神を喰らいし者と影   作:無為の極

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外伝11話 (第58話)驚愕

「なあ、こんなに手続きがここまで面倒なのはどうしてなんだ?」

 

「本来のゴッドイーターならば、恐らくここまで細かい制約が付く事はまずないだろうが、お前の場合はある程度仕方ないと思うしかないだろう」

 

「まあ、まあ、そんなに気にしなくても大丈夫だよ。今まで定期的に見て来た結果、他のゴッドイーター達と何ら変わりない事は証明されたんだから安心したんだろう?」

 

 気が付けば、アーク計画の壊滅から半年が過ぎようとしていた。

 体面的にはエイジス計画の失敗だが、本来の目的でもあったアーク計画は第1部隊の活躍により、秘密裏のうちに破綻した。

 今でこそアナグラの内部は穏やか空気が流れているが、そんな中で一番の驚きがリンドウの生存と右腕のアラガミ化でもあった。

その後の経過観察を榊博士と無明がする事となり、ここに来て漸く何も問題ないとのお墨付きが出る事となった。

 

 本来であれば万が一の事も考慮し、リンドウは経過観察と言う名の監禁状態になるはずだったが、ここ極東支部では余剰戦力と言う名の穀潰しをそのままにしておく事は何もなく、事実上の一人部隊として従来の任務に就いていた。

 当初は新人の同行も予定していたが、リンドウの右腕を見て少なからずショックを受ける物もいるだろうと精神的な考慮もされた上での対処となり、現在の所は追加される事もなく現在に至っていた。

 

 

「とにかく、これからは今まで以上に働いてもらう事になる。これ以上お前の後輩達におんぶに抱っこでは示しもつかないだろう。だからこそ今まで以上に働いてもらうぞ。

 あと、今後の事もあるから先に行っておくが、今後は第1部隊に戻るのではなく支部長直轄の部隊としての運用を予定している。その中には表に出しにくい内容も含まれるが、任務事に秘匿レベルの確認がされる事になるから、取扱いについては注意するんだ」

 

「うへぇ。今以上ってどこまでハードになるんだ?しかし姉上、今後の事を考えると未だ支部長が決まらないにも関わらず、部隊だけが先に出来上がるのはどう言う事なんですかね?」

 

「これについては現在調整中だ。誰もが好き好んで極東の支部長になりたいと思う人間が少ないって事だろう。誰もが命は惜しいからな。なお、今回の措置に対して現在の階級に変更がある。まだ正式には伝えていないが、お前とエイジは中尉に、ソーマを少尉に、アリサとコウタは准尉とする。ちなみにサクヤはそのまま少尉だ」

 

 このツバキが話したこの裁定にはリンドウも驚きを隠せなかった。

 本来であればここまで大幅な人事の昇格は無く、平時であればKIAでの2階級特進位しかない。そう考えれば今回の様な大盤振る舞いとも取れる昇格は正にフェンリルから極東支部への口止めとも言える行為でもあった。

 昇格すれば今以上の権利を有する事にはなるものの、その分の義務を果たさなければならず、今から悩む必要がないが近い未来には激務の2文字しか見えなかった。

 

 

「姉上、確かフェンリルには今まで准尉なんて階級は無かったかと記憶してますが。今回は一体どんな措置があったんです?」

 

「それに関してはアリサはまだキャリア的には若干不安があるのと同時に、コウタに関しては既にエイジとのミッションも長く、今後の期待値を踏まえた上の判断だろう。コウタに関しては学術面がネックだろう。准尉とは言うが事実上の少尉相当官になる。とは言っても、現場レベルだとそんな物は何の意味も成さないがな」

 

 現場での指揮官は部隊の生存に直結する以上、尉官級が居ない事には話にならない事が多々あった。とは言っても、それはあくまでも他の支部の話であって極東支部においてはそんな物は無意味とばかりに形骸化していた。事実、下手な尉官よりも対アラガミの経験値の高い人間の方が遥かに戦場では生き残る率が高く、最近では余程の内容でない限り第1部隊だけのミッションは殆ど無かった。

 

 

「リンドウ、来週からイタリアとドイツから研修で2人がここに来る。お前は知らないだろうが、タツミは現地で同じチームを組んでいた関係上知っているから、詳しい事はあいつから聞いておくんだ。今回の件に関しては結果はアナグラ内部にも公表される事になるから、今までと同じ感覚でやれるとは思うな」

 

「了解しました。それと姉上、これとは別に相談があるんですが」

 

「何だ珍しいな。言ってみろ」

 

「ここでは少々言いにくい」

 

「リンドウ。お前の事だ。どうせサクヤとの事だろう?」

 

 2人の会話に割り込む様に無明からリンドウが想定しているであろう事をハッキリと指摘されていた。

 リンドウ自身は気が付いていないが、帰還後ツバキはサクヤから相談されていたのが今後の事に関してだった。

 短い期間とは言え屋敷で過ごした際にリンドウの口からプロポーズの言葉が出たものの、今の状態では今後の事も含めて何も担保に出来る物も無く、安心できる材料として今回の最終チェックの結果を待っていた。

 

 

「何で知ってるんだ?」

 

「ツバキさんから相談があってな。お前の事はともかく、未来についての可能性の事だろう?」

 

「ああ、それが一番心配でもあるんだ。俺について来たばかりに今後の事を考えるとそれで良いのかと心配する事が増えて、そこから先へ進もうとするのが怖くなってな」

 

「リンドウ君、その件に関してだが今回の検査の結果から想定される事だが、君の身体は見た目はそうだが、細胞レベルで言えば他のゴッドイーター達と殆ど変らない事が判明している。

 確かにオラクル細胞の浸食は仕方ないのと見た目がそれだから心配になるのは分かるが、これは紛れも無い事実である以上、君の心配については責任を取ろう」

 

 榊の一言でリンドウの心配は完全に払拭しきれない部分はあるもの、今の時点で榊博士以上の科学者がフェンリルにいるかと言えば、答えは否と言う他無い。そんな人物からの返事に戸惑いはあるものの、リンドウの懸念すべき部分の殆どは拭い去られていた。

 

 

「完全に解析出来た訳でもないし、今後有り得るだろうからと考えられる点は産まれてくる子供の偏食因子との関連性が高くなる事は間違いないだろうね。

 ただ、これに関しては生き残るゴッドイーターが少ない影響もあって有用的なデータは未だに確立かされていなんだ。君のDNAの塩基配列を確認したが、オラクル細胞の浸食は進んでいないのと、今後同じような事があれば可能性は高くなるが、受精された生命には既に関係のない話だからこれ以上の事は問題ないと言えるだろうね」

 

 ここで何げない博士の一言でリンドウは一気に青ざめる事となった。博士は今、受精された生命と口に出した。

 それは妊娠を意味する事でもあり、リンドウが心配した部分の最重要点でもあった。しかし、サクヤからはそんな話は何も聞いていないし、本人の様子を見ても恐らくは気が付いていない可能性が高いとも考えられた。

 

 

「博士、どこからその話が?」

 

「リンドウ、お前に限った話ではなく、全ての神機使いは定期的にオラクル細胞の浸食等の確認で検査しているだろうが、今回の検査の中で気になる部分があったからだ。その時にサクヤのデータに変化があったから細かく調べただけだ。

 恐らくはサクヤもまだ気が付いていないだろう。今回の件があったからここで話してるんだ」

 

「なあリンドウ。俺も知ってたが、お前が今心配してる事は全部過去の話になっているんだ。ただ、ソーマみたいなケースとは違う。ゴッドイーターはアポドーシスとして定期的に偏食因子を取り込んでいる関係上、一方的に浸食する事が受け継がれる訳ではない。浸食と同時に対抗も受け継いでいるからこそ今後の研究の対象にもなるんだ。今は素直に喜べ」

 

 心配していた部分を吐露したかと思った瞬間に、全く想定していない内容が飛び込む形となりその後の話に内容は記憶に残っているかすら怪しくなる程のインパクトにリンドウは何も考える事が出来ないでいた。

 なんとか最低限必要な部分だけは記憶に残し、残りに関しては後日2人で確認すべき事と決定し、この場は終了となっていた。

 

 

「しかし、リンドウが父親とはな。同期としては感慨深い物があるな」

 

「お前も漸く一人の親となるのか。で、サクヤにはどう説明するつもりなんだ?」

 

「これからでも話をしようかと思う。さしあたっては今後の件をどうするかだな」

 

「それなら心配に及ばないよ。さあ、サクヤ君入ってくれたまえ」

 

 リンドウが想定していない榊の発言に驚きを隠す事は出来なかった。その一言で、ラボの別室のドアが開き、そこにはサクヤが今までの事を聞いていたのか泣きはらした赤い目をして佇んでいた。

 

 

「さ、サクヤどうしたんだ?」

 

「リンドウが来る前に榊博士から今回の事を聞いたの。まさかそんなに悩んでるなんて思って無くて。私、自分の事ばかり考えていたのが恥ずかしい」

 

「そ、それは俺自身の気持ちであって、どうなろうとサクヤはサクヤだ。知っての通り事実は今知ったから何とも言えないが、こんな俺だけどこれからも頼む」

 

 当初サクヤは何も聞かされないままツバキに呼ばれると、そこには榊博士と無明と3人が居た。

 この面子で話される内容は基本的には上層部絡みの内容か、何か大きな窮地に陥っている事が多く、そこに呼ばれたサクヤにとって、これから話される事に一体どんな事があるのか想像すら出来なかった。

 そんな事を考えると、呼ばれた当初はこれからどんな話があるのか想像すら出来なかった。そんな事を疑問に思う頃、榊博士の提案によって以前シオを匿っていた部屋へ通され、その際には部屋の内部の会話が聞こえる様な手筈までもされていた。

 ほどなくしてリンドウの検査が終わると同時に、自身の色んなデータを見せられたが、最終的には妊娠の可能性が極めて高く、現在の所は自覚症状も無いような状態の為に胎児の確認すら出来ないとの事だった。

 リンドウが帰還して、今までの間ずっと清い関係でも無かった為に全く何も無いなどと言う事もない。何となくだが可能性としてあるのだろうと認識していた程度だった。

 

 サクヤにとっては、本来であれば喜ばしい所ではあったが、一度プロポーズをリンドウからされた後、サクヤの居ない様な所で不意に何かに対して悩んでいる様子を偶然見る事があった。

 悩みと言うよりもむしろ何かに怯えている様にも見えたが、サクヤの前では何事も無い様な何時もの言動である以上、何に対して悩んでいるのか知る由も無かった。

 しかし、リンドウの定期検査がある事を知らせてもらい、何を考えているのか確認したいとの思いからツバキに頼み隣の部屋で待機させてもらう事となっていた。

 

 

「だったら、この後やる事は一つだな」

 

「準備はこっちでやるから気にしなくても良いぞ。個人的に用意する物があれば早めにしておけよ。こちらも目処が立てば連絡するが、時間にゆとりがあるとは思うなよ。まあ、あいつらの事だから何かしら考えなくても直ぐに動くだろう」

 

「だからと言って、任務の事は忘れるな。何もしなくても良い訳ではないんだ」

 

 

 

 

 サクヤがそこに居た事、リンドウが今まで苦悩していた事が全て解消されたのを確認したと同時に次の工程へと進む事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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