神を喰らいし者と影   作:無為の極

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外伝12話 (第59話)準備

 秘匿事項を簡単に暴露したかと思い悩んでいた所で、アリサの悩みをいとも簡単に吹き飛ばす様な発言がエイジから成された。

 当人がヒバリに対して言う以上、秘匿事項の懸念は拭い去られたものの、この短い時間にどれほど精神的に追い詰められたのかをエイジに小一時間ほど問い詰めたい心境だった。

 現在の所、屋敷の存在を知っているのはアナグラでは第1部隊のメンバーと、リッカ、あとは上層部いる2人だが、今回ヒバリに対して何かを話す事になるのでは?との疑念が湧いていた。

 しかしながら、エイジの顔色を窺うと秘匿事項の開示に対する悲壮感は微塵もなく何時もの日常と何ら変わりない表情でもあった。

 

 

「アリサ、どうかした?」

 

「いえ、何でヒバリさんなのかと」

 

「ちょっと、ここでは言いにくい事なんだけどラボは使えないし、まさかヒバリさんと二人きりだと誰かさんが激しく誤解する可能性も高いからね」

 

 誤解に関しては恐らくはタツミの事を指してるのは容易に想像が出来ていた。しかし、この場で言いにくい事とは一体何なのか。この場に居たアリサだけではなく、リッカの顔にも疑問しか湧かない様な表情を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前たち来たのか」

 

 エイジから誘われ、改めて時間を作る事にした面々が屋敷に着いた際には驚きを隠す事が出来なかった。

 本来であればここに居るはずの無いツバキがまるで女主人の様な振る舞いで玄関に出迎えていた。まさかこんなところで遭遇するとは思っていなかったのか、エイジとナオヤも驚きを隠す事が出来ず、これからどうした物なのかと考える頃には部屋へと案内される事となった。

 

 

「わざわざ時間を作ってすまない。今日、無明を通じて呼び出したのは私だが、内容が内容なだけに無明に頼んでここにしてもらった」

 

 ツバキが今回の招集元である事に疑問が生じる事は無かったが、問題なのがなぜ屋敷になるのかが誰にも理解する事が出来なかった。エイジとナオヤに関してはここが自宅なので気にも留めないが、アリサ、リッカ、ヒバリの3人は疑問しか出てこなかった。

 

 

「今回お前たちに来てもらったのはリンドウの事だ。特にエイジとアリサには色々と問題が生じる可能性を考慮した上での話になるが、近々サクヤは第1部隊を離脱する事になる。それに伴って、部隊の再編が上がっているが、事実上は今のままになる。この件についてはヒバリにも改めて連絡が行くはずだからそれを考慮しておいてくれ」

 

「ツバキ教官。サクヤさんが離脱って何かあったからですよね?何か身体的な問題でも生じたんですか?」

 

「厳密に言えば身体的な問題はそこまで大事ではないから安心しろ。今回の理由はサクヤの結婚と妊娠における一時離脱となる。エイジ、部隊離脱の条件については知っているな?」

 

 ツバキの口から、誰もが全く想定していない事実が伝えられた。身体的な問題ではあるものの、妊娠は病気ではない以上、今回の内容はいかに衝撃的だったのかはリッカとヒバリの表情からも容易に見て取れた。

 

 

「はい。だた、今回のサクヤさんのケースには当てはまらない様にも思えますが」

 

「これは榊博士とも相談した結果だが、現在のリンドウの状態は見た目はアレだが中身はお前たちと何ら変わらない。あえて言うならばオラクル細胞の浸食率が他よりも若干高い事が原因とも言える。

 偶然とはいえ、今回妊娠が発覚したのと同時に今後有り得るだろう可能性としてのサンプルとなる。もちろんこの件については両者にも話しているし、、サンプルと言っても実際には成長に伴うオラクル細胞の変化の確認と、今後の可能性を確認する為でもある。

 本来であればこのような事態の場合には本部の承認も必要となってくるが、大義名分がある故に本部としても特例での認可が出ている」

 

 ここで漸くここに呼ばれた意味が分かった。本来であればラボでその話をしてもかまわないが、アナグラ内部でこの面子を呼べば色んな憶測が飛ぶ可能性が高く、第1部隊だけの話にはならない。

 ヒバリに関してはオペレーターである以上、問い合わせがあった場合にしっかりとした理由を説明する必要性があった為にここに呼ばれていた。リッカに関しては神機のメンテナンスと常時維持するためには平時と戦闘中との区分けが必要となる為でもあった。

 そもそもリンドウとサクヤの関係はアナグラの中では今更なので誰も気にも留めていないが、結婚と妊娠に関しては後日、本人たちから何らかのアナウンスがあると予測していた。

 秘匿しようにも身体的にも特徴が出ればいずれどこかで発覚する恐れも出てくるのであれば、前もって発表した方が混乱は少ないだろうとの予測を立てた上での判断となった。

 

 

「ツバキ教官、結婚って事は式とかどうするんですか?」

 

「もちろんそれに関しても現在は調整中だが、無明が取り仕切るから恐らくは近日中だろうな。まあ、場所はともかく色々とやる事があるからとは聞いているが、細かい事は何も聞いていない」

 

 ツバキとエイジのやりとりの中で、呼ばれた3人も結婚式に色々と思いを馳せているのか会話の中身までは聞いていない様にも見えた。

 式を挙げるのであればウエディングドレスを着るのは、いつか来るであろう未来の憧れの象徴でもあった。

 

 

「だとしたら、急がないといけませんね」

 

「急にどうしたのアリサ?」

 

「リッカさん。やはり結婚式ですから私たちもドレスアップする必要があるので、これから服を考えないと時間が無い様にも思えるので」

 

「そうですね。結婚式に普段着は無いと思いますし、こんな時が無いと中々ドレスアップなんて出来ませんね」

 

 結婚式に出る以上、ある程度しっかりした服装になるのは当たり前の話だが、ヒバリの言う様にこんな殺伐とした職場でドレスアップする事は万が一にもありえない。

 ヒバリに関しては本部への出張の際にはそんな可能性のある場面にも出くわしたが、あの時は全員が制服だった為に、機会としては皆無だった。そんな事もあってか、今回の様な厳かな式をするのであれば、本来ならば気兼ねなく考えていた思い思いの服装になれる事を心の中で待ち望んでいた。

 

 

「あと、式に関しては何の問題もないが、妊娠に関してはデリケートな問題の為に当人達からアナウンスが無い限り、公表は絶対にするな」

 

 ツバキから釘を刺されるも、既に意識は式に向けてのイメージしか湧いて無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄様、今回のリンドウさん達の件ですが、ツバキ教官から話は聞きましたが、実際の所はどうなんですか?」

 

 ツバキの説明に一旦は納得したものの、エイジの中では本部への認可の一言が気になっていた。

 部隊を預かる身としての発言ではなく、むしろ個人的な見解によるものでもあった。あの説明では、成長の記録とオブラートに包んではいるが、実際には細かい部分での人体実験が含まれているのではとの疑念からの発言でもあった。

 

 

「その件なら、ツバキさんの言葉をそのまま受け取ってくれて間違いない。お前は恐らくソーマの事を気にしてるんじゃないのか?」

 

「本音はそうです。アーク計画を破綻させた当事者として考えれば本部の考えている事に理解は出来ないです。今回の件にしても2人には正直な所、幸せになってほしいと考えています。

 僕が言うのは本来おこがましいのかもしれませんが、これが第1部隊としてではなく、一人の極東支部に所属するゴッドイーターとしての意見なんです」

 

「お前が言うだろうとは思ったが……リンドウもこんな慕われる後輩を持って幸せな奴だな。今回の件に関しては上層部マターになっているが、こちらが一方的に出した条件だ。交渉である以上、こちらの意見だけではいずれ本部の内部で暴走する可能性が出てくる。こちらからの譲歩が出れば向うの面子も保たれるからな」

 

 エイジ自身の出自がそうさせるのか、それとも性格なのかは分からない。しかし、今回のエイジの意見はアナグラでも恐らくは出てくるであろう話でもあった。

 エイジには言っていないが、万が一本部が暴走する様な事があれば無明としては反旗を翻す事もやむを得ないと考えている部分もあった。しかし、今回のケースは実際に今後起こり得る話でもある。そう考えると安心している部分があるのもまた事実だった。

 

 

「あとは結婚式に関してだが、今回の件で屋敷の一部を開放する事にした。ただし、今後の事も含めて屋敷そのものは解放するが、今回限りの事とする。人員についてもこちら側の人間を配置に付けるから、お前たちが気にする必要は無いからな」

 

「わかりました。ナオヤにも伝えておきます。参考に聞きたい事がありますが、宜しいでしょうか?」

 

「なんだ?」

 

「ツバキ教官はいつからここに?」

 

「ここ最近からだ。まだ発表していないが、アナグラも急激な人員の増加で一定の人間の配置が少し変更される。近いうちに発表されるが、それに伴い居住スペースにも変更点がいくつか出てくる事になる」

 

「そうでしたか。てっきり兄様がツバキ教官と結婚でもするのかと思いお聞きしました」

 

「それは俺が決める事ではないからな。何かあれば公表しよう」

 

 荒唐無稽とも思われたが、一番最初にツバキを見た際に、ここにあまりにもしっくりし過ぎる程のイメージをエイジは持っていた。

 屋敷の当主ではあるが、無明の置かれている立場を考えれば相手としては悪くないと考えていた。事実、年齢を考えてもそろそろ次代の話がでるはずにも関わらず、当人からは何の話も聞こえてこない。アナグラにいる間はゴッドイーターではあるが、ここに返ってくれば一族とも言える団結がここにはあった。

 これ以上の事は考えても仕方がないとばかりに、今できる事を対処するしかない。

 今回の件をコウタ達に伝える事に決め改めて皆に伝えるべく、エイジはアナグラへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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