神を喰らいし者と影   作:無為の極

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外伝7話 (第54話)取材

「じゃ、悪いけどこれから宜しく頼むよ。始まるのは来週から約1か月程の予定だからね」

 

 

 タツミ達が本部へ長期出張に出かけた頃、極東支部では榊支部長代理より、今まで想定した居なかった依頼が舞い込んで来た。

 アナグラの内部では、またかの気持ちはあったが、残念ながらその声を発する者は誰も居ない。恐らく止める事が出来たであろう人間は残念な事に現在本部へ出張中でもあった。

 

 

「博士、突然そんなことを言われても一体何をすれば良いんですか?」

 

「今回は密着取材だから飾らない素の状態を知ってもらった方が手っ取り早いと思うんだ。だから無理に意識する必要は全く無いよ」

 

「博士、これって一体何が目的なんですか?」

 

「良い質問だねアリサ君。今回の目的は終末捕喰で混乱した世界に対してフェンリルではこんな活動しているってイメージ戦略なんだよ。そこは分かってくれるね?」

 

「あの~博士、イメージ戦略は分かったんですけど、何で極東なんですか?」

 

 コウタが疑問に思うのは尤もだった。榊の言葉をそのまま受け止めるのであれば、この内容は既に決まった事でもあると同時に、拒否権は無いに等しかった。

 

 

「実は他の支部でも打診はしてたんだけど、どこの支部でも二の足を踏んでいてね。で、仕方なく今回の件は極東支部として仕事を受ける事にしたんだよ」

 

「そんなどうでもいい事に付き合わされる身にもなれ。これは誰が得する話なんだ?」

 

「本当の所は、問題を起こした極東支部が全部の責任を取れって話が上から出てるんだが、流石に君の父親がとは言わないものの、それを盾にされるとこちらも断りにくいんだよ。そんな事で参加してくれるね?」

 

「チッ!勝手にしろ。俺は知らん」

 

 今回の発端となった終末捕喰事件は一旦は沈黙化したものの、その影響は目に見えない部分にも大きく波及していた。

 一番問題は全世界に対して一瞬とは言え、終末捕喰が実行されそれを間近で見た結果、人々の心の中に大きな傷を作ってしまった事。あと世間では大きく認知されていないがそれを逆手に取った新興宗教が世界を蝕むかの様にゆっくりと浸透している事が発端だった。

 

 第1部隊にはそれをメインに説明した物の、本当は今回の件でゴッドイーターのイメージアップと、それに伴う人材募集も兼ねていた。

 ゴッドイーターになるには、神機との相性が絶対条件となる。外部にはパッチテスト程度とのアナウンスが成されているが、実際には失敗すればそのまま死に繋がる以上本当の事も言えず、全体を見て絶対数を増やす事が今のアナグラでの最優先事項となっていた。

 

 ゴッドイーターにとっては神機を扱うのは最低限の事でもあるが、神機が使える=戦場で必ず戦える訳ではない。

 人間が神機を選ぶならまだしも、現状は神機が人間を選んでいる関係上、希望者はいても合致しなければ何も出来ない。人的資源が枯渇する様な事態となれば暗い未来しか見えない。

 そうならない様に、事前にイメージアップを図ろうと上層部は画策していた。

 

 

「これってさ、よく考えると全世界に発信されるって事なのか?」

 

「どうだろう?さっきの榊博士の言い方だと極東支部に依頼したって事だから多分そうなるんじゃないかな」

 

「だとすれば、あまり変な所を見せない方が良いのかもしれませんね。ただでさえコウタみたいなのがゴッドイーターって分かるとイメージが悪くなる可能性もありますからね」

 

「それどんな意味だよ。アリサこそ変な所見せて悪くなるんじゃないのか」

 

「私はそんなことしません」

 

「お前ら少し黙れ。そしていい加減にしろ」

 

「ソーマもそこまで怒らなくても」

 

 今回の件で一番拒絶反応を示していたのは他の誰でもなくソーマだった。

 ゴッドイーターの基礎とも言える存在であるのと同時に、その経緯まで知られるのは決して気持ちの良い物では無い。

 ましてや、今回はそんな経緯は一切関係なくの密着取材となれば、色々と警戒するのはある意味当然とも言えた。しかしながら、今回の話は第1部隊だけではない。極東支部にと榊は言っていた。

 必ずしも第1部隊だけが目的では無いなどと言った考えは誰にも無かった。

 

 1週間後とは言われた物の、現状では何をどうすれば良いのか全くと言っていいほど分からない状況の中で時間だけが悪戯に過ぎ去って行った。毎日が何らかの討伐やそれ以外の用件で忙殺され、記憶の奥底へと追いやられようかと思った頃、嵐は唐突にやってきた。

 

 

「今日から密着取材を1ヶ月間させて頂く事になりましたので宜しくお願いします」

 

 この瞬間、誰もが記憶の奥底から取材がある事を思い出した。

 今から何かをするには時間は既に無い。面の前に居るので今更誤魔化す事も出来ず、まずは今後の予定を確認する事となっていた。

 

 いくら広報が本部の案件であったとしても、おいそれと全部を公表する事は出来ない。本来であれば本部からのと言えば大よそはクリア出来る内容だったとしても、各支部にも機密がある以上、見られては困る事はここ極東支部には掃いて捨てる程あった。

 ましてや今回の内容は一般の目から極限状態の現状を緩和する事が目的となっている以上、面倒な事にも巻き込まれたく無いとの考えが大半を占めていた。

 

 

「取材ですが、どの支部でも機密やテロの可能性を考慮して、個別の内容には踏み込みませんが、日常に関しては色々と取材させていただく事になります。何か質問等があればお答えしますので宜しくお願いします」

 

 ここまで言われると、それ以上の質問が出る事は殆ど無かった。本来であればあ一番の懸念事項でもあった、秘匿すべき事は取材しないの文言が全部を物語った。

 

 

「これって、最終的にはどんな媒体に流れるんですか?参考までに聞きたいんですが?」

 

「え~っと。君は?」

 

「失礼しました。第1部隊所属の如月エイジです。現状は部隊長を務めていますので、今後の事も踏まえた上で確認したいと思います」

 

「今回の内容ですが、紙媒体及び、ノルンであれば動画としての配信を予定していますが、場合によっては変更される可能性もありますのでご了承ください。なお、1か月間の取材後に編集し、配信されるのは約1ヶ月後を予定していますのでよろしくお願いします」

 

 この時点で、配信は他の支部及び一般に向けての配信である事が確定した。極東支部の内部だけならば笑い話で終わっても他の支部や一般に対してとなれば話は大きく変わる。

 機密事項が多すぎるここでは、気苦労は何かと多くなるのが予想された。だからと言って、特別何かをしようとも考えていないのもまた事実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒバリお帰り。本部はどうだった?」

 

「意外と楽しかったですよ。でも休みが全然無かったから、どこかへ行く事も出来なかったけど、お土産だけは買ってきましたよ」

 

 

 長期の出張が終わり久しぶりにロビーへと戻ると、そこはいつものアナグラの光景が戻っていた。2週間の空白が意外と長い事を実感し、これからはここがヒバリの主戦場である事を改めて認識させられる事となった。

 今までこの光景をずっと見ていたヒバリには何となくだが、空気感がいつもと違う事を肌で実感していた。

 

 

「行く前と空気が何となく違う様にも思えるんですけど、何かありました?」

 

「今日から1ヶ月の密着取材だって。本部の広報がここに来ているから多分、いつもとは感覚が違うのかも」

 

「随分と長期ですかね……」

 

 長期取材はここに来て初めて知った事でもあったが、持ち前の冷静さで何とか顔に出さずに抑える事に成功したものの、詳細については何も聞かされていないのが実情でもあった。

 リッカからの話では、日常をメインとした普段を広く知ってもらう事が目的らしく、あえて何時もを演じる事が無い様に釘を刺されていた。

 本来であればここで気が付くはずなのが、ヒバリは何も言わず、日常を撮る事で初めて色んな可能性を持っている事を思い出す。

 いつもであれば日常的なのが、任務終了後のタツミとのやり取り。ここアナグラではあまりにも当たり前過ぎて気にもしていないが、現在は絶賛撮影中の為にいつものやり取りはマズイと判断し、その対策を取る事にした。

 

 

「ねえヒバリ、タツミさんのあれは流石に拙くないかな?」

 

「あれの事ですか?あれなら大丈夫ですよ」

 

「それってどう言う意味?」

 

「それは秘密です」

 

 その一言で本部の出張できっと何かがあった事はリッカには予想できた。

 本来であればアリサ達と画策した結果ではあったが、ヒバリの表情を見ていると決して悪い意味での出来事は無かったと判断できた。しかし、今はそのタイミングがかなり悪く、毎回の様にあのやりとりを取材させるのは決して絵面の良い物では無かった。

 

 

「本部で何があったのかそのうち教えてよ」

 

 恐らくどんなに話をしていても、ヒバリは本部でのやり取りをリッカに言うつもりは恐らくは無いと判断し、それ以上この話題を持ち出す事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました。明日からもよろしくお願いします」

 

 こうして初日は大きな出来事も無く一日が終了する事となった。

 

 

 

 

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