神を喰らいし者と影   作:無為の極

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第44話 結末

 一度はあまりの堅さに攻めあぐねるも、一旦攻撃の方法が分かれば後は今まで通りの展開となっていく。いくら強烈な攻撃であったとしても、全員に対して一度に攻撃する手段は無いと判断し、一気に距離を詰め再度攻撃を仕掛けようとした瞬間だった。

 

 

「愚か者めが、圧倒的な力を喰らえ」

 

 誰も聞いた事が無い声が響き渡った瞬間だった。辺り一面に目が眩む様な光が発生し、全員の視力が奪われた瞬間に今までに受けた事も無いような痛みが襲い掛かる。

 アリサとサクヤの悲鳴が聞こえるも、視力が戻らない状態では確認のしようが無かった。

 

 僅かながらに見えた光景には、一対のアラガミがまるで自身を守るかの様に光の柱の中で立っている姿だった。

 

 全員の視力が戻り始めた矢先に、今度は男型の2本の太い腕が襲い掛かる。大振り故の攻撃を何とか躱した物の、その腕が地面に当たると同時に今度はそこを中心に衝撃波が広がり、コウタとエイジが吹き飛ばされる。

 蜘蛛の糸を辿る様にようやく見つけた攻撃方法だが、僅か一撃の攻撃によって今までの戦線が意図も簡単にひっくり返される。

 厄介な攻撃方法を持つと同時に単純に攻め込む事すら許されない雰囲気が戦場に広がる。僅かに焦りが出始めたその瞬間だった。

 

 

「これでも喰らえ」

 

 追加の攻撃を何とか回避し、その返す刀でソーマのチャージクラッシュが男型の腕を斬りつけた。本来であればその刃は確実に届かなかったが、偶然にも攻撃の終わった瞬間だった。

 男型の腕を斬りおとす事は出来ないまでも、確実に右腕の機能は失われ今後の戦いに関しても有利に働く事に変わりなかった。この時初めて一対のアラガミは今までとは違った動きを見せ始めた。

 

 

「ここが勝負だ!」

 

 これが勝機とばかりに反撃を試みる。今まで男型の防御力に手をこまねいていた攻撃が先ほどのソーマの一撃により機能性が失われ、今までよりも攻撃が届く。

 ここが勝負所だとばかりにソーマはイーブルワンを肩に担ぎ、渾身の力で振り下ろそうとした時だった。攻撃に意識が向きすぎた事により視野狭窄に陥ったのか、再び予測していない側面からの衝撃をソーマはまともに喰らい、5メートル近く吹き飛ばされた。

 

 

「ソーマ!」

 

 

 予測してなかった女型の攻撃にソーマは吹き飛ばされたと思った瞬間、コウタも同じく横方向に飛ばされる。追い打ちをかけるかの様にアラガミがソーマに向かった瞬間だった。

 地面から大きな閃光が辺り一面に広がり、アラガミの視界を奪う。

 ダメージから回復したサクヤのスタングレネードがその動きを止める事に成功していた。

 

 

「今よ!」

 

 サクヤの叫び声と共にエイジはソーマを担ぎ、アリサはコウタを担ぎ出して、一旦距離を置くことに成功した。

 

 

「ソーマ、大丈夫か?」

 

「ああ、問題ない」

 

「しかし、あの攻撃は厄介ね。銃撃も効いて無い様に見えるし、剣戟も今一つみたいよね?」

 

「コウタはどう?」

 

「今の所は何とかって所かな」

 

「エイジどうします?」

 

 距離を取る事で何とか一息つくも、今度はこちらに向かって地面を滑る様に距離を詰めてくるのを横目に回避に専念する。先ほどの一撃が影響してのか最初に比べれば動きは格段に鈍く、攻撃そのものもキレが無くなっている様にも見えた。

 

 

「スタングレネードが多分有効だから、その隙をつくのが一番かもね。ただし、近寄り過ぎれば今度は攻撃の餌食になりやすいから一撃離脱を念頭に行こう」

 

 時間が無い状態であれば、詳細を伝える事は困難と判断し、簡潔に戦略をまとめるだけに終わった。

 アラガミのキレは無くなっても攻撃力が低下している訳ではなく、単純な動きが先ほどよりも若干遅くなった程度にしか過ぎなかった。

 しかしながらスタングレネードの威力は馬鹿には出来ず、現状はそれを利用した戦術で挑む以外に手が無かった。

 

 

「みんな!」

 

 再びサクヤの手からスタングレネードが放たれ、辺り一面は再度閃光に染まる。

 今度は大きく出来た隙を利用し、エイジ達が距離を詰める様に走り出す。

 攻撃の威力を知っている以上、流石に同じ攻撃を食らう様な事はなく、男型ではなく女型を狙いを定める。

 視界の外からくる攻撃を予測し、そのままアリサの攻撃が背後の天輪を掠めた時だった。今までのスタングレネード以外の攻撃で初めて大きくよろめいたのをエイジは見逃さなかった。

 

 

「コウタ、サクヤさん、あの輪を狙うんだ。男型はこちらで引き付ける」

 

「了解」

 

 コウタ、サクヤの銃撃が天輪に向かって一気に襲い掛かる。今までは男型が攻撃を防いでいたが、3人の剣戟で行動が遅れ、半分以上が着弾した時だった。

 今まで機敏に動いてたはずの女型がよろめき、ここで初めてダウンする。女型に同調していたのか、男型も同時にダウンしていた。

 

 

「ここで男型にケリをつける。一気に決めるぞ!」

 

 エイジの叫び声と同時に3人の神機の顎が大きく開く。補喰した事でバーストモードに初めて入った。エイジとアリサは新型らしく、コウタとサクヤにアラガミバレットを受け渡す。

 

 

「これで終わりだ!」

 

 コウタの声と共にアラガミバレットが発動。コウタの目の前に大きな光球が発生し、今までに見た事も無いようなレーザーが男型を貫く。ダウンで動けなくなった男型は成す術もなく、そのまま被弾した。

 轟音と共に消し去った様にも見えたが、まだ辛うじて体が動いていた所をサクヤがとどめとばかりにアラガミバレットで貫き、ようやく行動が停止した。

 

 

「おのれ貴様ら!」

 

 男型が倒された事に怒り狂った様にも聞こえた声はすぐさま反撃に転じた。

 一対のアラガミがここで漸く一体となり、戦闘の先が見え始め様とした所だった。

 今までの様な光弾で攻撃が来ると予測した物の、行動が明らかに先ほどとは違う。背後にあった天輪が空中へと浮き始めた瞬間だった。

 先ほど放ったアラガミバレットなど比べ物にもならない程の極太のレーザーが辺り一面を攻撃し始める。

 シールドで防ごうものならば、バックラー程度であれば無いに等しい程の威力、当初は防ごうとしたエイジもこの攻撃を防ぎきれないと判断し、瞬時に回避行動に移った。

 放たれたレーザーは堅牢なはずのエイジス島の防護壁が大きく歪み、本来ならば余程の事が無ければ壊れないはずの床までもが大きく抉れていた。

 これにはエイジだけではなく、ほかの4人も驚く以外他無かった。

 まともに当たれば一瞬にして命が消し飛ぶ様な攻撃。ここまで高火力な一撃は否応でも意識させられた。

 

 一度はこちらに勢いが傾きそうにも思えたが、今の攻撃で勢いが完全に削がれ、現状は再び元の状態に戻ったかに思われた。しかし、男型アラガミは既に討伐している以上、今までの様に攻撃が届かないなんて事は無い。

 そう思い各自が自身を奮い立たせた。

 

 そこからは乱戦とも言える戦いが続いた。男型を失ったアラガミは近接攻撃こそ少なくなったものの、遠距離からの光弾を放ち、距離を置けば滑る様に地面を移動し、ここぞとばかりに斬撃を飛ばす。

 近寄る事すら許されない状況の中で、エイジ達は徐々に消耗が激しくなってきた。近接攻撃が出来ない為に、バレットによる銃撃で攻めるも散発の銃撃では怯ませる事すら困難となっている。

 

 消耗戦になればこちらの分が悪い事は全員が熟知していた。しかしながら攻めあぐねているのも事実である以上、決定打となる攻撃が何一つ出来ない。このままではいずれ回復も困難となるのは時間の問題となりつつあった。

 時間の経過が焦りを呼ぶのはそれだけではない。時間がかかればかかるほどシオのコアは終末捕喰の為のアラガミ、ノヴァに同化し最悪の事態にもなりかねない。

 このままでは埒があかない。最後の手段でもあるオラクル解放剤を使う事を決心した瞬間だった。

 

 時間にして約1秒弱だが意識がアラガミから外れた。その瞬間をまるで見越したかの様にエイジを攻撃するが、ギリギリの所で回避に成功する。しかし、ここで大きな代償を払わされた事に気が付いた。

 肝心のオラクル解放剤はポーチごと砕け、そこからは薬品が零れ落ちている。最後手段とばかりに用意したはずの材料が一撃で砕け、その価値を発揮するまでもなく消滅した事が、エイジ自身の動揺を誘った。

 このままでは決定打を作る事が出来ない。そう思っていた矢先だった。

 

 

「やああああ!」

 

 裂帛の気合と共にアリサの渾身の一撃が女型の脚部装甲の結合破壊を成功させる。破壊させた部分からは生体の部分の奥までもが破壊された事を示していた。

 このまま弱点と化した所へ一気に攻撃を浴びせようと全員が一斉に攻撃に移ろうとした瞬間、女型の身体の周囲から光の柱が浮かび上がり身体が浮かび上がる。

 その瞬間、地面が大きく揺れその場で凌ぐ事で精一杯となった。

 

 本来であれば次の攻撃に移るはずが地面が大きく揺らいでいる為に身動きができず、その場で立ちすくむ事しか出来ない所へ連続した光弾をサクヤに向かって放つ。

 

 

「サクヤさん、直ぐに回避だ!」

 

 エイジが懸命に支指示するも、今の状態では満足に動く事は出来ない。このまま直撃すれば命までもが失いかねないと誰もが思った瞬間だった。

 激しく着弾した影響と轟音が辺り一面に鳴り響き、サクヤの命が危ぶまれるかと全員がサクヤを見た。

 

 

「サクヤさん!」

 

 最悪の事態を想定していたが、そこにサクヤの身体は見当たらない。そこにあったのは今まで一度も見たことが無いシールドを展開していたリンドウだった。

 

 

「遅くなって悪いな。時間がかかりすぎた」

 

 危機を救ったのは他の誰でもないリンドウだった。当初はリンドウも戦力と考えていたが、諸事情により戦線に加わる事は不可能と判断し戦端が開かれた。

 当初にツバキからそう聞いていた影響もあり、今回の戦いでは考慮すらしていなかった。そんな中での援軍は何よりも心強い物だった。

 

 

「貴様一人増えて何が出来る」

 

 再び光弾がリンドウを襲うも全て防ぎきり、一旦距離を置くことに成功した。

 

「サクヤ大丈夫か?」

 

「どうしてここに?」

 

「こっちにも色々とやる事があってな。無明に全部押し付けてこっちに来たんだ」

 

「ありがとう。でもこのままだと……」

 

「細かい事はともかく、今はあのアラガミに全力を尽くすだけだ」

 

 リンドウが加勢し、再び戦列に戻る。既に脚部装甲は結合崩壊し、男型は居ない。後は一気に押し切るだけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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