺には関係ない話だ。これ以上何もないなら帰るぞ」

 

 ソーマは相変わらずの平常運転。自分には全く関係無い上に、今回の人事に関してはまるで他人事だと言わんばかりに部屋に戻ろうとしている。

 

 

「良いかお前たち、あくまでもこのミッションの後だと言うのを忘れるな。話は以上だ」

 

「何にせよ、この後のミッションが終わればならサッサと終わらせようぜ」

 

 まるで自分の事の様に喜んでくれるコウタをほほえましくも思いながらも、ミッションを受注する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンドウの件ですが、現状は屋敷に置いてあります。発見当時の状況を考えると、最悪の状態は回避できていると判断できますが、現状はオラクル細胞の暴走がまだ収まっていない影響からなのか、意識そのものが回復する気配は無い様なので、とりあえず寝かせたままにしてあります」

 

 

 無明は極秘裏に屋敷にリンドウを連れてきたが、投薬して以来目を覚ます事は無かった。

 本来であれば真っ先にアナグラに報告して公表すべきかと思われたが、昏睡状態から覚まさない以上、このまま報告しても万が一の際には多大なる影響を鑑みると公表する事は避けられた。

 しかしながら、このままも秘匿し続けるのも問題があると判断し、無明は榊とツバキにのみ現状を報告していた。

 

 

「君の見立てだと、どの位で目を覚ましそうだい?」

 

「本来であればそろそろだと考えられますが。問題なのはリンドウの手についている青い物体とオラクル細胞との親和性が原因かと思われます。だからと言ってこのままである可能性も否定は出来ませんが、恐らく可能性は低いでしょう」

 

 普段であればここまで言い切る事は少ないが、珍しく言い切った事に榊は興味を覚えていた。

 

 

「ほう。それは興味深いは話だね。で、その根拠は?」

 

「この青い物質が本来ゴッドイーターの制御でもあるアーティフィシャルCNSの代わりをしている影響でアラガミ化は緩やかに進んだかと判断できますが、今までに見たことも無い物質なのでそれ次第です。データは後日秘匿回線で博士の端末に送ります」

 

「分かったよ。それを見て経過を判断するしかないようだね。それと、ツバキ君はどうするかい?」

 

 

 ツバキが現在唯一の肉親である事に変わらない。今までの事を考えれば喜ばしい事に間違いはない。

 しかしながら、これを公表すべきかと考えれば答えはNOと言わざるを得なかった。

 今はエイジが隊長に任命されている以上、下手な希望と万が一の事を考慮すれば動揺を起こすのは得策ではない。となれば自ずと答えは出てきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回のミッションは割と楽だったね。俺もそろそろ出世を狙えるかな?」

 

「その前に試験の結果はどうだったの?」

 

「それは聞いてくれるな。やっぱり勉強しないとダメかな?」

 

「あれをどうやって勉強するかなんて意味ないと思うけど、習うより慣れろの気持ちで良いんじゃない?自分も隊長なんて言われても自信無いから」

 

 今回のミッションはエイジ、コウタ、ソーマの3人でのミッションだった。

入隊直後の事を考えれば、今回のミッションは簡単に終わるレベル。なんだかんだと簡単に討伐が完了し、討伐の時間は当初想定していた時間を大幅に短縮していた。

 既に物資の探索も終え、現在は帰投準備中での待機だった。

 

 

「そう言えば、一時期に比べるとマシとは言え、最近は配給品の方が市場よりも品質が悪くなってない?」

 

 

 極東支部は世界でも有数の激戦区でもあると同時に、ゴッドイーターの実力も他の支部に比べると圧倒的に戦力の差が大きくなっていた。

 実力のある者は腕試しと称して極東支部への配置転換を希望しているが、各支部の思惑もあってか、現実問題として希望する配置につける事は極めて難しい状況となっている。

 

 完全実力主義のゴッドイーター全員が希望している訳ではない。

 もちろんその背景にはここ最近のゴッドイーターに支給される配給品の中身やその待遇、あらゆる物が以前に比べて劣っていた。

 

 極東支部は物資の受給よりも支給する側な事も影響してなのか、本部からの物資の支給比率は少なく、自給出来る事から品質は居住区と言えども充実していた。

 他の支部の居住区の住人は極東支部の事は分からなくても、前線にいるゴッドイーター達はその待遇の差を実感していた。

 

 

「みたいだね。自分では配給品を受け取る事は殆ど無いから気にしたことはないけど、今はどの位のレベルなの?」

 

「最近だとレーション関係は特にひどいよ。あのプリン味のレーションなんてただ甘いだけで、気持ち悪いレベルだから食べれたものじゃないよ」

 

 

 いくら物資が豊富でも、食材をそのまま食べる事はあまりない。そうなると必然的にレーションなんかの調理済み食品を食べる事になるが、極東でも自炊する人間は以外と少なく、自分で作るなら簡単に食べた方が効率が良いと判断するのは、ある意味明瞭な回答だった。

 

 

「コウタは自分で作らないの?」

 

「いや~正直作ったことないんだよね。家だと母さんが作ってくれたから、今更作るとか考えるのは無いから」

 

「最初は誰だって初心者だよ。失敗しながら慣れて上手く作れるようになるよ」

 

「そうだ、今度時間あるときにエイジの就任祝いでパーティーやらないか?」

 

「それって、さっきのレーション持ち込みで?」

 

「いや、それは勘弁してほしい。エイジ作れるなら頼んだ」

 

 

 

 手を合わせて頭を下げ、懇願するコウタを見て少し冷静になれたのかもしれない。この流れでなぜか自分の就任パーティー料理を自分で作ると言う発想に、どうやったらたどり着くのかエイジには理解できなかった。 

 それならばと他に作れそうな人間に頼んだ方が良い様にも思えた。

 

 

「ちなみに他に作れそうな人に頼んだ?」

 

「サクヤさんは何だか忙しそうだし、アリサに聞いたら無言で挙動不審だった」

 

 

 どうやらこれは詰んだ状態なのは確実だった。サクヤはともかく、アリサは以前にミッションの最中にそんな話が出てはいたが、そこから話が全く進んでいない。

 コウタの回答が現在に至る事で容易に分かった。

 

 コウタも恐らくは、先ほどの配給品から今のパーティーまでが一連の流れで、偶にはうまい物が食いたいと思っただけなんだろう。

 

 

「分かった。今ある材料で何か作るよ。好き嫌いは一切聞かないからね」

 

「好き嫌いなんてないよ。あとはいつにするかだな。そうだソーマもどう?一緒に食べないか?」

 

「断る。馴れ合いは好きじゃない」

 

 

 そう言いつつ、その場を去ろうとした所で引き止めるかの様にエイジはソーマの肩を抑えた。

 

 

「就任じゃなくても、たまには皆で親睦を兼ねて食事も悪くないと思うけど?」

 

 

 エイジは笑顔で話してはいるが、肩に置かれた手に込められた力と、そこには有無をも言わさない迫力があり、さすがのソーマも若干たじろいだ。これ以上は何を言っても無駄と若干諦める事で仕方なく参加する事を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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