神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第39話 今後

 慌ただしく時間が過ぎ、ようやくシオの服が完成となった。

 既にサクヤとアリサの手によってシオの着替えが完了し、ようやくお披露目となった。

 色は白を基調とし上半身はノースリーブのドレス姿。胸の中央には綺麗なコサージュが取り付けられ、下半身は活動的に動けるようにホットパンツの様な物を穿いていた。

 以前のフェンリルの旗を巻き付けていた頃と比べれば雲泥の差でもあった。

 

 

「いや~今回は流石に苦労したよ。これも中々良い経験だったかな」

 

「素材があそこまで変わるとはね。何度も素材をなめした甲斐があったよ」

 

 

 作成した2人は満足げな表情でシオをしっかりと見ていた。それ以外にも着替えをさせた女性陣だけではなく、あまりの変わり具合に第1部隊の面々も驚きを隠せなかった。

 一方のシオも用意された洋服に満足そうな表情を見せ、皆に改めて見てもらう様にクルクルと回りだした。そんな様子を見ていた際に、一つの歌がシオの口から聞こえて来た。

 まさか歌を歌いだすとは誰も思わず、その声に全員が聞き入っていた。

 

 

「シオちゃん、その歌どうしたんですか?」

 

「うん?これか、これな、そーまといっしょにきいたよ」

 

 

 その一言で全員がそこに居たソーマの顔に注目する。全員から一斉に向けられた視線に耐えきれず、明後日の方向を見出す。

 本来であればそのまま放置となるが、残念ながらそんな曖昧な状態を許したい者はこの部屋には誰一人居なかった。

 

 

「あら~あらあら?ソーマも隅には置けないわね」

 

「まさか二人っきりで聴いてたんですか?しかもよりによってソーマが?」

 

「ソーマ、おまえってやつは……ブファ」

 

「お前ら大人しく聞いてりゃ適当な事言いやがって。全員そこに立て。一人づつぶん殴る」

 

「落ち着けソーマ。みんなそんな弄りたいなんて事考えてないよ。みんな感心してるんだよ」

 

 

 このままでは拙いと判断したエイジが慌てて止めに入る。残念ながらコウタだけは間に合わず、アリサはエイジの後ろに隠れていた。

 

 

「今まで人間味すら無かったのに、急にそんな事をシオが言い出すなんて誰も思っていなかっただけだよ」

 

「ててて……そんないきなり殴るなよ。別に深い意味ないけど、前はツンツンして話がたいのが今では普通に会話の中に入っているから、つい気楽に話しただけだよ」

 

 コウタが腹をさすりながら、どことなく言い訳じみた感じで話をする。いつもならばここまで突っ込んだ話をする機会は殆ど無く、またシオが見つかってからなのかソーマの刺々しい感情は以前に比べれば、なりを潜めていた。

 

 

「まあ、それ位にしてほしいね。いくらここが防音だからと言って騒ぐのは感心しないよ。ところで折角皆が集まっているからお願いしたい事があるんだが良いかい?」

 

 

 短い期間ではあるものの榊からのお願いは基本的にまともな話は殆ど無く、これから改めて聞かれる以上、碌な内容では無い事位は誰もが学習していた。

 そんな面々の表情を読み切った榊は内心がっかりしつつも、改めて以来をする事にした。

 

 

「実はラボにあるアラガミのコアが底をついてね。このままではシオの食事が満足に出来そうにないんだ。君たちには悪いがシオと一緒にデートに行ってほしいんだ」

 

「はかせ~。でーとってなんだ?それおいしいのか?」

 

「そうだね。多分シオにとっては楽しくて美味しい事かもしれないね」

 

「そっか、おいしいのか。しお、でーとにいくぞ~」

 

 美味しいの言葉に反応したのか、今すぐにでも動きたいのかシオは突如としてそのまま準備も程々に動き出そうとしている。この場から直ぐに出て行かれる訳にもいかず、シオを取り押さえるのに一苦労する事になった。

 

 

「じゃあ、悪いけどよろしく頼むよ。特にソーマ、しっかりとエスコートしてくれたまえ」

 

「まだ何も行くとは言ってねえぞ」

 

「ソーマ。隊長権限でたった今決定したからこれは命令だよ」

 

「エイジ。てめえまでそう言うのか」

 

「まあ、そう言わずに。気楽に行こうよ」

 

 

 その場でシオのデート(食事)ミッションが決行される事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで暫くは大丈夫じゃないかな?」

 

「ああ、そうだな。おいシオ、もう十分すぎる程食べたなら、そろそろ帰るぞ。これ以上の長居は色々と拙い」

 

「おお、じゃあごちそうさまだな~」

 

 

 デートと言う名の食事も終わり、ようやく撤収の準備に入った瞬間だった。

 シオが先ほどとは打って変わって呻くような声を発すると共に、身体中が突然紋章の様な字が浮き出始めてきた。シオの突然の変化にソーマとエイジは周りを警戒し始めた。

 敵の存在が無い事を確認すると同時にシオがどこか遠くへ移動し始めるのを慌てて制止するも、今まで感じた事も無いような力で動こうとしている。

 全力で阻止した事が功を奏したのか、程なくして電池が切れたかの様にシオは突然倒れた。

 

 

「おい、シオ!どうしたんだ?しっかりしろ」

 

「ソーマ、まずは博士の所に連れて行こう。ここだと何の対策も打てない。このままだと危険だ」

 

「そーま。だれかがしおをよんでる。そこにいかないとだめ」

 

 

 うわ言の様にそう言い残し、シオは意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博士、シオの容体はどうなんですか?」

 

「少し拙い事になってるね。一通り調べてみたが、その影響が出てるのか、随分と人間らしさが抜けて特異点としての力が大きくなってるね。因みにどこまで行ってたんだい?」

 

「愚者の空母ですが」

 

「……そうか。暫くは様子を見る以外に手立てが無いからね。シオ、ここの部屋で休んでなさい」

 

「う~ん。わかった」

 

 

 つい先ほどまで元気だったはずのシオが不可解な紋章が体に出たかと思いきや、昏睡するかの如く意識を失い今もなおその影響を引きずっていた。

 榊自身は大よその検討はついてたが、本当の原因をこのまま話すには今の状況では拙いと判断し、これ以上の言及を避けた。

 

 シオがここまで影響を受ける原因。そしてその場所から判断出来る事は、支部長が計画している事の全てが終わり、あとはシオのコア、特異点を探すだけとなっている事の状況が整っていると示唆してるにしか過ぎない。

 榊も恐らくはこちらの方が時間の猶予が無い事は悟っていたが、まさかここまでの速度で事態が進んでいたとは想像する事が出来なかった。

 重苦しい空気が漂いだした所で、一人の通信端末の音が鳴り響いた。

 

 

「はい、如月エイジです。……分かりました。それではこれからお伺いさせていただきます」

 

「誰からだエイジ?」

 

 

 ソーマはエイジの話の相手を予測していたかの様に、小声で話し出した。

 

 

「支部長からだったよ。どうやら特務の話らしい」

 

「そうか。前にも言ったが、あいつには気を許すな。もし特務絡みならこっちにも連絡が来るはずだ」

 

「とりあえずは行ってみるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「如月エイジ出頭しました」

 

「忙しい所すまないね。君の活躍は色んな所でも聞く事が多く、支部長としての立場でも嬉しく思うよ。早速で悪いが特務の件で話がある。つい先ほどエイジス島付近で特異点と思われし特殊なアラガミの反応をキャッチしてね。その件で君にはソーマと一緒にそのアラガミを捜してほしいんだよ」

 

「質問よろしいでしょうか?」

 

「答えられる範囲であれば教えよう」

 

「先ほどおっしゃった特異点ですが、どんな形状のアラガミでしょうか?自分としても形状が分からないとなると捜すにも目処が立たなくなる可能性があります」

 

「なるほど。だが今の所特異点の形状は不明となっている。我々も色々と探したが手がかりは無くてね。これはあくまでも推測になるが、特異点は高度な知能を有する可能性が高く、君たちも知ってのとおり、今推し進めているエイジス計画の重要な役割を担う可能性が高い。その為に見つけ次第討伐し、コアは必ず持ち帰る様に」

 

「分かりました。ではこれから捜索に向かいます」

 

「あと、この件についてはソーマにも伝える事になっている。他の人間には悟られない様に2人で行ってくれたまえ」

 

「了解しました。では失礼しました」

 

 

 支部長の話は予想通り、特務に関する事だった。しかし、特殊なアラガミと称するだけではなく態々特異点と言われた時点で、話しているエイジの背中には嫌な汗が伝った。

 まるでお前たちの行動は熟知していると言わんばかりの言動。これ以上支部長に隠し事をするのは困難だと思い始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソーマ、支部長の言ってた特異点ってどう考えてもシオの事だよな?」

 

「だろうな。ただ、形状は不明と言ってた以上、恐らくはアラガミの発する偏食場から想定したんだろうな」

 

 

 今2人は発見されたと思われし愚者の空母で佇んでいた。支部長が言った特異点はすなわちシオの事であり、そのシオは現在榊の元で保護されている。

 

 この時点でまだ第1部隊にも本来の計画でもあるアーク計画の全貌は一切明かされず、何か秘密裏に事を運んでいた事だけは何となく理解していた。

 この時点では今計画がどうなっているのか、今の自分達の立ち位置はどこにあるのか、それを知る術が無い以上誰にも知る由も無かった。

 

 

 

 

 

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