神を喰らいし者と影   作:無為の極

56 / 278
外伝9話 (第56話)反響

「今日はありがとうございました。お蔭で納得の出来る物が出来上がりましたので。公表の際にはご連絡させていただきますので」

 

 

 色んな事を想定しながらも、広報部の満足の行く結果が得られ、懸念した事は何も起る事は無かった。

 万が一の事も考えていた物の想定していたトラブルは無く、また大掛かりな出動要請が無かった為に、結果的には第1部隊だけではなく、リッカやナオヤも撮影現場の見学をする事となった。

 シオの動きは広報部の人間の目に狂いが無い事を証明し、見る物には感動を与える事は無かったが、ほのぼのとした雰囲気と見る物の雰囲気を良くする様な未来に期待が持てる様な出来となった。

 本来であればシオだけで終わるはずだったが、元々想定していなかった他のメンバーまでもが参加する事となり、極東支部だけではなくフェンリルのイメージアップに大きく貢献する事となった。

 

 

「まさか、あそこでソーマまで使われるとは思わなかったけどな」

 

「中々似合ってましたよソーマ」

 

「いちいち、そんな事言うんじゃねえ。誰が好き好んでやってるとでも言うんだ」

 

「傍から見てもお似合いだと思ったけどね」

 

 そもそもシオを利用してイメージアップを図る所までは良かったが、この状態では若干寂しいと感じると、そこに居たソーマに依頼がかかった。

 普段はフードをかぶっている為にその表情は表れにくいが、フードを外せば誰もが一度は見る程の好青年にしか映らない。その2人を使う事で和やかな雰囲気を作り出した広報部の手腕も大したものだった。

 

 

「いえ、こちらが想定した以上の作品が出来上がりましたので、こちらとしても反響が今から楽しみです。所で今回の件なんですが、氏名や支部は公表しても構わないでしょうか?」

 

 ここで誰もが予想していなかった発言が飛び出した。事前の予想ではシオが何かを口走る恐れはあったのかもしれないが、まさか広報の人間がそんな事を言うとは思っておらず、この質問事項に答えるには時間を要する事になった。

 

 

「ソーマは構いませんが、シオは申し訳ありませんが公表は差し控えさせて頂きます」

 

 返答に困った所で同行していた無明から救いの手が出て来た。

 シオはまさに懸念される極東支部外秘である以上、ここまでの露出でさえも本来は認める事は出来ない。しかしながら、本来の内容を公表する事無く姿だけの条件での撮影だった為にそれ以上の事は何も出来なかった。

 

 

「これは紫藤博士。この子に何か問題でも?」

 

「実は、この子は外部居住区出身ではなく、その対象からも漏れている所を保護したので、万が一この事実が外部に出ると流石にイメージアップどころかダウン以外の何物でも無くなります。

 仮に強硬したとしても、今度は都合のいい時だけ利用するのではとの誤解を招く以上、あまり素性に関しては公表出来る物では無いのではと。あとはアルビノなので悪目立ちするのも本人の事を考えれば決して良いとは思えないですよ」

 

 全てが嘘で塗り固められると、色んな所で綻びが生じるが、外部居住区以外での保護とアルビノは事実である以上、正確な情報の裏を取る事は出来ず、またフェンリル上層部にも名前が知れ渡っている人間の言質を疑う事も出来ないと判断されたのか、それ以上の追及をする事は憚られた。

 

 本音を言えばこれを機に一般人に広く認知してもらう事だけではなく懐の広い部分を見せたいとの思惑があった為に、下手に事を大きくすれば今まで撮って来た物が全てお蔵入りする事だけは避けるしかなかった。

 

 

「今後の事もありますので、その都度その件については互いの状況を摺り寄せる形と言うのはどうでしょうか?」

 

 この一言がこれ以上の追及をするなと言わんばかりの回答でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予期せぬ出来事ではあった物の、実際に放送されるや否や、広報部の想像通りの状況となった。

 シオのインパクトは予想以上に大きく、本来であらば秘匿のはずがどこから嗅ぎ付けたのか極東支部に問い合わせが殺到していた。しかし全ての情報が非公開であるのと同時に紫藤の名前の影響もあり、ほどなく沈静化する事となった。

 

 外部に関しては確かにそれで終了だったが、肝心の極東支部内では公然の秘密とばかりに誰もが知っている物の、詳細については何も知らない状況が続いていた。

 唯一知っているのはソーマが関与している事だったが、元々のソーマに対するイメージのせいか、古参の人間は直接話をする者は少なかった。

 しかしながら、新しく入隊した人間は過去の事について知っている訳ではなく、単純にソーマを見て憧れと同時に入隊希望者が増えた事だけは榊とツバキにとっては嬉しい誤算でもあったのと同時に、ソーマ自身の過去についてまで色々と聞き出す訳ではなかったので、今後の事を考えれば悪くない結果だっと喜びを隠せなかった。

 

 

「ひどい目にあったぞ。もう二度とこんな事は御免だ」

 

「何言ってんだよ。あのCMで新人が増えたって博士から聞いたぞ。モテモテなんて羨ましいじゃん」

 

「だったらお前が出れば良かったじゃねえか」

 

「いや、俺も少しは出たよ。ノゾミにもお兄ちゃんが出てるって言われたんだぞ。だけど、この差は一体何なんだよ。何がどう違うんだよ」

 

「そんな事俺が知る訳ねえだろ。見えない何かが出てたんじゃねえのか」

 

「くそ!これだから無駄にイケメンなやつは嫌なんだ。爆発しちまえ」

 

「コウタもそんな事言わないの。でも良かったじゃない。皆とは言わないけどソーマに悪いイメージ持つ人が少なくなってきたんだから」

 

「そりゃそうだけど」

 

 コウタが愚痴ともつかない事を言うのには訳があった。広報部の密着取材が完了し、半分忘れた頃に放送と同時に各媒体にも色々と流れたが、やはり一番の注目はシオと一緒に映っていたソーマだった。

 

 放送ではアラガミの討伐の際には荒々しくも力強い戦いを見せるのと同時に、普段は寡黙にトレーニングをしたり書類の整理をしているのと同時に、募集ポスターのディレクターズカットと称してシオとのやり取りまでもが合わせて放映されていた。

 戦いと普段のギャップが激しく、アラガミには鬼神の如き戦いを、普段は癒しを求める様に穏やかな生活を送っている。そんな二面性が良い意味での効果を生んでいた。

 ソーマ達だけではなく、第1部隊としても対アラガミの剣となるような戦いをしている様に上手くアングルやカットで調整される事で、小型種とは言え、迫力のある映像となっていた。

 その影響がシオ同様に凄まじく、支部と氏名は公表されていた関係で、色んな所からソーマへのファンレターが大量に届いていた。

 

 そんなコウタをサクヤがなだめていたが、元々個性派揃いの第1部隊は各自にも自覚していない部類での影響も少なくなかった。

 

 

「コウタにも色々ファンレターとか来てたんじゃないの?」

 

「全く無い訳ではないけどさ。やっぱりソーマと比べたら数が違いすぎるんだよ。それに何気にエイジだって結構来てたんだろ?」

 

「中身は全部見たけど、全部がそんな内容じゃないよ。中にはあのレシピは何ですか?とか、何時頃、市販化されるんですか?みたいな内容も多かったよ」

 

「ソーマとエイジは女子からが圧倒的に多かったけど、こっちはお子様だぞ。この違いって何なんだよ」

 

「ほら、コウタはお兄ちゃん属性が高いから」

 

「そんな属性はいらないから、もっと女子から来てほしかった」

 

 コウタの発言を聞いて、アリサは改めてエイジを見た。確かに自分にもサクヤにも色々と来てたのは知っていたが、まさか全部に目を通していたとは思っても無かった。

 

 当初は見ていたが、中にはストーカーめいたものもあり、全部の処理はしきれないとばかりに一度中身についての検閲をしてから本人の手に渡った為に、アリサの手元に届く物は少なかった。

 事実、放映の中には普段の一面でエイジがアナグラの取材の際に食事風景を撮られた事もあり、そのついでに食べた者もあった。本人曰く適当に作ったらしいが、見た目は家庭料理の枠を超えていたのと、素で食べた人間が絶賛していた事を思い出していた。

 そんな背景がレシピと言う名のファンレターとなって届いていた。

 

 今までゴッドイーターの第1部隊隊長と言えば、全員が戦闘力が高く良く言えばワイルド、悪く言えば荒々しい人間が就いていたが、エイジは見た目にも内容にもそんな気配は微塵も感じさせず、むしろ女子力の高さのイメージがあった。

 上層部から見れば今回の放送に関しては誰も異議を唱える事も無く、結果的にイメージアップに大きく貢献した結果に満足していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさに結果オーライだね。第1部隊には申し訳ないが、シオの事も思ったよりは注目されなかったのが良かったんじゃないかい?」

 

「あまり注目されるのも、本来は困るんだが今回は仕方ないだろう」

 

「人材も使えるかどうかは今後の訓練次第だが、多いに越したことはない。暫くはこれが続くだろうが、徐々に沈静化するだろう」

 

「とにかく、責任は果たした以上本部には今後何か言わせるつもりは無いが、あとは現場次第だろう。これ以上の秘匿事項は増えない方が良いのかもしれんな」

 

「しかし、無明は良かったのか?紫藤の名前である程度抑えたが」

 

「本部としてこれ以上刺激する可能性は皆無だ。向うも藪を無理やり突いて蛇以上の物が出ると困ると判断するだろう」

 

 これ以上の事を突っ込めば、本部としても修復不可能とも言える様な何か掴んでいた無明をツバキは恐ろしくも、違う意味で頼もしいと感じていた。

 本部での研修の裏で行われていた会議は正に魑魅魍魎の集まりとも言え、現場側とツバキとしては厳しい意見が向けられていた事を思い出した。しかしながら無明が全てをはねのけ、突っぱねる材料を上手く活かし他の支部の意見を全部封殺していたのは全て諜報の末に手に入れた情報だった。

 これ以上の支部長代理は厳しいと感じながらも、今後の対応に終わる事だけは予測できていた。

 

 

 

 

 波瀾万丈な結末を迎えた極東支部はここに漸く密着取材の終焉を迎える事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。